津芽湊の暗殺教室 『更新停止中』   作:ケチャップ

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第二の刃の時間

「さて、始めましょうか」

 

そう言う殺せんせーは27人に増えていた。

 

椚ヶ丘中学の中間テストが迫り、殺せんせーによる生徒1人1人マンツーマンの高速強化テスト勉強が始まった。

 

ミナトは、昨日目にした殺気を放つ渚の姿を思い出し考え込んでいた。

 

(普段はおとなしそうなのに…何処であんなの身につけたんだろ…)

 

「ミナト君、聞いてますか?」

 

「あーすいません、殺せんせーぼーっとしてましたw」

 

ミナトは、殺せんせーの声で我に返った。

 

「全くテスト勉強中ですよ?おや、君は英語が苦手みたいですねー」

 

「そうなんですよ…もう並び替えとか全然ダメで…」

 

ミナトがそう言うと殺せんせーの顔は黄色と緑のしましまになっていた。

 

「ヌルフフフ、君にも苦手な教科はあるんですねー」

 

殺せんせーの挑発混じりの発言に、ミナトは少しイラっとしたがその時、殺せんせーの顔がぐにゅんと形を変えた。

 

「ちょっ!急に暗殺しないでくださいカルマ君‼︎それ避けると残像が全部乱れるんです‼︎」

 

「意外と繊細なんだなこの分身…」

 

菅谷が目の前でぐにゃんと顔の形を変える殺せんせーを目にそう言うと、ミナトは何か思いついたのか悪い笑みをニヤニヤ浮かべていた。

 

 

「先生、ここよくわからないんですけど…」

 

「どれどれ……にゅやっ‼︎」

 

再び殺せんせーの顔はぐにゅんと形を変える。驚いた渚がミナトの席の方を振り返ると、教科書で隠していたせんせー用ナイフで攻撃するミナトと、それを避ける殺せんせーの姿があった。

 

「ねぇミナト〜どっちがより面白く殺せんせーの顔変えられるか勝負しようよ♪」

 

「いいね〜♪それじゃ殺せんせーナイフの数増やしてあげますねw」

 

「ちょっ!これ以上ナイフを増やさないで!」

 

(((あいつら、E組の最悪コンビだ)))

 

クラスの全員が、2人に暗殺されている殺せんせーを見て思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日、殺せんせーはさらに増えていた。その数は生徒1人に殺せんせー3〜4人ほどの割合だった。

 

「…どうしたの殺せんせー? なんか気合い入りすぎじゃない?」

 

「「「んん?そんな事ないですよ?」」」

 

気合の入り具合に疑問を抱いた茅野は問いかけたが、3人の殺せんせーが一斉に答えてきたので困惑していた。

 

そんな光景を目に苦笑を浮かべていたミナトは殺せんせーがここまで徹底する理由を知っていた。それは昨日の放課後の出来事だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、ミナトは提出物を教員室に持って行こうとした際、教員室の様子を覗き込む渚を目にし、事情を聞くと面白そうという理由で渚と共に教員室内の殺せんせーと、椚ヶ丘学園理事長のやり取りを見ていた。

 

 

椚ヶ丘学園理事長 浅野學峯

 

彼は創立10年で椚ヶ丘学園を全国指折りの優秀校にした敏腕経営者だ。成功の要因は、冷徹な合理主義だった。

 

 

 

(殺せんせー昨日、あの理事長にかなりやられてたからなー)

 

そして、ミナトは理事長から言われた一言が心に残っていた。

 

(あんな期待してないってのが丸わかりの頑張りなさいもなかなかないよな…)

 

「殺せんせー、この文法よく分からないから教えて欲しいんだけど」

 

理事長の一言は、ミナトの対抗心にうっすらと火をつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、次が終わればやっとお昼か…」

 

「殺せんせーもあの分身でかなり疲れてるみたいだったよ」

 

トイレから教室に向かっていたミナトと渚は、岡島に呼び止められた。

 

「殺せんせーが今すぐ全員校庭に出ろってさ」

 

「何かあったの?」

 

「わからないけど、急に不機嫌になったんだよなー」

 

ミナトと渚は理由もわからないまま、岡島と共に校庭へ向かった。

 

 

 

校庭にたどり着くと殺せんせーはサッカーゴールをどかしくるりと振り返るとイリーナに問いかけた。

 

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺います。あなたは仕事をするとき用意するプランは1つだけですか?」

 

「……いいえ本命のプランなんて思った通り行くことの方が少ないわ、不測の事態に備えて予備のプランを作っておくのが暗殺の基本よ」

 

 

殺せんせーの質問に、ビッチ先生は殺し屋としての顔で答えた。

 

 

「では次に烏間先生、ナイフ術で重要なのは第一撃だけです?」

 

「第一撃はもちろん重要だが、次の動きも大切だ。戦闘でもその後の練撃をいかに繰り出すかが勝敗を分ける」

 

殺せんせーの意図を理解できない生徒をおかまいなしに殺せんせーは校庭の中心でくるくると回り出した。

 

 

そして、殺せんせーはE組の生徒たちにアドバイスを告げた。

 

「暗殺があることで勉強の目標を低くしている君達にアドバイスです。第二の刃を持たざる者は…暗殺者名乗る資格なし!」

 

殺せんせーが回ったことによって発生した竜巻が収まると、校庭は綺麗に手入れされていた。

 

そして殺せんせーはE組の生徒たちに一つのミッションを与えた。

 

「明日の中間テストでクラス全員50位以内を取りなさい」

 

殺せんせーの与えたミッションに誰もが驚き、自信がなかったが殺せんせーは言葉を続けた。

 

「先生は君達の刃をしっかり育てています。自信を持って振るって来なさい、ミッションを、成功させ笑顔で胸を張るのです。自分達が暗殺者であり……E組である事に‼︎」

 

 

殺せんせーの発言に生徒1人1人の目が変わった。

 

 

そして、3年E組は中間テストを迎えていた。

 


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