なぜそうなってしまったかは後書きにて。
それでは、どうぞ。
10/18:一部のチェーン処理を修正しました。
●アテムVSにこ ③
雷が轟き、大粒の雨が降り注いでいるにも関わらず、誰一人としてその場から動くことができない。
――《オシリスの天空竜》
3体ものモンスターをリリースして召喚された、あまりにも巨大で神々しい力を前に、『雨宿りをする』という単純な思考さえも奪われてしまっていた。
「……これが三幻神が持つ本当の迫力なんだね、アテムくん」
そんな中、たった1人。穂乃果だけはこのカードの存在を知っていたかのように呟いた。
「穂乃果は、このモンスターの存在を知っていたのですか?」
「もしかして、前に戦ったことがあるの?」
アテムは高坂家に居候しているため、『μ’s』のメンバーの中で彼と最もデュエルをしているのは、当然穂乃果となる。それならば、このカードの存在を認知していてもおかしくはない。
「ううん、私が戦ったことがあるのは、三幻神のうちの1体、《オベリスクの巨神兵》だけ。
アテムくんと初めてデュエルした時に召喚されたんだけど、あの時は私の部屋の中だったからあまり大きくなかったし、単純に強そうなモンスターだなっていう印象だった。
でも、今は違う」
彼女の言う通り、ここは遮蔽物が一切存在しない学院の屋上だ。室内用にソリッド・ヴィジョンの調整が施されることもない。
いつも強気な真姫ですら冷や汗を垂らし、花陽も凛も、顔が引きつっている。
「確か、アテム先輩は《神縛りの塚》とかいうフィールド魔法であのモンスターを制御しているって言っていたわね」
「それに、私たち以外には見えなくなるって……」
「うん。見えてたら大パニックだよね、これ」
《オシリスの天空竜》は、屋上に収まりきらない程の質量を持ち、全長の半分以上が校舎を覆っている。
それでも他の生徒や教師が何の反応も示していないことから、彼が言ったことは正しいのだろう。この不可思議な現象に、デュエルディスクの作製経験を持つ唐沢も困惑せざるを得なかった。
「アテムくんしか持っていないはずのカードが何枚も反応するなんて、訳がわからないわよ……」
しかし、それでもはっきりと言葉を発することができる分、穂乃果たちはマシな方だろう。
こころたちに至っては、顔を真っ青にさせていたのだから。
「こ、こんなモンスターがいるなんて……」
「お姉ちゃん、大丈夫かな……」
「あわわ……」
そして、直接対峙している本人が感じる戦慄は、誰よりも大きいことだろう。震え上がる身体が、左手に持つ1枚の手札を取りこぼしそうになっていたのだから。
(くっ! 大きなモンスターなんて、いくつもの大会を観戦して見慣れていたはずなのに! でも、こいつは何!?
身体の震えが、止まらない……!)
◆
「オシリスの攻撃力と守備力は、コントローラーの手札1枚につき、1000ポイントアップする。今、俺の手札は2枚。よって、攻撃力は2000となる」
《オシリスの天空竜》
☆10 神属性 幻神獣族 ATK2000
神と言いつつも、攻撃力はにこの《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》に及ばない2000ポイント。
恐怖で震えていた身体が少しだけ収まっていくのを感じた。
だが、それはほんの一瞬のこと。
「そこで俺は、このカードを使わせて貰う」
彼女を再び絶望へと叩き落とす1枚が、発動された。
――魔法カード、《終わりの始まり》を発動!
「こいつは、俺の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する時、そのうち5枚を除外することで新たに3枚のカードをドローするカードだ」
「7体以上? 《超戦士カオス・ソルジャー》や《暗黒騎士ガイア》を使っておいて、闇属性を7体なんて…………ッ! まさか!?」
アテムがこのデュエル中、フィールドに召喚したモンスターのうち、闇属性モンスターは《クリバンデット》のみ。普通に考えれば《終わりの始まり》の発動条件を満たすことはできないはずだ。
だが――
「気付いたようだな。そうだ、俺は《クリバンデット》と《高等儀式術》によって、多くの闇属性モンスターを墓地に送っていた。《サクリボー》は自身の効果によって除外されているが、今の俺の墓地には、
《クリバンデット》
《カース・オブ・ドラゴン》
《バフォメット》
《魔導戦士ブレイカー》
《ファラオのしもべ》
《シャドウ・ファイター》
《コマンダー》
ちょうど7体の闇属性モンスターが存在する。
俺は、《クリバンデット》と《カース・オブ・ドラゴン》を除く5体を除外して、新たに3枚のカードをドロー!」
そして俺の手札が2枚増えたことにより、オシリスの攻撃力と守備力は2000ポイントアップする!」
5つの魂が次元の彼方へと消失し、アテムの手札を増強させる。
文字通り『終わりの始まり』を告げる魔法カードに、にこの心臓の鼓動が再度速まっていくのを感じた。
《オシリスの天空竜》
ATK2000 → ATK4000
「攻撃力、4000……!」
(《高等儀式術》を使ったのはデッキ圧縮だけじゃなく《トライワイトゾーン》と《終わりの始まり》の発動条件を満たすためでもあったってことか……!
でも、残念だったわね! どれだけ攻撃力を上げようと、それが手札に依存していると言うのなら……!)
スカーライトを上回り、レベル10のモンスターに相応しい攻撃力。このままでは、自分のエースが一方的に嬲り殺しにされてしまう。
直前のターンに伏せたカードを使うタイミングは今しかない。
「私は
対象とした効果モンスターの攻撃と効果を封じる《デモンズ・チェーン》。
『ERROR』
1つの英単語が表示され、一向に発動する気配を見せない。
「どうして発動できないのよ!?」
まさか、デュエルディスクの故障? そんなことはあり得ないはずだ。このデュエル中、モンスター・魔法・罠は全て問題なく認識していた。
だというのに、なぜ今になって《デモンズ・チェーン》のみが発動できないというのか。
「神に小細工は通用しないぜ、矢澤。
《神縛りの塚》が発動されている限り、フィールドに存在するレベル10以上のモンスターはカード効果の対象にならず、カード効果で破壊することも不可能となる!」
「そ、そんな……!」
攻撃力を追い越され、
そして、アテムの右腕が天を指し、再び雷鳴が轟いた瞬間。
――神の鉄槌が下された。
「やれ、《オシリスの天空竜》! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を攻撃ッ!」
――超電導波サンダー・フォース!!
縦に連なる2つの口。そのうちの1つが開かれ、極大の雷撃が放たれる。
にこのスカーライトも覇者としてのプライドゆえ前のターンを凌ぐ炎を放つが、一瞬も均衡することなく押し返されていく。
その力量差は、攻撃力の差だけではない。
『神』という絶対的な力の前には、『ただのモンスター』では拮抗することすら許されない。
ただ、それだけの話。
雷撃をその身に受けた悪魔竜は、塵も残さずフィールドから消滅した。
「なんて、威力よ……!」
にこ LP2500 → LP1500
周りのコンクリートの大半を抉る程の威力に耐え切れず、思わず片膝立ちになってしまう。
ライフポイントも半分を下回り、今の手札では攻撃力4000を超えるモンスターを倒すことは不可能。
「私のモンスターが戦闘によって破壊されたことで、《補給部隊》の効果発動! カードを1枚ドローする!」
1ターンに1度だけだが、《補給部隊》は破壊されない限り何度でもプレイヤーへ恩恵を齎す。だが、新たに手札へと加わったカードを確認した彼女は思わず顔をしかめていた。
(ここでこのカード、1ターン遅いのよ!
でも、《オシリスの天空竜》の攻撃力を維持するために、奴はこれ以上カードを展開するのは控えるはず。
次のターンはモンスターを伏せて――)
――だが、にこの淡い希望は、容易く打ち砕かれる。
「まだ終わらないぜ、矢澤。神がモンスターを葬ったことで、《神縛りの塚》の更なる効果が発動される。
このフィールド魔法は、レベル10以上のモンスターが戦闘でモンスターを破壊して墓地へ送った場合、破壊されたモンスターのコントローラー、つまりお前に1000ポイントのダメージを与える!」
「な、何ですって!?」
破壊されたスカーライトの魂を贄として吸収していく3本の柱。それが再び光ると同時、天より降り注ぐ雷がにこへと襲いかかった。
「きゃああああ!?」
にこ LP1500 → LP500
今度は、その場に踏みとどまることすらできず、後方へとその身を投げ出される。
どうにか受け身をとることができたものの、これでにこのライフは1000ポイントを下回った。
神の力を制御すると同時に、効果ダメージまで与えるフィールド魔法。その恐るべき力に、たった1度だけ神と対峙したことのある穂乃果だけでなく、身近にレベル10のモンスターを操る者がいる唐沢でさえ戦慄せざるを得なかった。
「にこ先輩のライフポイントは、今の攻撃でたったの500。もう守備モンスターを出して凌ぐこともできない!」
「オマケに、あのモンスターはフィールド魔法がある限り『対象をとらない除外・バウンス』以外のカード効果を受け付けないときてる。
アテムくん、いくらなんでも本気出しすぎじゃないかしら……」
唐沢が横を向くと、こころたちは呆然と立ち尽くしていたが、無理もないだろう。
信頼する姉のエースモンスターがたった1ターンで為す術もなく葬られ、ライフポイントも風前の灯。
それ以上に、圧倒的な力を前にして膝をつく家族の姿を見て平常心を保っていられる者などいるはずがない。
「俺はこれでターン終了だ。お前のターンだぜ、矢澤」
「くっ! その余裕、絶対に崩してやるわ! 私のターン、ドローッ!!」
淡々とエンド宣言を告げるアテムに対して、にこの中に悔しさと怒りが募っていく。
気がつけば弟妹の前であるにも関わらず、普段なら絶対に聞かせることのない怒声でカードをドローし、
(……よしっ!)
即座にそれをフィールドへと繰り出した。
「私は、チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》を召喚!」
《デブリ・ドラゴン》(チューナー)
☆4 風属性 ドラゴン族 ATK1000
「このモンスターが召喚に成功した時、墓地の攻撃力500以下のモンスター1体を対象として、効果を無効にして攻撃表示で復活させる!
私が呼び出すのは、攻撃力400の《カードガンナー》!」
《カードガンナー》
☆3 地属性 機械族 ATK400
小さな竜に導かれ、機械兵が再びフィールドへと現れる。しかし効果が無効化されているせいか、その挙動は少々ぎこちない。
また、《デブリ・ドラゴン》はドラゴン族シンクロモンスターのシンクロ召喚にしか使用できず、自身を除きレベル4以外のモンスターしかシンクロ素材にできない制約があるが、それと引き換えにドラゴン族シンクロモンスターは優秀なものが多い。真姫と海未は、にこの強運に改めて感心していた。
「ここで《デブリ・ドラゴン》を引き当てるだなんて、やっぱり運がいいわね。しかも、蘇生した《カードガンナー》はコストとしてデッキトップのカードを墓地に送ることは可能」
「墓地には《妖怪のいたずら》もありますし、レベル6か7のドラゴン族をシンクロ召喚できますね。
アテムさんが敷いた布陣を崩すとなれば、自ずと選択肢は限られてきますが……」
海未の頭の中に、複数のシンクロモンスターの姿が思い浮かぶ。そして、その候補の中に存在する答えにドラゴン族シンクロモンスターを多用する凛がいち早く辿り着き、花陽が追随して補足する。
「多分、出てくるモンスターはレベル7の《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》だと思うにゃ。
あのドラゴンは1ターンに1度、フィールド魔法を破壊してライフを1000回復。その上でフィールド魔法をサーチすることができるし、【デーモン】との相性は悪くないはずだから」
「それに加えて、矢澤センパイの墓地には、墓地から除外することで対象モンスターの効果を無効にする《ブレイクスルー・スキル》があります。《神縛りの塚》を破壊すれば《オシリスの天空竜》をカード効果の対象にすることが可能となりますし、これで形勢は再び逆転しますね」
フィールド魔法を破壊してしまえば、神を外界から見えなくさせる結界が消え去り、街中が騒ぎになることは免れない。
しかし今のにこは、そのようなことを気にしている余裕はなかった。
(神だかなんだか知らないけど、すぐに倒してやるわ!)
「私は、《カードガンナー》の効果を――」
真姫たちの予想通り、にこは機械兵に指示を出し、その後のシンクロ召喚を狙う。《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》を呼び出せば簡単に倒せるはずなのだから。
――悪いが、その効果は発動できないぜ。
だが、その狙いは叶わない。
「え?」
アテムの呟きとともに、にこの動きが止まる。そもそも、デュエルディスクが受け付けないのだ。
改めてディスクに目をやると、そこには『CHAIN 1』という単語が表示されていた。
にこは、《デブリ・ドラゴン》の効果を発動する前後に他のカードを使用していない。つまり、組まれたチェーンはアテムのものとなる。
まさかと思い視線を上げると、
――《オシリスの天空竜》のもう1つの口が開き、雷撃の砲弾を作り上げていた。
「《オシリスの天空竜》が存在する限り、相手フィールドにモンスターが攻撃表示で召喚・特殊召喚された時、そのモンスターの攻撃力を2000ポイント下げる。
そして、この効果で攻撃力が0となったモンスターを破壊する!」
「う、嘘でしょ!?」
にこが召喚した《デブリ・ドラゴン》の攻撃力はたったの1000ポイントしかない。下級モンスター最大クラスの2000ポイントというダメージを受け、耐えられるはずがない。
「やれ、《オシリスの天空竜》! 《デブリ・ドラゴン》を葬り去れ!」
――召雷弾!!
放たれた雷撃の砲弾は、小さな竜を一切の容赦もなく焼き尽くす。欠片さえも残さずに。
「オシリスの効果でお前のモンスターを破壊したことで、お前が発動した《補給部隊》の効果が発動されるぜ。
そして《カードガンナー》に対しても、オシリスの効果が発動される!」
《デブリ・ドラゴン》の効果で蘇った《カードガンナー》も、自らを呼び出した者が一瞬で消滅したことに困惑していた。
再び放たれた召雷弾は、困惑したままの機械兵を爆砕する。これで、にこのフィールドからモンスターは消え去った。
「……」
どうにか《補給部隊》の効果でカードをドローしたものの、やはり今の状況を打開するものを引き当てることは叶わず、最早にこの口から言葉が紡がれることもない。
「これが、モンスターを超えた神の力だ。
手札の数だけ攻撃力を上げ続け、攻撃力2000以下のモンスターは場に出ることすら許さない。
更に《神縛りの塚》の効果でオシリスはほぼ全てのカード効果を受け付けず、壁モンスターも意味を成さない。
さあ、どうする?」
「……」
そのような問いかけをされたところで、
(次のターン、
両膝をつく彼女の目から、光が消えていく。
その右手は、ゆっくりと左腕へと、正確には
――サレンダー
自ら敗北を認め降参する、決闘者にとって最も屈辱的な行為。
応援してくれる妹たちを裏切ってしまうことは十二分にわかっているが、勝ち目がない以上、このまま続けても――
「お姉さまをいじめないでっ!!」
「え?」
突如響いた叫び声に、右手の動きが止まる。
目の前が真っ暗になりかけていたにこが顔を上げると、そこには3つの人影が自分に背を向けて立っていた。
●絆
「こころ、ここあ、虎太郎…………」
3人はただ立っているわけではない。両手を目一杯広げ、にこを守るかのように神と対峙していたのだ。
無論、彼女よりも遥かに小さな子供が、神を目の前にして平気なはずがない。両足は震え、今にも倒れてしまいそうではないか。
「これ以上、お姉さまを傷つけることは許しません!」
「どうしてもって言うのなら、ここあたちが相手になる!」
「なる!」
それでも、こころたちは一歩も引かない。愛する姉を守りたいという、その一心で。
「……もう、無理よ。あんな馬鹿げた耐性を持つ化け物を倒す手段を、お姉ちゃんは持ってない。
あの時のように、無様に散っていくしかないのよ……」
勝負を諦め、何も考えることができなくなったからだろうか。
気がつけば、にこの口からは『あの時のこと』が語られていた。
2年前、スクールアイドルのグループを結成して『アイドル研究部』を設立したこと。
目指す目標のズレから、次々と部員が辞めていき、独りになってしまったこと。
真実を言い出せず、ずっと嘘を吐き続けていたこと。
今更ながら、酷い姉だと思う。
だから、もうそんな自分を守る盾になる必要はない。自ら敗北を認める姿を目に焼き付け、非難して、見限ってくれれば――
「それが、何だって言うのですかっ!」
「こころ……」
涙まじりの、こころの叫び。その言葉は、彼女を非難するものでは決して無い。
「お姉さまは、仕事で忙しいお母さまに代わって、いつも私たちの面倒を見てくれていました。
私たちがデュエルモンスターズを始めた時も、ルールを丁寧に教えてくれました。
風邪を引いてしまった時も、学校を休んでまで看病をしてくれました。
どんな時でも笑顔を見せてくれるお姉さまに! 私が! ここあが! 虎太郎が! どれだけ助けられてきたとお思いですか!
私たちにとって、にこお姉さまは! テレビの中に映るどんなアイドルよりも魅力的なんです!
それが、私たちを安心させるための笑顔だったとしても! 誰が何と言おうと! お姉さまが世界一のスーパーデュエルアイドルだということは変わりません!
だから、もしお姉さまが挫けそうな時は、私たちが支えます!」
こころの右手には、デッキが。左手にはデュエルディスクがそれぞれ握られている。それが意味するところは1つ。
「お姉さまに代わって、私たちがアテムさんと戦います!」
「どうして……」
こころだけではない。ここあもデッキとデュエルディスクを手にしている。まだデッキを持っていない虎太郎も、姉を守りたいという気持ちは同じ。
(どうして、私を助けようとしてくれるの……)
『スクールアイドルでなくなったこと』から目を背け、嘘を吐き続けていた自分を。
「それは、お前たちが強い絆で結ばれているからだ」
雨の中でも響く、アテムの声。ふと見上げてみれば、にこを
「俺はかつて、敗北して傷つく覚悟を持てず、自分自身から目を背けたことがある。
自分のプライドが傷つけられることが怖かったんだ」
昔を懐かしみながら語る彼の声は悲しげで、その姿は『あの時』の自分によく似ていた。
「だが、そんな弱い俺の代わりに傷ついた友がいた。俺たちを励まし、支えてくれる仲間たちがいた。
それはお前も同じはずだぜ、矢澤」
「私も、同じ……」
『アイドル研究部』の部員が自分1人だけになってから2年間。
すべてを失った事実から目を背けて、家族に嘘を吐き、部室を守るだけの日々を過ごしていた。
だが、経営難の学校が、たった1人になった部を2年も存続させてくれることなどありえない。今まで存続できていたのは誰かが……、おそらく東條希がひっそりと手を回してくれていたからだ。
放課後も、隣の部室の唐沢久里子がいたから、ほんの少しだけ孤独感が和らいでいた。
辛くて苦しい日々も、家族を安心させるためなら、嘘が混じっていたとしても笑顔を保つことができた。
今、この時も。
愛する妹たちは、圧倒的な力の前に打ちひしがれている自分を、勇気を出して支えてくれているではないか。
「お前を支えたいという思いは、こころたちだけじゃない。
穂乃果と園田、そして南は、音ノ木坂学院を守りたい一心でスクールアイドルになった。
俺も、西木野も、小泉も、星空も。最初のきっかけは違えども、今は全員が同じ思いを抱いている。
矢澤にこというスクールアイドルが、どれだけ険しい高みを目指しているとしても、俺たち『μ’s』は付いて行く。
俺たち
冷たい雨を忘れさせるかのような、暖かい視線。それは弟妹だけではなく、アテムも含めた8人からも注がれていた。
最初に口を開いたのは、高坂穂乃果たち2年生。
「アテムくんの言う通りです、にこ先輩! いえ、部長! 私たち『μ’s』は、どれだけ高い壁が立ちはだかっても、絶対に諦めません!」
「元より私たちの目標は音ノ木坂学院の廃校を阻止すること。無茶であることは百も承知です」
「低い目標を持ったところで満足できないし、意味がありません!」
その後を追うように、西木野真姫たち1年生も語り出す。
「そのためにも、オススメの曲をいくつか――」
「ならば『伝伝伝』を!」
「部室の掃除だってやっちゃうにゃー!」
「アンタたち……」
迷いのない、真っ直ぐな瞳。彼女たちは、本当に自分を仲間にしようと言うのか。
そして最後に、一歩引いた場所で唐沢は言った。
「諦めた方がいいわよ、矢澤
それに、このデュエルをサレンダーするのは構わないけど、効果処理を終えてからじゃないと受け付けてくれないわよ」
「え?」
彼女の言う通り、デュエルディスクには『EFFECT』という単語が表示されていた。
何のカード効果であるかは、持ち主であるにこ自身が知っている。
《カードガンナー》が破壊され、墓地に送られた時にカードをドローする強制効果。
強制効果は、プレイヤーの意思に関わらず処理しなければならない。よって、処理が終わるまではサレンダーすることは不可能。
「その《カードガンナー》の効果は、デッキの意思だ」
「デッキの、意思……?」
「そうだ。デッキは語りかけている。
神という圧倒的な力を前にしても、諦めないで欲しいと。負けることを恐れるなと! だからお前も応えてやれ!
決闘者とデッキの魂が1つとなった時、必ず奇跡は起こる!!」
「奇跡……」
そんなものが、本当に起こるというのか。
この状況を打開するカードを引き当てる確率など、0に等しいはずなのに。
アテムの叫びに導かれるように震える右手を伸ばした瞬間、その上に3つの小さな手が重ねられた。
「大丈夫です、お姉さま」
「ここあたちが付いてるよ」
「がんばって」
「……ッ!」
そうだ。自分には、こんなにも愛してくれる家族がいる。だからもう、恐れる必要など、どこにもないじゃないか。
(私は、もう逃げたりしない。だから応えてあげるわ、
「行くわよ! これが、私の! 私たちの!」
――運命のドローッ!
雷鳴とともに引き抜かれた、まさしく運命を左右するカード。彼女はそれを手札に加え――
「私は、
サレンダーではなく、デュエル続行を宣言した。そして、妹たちへと優しく語りかける。
「こころたちは、いつも私のことを世界一のスーパーデュエルアイドルだって言ってくれた。だけど、もうそんなものに興味はない」
「お、お姉さま……?」
戸惑いの表情を浮かべるこころであったが、それも一瞬だけ。にこの目は、強く輝いていたのだから。
「私が目指すのは、『宇宙一』のスーパーデュエルアイドル! 神が相手だろうと、超えてみせる!!」
立ち上がり、神に人差し指を向けるにこの瞳からは、既に『恐怖』という感情は消え去っていた。その代わりに宿るのは、神を倒し、勝利を手にしようという『執念』。
矢澤にこという1人の少女は、自らの弱さを認め新たな一歩を踏み出す。
ここからが、本当の勝負だ。
●立ち向かう勇気
「ふっ。いい目になったじゃないか。だが、俺も手加減はしないぜ! 俺のターン、ドローッ!
この瞬間、手札が増えたことにより、《オシリスの天空竜》の攻撃力は1000ポイントアップする!」
《オシリスの天空竜》
ATK4000 → ATK5000
「攻撃力、5000……!」
デュエルモンスターズにおいて、元々の攻撃力で最大値は5000ポイント。その攻撃を受けて、他のカードの補助もなしで無事でいられるモンスターはほぼ皆無。
先の攻撃でも、通常のソリッド・ヴィジョンを僅かに超える衝撃を受けたのだ。更に攻撃力が上がった今、これ以上こころたちを傍にいさせてはならない。
「こころたちは、唐沢たちのところに戻りなさい。お姉ちゃんは大丈夫だから」
「……はい! 私たちは、お姉さまの勝利を信じています! 行こう。ここあ、虎太郎」
今、にこのフィールドにモンスターはいない。それが意味することは1つ。
既に覚悟は、できている。
「行くぜ矢澤! この攻撃を、止められるものなら止めてみるがいい!」
――《オシリスの天空竜》で、プレイヤーに
天空の神は雷雲を吸い込み、力を溜めていく。少女相手に神の直接攻撃を放たんとするアテムに対して、穂乃果たちの口から悲鳴が漏れる。
だが――
「私は、手札から《ジュラゲド》の効果発動!
このカードはバトルステップの任意のタイミングで自身を手札から特殊召喚できる!
『守備表示』で特殊召喚よ!!」
《ジュラゲド》
☆4 闇属性 悪魔族 DEF1300
両手に大きなカギ爪を持つ、異形の悪魔がにことオシリスの間に出現し、彼女を守る盾となる。
だが、その守備力は攻撃力5000の神に対してはあまりにも頼りない。
「……守備表示で特殊召喚された場合、《オシリスの天空竜》の特殊効果は発動されない。
だが、《ジュラゲド》の守備力はたったの1300だ。攻撃力5000のオシリスの攻撃を受ければ瞬殺され、《神縛りの塚》の効果ダメージがお前を襲い、ライフは尽きる!」
「甘いわよ! 《ジュラゲド》は自身の効果で特殊召喚された時、プレイヤーのライフを1000ポイント回復する!」
にこ LP500 → LP1500
「1ターン限りの壁というわけか。ならば俺は、攻撃対象を《ジュラゲド》に変更して、攻撃続行だ! サンダー・フォース!!」
見た目に反して癒しの力を持つ下級悪魔も、神の前では無力。一切の抵抗もできず粉々に打ち砕かれていくしかない。
その余波は、僅かとはいえプレイヤーへと及ぶ。
「くっ……! 守備モンスターが破壊されただけで、この衝撃か……!」
通常、戦闘ダメージが発生しない場合はプレイヤーに衝撃が加わることはない。だが、神の攻撃はその常識すら打ち破る。
「更にオシリスがモンスターを戦闘破壊したことで、《神縛りの塚》の効果発動! 1000ポイントのダメージだ!」
またしても降り注ぐ雷撃。だが、にこは倒れない。
「こん、のぉ……! 倒れる、もんですか……!」
にこ LP1500 → LP500
自分の弱さを受け入れてくれた妹たちのため、絶対に目の前の
「私も、モンスターが破壊されたことで《補給部隊》の効果により1枚ドロー!」
「俺は
これによりオシリスの攻撃力は1000ポイントダウンするが、次のターンで俺の手札は再び5枚となる。もう《ジュラゲド》のような時間稼ぎは通用しないぜ」
4000という攻撃力ゆえの自信からか、
一般的に考えれば少々心許ないが、《神縛りの塚》を除去しない限り『効果破壊されない・効果対象にならない・攻撃力2000以下のモンスターを破壊・攻撃力4000』という恐るべき怪物を従えていれば、たった1枚でも納得できる。
(確かに奴の言う通り、これ以上の時間稼ぎは許してくれないでしょうね。
正直な話、奴が追加のモンスターを召喚していれば直接攻撃を受けて私は負けていた。そんなラッキーが、2度も続くとは思えない)
雨で濡れた顔を拭いながら、自らの手札を確認する。その内1枚は、現状では発動することが難しいカード。
もう1枚は通常召喚が可能な下級モンスターだが、戦闘・効果による破壊への耐性は持ち合わせていない。
(何も考えずに召喚したところで《デブリ・ドラゴン》や《カードガンナー》みたいにあっさりと破壊され………………え?)
そこで、気付く。
――なぜ彼は、《カードガンナー》を破壊したのか。
(《カードガンナー》を破壊しなければ、追加のモンスターを召喚するまでもなく、《オシリスの天空竜》の攻撃で勝負はついていた。
無闇にモンスターを破壊してドローまでさせるプレイングミスを犯すなんてこと、普通は考えられない)
よく考えてみれば、《デブリ・ドラゴン》が召喚に成功した時の効果に対して、《オシリスの天空竜》の効果が後に処理されていた。
《デブリ・ドラゴン》の蘇生効果は、召喚に成功した時に発動『できる』任意効果。オシリスの効果が同じ任意効果であるならば、チェーンは《デブリ・ドラゴン》から先に組まなければならない。
だが、実際には《オシリスの天空竜》から先にチェーンが組まれていた。
そこから考えられることは、ただ1つ。
――攻撃力を減少させる効果は『必ず発動される』強制効果であったということ。
デュエルディスクを使って《オシリスの天空竜》の効果を確認しようにも、理由は不明だがなぜか受け付けようとしない。今まさに召喚されているというのにおかしな話であるが、強制効果であるという認識は間違っていないはずだ。
(だったら、このドローで『あのカード』をドローすることができれば、勝機はある……!)
引き当てるべきカードはデッキに1枚しか入っておらず、サーチも難しいモンスター。ドローできる確率は非常に低い。
だが、それでも。
(絶対に引き当ててみせる! 私が目指すのは、宇宙一! あんな馬鹿でかいウナギにやられっぱなしで終わるわけにはいかない!!)
「私のターン――」
――ドローッ!!
その叫びは天高く、神へと届き、その巨躯をほんの一瞬だけ震わせた。
「……」
再び訪れる静寂。11人の瞳に見つめられながら、にこはドローカードを眼前へと運び――
――笑みを、浮かべた。
「私は、《デーモンの騎兵》を通常召喚!!」
《デーモンの騎兵》
☆4 闇属性 悪魔族 ATK1900
にこが叩きつけるように召喚したのは、左手に巨大な槍を携えた悪魔の兵士。
攻撃力は下級モンスターとしてはかなり高い数値であり、普通のデュエルならば戦闘での活躍も期待できることだろう。
「攻撃2000以下のモンスターを召喚したところで無駄だ!
新たにモンスターが攻撃表示で召喚されたことで、《オシリスの天空竜》の効果発動! 《デーモンの騎兵》の攻撃力を2000ポイントダウンさせ、0になった瞬間に破壊する!」
――召雷弾!!
だが、それを神は許さない。
上の口より放たれる雷撃の砲弾は《デーモンの騎兵》を飲み込み、瞬く間に消滅させた。
「……私は、《補給部隊》の効果発動。カードを1枚ドローする」
再び発動される、手札増強カード。もう慣れたと言わんばかりに淀みない所作でカードを引くにこへと、アテムは語りかける。
「残念だったな、矢澤。《補給部隊》のドローが目的だったのだろうが、これで再びお前のフィールドからモンスターは消え去った。
次のターン、今度こそオシリスの
――更に、《デーモンの騎兵》の効果発動ッ!
「何だとっ!?」
「《デーモンの騎兵》は、フィールド上でカード効果によって破壊され墓地に送られた場合、「デーモン」1体を復活させる!
今こそ蘇れ、我が魂! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」
《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》
☆8 闇属性 ドラゴン族 ATK3000
下級悪魔の力によって蘇った悪魔竜はその名の通り、いや、神の攻撃を1度受けているせいか最初に召喚された時以上に傷だらけ。
そして、その傷は更に増えることとなる。
「……考えたな。《オシリスの天空竜》の効果、召雷弾は必ず発動される強制効果。
《補給部隊》のドローだけでなく、スカーライトの蘇生も狙っていたということか。
だが、攻撃表示で特殊召喚されたことで、オシリスの効果が再び発動される!」
――召雷弾!!
雷撃の砲弾はスカーライトの角を、爪を、皮膚を、次々と削っていくが、悪魔竜は決して膝をつくことはない。
《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》
ATK3000 → ATK1000
「私は、
そして、にこ自身も
●流儀
ライフポイントが500ポイントしかない状況で、攻撃力1000となったモンスターを攻撃表示で残し、4枚の
少なくとも1枚は発動できないものだとしても、これが罠だということは誰が見ても明らかであり、当然ながらアテムも把握していた。
(攻撃を誘っているな、矢澤。だが、生半可な罠では神を倒すことはできないぜ?)
「俺のターン、ドローッ! この瞬間、《オシリスの天空竜》の攻撃力は1000ポイントアップするが、ここで俺は魔法カード《闇の量産工場》を発動! 墓地に眠る2体の通常モンスター、《暗黒騎士ガイア》と《ハッピー・ラヴァー》を手札に戻す!」
本来、手札に戻したところで活用手段が乏しい通常モンスター。だが、戻した枚数は1枚ではなく2枚。
「手札が増えたことにより、オシリスの攻撃力は更に1000ポイントアップする!」
《オシリスの天空竜》
ATK4000 → ATK5000 → ATK6000
「攻撃力、6000……!」
デュエルモンスターズにおいて、ターンプレイヤーがターン終了時まで持てる手札の限界は6枚。よって、これが《オシリスの天空竜》の最大攻撃力となる。
その力は、翼を軽く動かすだけで突風を巻き起こす。
「続けて、魔法カード《七星の宝刀》を発動! 手札のレベル7モンスター《暗黒騎士ガイア》をゲームから除外することで、カードを2枚ドローするぜ!」
ここに来て、更なるドローカード。手札枚数そのものは変化しないが、彼が持つ引きの強さをよく知る穂乃果は確信していた。
(アテムくんは、このドローで間違いなく除去カードを引き当てる。そうしたら、にこ先輩は――)
「バトル! 俺は《オシリスの天空竜》で、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を攻撃!」
しかし、彼女の予測に反して彼は新たなカードを発動せず、オシリスへと攻撃命令を下した。
(そのままバトル!? あのアテムくんが、まさか!?)
意外に思ったのは、穂乃果だけではない。
一部の例外を除いて常に最適なカードを引き当ててきた彼が、ただドローを行なっただけで攻撃宣言に移ることは滅多に無い。
まるで、運命がにこに味方をしているようではないか。
それでも《オシリスの天空竜》と《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の攻撃力の差は5000ポイント。この一撃で、勝負は決まる。
2度も神の攻撃を耐えぬいたにこであっても、3度目となれば耐えられるかどうか疑わしい。
ほんの少し前の彼女であれば、ここで諦めていただろう。
――
だが、それはもう過去の話。
神を超えるため、にこは悪魔竜と共に闘志を燃やす。
「《魂の一撃》は、モンスターの攻撃宣言時にライフを半分支払い、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動される罠カード!
対象とするモンスターは、当然スカーライト!」
にこ LP500 → LP250
『半分のライフポイント』というコストは、デュエルの序盤であれば無視できるものではない。だが今の彼女のライフポイントであれば、軽微なものとなる。
「対象モンスターの攻撃力は、私のライフポイントが4000より下回っている数値分アップする!
今、私のライフポイントは250! よって、スカーライトの攻撃力は3750ポイントアップ!」
《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》
ATK1000 → ATK4750
残りのライフポイントが少なければ少ない程効力を発揮する、まさしく魂を賭けた一撃。並のモンスターであれば簡単に葬り去る攻撃力となるが、それでも今の《オシリスの天空竜》には届かない。
「更に! 《不屈の闘志》は自分フィールドに表側モンスターが1体しかいない時、そのモンスターの攻撃力を相手フィールドに存在する最も攻撃力が低いモンスターの数値分アップする!
今、アンタのフィールドに存在するモンスターは攻撃力6000のオシリスだけ! よって――」
《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》
ATK4750 → ATK10750
「攻撃力、10750……! 神の攻撃力を上回っただと!?」
にこの覚悟は、攻撃力の差を覆したばかりか、逆にほぼ同値の差を叩きだす。
フィールド魔法《神縛りの塚》を破壊しない限り『効果対象にならず、効果破壊されない攻撃力6000のモンスター』を、真正面から迎え討とうなどと誰が考えるだろうか。
これぞまさしく、自らの魂を削った渾身の一撃。
「ならば俺は、
発動された罠カードから発せられる淡い光が、アテムを包み込んでいく。
デュエルモンスターズでは、ダメージ計算はモンスターが破壊される前に適用される。よって、この戦闘でアテムがダメージを受けることはない。
「くっ……! でも、散々私たちを傷めつけた馬鹿ウナギだけは倒させて貰う! やりなさい、スカーライト!!」
――灼熱のクリムゾン・ソウル・バーニング!!
雷撃を押し返し、降り注ぐ雨を尽く蒸発させていく灼熱の炎。今まで倒れた仲間の魂をも受け継いだその力は、神であろうと覆い尽くす。
やがて神は断末魔の叫びを上げて倒れ伏し、悪魔竜は勝利の雄叫びを上げた。
「……まさか、神が倒されるとはな。これがお前の本当の力ということか、矢澤」
ソリッド・ヴィジョンが再現したコンクリートの大半はめくれ上がり、観戦中の穂乃果たちも目と耳を覆ってしゃがみ込んでいる。
ただのソリッド・ヴィジョンで、これ程の衝撃。もしも神が消滅したことによる衝撃が現実のものとなっていたならば、この程度の被害では済まなかったに違いない。
「ふっ。覚えておきなさい……」
今、この場に立っているのは2人だけ。
この世界で初めて神を倒した誇り高き決闘者へと敬意を表するアテムへと、人差し指を突き立てて、にこは宣言する。
「やられたらやり返す! それが、宇宙一のスーパーデュエルアイドルの流儀よ!」
●次回予告という名のネタバレ
決闘者として新たな一歩を踏み出し、《オシリスの天空竜》を正面から打ち破ったにこの攻撃は激しさを増し、より強力なモンスターを呼び出してくる! これが、限界を超えた彼女の本気ってことなの!?
そんな絶体絶命のピンチが訪れた時、アテムのデッキの中に新たな力が現れる!
勝利のために、覚醒めなさい! 新たな切り札!
次回、『更なる高みへ』
デュエルスタンバイ!
ふざけるなにこ! ……ではなく、スカッとするぜ!
今回書いていて、にこが主人公にしか見えなかったぜ。
女子高生相手にオシリスでダイレクトアタックするアテムさんマジ外道。
本当なら日曜日に投稿する予定でしたが、投稿直前に『《デーモンの騎兵》で蘇生した「デーモン」はそのターンに攻撃できない』というミスに気付き修正した結果、遅れてしまいました。
実際、最後のにこのセリフも、彼女のターンにオシリスを戦闘破壊して喋らせる予定でしたが、上記のミスのせいでアテムのターンに言わせることに。
キリの良いタイミングが見つからず、文字数が16000字弱になってしまったのもそれが原因だったり。
今回、《オシリスの天空竜》は《神縛りの塚》との組み合わせで頑張ってはいましたが、やはり召雷弾が『強制効果』であることが仇となり、逆転のきっかけを与えてしまいました。
長所が同時に短所でもあるというのは、作る側としても面白いですね。
『強制効果』と『任意効果』、『時』と『場合』に関しては、遊戯王を始めたばかりの頃は非常に困惑したものです。
また、最後の《魂の一撃》&《不屈の闘志》と《スピリットバリア》に関しては、
本来ならば《魂の一撃》→《スピリットバリア》の順にチェーンが組まれます。
『ダブルオープン!』という言い回しはリアルでも使ってみたいですが、チェーンの有無の確認は必ず行おう!
にこが神を倒したことで、ようやくデュエルは終盤戦へ突入です。
次回もよろしくお願いします。
まだデュエルの描写が一切ない絵里と希のハードルが上がった気がするけど、多分気のせい。