ラブライブ!DM   作:レモンジュース

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 【ブラック・マジシャン】を組みたいけど《ティマイオスの眼》が高くて辛い。去年箱買いした時、106やデスサイスはポンポン出たのに……。これも全部ドン・サウザンドってやつのせいなんだ。



エクシーズ始動

●前回のラブライブ!

 

 私、高坂穂乃果! 高校2年生! 音ノ木坂学院を廃校から守るため、スクールアイドルになることを決意した私たち!

 そんな時、ヒトデ頭の男の子、アテムくんがいきなり現れたの!

 飛び膝蹴りを受けてもピンピンしているのに、ちょっぴり泣き虫なんだけど、悪い人じゃなさそう。でも――

 

『私は絶対に認めません!』

 

 海未ちゃんは、アテムくんが私の家に住むことも、音ノ木坂学院に通うことも反対みたい。海未ちゃんは大切な幼なじみだし、アテムくんも少し泣き虫さんなだけで優しい人。2人にはもっと仲良くなってもらいたい。

 

『おい、デュエルしろよ』

 

 アテムくんは言った。デュエルをすればお互いのことを理解できるって。

 頑張って、2人とも!

 

 

 

●アテムVS海未

 

 

 

「先攻は私が頂きます。手札からフィールド魔法――」

「何!? ドローしないのか!?」

 

「え?」

「ゑ?」

 

 2人の間に沈黙が訪れる。お互いに「何を言っているんだ」と目が語っている。

 

「あの、アテムくん。随分前のルール改訂で先攻の最初のターンはドローできなくなっているんだけど、もしかして知らないかな?」

 

 その沈黙を破ったのは、ことりだった。彼女はアテムに駆け寄ると、デュエルディスクを操作して『ルール解説アプリ』を起動し、『先攻の最初のターンは通常のドローができない』と解説されたページを表示した。

 

「先攻がドローできなくなったことで、それ以前の『先攻絶対有利』っていう常識は無くなったの。でも、最終的に先攻と後攻のどちらがいいかはデッキとの相性によるんだけどね」

「なるほど。礼を言うぜ、南。

 デュエルを止めてしまってすまなかったな、園田。続けてくれ」

 

 ことりが穂乃果のところへ戻ったことを確認すると、海未は改めて右手に持ったフィールド魔法を発動した。

 

「では改めて、私はフィールド魔法《忘却の都レミューリア》を発動します! 更に《ブリザード・ファルコン》を通常召喚!」

 

 海未がフィールド魔法ゾーンにカードを差し込むと、ソリッド・ヴィジョンが景色を一変させる。綺麗に咲き誇っていた桜並木は姿を消し、代わりにどこか物淋しい海の都が現れた。

 その上空を、氷結の隼が飛翔する。

 

「このカードはルール上《海》として扱われ、フィールドに存在する限り、全ての水属性モンスターの攻撃力は200ポイント上昇します」

 

 《ブリザード・ファルコン》

 ☆4 水属性 鳥獣族 ATK1500 → ATK1700

 

「1ターン目から高い攻撃力を持つモンスターを召喚したか。やるな、園田」

 

(攻撃力1700はそれほど高くはないはずですが……。まあいいでしょう)

 

「驚くのはまだ早いですよ! 私は、《ブリザード・ファルコン》の効果発動! フィールドに存在する限り1度だけ、このカードの攻撃力が元々の攻撃力よりも高い場合に相手に1500ポイントのダメージを与えます。

 今、《ブリザード・ファルコン》の攻撃力はレミューリアの効果により200ポイント上昇しています。よって、受けて頂きます! 1500ポイントのダメージを!」

「バカな!? いきなり1500ポイントものダメージだと!? ぐぁっ……!」

 

 《ブリザード・ファルコン》が蒼き翼をはためかせ、氷雪が吹き荒れる。その冷気がアテムの身体を貫いた。

 

アテム LP4000 → LP2500

 

『出た! 海未ちゃんのマジックコンボ!』

 

 穂乃果とことりが海未のプレイングを賞賛している。彼女たちの言う通り、アテムも海未のコンボに感心していた。1ターン目から高めの攻撃力を持つモンスターを呼び出し、なおかつ1500ポイントもの大ダメージ。海未が得意気な表情を浮かべていることから、これが彼女の基本戦術なのだろう。

 

「流石だと言いたいが、甘いぜ園田! 俺は手札から《冥府の使者ゴーズ》のモンスター効果を発動するぜ!」

「っ! よりにもよってゴーズ!?」

「自分フィールドにカードが存在しない場合にダメージを受けた時、こいつは手札から特殊召喚することができる! 来い、ゴーズ!」

 

 《冥府の使者ゴーズ》

 ☆7 闇属性 悪魔族 ATK2700

 

 痛みを媒介として現れる、冥府の使者。いつか冥界に戻るというアテムにピッタリのカードなのかもしれない。

 

「自身のカード効果で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類によって異なる効果を発動するぜ。今俺が受けたのは効果ダメージ。その場合、相手にも同じ数値のダメージを与える。よって、お前にも1500ポイントのダメージだ!」

 

 ゴーズの頭上に漆黒の異空間が現れ、アテムが受けた冷気と同じ衝撃が海未へと跳ね返る。まさか先攻1ターン目から相手に反撃を受けるとは思わなかったのだろう。彼女はよろめき、尻もちをついてしまった。

 

海未 LP4000 → LP2500

 

「焦るなよ、まだ勝負は始まったばかりだぜ」

 

 先制攻撃を受けたにも関わらず、ペースを乱さず即座に反撃に移れる余裕をアテムは見せつける。マスタールール3を知らなかったことはともかく、今まで多くのデュエルをしてきたという彼の発言は嘘ではないらしい。

 

「……そのようですね。私はカードを2枚伏せ、ターンを終了します。さあ、次は貴方のターンですよ」

「行くぜ、俺のターン! ドロー!!」

 

 一流の決闘者は、その一挙手一投足に魂が宿り、見る者を魅了し、時に戦慄させるという。それはアテムとて例外ではない。これまで数々の死闘を繰り広げてきた彼のドローは全くの無駄が無く、美しく、まるでバレエやフィギュアスケートを見ているかのようだったと後に穂乃果たちは語る。

 

「俺は手札を1枚捨てることで、《THE トリッキー》を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 《THE トリッキー》

 ☆5 風属性 魔法使い族 ATK2000

 

 顔と胸部に『?』の模様が描かれた魔法使い。上級モンスターだが、手札1枚をコストにして手軽に特殊召喚できる中々に便利なモンスターである。

 

(ゴーズとトリッキーの攻撃力の合計は4700。この2体の攻撃が園田のライフを削りきれる。だが、奴のフィールドには2枚の伏せ(リバース)カード……。

 トリッキーの特殊召喚に対して何も発動しなかったということは、あれはモンスターの特殊召喚に反応する《激流葬》や《奈落の落とし穴》ではなく、ミラーフォースのように、俺のモンスターの攻撃に反応するものなのか?

 とはいえ、今の俺の手札ではあの伏せカードを除去することはできない。ここは臆さず攻める!)

 

「バトルだ! 俺は《冥府の使者ゴーズ》で、《ブリザード・ファルコン》を攻撃!」

 

 ゴーズが大剣を振り上げ、《ブリザード・ファルコン》へと迫る。一瞬の間、伏せカードを警戒したアテムだが、海未はどちらのカードも発動する素振りを見せない。

 氷結の鳥は真っ二つに引き裂かれ、その衝撃が海未を襲う。

 

「くっ……!」

 

海未 LP2500 → LP1500

 

「ど、どうしようことりちゃん! どっちも応援したいけど、このままじゃ海未ちゃんのライフがあっという間に0になっちゃうよ! 後攻1キルだよ!」

「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん。海未ちゃんの実力はこんなものじゃないもの。頑張って、海未ちゃん!」

 

 流石は幼なじみと言うべきなのか、デュエルが始まれば声援は海未の方へと向いてしまう。ちょっぴり泣きたくなったアテムであったが、これで攻撃の手を緩めるのは真の決闘者として恥ずべきこと。

 

「続けて、《THE トリッキー》でプレイヤーへダイレクトアタック! この攻撃が通れば俺の勝ちだ! さあ、どうする園田!」

 

 その身に纏ったマントをなびかせながらトリッキーの攻撃が海未へと迫る。と、そこでようやく彼女は2枚の伏せカードのうち1枚を発動した。

 

「永続罠発動! 《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》! このカードが存在する限り、全てのレベル4以上のモンスターの攻撃を封じます!」

「このタイミングでグラヴィティ・バインドだと!?」

 

 『超重力』の圧力を受け、トリッキーの攻撃は封じられ、その膝をつく。隣に立つゴーズも同様だ。

 高レベルの相手モンスターの攻撃を防ぎ、自分は低レベルのモンスターの攻撃や効果ダメージで勝利を狙うコンボに使用されるこの永続罠の強さは、これまで何度か目にすることがあった。

 

(だが、なぜ奴はこのタイミングで発動を? ゴーズの攻撃に対して発動していれば1000ポイントものダメージを受けずに済んだ。何を狙って……っ! そうか、もう1枚の伏せカードは……!)

 

「気付いたようですね。さあ、これで貴方のモンスターは攻撃できません。どうしますか?」

「くっ! 俺はカードを1枚伏せる。……ターンエンドだ」

 

 海未の狙いに気づいたものの、それを防ぐ手段がアテムには無い。

 彼女は好機と見るやいなや、余裕があるかのようにカードをドローした。

 

「では、私のターンですね。カードドロー。

 既に準備は整いました。穂乃果のため、学院の平穏を守るために、私の切り札で貴方に引導を渡してさしあげます!」

 

 突如、彼女を纏う雰囲気が一変する。

 直前までの姿を清水(せいすい)の如き清らかさに例えるならば、今の彼女の姿は荒れ狂う激流。

 幼なじみである穂乃果やことりは勿論のこと、アテムでさえも戦慄する程だ。

 

「まずは貴方が予想しているカードを発動させて頂きます。私は永続罠《強化蘇生》を発動します! このカードは私の墓地に存在するレベル4以下のモンスターを、レベルを1つ、攻撃力を100ポイントアップさせて特殊召喚します。蘇りなさい、《ブリザード・ファルコン》!」

 

 《ブリザード・ファルコン》

 ☆4→☆5 ATK1500 → ATK1800

 

「やはり、蘇生カード!」

 

 アテムの予想通り、海未が発動したのはモンスター蘇生のカード。『フィールドに存在する限り1度だけ』と定められているモンスターの効果を再び使用するには、一旦フィールドから離す必要がある。そのために彼女はあえて《ブリザード・ファルコン》の戦闘破壊を許したのだ。まさに、肉を切らせて骨を断つ。落ち着いた見た目に反して思い切った戦術を展開する海未に対し、アテムは感心した。

 

「感心する暇など与えませんよ。私は《ブリザード・ファルコン》の効果を再び発動!」

「ぐぁっ……!」

 

アテム LP2500 → LP1000

 

 1500ポイントものダメージが再びアテムを襲う。これで残りライフは1000ポイント。同時に、アテムのライフポイントを示す数字の色が白から赤へと変わる。いよいよ危険領域に突入したということか。

 

(確かに俺の残りライフは少ないが、《ブリザード・ファルコン》の現在の攻撃力は1800。トリッキーよりも低い。それ以前に、奴が発動したグラヴィティ・バインドの効果でレベル4以上のモンスターの攻撃は封じられている。

 このまま効果ダメージで決着をつけるつもりなのか……?)

 

 2ターン連続で効果ダメージを受けたことで、洗脳された友人とのデュエルが頭をよぎった。あの時もアテムは《ファイヤー・ボール》の効果ダメージで苦しめられたことを覚えている。

 だが、海未が次に行った行動は、彼の予想を裏切るものだった。

 

「続けて私はレベル5の《サイバー・シャーク》を通常召喚! このカードは自分フィールドに水属性モンスターが存在する時、リリース無しで召喚することができます!」

 

《サイバー・シャーク》

 ☆5 水属性 魚族 ATK2100 → ATK2300

 

「グラヴィティ・バインドがあるにも関わらず上級モンスターを召喚しただと!?」

 

(それにしても『リリース』という単語……、状況から察するに『生け贄』のことか。知らない間に言い回しも変わっているらしいぜ)

 

 自分が知らない用語をなんとか自己解決したアテムだが、やはり彼女の狙いが読めない。《サイバー・シャーク》は自身の召喚条件以外に効果を持たないらしく、このままでは高い攻撃力を持つモンスターを出しただけ。グラヴィティ・バインドの効果範囲に入るモンスターを展開することに何の意味があるというのか。

 

「これで仕上げです。《忘却の都レミューリア》の効果発動! 私のフィールドに存在する全ての水属性モンスターのレベルを、ターンの終わりまでその数だけアップします。

 今、私のフィールドに存在する水属性モンスターは2体。よって、《ブリザード・ファルコン》と《サイバー・シャーク》のレベルはそれぞれ5から7になります!」

 

 《ブリザード・ファルコン》 ☆5→☆7

 《サイバー・シャーク》 ☆5→☆7

 

(更にレベルを上げた? 園田はいったい何を狙っているんだ? 奴のフィールドにはレベル7のモンスターが2体。まさか、遊星君が使ったシンクロ召喚のように、俺が知らない召喚方法があるというのか……?)

 

 数多くのデュエルを経験してきたアテムの勘が、警鐘を鳴らす。彼女はきっと何かを仕掛けてくると。

 

「これで条件は整いました! 私は、レベル7となった《ブリザード・ファルコン》と《サイバー・シャーク》で――」

 

 

 

 

 

 ――オーバーレイ!!

 

 

 

 

 

「何!?」

 

 2体のモンスターが水色の球体となって上空へと飛び上がる。

 

「2体の水属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 それは、海未の眼前に出現した光の渦に吸い込まれていく。未だかつて見たことのない光景に、アテムは思わず後退る。

 

「深海の覇者よ! その大いなる力を以て、歯向かう者に裁きの鉄槌を下しなさい!」

 

 

 

 

 

 ――エクシーズ召喚!!

 

 

 

 

 

「現れよ、ランク7! 《水精鱗-ガイオアビス》!!」

 

 《水精鱗-ガイオアビス》

 ★7 水属性 水族 ATK2800 → ATK3000 ORU2

 

「エクシーズ、召喚だと……!?」

 

 かつて共に戦った決闘者、不動遊星が使用した『シンクロ召喚』と同じく、目の前で行われた未知の召喚法、『エクシーズ召喚』――。

 巨大な槍を携える大男が放つ威光が、アテムを貫いた。

 

「もしかしてアテムくん、エクシーズ召喚を見るのは初めて?」

「……あぁ。すまないが説明してくれないか、南」

 

 リアクションの大きさが気になったのか、見かねたことりが助け舟を出してくれた。

 

 ことり曰くエクシーズ召喚とは――

 

 ・『基本的に』同じレベルのモンスターを2体以上、決められた数を素材として、エクストラデッキからエクシーズモンスターを特殊召喚する召喚方法のこと。

 ・素材となったカードはオーバーレイ・ユニットと呼ばれ、エクシーズモンスターの下に置かれる。なお、ソリッド・ヴィジョンではエクシーズモンスターの周りを浮遊する球体として表される。

 ・エクシーズモンスターは『レベル』の代わりに『ランク』を持ち、レベルに関する効果を受けない。

 

「――簡単に言えばこんな感じかな」

「だいたいわかったぜ。ちなみにエクストラデッキというのは、融合デッキのことなのか?」

「え? うん、そうだけど……」

 

(『融合デッキ』を『エクストラデッキ』って呼ぶようになったのはもう何年も前のことなんだけど、いくらなんでもデュエルの知識の差が大きすぎるような……)

 

 これはことりだけでなく、穂乃果も海未も考えた。優れたデュエルの腕を持つと言っていたが、それは何年も前の話で、今の環境やルールについてはかなりの遅れが出ているのではないかと。

 

「アテムさん、貴方には少し同情しますが、もはや関係ありません。このターンで決着がつくのですから!

 バトルです! 私は、《水精鱗-ガイオアビス》で《THE トリッキー》を攻撃!

 改めてご説明しますが、エクシーズモンスターが持つ星は『レベル』ではなく『ランク』。つまり、グラヴィティ・バインドの効果を受けずに攻撃ができます!」

 

 ガイオアビスが振り上げた槍が、トリッキーへと迫る。2体の攻撃力の差はちょうど1000ポイント。アテムの残りライフと同値である。つまり――

 

「この攻撃が決まれば海未ちゃんの勝ちだ!」

 

(海未ちゃん、なんだかんだでノリノリだなぁ。これはシャッターチャンス!)

 

 勝利を確信する海未。

 もはやどちらを応援しているのかわからない穂乃果。

 デュエルディスクのカメラ機能を機動して海未を撮影することり。

 

 

 

 だが、3人は気付かない。アテムの目はまだ死んでいないことに。

 

 

 

「魂は砕けはしない! 俺は墓地から《超電磁タートル》の効果を発動! 墓地のこのカードを除外することで、バトルフェイズを強制終了するぜ!」

「《超電磁タートル》!? そんなカード、いつの間に……!」

 

 磁石のN極とS極が描かれた亀が、ガイオアビスの攻撃を弾き返す。まるで同極同士の反発のように。

 

「あったのさ、一度だけ。俺が《超電磁タートル》を墓地に送るチャンスが!」

「……なるほど、《THE トリッキー》を特殊召喚した時の手札コストですか。姑息な手を……!」

「なんとでも言うがいいさ。俺は何が起ころうとも、デュエルを諦めることなど絶対にしない!」

 

『!』

 

 強い決意を籠めた瞳に、3人はその身を震わせる。

 

 ――何があっても諦めない心。

 

 それは、今まさに音ノ木坂学院を救うためスクールアイドルの結成を決意した穂乃果と同じもの。

 本人である穂乃果はもちろんのこと、長い年月を過ごした海未やことりも、考えてしまう。

 

 ――この人ならば、私たちの力になってくれるのではないか。

 

(っ! 何を考えているんですか私は! あの人は素性がわからないだけでなく、穂乃果に破廉恥な行為までしたのです! 認めるわけにはいきません!)

 

「私はバトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へと移ります。

 そして、魔法カード《マジック・プランター》を発動! このカードは、自分フィールドに表側表示で存在する永続罠をコストにすることで、2枚のカードをドローします! 私は《強化蘇生》を墓地に送ります!」

 

 新たに2枚のカードを手札に加えた海未。それを視認した彼女は、笑みを浮かべる。まるで勝利を確信したかのように。

 

(場に無意味に残っていた《強化蘇生》をどかすだけでなく手札の増強まで行うとは、やはり只者ではない。

 だが、園田はいったい何を引き当てたんだ?)

 

「フフフ、ここまでよく耐え抜きましたが、それもここまでです。私はまず、装備魔法《エクシーズ・ユニット》を発動します!」

 

 2枚のカードをディスクに読み込ませた瞬間、まず1つ目の魔法カード、《エクシーズ・ユニット》は光の球体となってガイオアビスの周りを浮遊する。

 

「《エクシーズ・ユニット》は、エクシーズモンスター専用の装備魔法。装備モンスターの攻撃力はランク1つにつき200ポイントアップします。

 ガイオアビスのランクは7。よって――」

 

 《水精鱗-ガイオアビス》

 ATK3000 → ATK4400

 

「攻撃力4400だと!?」

 

 かの《青眼の究極竜》とほぼ同値の攻撃力。より強力な威圧感を放つ覇者を目の前にして戦意を保っていられる決闘者は、果たしてどれだけ存在するのであろうか。

 

「そして、ガイオアビスはオーバーレイ・ユニットを持つ限り、レベル5以上のモンスターの攻撃を封じます。また、1ターンに1度オーバーレイ・ユニットを使うことで、自身よりも攻撃力が低い相手フィールドのモンスター効果をターンの終わりまで無効にします。

 つまり、生半可なモンスターではガイオアビスを倒すことはできません」

 

(確かに奴の言う通り、俺のデッキのモンスターではガイオアビスの攻撃力を上回ることはできない。

 より早く倒すには未だデッキに眠るリバースモンスター《執念深き老魔術師》を引き当てるしかない。

 あのモンスターはリバースした時、相手フィールドのモンスターを破壊する効果がある。園田の説明通りならガイオアビスの効果はダメージステップで発動することはできない。

 老魔術師を引き当て、裏守備表示で攻撃を誘うことができれば、あるいは――)

 

 諦めるつもりなど全くないが、三幻神に匹敵する攻撃力を持つ覇者の前では、守備表示で耐え凌ぐしか術はない。だが、そんなアテムの思考を海未は打ち砕く。

 

「モンスターを守備表示にして耐え凌ぐつもりでしょうが、そうはいきません! 更に私は永続魔法《波動キャノン》を発動します!」

「何!? 《波動キャノン》だと!?」

 

(まずい! 《波動キャノン》は、発動後に経過したスタンバイフェイズ1回につき、1000ポイント分の威力が増幅するバーンカード。

 今、俺の残りライフはちょうど1000ポイント。次に園田のターンを迎えてしまったら俺は確実に負ける!

 だが……!)

 

 モンスターを壁にしてターンを凌ぐことを封じられ、次のターンでの勝利を余儀なくされたアテム。だが、4400という破格の攻撃力を持つモンスターを前にして、何ができるというのか。

 まさに絶体絶命の危機に陥った彼は、廃校が決まった音ノ木坂学院のよう。

 そのような状況を作ってしまった海未は罪悪感を抱くが、それも一瞬だけ。

 

「これでわかったでしょう、もう貴方に勝機は残されていないのです。ですからサレンダーを…………ッ!?」

 

 してください。

 

 その言葉を、最後まで言い切ることが彼女にはできなかった。なぜなら、

 

「アテムくんの顔、笑ってる……?」

「この状況で、どうして……?」

 

 彼は笑っていたのだ。確定した敗北に対して自棄になったようには見えない。むしろ、この絶体絶命の状況を楽しんでいる(・・・・・・)かのようだった。

 

「なぜです!? ここまで追い詰められていて、なぜ貴方は笑っていられるのですか!?」

 

 海未は知っている。どんな困難に直面しても諦めず、笑ってなんとかしてみせようとするあの表情は、大切な幼なじみと同じものだということを。

 もしかしたら彼女は気づいていたのかもしれない、彼の本質に。

 だからこそ、海未は激昂する。彼をすぐに認めることができなかった自分が、穂乃果やことりに取り残されているようで。

 

「そんなもの、簡単だ」

 

 

 

 ――決闘者だからだ!

 

 

 

『!』

 

「確かに今俺は絶体絶命の崖っぷちに追い込まれている。だが、デュエルは最後の最後まで諦めなかった者が勝利を掴む。

 聞いたぜ、お前たちはこの音ノ木坂学院を廃校から救うために動き出そうとしているってことを。それと同じさ。

 海未、お前たちが諦めずに戦い続ければ、必ず廃校を阻止できる! だから俺もこのデュエルで証明してやるぜ!」

 

 

 

 ――その、刹那。

 

 

 

「え、何これ!?」

「これは、一体……!」

「アテムくんのエクストラデッキが光りだした(・・・・・)!?」

 

 突如、強い光を放つアテムのエクストラデッキ。とてもじゃないが理解が追いつかない現象に、3人は困惑する。

 いや、3人ではない。彼女たちほどではないが、アテムも驚愕していた。

 

(なんだ? 俺の融合デッキに入っているカードは、《竜騎士ガイア》に《有翼幻獣キマイラ》、《超魔導剣士-ブラック・パラディン》。そして《アルカナ ナイトジョーカー》の4枚。どれも強力な融合モンスターだが、この状況では出す意味がないはず……ッ!?)

 

 怪訝に思い、アテムは自身のエクストラデッキを確認する。そこには――

 

 

 

 存在しないはずの、5枚目のカードが出現していた。

 

 

 

(しかも、このカードは……。そうか、これが俺の新しい力。

 こいつを呼び出すために必要なカードは、あと1枚。海馬、あの時お前に譲り受けたあのカード、引き当ててみせるぜ!)

 

「行くぜ! ラストターン! 俺は――」

 

 

 

 ――魔法カード《デビルズ・サンクチュアリ》をドローッ!!

 

 

 

「なっ!? ドローする前にカード名を言い当てた!?」

 

 カードをドローし、確認すらせずに発動した魔法カード。それは宣言通りのもの。発動されたカードは、海未の姿を写しとったモンスターを生み出した。

 

「すごい……」

「アテムくんには、好きなカードを引き当てる力があるってことなの!?」

 

 「メタルデビル・トークン」

 ☆1 闇属性 悪魔族 ATK0

 

「《デビルズ・サンクチュアリ》は、自分フィールドに攻守0のトークンを生み出す。このトークンは攻撃ができない代わりに、プレイヤーへのダメージを相手へと跳ね返す」

「ですが、それは私がそのトークンを攻撃しなければ良いだけの話。《波動キャノン》で貴方のライフポイントは0になるのですから、全くの無意味ではないですか」

 

 確かに海未の言う通り、いかなる攻撃も跳ね返す防御能力を有しているといっても、それは戦闘に限ってのみ。効果ダメージには対応していない。だが、

 

「誰がトークンを壁にするだなんて言った? トークンは上級モンスターの生け贄に使用できないものが多いが、こいつは違う。

 俺は、場の《THE トリッキー》と『メタルデビル・トークン』を生け贄に捧げ、《バスター・ブレイダー》を召喚!」

 

 《バスター・ブレイダー》

 ☆7 地属性 戦士族 ATK2600

 

 2体のモンスターを贄として召喚されたのは、竜破壊の剣士、《バスター・ブレイダー》。アテムのデッキの中でも屈指の攻撃力を持つ屈強なモンスターだ。

 

「何を呼び出すかと思えば、《バスター・ブレイダー》ですか。そのモンスターの効果は、相手プレイヤーのフィールドと墓地のドラゴン族モンスター1体につき、攻撃力が500ポイント上昇するというもの。

 しかし、私のフィールドにも墓地にもドラゴン族モンスターは1体もいません。そもそも、グラヴィティ・バインドとガイオアビスの二重の拘束により、攻撃すらできないモンスターをアドバンス召喚するなんて、やはりただのハッタリ――」

 

 

 

 

 

 ――それはどうかな?

 

 

 

 

 

「気付かないか、園田。今、俺のフィールドに並び立つ2体のモンスターに」

「気付く? 何の役にも立たないレベル7の最上級モンスターが並んでいるだけでは……ッ! まさか!」

「そうだ! そのまさかだ! 俺は、レベル7の《冥府の使者ゴーズ》と《バスター・ブレイダー》で――」

 

 

 

 

 

 ――オーバーレイ!

 

 

 

 

 

 2体の最上級モンスターがそれぞれ紫と茶の球体となり、アテムの眼前に現れた光の渦に吸い込まれて行く。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 ありえない。

 それが、海未たち3人の率直な感想であった。彼はこのデュエルで初めてこの召喚法を知ったはずではないのか。だというのに、

 

「幻想を彷徨いし魂よ、今こそ秘められし魔術を解き放て! エクシーズ召喚!」

 

 なぜ、エクシーズモンスターを持っていて、召喚までできるというのか。

 

 

 

「降臨せよ、ランク7! 《幻想の黒魔導師》!!」

 

 

 

 《幻想の黒魔導師》

 ★7 闇属性 魔法使い族 ATK2500 ORU2

 

 現れたのは、見たことも聞いたこともないエクシーズモンスター。

 漆黒の衣を纏い、光り輝く杖を振るう魔法使い。

 全てを射抜くかのような眼光と、神秘的なその姿に、誰もが目を離せなかった。

 

「これこそが、俺の思いに応え生み出された新たな力。こいつが、俺たちの未来を指し示す!

 行くぜ! オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、《幻想の黒魔導師》の効果発動!」

 

 《幻想の黒魔導師》

 ORU 2→1

 

「くっ! させません! その効果にチェーンして、私はガイオアビスの効果を発動! 《エクシーズ・ユニット》の効果を適用せず、オーバーレイ・ユニットを1つ使用します!」

 

 《水精鱗-ガイオアビス》

 ORU 2→1

 

「1ターンに1度、ターンの終わりまでガイオアビスより攻撃力が低い相手フィールド上のモンスター効果を全て無効とします!」

 

「海未ちゃんのガイオアビスの攻撃力は、レミューリアと《エクシーズ・ユニット》の効果で4400!」

「対するアテムくんのエクシーズモンスターの攻撃力は2500! ガイオアビスより低いから効果は無効になる!」

 

(いきなりのエクシーズ召喚には驚きましたが、ガイオアビスの攻撃力と効果の前ではどんなエクシーズモンスターの効果も無意味。これで――)

 

 

 

 ――この瞬間、伏せ(リバース)カード発動ッ!!

 

 

 

『!』

 

(このタイミングで!? まさか、カウンター罠《天罰》!?)

 

 《天罰》とは、手札を1枚捨てることで効果モンスターの効果の発動を無効にして破壊するカウンター罠。今、アテムの手札は1枚であるため、発動条件は満たしている。黒魔導師の効果はわからないが、ガイオアビスを破壊されれば攻撃力2500の直接攻撃を受け、確実に負ける。

 

「俺が発動するのは――」

 

 おそらくこれが勝負の分かれ目。

 誰かが息を呑む音が辺りに響く。

 伏せられていたカード、それは……

 

「罠カード《力の集約》!!」

「なっ!? ここで《力の集約》!?」

 

 《天罰》どころか、誰も予想していなかったカード。

 

「? ねえことりちゃん、私あのカード初めて見るんだけど、どんな効果なの? ……ことりちゃん?」

 

 これまで何年もデュエルをしてきたにも関わらず見たことのないカードの発動に、穂乃果は隣に立つことりに対して質問する。だが、当のことりは目を見開き硬直していた。

 

「ありえない……」

「え?」

「《力の集約》は、フィールド上の全ての装備カードを正しい対象となる別のモンスターに装備し直す罠。穂乃果ちゃん、これがどういうことだかわかる?」

「う、うん。今フィールドにある装備魔法はガイオアビスに装備された《エクシーズ・ユニット》1枚だけ。正しい対象は『エクシーズモンスター』だから、それが黒魔導師に……あっ!」

 

 ここで穂乃果も気付く、その異常さに。

 

「俺が対象とするモンスターは当然《幻想の黒魔導師》! フィールドに唯一存在する装備魔法《エクシーズ・ユニット》の装備対象をガイオアビスから黒魔導師に変更するぜ!!」

「《幻想の黒魔導師》のランクは7。攻撃力は2500。ということは……」

「そうだ! ガイオアビスの攻撃力は1400ポイントダウンし、同じ数値分、黒魔導師の攻撃力がアップする!」

 

 《水精鱗-ガイオアビス》

 ATK4400 → ATK3000

 《幻想の黒魔導師》

 ATK2500 → ATK3900

 

 《力の集約》は2ターン前、ガイオアビスがエクシーズ召喚される前から伏せられていた。《エクシーズ・ユニット》も直前のターンに《マジック・プランター》の効果でドローされ、装備されたカード。

 つまり、伏せた時には全く役に立たないカードが、今この時において完璧な役割を果たしたということ。

 

「攻撃力が逆転したことで、ガイオアビスの効果は不発となり、《幻想の黒魔導師》の効果は通常通り適用される!

 黒魔導師の効果により、デッキから魔法使い族の通常モンスターを特殊召喚するぜ! 来い、我が最強の下僕(しもべ)!」

 

 アテムのデッキから、1枚のカードが抜き取られる。それは、彼のデュエルを支え続けてきた最も信頼できるカードであり、アテムそのものと言っても過言ではないだろう。

 

 

 

 ――《ブラック・マジシャン》!!

 

 

 

 《ブラック・マジシャン》

 ☆7 闇属性 魔法使い族 ATK2500

 

「またしても見たことのないカードを……!」

「か、かっこいい!」

「これが、アテムくんのエースモンスター……」

 

 《幻想の黒魔導師》と瓜二つの黒き魔術師。闇属性でありながら、どことなく清廉さを醸し出す貴公子風なその姿は、アテムに『最強の下僕』と称されるのも納得できる。

 

「しかし、そのモンスターのレベルは7! ガイオアビスとグラヴィティ・バインドの効果で攻撃はできません!

 《幻想の黒魔導師》の攻撃でガイオアビスが破壊されても私のライフが600残るのですから、どの道次のターンに《波動キャノン》の効果で私の勝ちです!!」

 

 再度の勝利宣言。しかし、それはもう『自信』ではなく『焦り』に変わっていた。アテムが醸し出す気迫に、海未は自分でも気付かないうちに少しずつ後退っていたのだ。

 

「いいや、それは違うな。俺は言ったはずだぜ、『ラストターン』だってな。俺の手札に残った最後の1枚、これで俺の勝利は確定する!

 魔法発動、《受け継がれる力》!!」

「《受け継がれる力》!?」

「《ブラック・マジシャン》を墓地に送り、《幻想の黒魔導師》を対象として効果発動! このカードは、対象モンスターの攻撃力を墓地に送ったモンスターの攻撃力分アップさせる!

 黒き魔術師の誇り高き魂よ! その力を黒き魔導師へ与えよ!」

 

 《ブラック・マジシャン》の姿が光の粒子となって舞い踊る。それは《幻想の黒魔導師》へ吸収され、更なる力を与える。

 

 《幻想の黒魔導師》

 ATK3900 → ATK6400

 

「こ、攻撃力6400!?」

「行くぜ園田! これが勝利へのラストアタックだ! 《幻想の黒魔導師》で《水精鱗-ガイオアビス》を攻撃!」

 

 

 

 ――黒・幻・想・魔・導(ブラック・ファンタズム・マジック)!!

 

 

 

 《幻想の黒魔導師》の杖から放たれた漆黒の奔流が、ガイオアビスを覆い尽くし、消滅させる。

 発生するダメージは3400。海未の残りライフを削り切るのに、十分な数値であった。

 

海未 LP1500 → LP0

 

 

 

●新たな一歩

 

 

 

「もう一度デュエルしてください!!」

 

 アテムの勝利で終わったデュエル。しかし、海未は納得ができなかった。

 

「見たことも聞いたこともないカードを使うばかりか、都合よく伏せられていた《力の集約》なんてマイナーカードで勝敗が決するなんて、認められません!」

「海未ちゃん……」

「ことりも見たでしょう! イカサマのようなドロー。エクシーズを知らないにも関わらず繰り出したエクシーズモンスター。これのどこに納得しろと言うのです!」

「そ、それは……」

 

 今まで見たこともない悲痛な声。ことりにもその気持ちがわかるため、はっきりと言及することができない。

 一方、デュエルの勝者であるアテムは無言を貫いたまま。彼はわかっているのだ。ここで再戦を受けたところで意味は無いことを。

 

 訪れる沈黙。それを打ち破るのは……

 

「それは違うよ。海未ちゃん、ことりちゃん」

「穂乃果……?」

「アテムくんはね、私たちに教えてくれたんだよ」

 

 

 

 ――『絶対に諦めなければ奇跡は起こせる』んだって。

 

 

 

『!』

 

「確かに、アテムくんのデュエルは今でも信じられないことの連続だった。でもね、あの《力の集約》は今の私たちと同じなんだよ」

「同じ?」

「うん。私も今さっき初めて見た《力の集約》は1枚では全く役に立たないちっぽけなカード。それは、スクールアイドルを結成した今の私たちと変わらない。

 でもね、海未ちゃんが《エクシーズ・ユニット》を発動して、アテムくんがエクシーズモンスターを召喚したからこそ、逆転のキーカードになった。これはきっと、アテムくんが最後の最後まで諦めなかったから起こせた奇跡なんだよ。

 私ね、音ノ木坂が大好き。廃校なんて絶対にさせたくない。廃校を阻止するために、海未ちゃんとことりちゃんと一緒に戦い続けたい! アテムくんがデュエルを最後まで諦めなかったように!」

 

 いつになく饒舌に語る穂乃果の表情は、スクールアイドルを結成しようと言い出した時以上に真剣で、輝いて見えた。

 

「……まったく、穂乃果にここまで言わせてくれる人を認めないだなんて、これでは私が悪役みたいじゃないですか」

「海未ちゃん! それじゃあ……!」

「不本意ですが、認めましょう。アテムさんのことを」

「やったぁ! ありがとう、海未ちゃん!」

 

 感極まった穂乃果が、海未に抱きついた。「離してください!」と叫ぶ海未の声を無視して、穂乃果は締め付けを強める。ことりは目にうっすらと涙を浮かべながら写真を撮影していた。

 

「高坂、園田、南。お前たちの活動に、俺も協力させてくれないか」

 

『え?』

 

「高坂の家に世話になり、同じ学校に通う以上、俺も音ノ木坂学院を守るために戦いたい」

「アテムくん……ありがとう!」

 

 固い握手を交わすアテムと穂乃果。新たな一歩の始まりを告げる2人のやり取りを、海未とことりは暖かく見守っていた。

 

「ああ! 俺たちのアイドル活動はこれからだ!!」

 

「え、アテムくんもアイドルになるの?」

 

「ゑ?」

『え?』

 

 ……。

 

「歌って踊るのは私たちで、アテムくんは私たちの活動をサポートしてくれればそれで……」

「貴方が踊ったらキャラが濃すぎて、その……」

「ごめん、無理♪」

 

 

 

「AIBOOOOOOOOOOO!!」

 

 

 

「うわ、また泣いた!?」

「穂乃果、なんとかしてください!」

「えぇ!? そんなの無理だよ! ことりちゃん、お願い!」

「穂乃果ちゃん言ったよね。『諦めなければ奇跡は起こせる』って。ね?」

「し、しまった!?」

 

 

 

 その後、泣き叫ぶヒトデ頭の男と、その横で口論を続ける3人の生徒を不審に思った他の生徒が学院へ通報。4人纏めて説教を受ける羽目になった。

 

 穂乃果たち3人は思った。

 

『私たちは相当面倒くさい人を仲間にしてしまったのではないか』と。

 

 

 

 

 

●おまけ

 

 

 

 説教後、帰り道。

 

「ところでアテムくん」

「どうした高坂」

「その格好で家まで歩くの?」

 

 ※半裸に近いコスプレ同然の格好

 

「もちろんだぜ!」

 

 この後滅茶苦茶通報された。

 




 Q.結局アテムの戸籍とかはどうするの?
 A.知らん、そんなことは俺の管轄外だ。 

 おかしいな。デュエル構成はWord2ページ分だったのに本文で10000字を超えていた。もっとコンパクトに纏める努力をすべきかも。

 次の投稿ではもう少しターン数を長く、かつ文量は短くできるようにしたいなぁ。


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