魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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出撃と悔恨

それが起きたのは、地上本部の襲撃から約一週間後だった

なんと、スカリエッティから襲撃する旨の予告があったのだ

それも、映像が始まってからきっかり一時間後と

余りにも、舐めた行為と言えるだろう

しかし、そうするだけの余裕もあった

まず、ガジェットの数

はっきり言って、本局の戦力を合わせても、倍処の話しではない

余りにも、絶望的な差だった

そして重要なのは、地上本部の指揮が混乱していることだった

将官の逃亡と、それを皮切りに起きた反時空管理局勢力による襲撃

それらが重なり、時空管理局は有史以来の危機を迎えていた

 

「ほんまに、舐めたことをしてくれるやないか……」

 

それは、スカリエッティの演説を聞いたはやての言葉だった

その言葉と表情からは、怒りしか感じられなかった

それは、ミッド全域に放送が始められたと同時に、六課に繋げられたスカリエッティからの通信が原因だった

その通信内容は、概ね同じだった

たった一つだけ違ったとしたら、スカリエッティの声と同時に聞こえた声

否、悲鳴だった

その悲鳴は、ヴィヴィオのものだった

ヴィヴィオは泣きながら、なのはを呼んでいた

幼い女の子の悲鳴を聞かされて、大人しくしている六課ではない

 

「聞いてたな、皆……あの外道に、私達の怒りをお見舞いしてやりぃや!!」

 

『はいっ!!』

 

はやての号令に、六課全員は斉唱で応えた

問題は、スカリエッティの本拠地の位置

だがそれは、六課ロングアーチが特定していた

その理由は、スカリエッティからの通信

それを逆探知したのである

とはいえ、それも紙一重だった

スカリエッティが組んだだろうセキュリティを突破し、発信地を特定

それを見たはやては、本局と聖王教会に打診して、共同で潰す算段を取った

あれほどのことをされて、タダで済ませる気は毛頭無い

 

「私達をコケにしたこと、後悔させたるわ……」

 

はやてはそう言って、艦長席から立ち上がり

 

「機動六課、出撃や!!」

 

と宣言した

それを受けて、本局のドックからアースラは出港

地上に降下を開始した

その頃、地上本部のある一室

そこでは、一人の将官がジッと腕組みしていた

その将官の名は、レジアス・ゲイズ

スカリエッティとの関与が発覚し、指揮権が剥奪されて、今は自身の執務室で推移を見守っていた

 

「オーリス……お前がここに居る必要は無い……中央指揮室に行きなさい」

 

レジアスがそう言うと、眼鏡を掛けた女性士官

オーリス・ゲイズが

 

「今の私は、父さんの部下ではありません……ですから、その指示に従う必要もありません」

 

と返した

そうこの二人は、実の親子だった

そしてオーリスは、父レジアスの秘書の立場にあった

そしてそのオーリスも、スカリエッティとの関与の疑いによりレジアスと共に、レジアスの執務室で事態の推移を見守っていた

事実、オーリスはレジアスがスカリエッティと繋がっていて、幾らかの資金提供や研究設備の譲渡をしていたことを知っている

だから、大人しく待機しているのだ

そんなオーリスの言葉に、レジアスは

 

「頑固だな……誰に似た?」

 

と苦笑を浮かべた

すると、オーリスは

 

「間違いなく、父さんです」

 

と断言した

それを聞いたレジアスは

 

「確かにな……」

 

と同意しながら、椅子に深々と身を預けた

そうして、窓の方に椅子を回しつつ、懐から一枚の古い写真を取り出した

その写真には、今より若いレジアスと片手に槍を持った長身の男が写っていた

その男の名は、ゼスト・グランガイツ

レジアスの数少ない友の男である

 

「ゼスト……」

 

レジアスはゼストの名前を言いながら、写真を撫でた

ゼストとレジアスは、古くからの親友だった

そして二人は時空管理局に入局した際、ある約束をした

それは、《二人で管理世界を平和にする》というものだった

そして、魔法適性があったゼストは、地上本部の武装隊へ

魔法適性が無かったレジアスが、高級将官の道へと進んだ

そしてゼストは、その腕前から武装隊のエースとなった

だがレジアスは、上層部の権謀術数に揉まれて、何時しかその約束を忘れてしまっていた

そうして気づけば、スカリエッティと繋がっていた

自分の案たる、戦闘機人や人工魔導師の優秀さを測るために

そして今から数年前、ゼストの隊がスカリエッティを調査していることを知った

だからレジアスは、ゼストに

 

『スカリエッティのことは、他の部隊に任せろ。お前は、別の案件を調査しろ』

 

と言った

それは、ゼストを案じたというのもある

だが真の目的は、スカリエッティを捕まえさせないためである

レジアスの指示を聞いたゼストは

 

『なぜだ! こいつは放っておけば、管理世界の脅威になる!』

 

と反論した

しかしレジアスは、それに対しての説明を何もせずにいた

それから少しした時、レジアスにある一報が届いた

それは、ゼストの隊が発見したスカリエッティのアジトの一つの調査に向かい、全滅したということだった

それを聞いたレジアスは、そのタイミングでゼストとの約束を思い出した

そして、死んだと思っていたゼストに謝り続けていたのだ

約束を忘れていたことを

しかし先週に起きた、地上本部襲撃事件

その時に、ゼストの姿が確認された

しかも、地上本部に向かってきていた

それを知ったレジアスは、後悔から来る心労で倒れたのだ

 

「お前は……ワシを恨んでいるのか……ゼスト……」

 

レジアスはそう言いながら、空を見上げたのだった


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