もうすっかり忘れられてる可能性もありますが、皆様のLチキです!
さぁーこれから少し模擬戦までの1週間のお話をしたいと思います。
セシリア編が終わるのは一体いつなのか!私にも分かりません!!
では本編どうぞ~
翌朝、IS学園2日目。
怒涛の入学初日を終えた俺、織斑一夏は学園の食堂で朝食をとっていた。
そうすると、制服に身を包んだりパジャマ姿だったりする女生徒の注目を自然と集めてしまう。
昨日の事でこうなる事は大体予想できたし覚悟もしていたがそれでもきつい物がある。
ただ、今日は昨日ほど人の視線は気にならない。
別に、俺がそんなものを気にしないとか、慣れてしまったとかいう理由じゃない。生憎と俺は俺の周りにいるトンでも人間たちと違い普通の高校1年生だ。
そんな1日、2日で変化なんてあるわけないだろ。
理由は至って簡単だ。それは、見ず知らずの人の視線よりも自分と同じ部屋に住む幼馴染の少女のふくれっ面の方が気なっている、それだけの理由だ。
白くふっくらとお米が盛られている茶碗をおき、首を傾ける。
俺の座る席から3個ほど椅子をはさみ座る少女、篠ノ乃箒。
彼女は不機嫌そうに目を細めながら黙々とおかずを口に運んでいる。
「おい箒、そんなに怒るなよ・・・」
「別に怒っていない。何度も同じことを言わせるな」
「はぁ・・・」
と、声をかけても一瞬こちらをチラリと見たきり淡々と言いながら食事を進める。
怒っていないと言っているが、その雰囲気、その口調、そして一緒に食堂に来て一緒の物を頼んでいるのに微妙に開いたこの席の距離が彼女の信条をありありと示している。
なぜこんなにも彼女の機嫌が悪いのかと言うと、それは昨日の夜までさかのぼる。
俺は千冬姉から受け取った鞄を持ち寮の自分の部屋まで歩いていた。いつの間にか姿が消えていた兄や、道中やたら後ろをついてくる生徒達の列なんかがあったが何事もなく部屋の前までこれた。
始めは女子と同じ部屋という事に躊躇したがこのまま廊下にいて騒がれるのも厄介と思い、意を決して部屋の中に入る。
部屋は寮と言うよりはどこかのホテル並みに綺麗でおお~とつい声が出たほどだ。
部屋の中を見渡すとルームメイトと思われる人の荷物があり、どこにいるのかと再度部屋を見渡す。
「誰かいるのか?・・・ああ、同室になった者か」
人がいない事に一瞬あれ?と思ったが後ろから声が聞こえそっちの方かと意識を向ける。
でも、いきなりだったもので別にやましい事は何もしていないがついつい、取り乱してしまった。
そうしていると扉の開く音と共に声の主の姿が露わになる。
「これから1年よろしく頼むぞ、こんな恰好ですまないなシャワーを浴びていた。私は篠ノ乃箒――――」
「‥‥」
そう、露わになってしまった。
箒は自分で言っていた通りシャワーを浴びており、まだ濡れた髪をタオルで拭きながらやってきた。
バスタオル1枚の姿で・・・・・・
「い、一夏・・・」
「お、おう・・・」
黒くしなやかな長い髪はほんのりと湿り、
白い肌から蒸気が上り、頬を赤らめる。
バスタオル1枚で隠された体のラインが妙に色っぽく女性の物でついつい見とれてしまった。
お互いが目を見開き呆然と状況把握に努める事数秒。いち早く正気を取り戻したのは箒だった。
「み、見るな!」
「わ、悪いッ」
体を覆い隠す様に両手で肩を抱く箒。
そんな箒の姿と声で俺もようやく正気を取り戻し腰を回転さえ後ろを向く。
とっさの事でなんだか変な格好になってしまったが、そんな事を気にする余裕はなかった。
それから俺が箒と同じ部屋だと分かるや否や木刀を持ち出し襲い掛かられ、どうにか扉から外に逃げたが、扉を貫通させ再度襲われたり。
どうにか部屋に入れてもらい詳しい事情を話したらまた木刀で襲われ、どうにか白羽撮りでその場はしのいだが、その後なんやかんやあり変態呼ばわりされたり、ついうっかり彼女のブラを手にしてしまい木刀を投げられたりした。
その結果、箒は一晩たった今でもこの調子だ。
‥‥‥‥まあ、最後のは俺が悪いけど。
「はぁ~・・・どうしたらいいんだろうな?」
「知らん」
不意に箒とは逆の方に顔を向け話す。
突然話を振られた彼は俺の方を見もせず冷たく簡潔に言いきった。
うん、いつも通りの八兄だな。
「そんな事言わずに相談乗ってよ・・・可愛い弟が困ってるんだぜ?」
自分で言っておいてなんだが可愛い弟ってなんだろ?
どこか茶化すようにイタズラ気味の顔でそういうと、八兄は一瞬俺の方を見ると心底人を小馬鹿にするような笑いをして食事に戻る。
‥‥流石に酷いと思う。
そんないつも通りの話をしていると、いつの間にか箒はいなかった。
彼は気が付かなかった。
篠ノ乃箒が八幡を見るその目は酷く不快な物を見る様な眼であった事を。
彼は知らなかった。
いつも通りと思っている兄は昨日の内に軽く死にかけ、今でも金髪縦ロールのどこかのお嬢様が目を光らせている事を。
織斑一夏は予想もしなかった。
そんな少年少女達の姿を離れた席からのほほんとした雰囲気をした少女が注視していたことを。
彼は何も分からなかった。
――――――――――――――――――――――
午後の授業も終わり今は昼休み。
ボッチ歴30年以上を誇る俺が人が多い食堂やましてや教室なんかで昼飯を食う事がないというのは大体予想できるだろう。
島に面した学園のちょうど端の方。海風がそよぎどこか懐かしい昇降口のベストプレイス。
人の通りがほとんどなく静かに食事をするには最適な場所だ。
入学2日目でこの場所を見つけたのは俺にしては珍しくついていると言うほかない。
購買で買ってきた焼きそばパンを口に放り込み空を見上げる。遠くから聞こえる少女達の声に波風が運ぶ磯の香りが心を落ち着かせる。
落ち着いた心で思考するのは、昨日の出来事。
昨日追いかけられながら見たガン○ムみたいなビーム兵器、あれがセシリア・オルコットの持つ専用機とやらなのだろう。
なんかビットのような物が空中に浮いてた。
その先端から発射された蒼い閃光に、壊れる扉、黒く焼け焦げた壁や廊下。
何とも出鱈目な光景だ。というか良く俺は生きていると我ながら感心してしまう。
悪運が強いのか、それともオルコットが加減をしたのか。
まあそれはいい。重要なのはあのビーム兵器に一夏がどう対処するかだ。
と言っても、結局あの後一晩中命がけの追いかけっこをするはめになってしまいオルコットのデータとか調べられなかったので情報不足なんだがな。
そんな事を考えていると背後に人の気配を感じ軽いステップで身をひるがえす。
ドスッとさっきまで俺が座っていたところに何十枚もの紙の束が落とされた。
「何か用かオルコット?」
そこにはつい昨日俺を射殺そうとした張本人、セシリア・オルコットが不機嫌そうな顔で立っていた。
「フン、約束のデータですわ。ありがたく受け取りなさい」
約束と言うのは恐らくあの時言った公式戦や彼女のISのデータ(非公開は除く)の事だろう。
一番上に置いてある紙にも何やら難しいそうな文字列が並び、蒼色のISに乗ったオルコットの画像が添付されている。
昨日の今日でデータをまとめ上げるとはなかなかに勤勉な事で。
だが、それをわざわざ紙にコピーしてきたところと俺の脳天に落とそうとしたところに明確な悪意を感じる。
その上、難なくかわし平然と話しかけた俺の事を忌々しく睨みつける所からは悪意より殺意紛いの感情が見え隠れしているな。
まあ、自分が
どうでもいいがな。
散々な暴挙に出た彼女に普通なら文句の一つでも言うのが当たり前なのだろう。
間違いなく殺されかけたし。
だが、だからこそあえて俺は至って普通に、何事もなかったように、お前の行動なんてとるに足らないとでも言うように普通に話を続ける。
「それはそれは、わざわざすまないな。どうだお礼に飴でも舐めるか?」
「・・・結構ですわ。貴方のような変態のほどこしなど例え死んでもいりません!」
一応言うがこいつのいう変態というのは実在の人物、団体と俺には一切関係していない。
むしろ俺は被害者なのだが、このお嬢さんはそういう主張を取り扱っていないらしく話が通用しない。
これも一種の外国語の隔たりと言う奴なのだろう。違うな。
「そうか、今なら割安なんだが、残念だ」
「お金を取るつもりでしたの!?」
「今なら出血大サービスで10ペリカ引きだぞ」
「聞いたこともありませんはそんな通貨!」
ちなみに1ペリカは日本円で1銭(0.1円)だな。
「フ・・・まさかペリカを知らないとはな」
「ぐぬぬ・・・」
所詮お前はその程度か、とでも言いたげな笑みを向けると面白いように唸る唸る。
まあ、漫画の話だし外国人が知らない事に何ら不思議ではない。むしろ日本人でも知っている奴の方がマニアックな部類に入る話なんだけどな。
知らない奴は『ざわ・・・ざわ・・・、地下帝国』でググれ。
「まあ、元から飴なんぞ持ってないけどな」
「張った押しますわよ!!」
ひとしきり怒鳴り散らしたオルコットは頭に米印をいくつか作り大きな足取りでこの場を後にする。
だから、お前のそれは貴族としていいのかよ。