魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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優勢

「よし、自爆システムも止まった……」

 

と汗を拭ったのは、コンソールから手を離したフェイトである

スカリエッティの地上アジトを攻撃し、陥落させたフェイト達だったが、その直後に自爆システムが作動したのだ

普通だったら脱出すれば済む話だが、この地上アジトには、スカリエッティの実験で亡くなった人達の遺体やまだ生きている人達が居た

フェイトはその遺体や、生きている人達を遺族や親族の下に返したいと思ったのだ

だからバルディッシュの演算能力と、シャーリーに協力してもらい、その自爆システムを止めたのである

 

「ありがとうね、バルディッシュ、シャーリー」

 

『いえいえ』

 

《お気になさらず》

 

フェイトの感謝の言葉に、シャーリーとバルディッシュはそう答えた

そして、壁際で拘束されているスカリエッティに振り向き

 

「貴方達の企みも、ここまでです。貴方の仲間達は、私の仲間達が続々と捕縛しています」

 

と宣告した

すると、スカリエッティは笑ってから

 

「確かに……私の娘達は捕まってきているようだね……今、クァットロも捕縛寸前らしい」

 

と言った

それを聞いたフェイトは、片眉を上げた

スカリエッティには、詳細な戦況を教えていない筈だと

だがその時、それまで髪に隠れていたらしい小型の通信機が右耳に装着されていることに気付いた

 

「いつの間に!?」

 

フェイトはそれを奪うと、地面に叩き付けた

しかし、スカリエッティは笑いながら

 

「ゆりかごはどうやら止められるようだが、RA……リバース・アバター計画は、止められんよ!!」

 

と言った

 

「リバース・アバター計画!?」

 

フェイトが驚いていた同時刻、ゆりかご内部

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

主機関部屋前の廊下を、傷だらけのヴィータが歩いていた

その傷からは、激戦だったことが伺える

しかし、やはり歴然の猛者なだけはある

全て、致命傷は避けていた

そして、ヒビだらけになったアイゼンを見て

 

「アイゼン……自己修復、行けるか?」

 

と問い掛けた

すると、アイゼンは

 

《行けます!》

 

と答えて、カートリッジを一発ロードした

アイゼンやレヴァンティンはアームドデバイスであり、バルディッシュのようなインテリジェントデバイスではない

しかし、管理局に勤めて約10年

その間に、幾度となく改修を繰り返してきた

それにより、幾つか前には無かった機能を有した

まず一つ目は、カートリッジの装填方法の変更

以前は一発ずつ手込め式だったが、弾倉式に変更された

これにより、装弾数の増加による経戦能力の向上と弾切れ後の装弾のタイムロスの減少

これは、戦闘面に大きなプラスである

そして何より、デバイスの修復機能である

カートリッジを一発使用して、デバイスの損傷を修復するのである

これは、ヴィータの力が向上し続ける力にアイゼンの強度が追い付かないことからの改善策だった

勿論だが、強度の向上も行い続けている

これにより、ヴィータは以前より長い時間戦えるようになっていた

それらにより、ヴィータは主機関部屋前に到着した

自身の怪我は、ポケットの中から包帯を取り出して、軽く止血を行い対処

そして、巨大なドアを見て

 

「ぜぇりゃああ!!」

 

と喚声を上げながら、アイゼンを叩き付けた

その一撃で、ドアは粉砕

ヴィータは、中に入った

そして見えたのは、巨大な四角形の駆動炉だった

それからは、凄まじい魔力が漏れてきている

 

「こいつか……」

 

それが間違いなく駆動炉だと確信し、ヴィータはアイゼンを握り直した

そして、キッと駆動炉を睨んで

 

「ぶっ壊す!!」

 

と飛びかかったのだった

再び場所は変わり、ゆりかごの中間層の管制室

そこでは、クァットロが焦っていた

 

「エース・オブ・エースやあのチビ騎士が強いことは知ってたけど……!!」

 

そう言ったクァットロの前には、コンソールの他に幾つかのウィンドウが開いていた

そのうちの二つは、ゆりかご内部の戦いが映されていた

片方は先ほどのヴィータだが、もう片方はなのはが映されていた

なのはが戦っているのは、クァットロが精神操作で操っているヴィヴィオだ

しかし、その姿は変わっている

ヴィヴィオは幼い見た目から、なのはと同い年位の見た目になっている

これは、ヴィヴィオに施された強化施術も関係しているが、一番大きいのは聖王システムだろう

聖王システムというのは、適合率の高い人物を核にして、死ぬまで戦わせるというシステムである

その適合率が高ければ高いほど、戦う聖王の戦能力が高くなる

そしてヴィヴィオは、最後の聖王

オリヴィエのクローンである

オリヴィエの適合率は、歴代聖王家の中でも最高峰と言われていた

その戦能力は、文句なしのオーバーSランク

クァットロの計算では、高濃度AMF下ではヴィヴィオの圧勝の筈だった

しかし現実は、違った

なのはは、研ぎ澄まされた戦技でヴィヴィオを押していた

 

「こんな筈では!?」

 

そしてクァットロは、あるミスをしていた

なのはの戦い方が、時間稼ぎだと気づかなかったのだ

気づいていれば、脱出することを考えていたかもしれない

ゆりかごの陥落が、近づいていた

 


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