魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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目覚めと……

リニアレールの戦いから、三日後

 

「う……ん……」

 

明久は呻くと、ゆっくりと瞼を開いた

 

そして、明久の目に入ったのは白い天井だった

 

「こ、こは……」

 

明久がボンヤリと呟くと、明久が寝ていたベッドの周囲に掛かっていたカーテンが開いて

 

「気が付いたかしら?」

 

とシャマルが優しく微笑みかけた

 

「シャマルさん……」

 

明久は最初はボンヤリしていたが、少しすると目を見開いて

 

「なのはは、なのはは大丈夫なんですか!?」

 

とシャマルの両肩を叫ぶように問い掛けながら、シャマルの両肩を掴んだ

 

それだけで、シャマルは明久の記憶が《あの雪の日》で止まっていることを察した

 

シャマルは落ち着かせるために、明久の両手を優しく離してから

 

「いい、明久君……落ち着いて聞いて……」

 

と語り掛けながら、念話で

 

(はやてちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん、皆……明久君が目覚めたわ)

 

と旧知のメンバーに明久が目覚めたことを知らせた

 

そして数分後、明久は黙って顎に手を当てていた

 

「あれから、六年も……」

 

シャマルの説明を聞いて、明久は頭をフル回転させていた

 

明久からしたら、シャマルの話は正直言って信じられない類だった

 

だが、色々と証拠が多々あった

 

まず、自分の声が記憶よりも低くなり、背丈も伸びていたこと

 

そこから判断するに、シャマルの言ったことは本当だと分かった

 

見せられたカレンダーの年も、明久の記憶から六年も進んでいた

 

そして明久が唸っていたら、医務室のドアが勢いよく開いた

 

壊れんばかりに開けられて、シャマルは顔をしかめたが、気持ちが分かるのか、注意しなかった

 

正確には、する暇が無かったというべきだろう

 

シャマルと明久が顔を向けた直後

 

「アキー!」

 

まるでロケットのように、ヴィータが明久目掛けて飛び込んだ

 

ヴィータは小柄なために予想出来ないかもしれないが、その力は大の大人ですら簡単に数メートルは吹き飛ばすのだ

 

そんなヴィータがそんな勢いでぶつかったら、どうなるだろうか?

 

結果は推して知るべし

 

明久はベッドの上から落ちて、頭を強打

 

しかも、ヴィータが胸部に思い切り突撃したために、明久は一瞬とはいえ呼吸困難に陥った

 

「……っ! ……っ!?」

 

明久は悶絶しているが、ヴィータは気付かずに明久に抱きついていた

 

すると、そんなヴィータの首根っこをリインフォース・アインスが掴んで持ち上げた

 

「なんだよ! アインス! 放せって!」

 

リインフォース・アインスに持ち上げられて、ヴィータは手足をバタバタしながら文句を言うが、リインフォース・アインスは悶絶している明久を指差して

 

「明久は病み上がりなんだが?」

 

と言うと、ヴィータは大人しくなって

 

「悪い、アキ……大丈夫か……?」

 

と問い掛けるが、明久は答えられなかった

 

少々お待ちくださいませ。現在、シャマル先生が治療中及び、お説教中です……

 

「分かった、ヴィータちゃん? むやみやたらに、病人に飛びつかないように」

 

「はい……すいませんでした……」

 

シャマルに説教されて、ヴィータは深々と頭を下げた

 

そんな二人の横では、明久をベッドに戻して、なのは達が明久に語り掛けていた

 

「明久……本当に良かった……良かったよ……」

 

「アキ君……久しぶり……」

 

「ごめんなぁ、ヴィータが。後で注意しとくから、勘弁してな?」

 

「本当にすまない。大丈夫か?」

 

フェイトとなのはは涙ぐみ、はやてとリインフォース・アインスはヴィータのことで謝っていた

 

すると、明久は手をパタパタと振りながら

 

「久しぶり、みんな……心配掛けたみたいだね」

 

と軽く頭を下げた

 

すると、それまで一歩下がっていたシグナムと狼形態のザフィーラが近寄って

 

「久しいな、明久」

 

「無事で何よりだ」

 

と話し掛けた

 

「あ、久しぶり……なのかな? シグナムさん、ザフィーラさん……」

 

明久はそう言いながら、二人と軽く握手した(ザフィーラは狼形態のままで)

 

その後、少し話すとなのは達はまだ仕事が残っていたらしく、医務室から出ていった

 

そして、夜遅く

 

シャマルも居なくなり、医務室には明久だけとなった

 

明久は近くの机の上に置いてあった、愛機のカイトを掴むと

 

「カイト、起きてる?」

 

と問い掛けた

 

『起きてるよ、明久……まさか、六年も経ってたなんてね……』

 

カイトのその言葉に、明久は頷き

 

「そうなんだよね……何より驚いたのは、なのは達が凄い美人になってたことだよ……なにあれ、美人過ぎるでしょ?」

 

と驚愕混じりで言った

 

すると、少し間を置いてから

 

『明久……悪いお知らせがあるんだ』

 

とカイトが言うと、明久は真剣な表情を浮かべて

 

「なに?」

 

と問い掛けた

 

すると、明久の目の前に一冊の本が現れた

 

黄昏色の背表紙に、目のような装飾が施された大きな本だった

 

『黄昏の碑文……再誕以外が無くなってるんだ……』

 

カイトがそう説明すると同時に本が独りでに開き、一番最後のページが開いた

 

そこには広く空白があり、一番下に《再誕・コルベニク》と書かれてあった

 

「なっ……」

 

明久が驚いていると、カイトは畳み掛けるように

 

『しかも……死の恐怖・スケィスが……フェイトと適合してる』

 

と言うと、明久は絶句した

 

「よりによって……フェイトだなんて……」

 

『フェイトには、辛い役割ばっかりがついて回るね……』

 

明久が頭を抱えていると、カイトが悲壮感を滲ませながらそう言った

 

そして、明久は数十秒間は俯くと、天井を見上げながら

 

「願わくば、再誕の能力が使われないことを願うよ……」

 

と呟いた

 

だが、明久のその願いは叶わなかった……


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