魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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一人の狙撃手

「ふう……」

 

と溜め息を吐いたのは、ヘリに背中を預けた男性

ヴァイス・グランセニックだった

彼は意見陳述会が終わるまで、ヘリポートで待機していた

暇潰しに、星の数を数えていた

その時

 

「お疲れさまです、ヴァイス陸曹」

 

とティアナが現れた

 

「おー、お疲れ」

 

ヴァイスが片手を上げると、ティアナは

 

「ヴァイス陸曹に、お裾分けです」

 

と言って、ビニール袋を掲げた

その中には、缶コーヒーやサンドイッチ等が入っている

それを見たヴァイスは

 

「おぉ、サンキュー」

 

と言って、ティアナから袋を受け取った

するとティアナは、そんなヴァイスの隣で缶コーヒーを開けて

 

「ヴァイス陸曹……一つ、聞いていいですか?」

 

とヴァイスに疑問を投げ掛けた

するとヴァイスは、缶コーヒーを飲みながら

 

「なんだ?」

 

と首を傾げた

するとティアナは、少し躊躇ってから

 

「ヴァイス陸曹は昔、武装隊に居たんですよね……それも、腕利きの狙撃手だったと、シグナム副隊長に聞きました」

 

と言った

それを聞いたヴァイスは、内心で

 

(シグナムの姐さん……余計なことを)

 

と毒づいた

そして、またコーヒーを飲んでから

 

「まあな……ド新人に説教垂れる位ならな……」

 

と言った

しかし、ティアナは

 

「エースだったと聞きましたが……」

 

と呟いた

するとヴァイスは

 

「エースなもんか……肝心な時に外しちまうような、バカ野郎さ……」

 

と自虐的に言った

それは、今から約二年程前だった

その当時ヴァイスは、武装隊でも名を馳せた狙撃手だった

しかしある日、ある違法魔導師がヴァイスの妹

ラグナ・グランセニックを人質に、ある建物に立て籠った

その犯人の狙撃を、ヴァイスが所属していた部隊がすることになった

ヴァイス本人としては、普段通りのつもりだった

しかし、やはり妹が人質になっていることで動揺していたのだろう

ヴァイスは、その狙撃を外してしまった

ヴァイスが撃った魔力弾は、ラグナの右目に命中

ラグナはそれにより、失明してしまった

その後犯人は、別の狙撃手により撃たれた

だがヴァイスは、その一件が原因で武装隊から除隊

ヘリパイロットになっていた

 

「まあ、今となってはヘリ好きが高じてヘリパイロットさ……」

 

ヴァイスはそう言って、コーヒーを飲んだ

するとティアナが

 

「ですが……」

 

と何か言いたそうにした

そんなティアナの頭を、ヴァイスは軽く小突いて

 

「俺のことなんざいいから、お前は自分の任務に戻れ」

 

と言った

それを聞いたティアナは、納得いかない様子だったが

 

「それでは、警備任務に戻ります」

 

と言って、ヘリポートから去った

それを見送ったヴァイスは

 

「全部、過去のことさ……そうだろ、ストームレイダー」

 

と愛機の名前を呼んだ

すると、ヘリでありヴァイスの嘗てのデバイスは

 

《その通りです》

 

と答えた

意見陳述会は、まだ始まったばかりだった


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