ミナトが廃倉庫で高校生と喧嘩を始めた頃
「殺せんせー!」
倉橋は息を切らしながらも、なんとかE組につくことができた。
「どーしたの陽菜乃ちゃん?そんな息切らして」
倉橋の様子を見た中村が問いかけた。
「つ、津芽っちが高校生に連れてかれて、いま凛香ちゃんが追ってるんだけど」
「高校生って女子高生にか⁉︎」
「あんたはだまっとれ!」
突然現れた岡島は、中村の鉄槌により地面に沈んだ。
「とりあえず殺せんせーのとこ行こう!」
中村がそう言うと倉橋は頷き、2人は職員室に向かった。
3年E組 職員室
殺せんせーは生徒1人1人のテストを作っていた。
「千葉君は空間図形の理解が早いので、少し高度な引っ掛けを…カルマ君は全体的に問題のレベルを上げてもいいですね」
ある程度作り終わり、殺せんせーはミナトのテスト作成に取り掛かろうとした。
「そういえばミナト君の過去の成績を、確認してませんでしたね」
殺せんせーは机の上に置かれた資料を中からミナトの、1年から2年までの成績表を見つける。
「ありました!どれどれ………にゅやっ!これはいったい」
「殺せんせー!」
職員室のドアが勢いよく開かれ、そこには息を切らした倉橋と中村が立っていた。
「いったいどうしたんですか?そんなに慌てて」
「津芽が不良高校生に連れてかれたって陽菜乃ちゃんが」
慌てる倉橋の代わりに中村が答える。
殺せんせーは少し考えると中村と倉橋にこう言った。
「わかりました。それでは二人はクラスに残っている生徒を出来るだけ集め、ミナト君の元に向かってください」
「それってどういうこと?」
倉橋と中村は疑問を持ち殺せんせーに問いかけたが「ヌルフフフフフ、着けば分かることですよ」と殺せんせーは笑って答えた。
(先ほどの体育での烏間先生との戦い、今回は生徒達に手本となる動きを見せてくれそうですからね)
「あと凛香ちゃんも後を追ってて」
「にゅやっ‼︎速水さんもですか?それは危険ですね。先生ちょっと行ってきます!」
倉橋の発言に殺せんせーは驚き、マッハ20で何処かへ行ってしまった。
それから倉橋と中村は、教室に残っていた木村、磯貝、前原、杉野、渚、矢田、岡野、片岡、茅野を連れて教室を後にした。
「あんたもいつまで寝てんのよ!津芽が大変って時に」
そう言いながら再び中村は、岡島に2発目の鉄槌を食らわす。
「イテテ、なんだよ……って!ミナトに何かあったのか⁉︎」
そう言って岡島も中村達の後に続いた。
「それで津芽君はどこにいるの?」
渚の問いに倉橋が答える。
「場所は凛香ちゃんが追ってるから大丈夫。そうだ!今から行くってこと伝えないと」
そう言って倉橋は携帯を手にし凛香の番号を選択したが、彼女が携帯に出ることはなかった。
「どーしよ…凛香ちゃんに繋がらない」
「ここら辺で喧嘩するのに最適な場所はと…」
そう言うと岡野は、身近にあった木に登った。
「すげーな岡野の身体能力」
岡野のスピードに杉野が感心していると、「あったよー!倉庫らしきもの」と言いながらは岡野は何かを見つけその方向を指差していた。 その先には、倉庫の屋根と思われるものが少し見えた。
「あそこなら人目につかないし喧嘩するには最適な場所だな…よし、皆急ごう!」
磯貝の言葉にE組の生徒たちは倉庫の方向へ急いでむかい始めた。
時は少し遡り、倉橋が3年E組の隔離校舎に着いた頃…
「倉橋から連絡はまだないか」
速水は1人倉庫の外からミナトと高校生の喧嘩の様子を見ていた。
(もう喧嘩してからかなり時間経ってると思うけど、津芽の動きは全然疲れを感じさせない)
現にミナトはすでに15人ほど倒していた。だが彼は息を切らさずに未だ喧嘩を続けている。
(………他校の生徒やガラの悪い人達と喧嘩してたのは聞いてたけど、あんな強かったんだ……)
速水はミナトの喧嘩を見ることに気を取られ、近づいてくる者の気配に気付けなかった。
次の瞬間、速水の視界は真っ暗なり聞き覚えのない声が聞こえ、口元に布らしいものを当てられると彼女の意識はしだいに遠のいていった。
そして今、倉庫内では高校生によるミナトに対する集団リンチが始まろうとしていた………