魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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再起する者

はやての指示を受けて、六課は出撃

まずフォワード陣が、アルトが操縦するヘリに乗って出撃

その後に、隊長陣

並びに、ダークマテリアルズが出撃

フォワード陣は、進攻してくるだろう戦闘機人達の迎撃及び、ギンガの保護

隊長陣はゆりかごに突入し、内部に居るだろうヴィヴィオの保護及び、ゆりかごの無力化

そしてダークマテリアルズは、機動遊撃戦闘

ダークマテリアルズの真骨頂は、少数精鋭による圧倒的突破力

それを一ヶ所に縫いとどめるというのは、愚策でしかない

ならば、敢えてダークマテリアルズには行動目的を設定せずに、自由に戦域を駆けさせた方が良いと判断したのである

 

『ごめん、皆! かなり荒く行くから、何かに掴まってて!!』

 

と言ったのは、ヘリを操縦しているアルトである

そのヘリは、十数機のガジェットに追われていた

 

『このヘリには、迎撃用の武装なんて無いの! 機動で振り切るしか!!』

 

アルトはそう言って、ヘリをビルの合間を進ませた

アルトが操縦するヘリだが、本来は降下した局員の援護

並びに、今のように攻撃してくる敵ように、魔法による迎撃用武装がある機種だった

しかし、元々は故障していたのを回してもらった機体であり、その迎撃用魔法武装が壊れていた

アルトも出撃までには直そうと尽力したが、部品が足りなかったのだ

六課隊舎の陥落で、予備部品の悉くが喪失

そのためにアルトは、苦渋の決断で迎撃用魔法武装をオミット

その分の魔力を、機動の向上に回したのである

その甲斐あり、今は機動性でガジェットを離している

だが数が多かったのと、場所が悪かった

ガジェットはアームを使い、ヘリには出来ない旋回をしてジワジワと迫ってきていた

 

『ヤバッ!?』

 

しかも気付けば、前に回り込んでいるガジェットすら居た

アルトは何とか離れようとしたが、そのガジェットは既に、ミサイルランチャーを展開

発射態勢に入っていた

それを見たアルトは、最悪の時のためにカーゴブロックをパージさせるスイッチに手を伸ばした

その時

 

『お前らは、そのまま進め!!』

 

と声が聞こえて、そのガジェットが魔力弾の直撃を受けて撃破された

その声を聞いて、アルトは

 

『ヴァイス陸曹!』

 

と嬉しそうな声を出した

そう、先の攻撃は彼女にとって憧れの人物

ヴァイス・グランセニックの狙撃だった

それは、少し時を遡る

今から少し前

聖王教会病院の一室

 

「ぐっ……あ……」

 

「起きたか、ヴァイス……」

 

目覚めたヴァイスに、狼形態で居たザフィーラが声を掛けた

するとヴァイスは、痛みを堪えながらも体を起こして

 

「あれから……どんくらい経ちました……?」

 

とザフィーラに問い掛けた

するとザフィーラは

 

「あれから、一週間経った」

 

と答えた

それを聞いたヴァイスは、悔しそうに

 

「一週間も!? 俺は何をしてたんだ……!」

 

と言った

するとザフィーラは、ドアの方に向かった

それを見たヴァイスが

 

「旦那、どこに……」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、ザフィーラは

 

「戦場だ……」

 

と答えた

それを聞いて、ヴァイスは

 

「だけど、旦那もまだ怪我が!?」

 

と慌てた

それは、間近で見たから気付けた

ザフィーラはまだ、怪我が治りきっていない

 

「……だが、主や仲間達が待っている……」

 

ザフィーラはそう言って、部屋から退室

それと入れ替わるように、一人の少女が入ってきた

肩辺りで切り揃えた茶髪に、左目に眼帯を着けた少女

その少女を見て、ヴァイスは驚いた

その少女は、ヴァイスの妹

ラグナ・グランセニックだった

 

「ラグナ……お前、なんで……」

 

ヴァイスの耳には、起きた時から避難勧告の放送が聞こえている

魔導師でもないラグナは、本来だったらかなり先に避難誘導される筈だ

 

「はやてさんにお願いして、後回しにしてもらったの……お兄ちゃんに、言いたいことがあったから……」

 

ラグナの言葉を聞いて、ヴァイスは内心で舌打ちした

余計なことを、と

だが、ラグナはそれに気付かず、眼帯を外して

 

「ほら、お兄ちゃん……左目、大分治ってきたんだ……今はまだ、ボンヤリとしか見えないけどね……もう少ししたら、普通に見えるようになるって、お医者さんから言われたよ……」

 

と言った

左目の怪我

その理由は、数年前に起きた立て籠り事件

その時の人質がラグナで、狙撃班の一人がヴァイスだった

しかしヴァイスは、緊張からか誤射

ラグナの左目は、失明してしまったのだ

そして、その誤射が理由となりヴァイスは人を撃てなくなってしまったのだ

 

「ねえ、お兄ちゃん……私ね、昔のお兄ちゃんが好きだったんだよ? ……百発百中の鷹の目って……」

 

鷹の目

それが、狙撃手だった時のヴァイスの異名だった

 

「六課の皆さん……今、頑張ってるよ……お兄ちゃん……だから……」

 

ラグナはそう言いながら、涙を流した

それを見たヴァイスは、ラグナの頭を撫でてから

 

「ラグナ……悪いが、部屋から出てくれないか?」

 

と言った

それを聞いたラグナは、不思議そうに首を傾げた

するとヴァイスは、傍らの机に置かれていた制服を見ながら

 

「着替えて、仲間の所に行きたいんだ」

 

と言った

それを聞いて、ラグナは

 

「うん!」

 

と嬉しそうに、部屋から出た

そして数分後、ヴァイスは制服に着替えて出てきて

 

「避難するんだぞ、ラグナ!」

 

と言って、病院から出た

その後は、近くの武装隊の基地に行き、ヘリを借りて駆け付けたのである

鷹の目が再起した瞬間だった


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