魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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憑神

戦いが始まって、しばらく

明久やクビアとの戦いは、熾烈を極めていた

クビアは最初の一撃以降、魔法が効かなかった

そして明久は、蒼炎を使った防御が突破出来なかった

 

「前より、厚い!!」

 

「多分、戦闘データから強化してあるんだよっ!」

 

フェイトの言葉に答えながら、なのはは砲撃を放った

だがその一撃を、明久は容易く回避

追尾式の蒼炎弾を、十数発放った

それを見たなのはは、即座に同数の魔力弾を形成

放った

二つの魔力弾は空中でぶつかり、凄まじい爆発を起こした

だが、爆煙の中から数発の蒼炎弾が出てきた

どうやら、迎撃に失敗したようだ

しかし、その蒼炎弾は

 

「スフィアプロテクト!」

 

シャマルが展開した四角形の障壁により、防がれた

 

「ありがとう、シャマル!」

 

「大丈夫よ! 来るわ!!」

 

フェイトは感謝の言葉を言うが、シャマルは魔力糸を張って構えた

その魔力糸を切り裂きながら、明久が突っ込んできた

狙いは、なのは

 

「させない!!」

 

そう思ったフェイトは、横から鎌を振り下ろした

だが次の瞬間、その鎌は三股の短剣で防がれた

 

「つっ!?」

 

大剣を右手に持ちながら、左手に短剣を持っていることに驚き、フェイトは僅かに固まった

だが、その隙を突かれてフェイトは蹴り飛ばされた

 

「ぐぅ!?」

 

「フェイトちゃん! つぁ!?」

 

驚いたなのはだったが、眼前に明久が迫り、大剣を振り上げていることに気付き、間一髪で障壁を展開

防いだ

 

「つっ……一撃が、重いっ!!」

 

明久の一撃の威力は高く、なのは自慢の障壁にヒビが入った

それを見たなのはは

 

「バースト!!」

 

と障壁を、爆発させた

これは、緊急時に使うプロテクションバーストだ

相手が近接戦闘型だと、結構重宝する魔法である

その爆発を至近距離で受けた明久は、大きく吹き飛ばされた

そこに、シャマルの魔力糸が絡み

 

「せぇ……の!」

 

とシャマルは、思いきり振り回した

振り回した先には、太い木があった

シャマルは容赦なく、その木に明久を叩きつけた

 

(ごめんなさい、明久君! 後で、治療してあげるから!!)

 

シャマルは心中で謝りながら、更に明久を振り回した

だが途中で、明久は魔力糸から脱出

右手を掲げた

その直後、明久の周囲に数多の木槍が出現

それを、高速で射出した

それを見たシャマルは、その射線上に一気に障壁を展開した

だが木槍が触れた瞬間、容易く貫通された

 

「いけない! 障壁貫通が付与されてるわ! 全力で回避して!!」

 

シャマルの言葉を聞いて、なのはとフェイトは全力で回避

しかし、外れた木槍が着弾した場所には巨大なクレーターが出来た

当たったら、無事では済まなかったのは明白である

眼下では、直撃はしていなかったが、幾多の管理局員や騎士達が倒れていた

それを見たフェイトは

 

「総員、この場所から出来るだけ離れなさい! ここは、私達が引き受けます!!」

 

と声を張り上げた

 

「り、了解!」

 

一人が返答し、近くの仲間と一緒に倒れた仲間達の救助に向かった

そしてフェイトは、明久に向き直り

 

「止めるよ、明久……!」

 

その決意と共に、全身に魔力を走らせた

明久を倒すために、切り札を発動させた

 

「スケィス……私の体を、使って!!」

 

スケィスの技能を、自身に宿らせた

次の瞬間、明久の目前にフェイトが迫っていた

そしてフェイトは、鎌を振り下ろした

その一撃は、明久が構えた短剣で防がれたが、次の瞬間には蹴りが明久の腹に叩き込まれていた

それが、フェイトの最後の切り札

憑神である

 

「行クヨ……明久……」

 

黒く染まった目で、明久を睨んだ

明久が態勢立て直した直後、フェイトは再び肉薄

怒濤の連撃を繰り出した

その速さには、なのはとシャマルですら目視できなかった

 

「は、速すぎるっ!」

 

「これが、憑神……!」

 

二人は、憑神のことはフェイトから聞いていた

その力のことも

 

「アアアアアァァァァ!!」

 

フェイトは雄叫びを上げながら、鎌を振り続けた

その速度はもはや、残像すら残すほどだ

その速度に、明久の防御すら追い付かなかった

気づけば、被弾が増えていき

 

「貰ッタ!!」

 

明久が持っていた双剣は、弾かれていた

そしてフェイトは

 

(ごめん、明久! 致命傷は避けるから!!)

 

と、両足を狙った

だがその時、明久の体が動いて、胴体に直撃した

 

「ナッ!?」

 

フェイトが驚いていると、明久の顔から機械式の仮面が落ちた

その下から見えたのは、悲しげな表情だった

 

「ごめんね、フェイト……辛い役割を強いる……」

 

「もしかして……最初から……?」

 

フェイトが涙を流していると、明久は血を吐き出し

 

「これで……条件は揃った……後は……お願い……」

 

と言って、消えた


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