魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士 作：京勇樹
なのは達がゆりかごに突入した頃、時空管理局地上本部のある一室
そこでは、二人の男が質疑応答していた
一人は、時空管理局地上本部の中将
レジアス・ゲイズ
そしてもう一人は、そのレジアス・ゲイズの嘗ての友人
地上本部の武装隊でも、以前は切り札の一人だった男
名前は、ゼスト・グランガイツ
「答えろ、レジアス……嘗ての約束は、嘘だったのか……」
ゼストはそう言うと、懐から一枚の写真を取り出して、レジアスの机の上に投げた
それは、二人が若い時に撮った写真だった
互いに、正義と友情を誓った日に撮った写真
ゼストは現場で
レジアスは上層部で
互いに信じ、誓った正義の為に全力を尽くすと約束した
だがある日から、すれ違いが起き始めた
その矢先に、ゼストは一度死んだ
スカリエッティのアジトの一つに、部隊を率いて突入
中で戦闘機人と交戦、チンクに手傷を負わせたが、部下を庇って負傷
そして、全滅した
その後、そのスカリエッティの手により偽りの命が与えられて、蘇った
部下の娘たるルーテシアと引き合わされて、行動を共にするように言われた
せめて、そのルーテシアを守ろうと
そしてルーテシアを守りつつ、今日という日を迎えた
「俺達が誓った正義は、何処に行った……」
ゼストの静かな問い掛けに、レジアスは写真に触れて、答えようとした
だが
「がっ！？」
そんなレジアスの胸元から、鉤爪が出てきた
「レジアス！？」
その凶行を行ったのは、レジアスの背後に居た女性下士官だった
「父さん！？」
予想だにしなかった光景に、オーリスは目を見開きながら駆け寄ろうとした
だがオーリスは、その女性下士官に蹴り飛ばされた
「貴様、何者だ！？」
その蹴りからゼストは、その女性下士官が普通の事務官ではないと看破
デバイスを構えた
すると、まるで水鏡のように女性下士官の姿が揺れた
そして現れたのは、ピッチリとしたボディスーツを着た一人の女だった
首もとには、Ⅱという数字が彫られた金属プレートがあった
「戦闘機人か……！」
「初めまして……騎士ゼスト……私は、戦闘機人の二番目……ドゥーエと申します」
ゼストが睨むと、女
ドゥーエは恭しく、頭を下げた
そして、まるでゴミを見るかのような目付きで、レジアスを見下して
「私はドクターより、邪魔な者達と、最早役に立たない者を始末しに参りました」
と答えた
邪魔な者達というのは、時空管理局の最高意思決定機関
最高評議会である
最高評議会というのは、時空管理局の創設に携わった三人だ
だがその正体は、脳髄だ
時空管理局は、百年以上の歴史を誇る機関である
つまりは、その三人も百歳以上ということになる
その三人は、その過程の中で肉体を捨てた
そして脳髄だけで生きながらも、裏から時空管理局を操ってきた
それは、《自分達が居なければ、次元世界は平和にならない》と思い込んでいたからだ
嘗ては三人も、平和と正義の為に立ち上がったのだろう
しかし、長い年月がそんな彼等を変えてしまった
長い年月の間に、彼等は自分達が居なければ、次元世界は平和にならないと思うようになり、その為に非合法な手段を取るようになってしまっていた
まさしく、手段と目的が入れ替わってしまったのだ
そんな三人だが、自分達の命が尽き掛けてることに気づいた
だから、人造魔導師計画を使って、過去に実在した一人の研究者を生み出した
開発コード、
与えた名前は、ジェイル・スカリエッティ
そのスカリエッティにより、人造魔導師計画の完成度はより高まり、何よりも戦闘機人計画の技術的難関を、スカリエッティは解決した
だがその頃から、スカリエッティは最高評議会の指示を無視し始めた
その対策を決めようとした矢先に、地上本部襲撃事件が発生
そして今日、ドゥーエによって殺されてしまったのだった
「騎士ゼスト……貴方も、ドクターの指示に従っていただきます」
ドゥーエはそう言って、鉤爪をレジアスから抜いた
レジアスは、血を吐き出しながら
「ゼスト……俺は……俺は……」
と言って手を伸ばしたが、そこでこと切れた
それを認めるいたゼストは、俯いて
「俺は、何時も遅かった……遅すぎた……！」
と呟いた
その時、廊下を走っていたシグナムは魔力の高ぶりを感じた
「急がなくては！」
シグナムはそう言うと、走る速度を上げたのだった