魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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解放と説教

明久はメイガスと戦っていた時、なのはの声を聞いた

フィドヘルを呼ぶ声を

だが、気にする余裕が無かっ

メイガスが司るのは、増殖

気付けば、明久は囲まれていた

それは、ティアナも使っていた魔法

フェイク・シルエットだ

 

(よく考えるべきだった……なんで、ティアナちゃんのフェイク・シルエットが本体と見分けが出来なかったのか……それは、魔力密度が異様に濃かったからだ。増殖の能力で、魔力密度が増えてたんだ)

 

明久はそう思いながら、右に居たメイガスに双剣を投げた

投げた双剣はメイガスの首と胸部に深々と刺さったが、そのメイガスは消えた

 

「またか!! カイト!」

 

《ダメだ! 見分け不可能!》

 

明久の問い掛けに、カイトは焦った様子でそう返答した

どうやら、分からないようだ

それを聞いた明久は、新しく大鎌をその手に持った

そして

 

「雷神乱舞!!」

 

と雷を纏った乱撃を放った

それにより、明久の近くに居たメイガスは全て消えた

だが、まだメイガスは残っていた

その数は、軽く10人を越えている

しかも、まだ増える

 

「鎌じゃダメだ……!」

 

《連結刃大剣!》

 

明久は右手で鎌を仕舞うと、新たに大剣を取り出した

それは、シグナムで使うレヴァンティンと同類の大剣だった

普段は大剣として使えるが、コマンド一つで連結刃に変わる代物だ

しかし、その分扱いは難しい

上手く使いこなさないと、自分だけでなく、味方にも危害が及ぶ

明久はそれを両手で持つと、頭上で構えた

そして

 

「カイト!」

 

《龍刃形態!》

 

カイトがそう言った直後、明久は大剣を頭上で回し始めた

しかも刃が蛇腹状に伸びながら、不規則に動いている

それを避けるのは、至難の技だろう

事実、次々とメイガスが切り裂かれて消えていった

だが、消しても消しても、新しいのが現れる

 

「キリがない!」

 

《だけど、消さない方が不味いよ!》

 

「分かってる!」

 

メイガスの増殖した分身は、消さないと爆発するのだ

しかも、消す直前まで増殖が続くので、魔力密度が凄まじいのだ

もし、間近で爆発したらどうなるのか

過去に、至近距離で爆発を喰らい、瀕死の重傷を負ったという記録もある

その時は間一髪で完全再生魔法で回復したらしいが、間に合わなかったら死ぬのは間違いない

だから明久は、一つ残さず消すしかなかった

だが、分身を出された時点で、明久は絶望的な消耗戦を強いられていた

明久一人に対して、メイガスは実質的に無限

そんなの、絶望的以外の何物でもなかった

その時だった

 

「偽りの体、地から生えし槍に貫かれる」

 

となのはの声が聞こえた

その直後、明久の周囲に居たメイガスのほぼ全てが地面から生えた槍に貫かれた

明久は反射的に、なのはの居た場所を見た

そこには、両手に鉄扇を持ったなのはが居た

どうやら、支配はされていないようだ

 

「アキくん! 分身は私が押さえるから、本体をお願い!」

 

「……わかった!」

 

なのはの言葉を聞いて、明久は両手に双剣を持って走り出した

その先には、メイガス本体が居た

もちろんだが、すぐに分身が現れて本体を隠そうとした

だが、それはすぐに消えていく

なのはが分身をターゲットにした魔法を使うからだ

それにより、明久は本体に近付けた

メイガス本体も明久を倒そうと、銃撃を放つ

しかし、全ての銃弾を明久は弾いて肉薄した

そこから、攻撃速度強化の魔法を使って明久は次々と剣劇を放った

その連撃は残像だらけで、回避する隙間すらなかった

その時、明久の耳にガラスが砕ける様な音が聞こえた

それを聞いて、明久は右腕をメイガスに向けて

 

「カイト!」

 

と相方を呼んだ

その直後、明久の右手首に半透明の花弁が開いた

そして、明久は内心で

 

(お願い……未帰還者にはならないでっ!)

 

と祈りながら、狙いを定め

 

「データ……ドレイン!!」

 

とデータドレインを放った

次の瞬間、メイガスの姿がティアナに戻り、黄昏空間が消えた

そして倒れてきたティアナを、明久が抱き抱えた

 

「本当、お願いだよ……未帰還者は勘弁してね……」

 

と明久が言ったタイミングで、周囲にフェイトとシグナム、ヴィータが着地

明久はティアナが黄昏因子の適合者だと告げると、ティアナをお姫様抱っこで医務室まで連れていった

そして、小一時間後

 

「さて、アキ君や……」

 

「はい……」

 

明久は、隊長陣の居る部屋の中心で正座していた

なお、幸村も居る

 

「未帰還者って、なんや?」

 

そう問い掛けたはやては笑顔だったが、目が笑っていなかった

 

「未帰還者というのはですね……その……意識不明になることです」

 

「なん……やて?」

 

明久の説明を聞いて、はやては声を低くした

すると明久は、右手を高々と上げて

 

「黄昏因子保有者がデータドレインを人間に放ったら、その人の魂を取り込み、意識不明になるんです」

 

と説明を続けた

その説明を聞いて、全員は絶句した

そこまで危険だったのかと

 

「ただ、ティアナちゃんも黄昏因子保有者だったし、過去に黄昏因子保有者同士のデータドレインのデータが無かったから、未帰還者になるかは分からなかったんです、はい……ただ、さっきシャマル先生から聞いた話では脳波に異常はなしと伺ったから、大丈夫です……はい」

 

と明久が言うと、全員の視線がシャマルが映ってる通信画面に向いた

 

『確かに、アキ君が言った通りよ。ティアナちゃんの脳波は異常なし。過労で眠ってるだけの状態だから、少しすれば目覚めるはずよ』

 

とシャマルが言うと、全員は安堵した

しかし、はやては明久を見下ろすと

 

「とはいえ、危険な行為をしたことには変わらへん。それは分かってるな?」

 

と明久に問い掛けた

すると明久は、真剣な表情で

 

「もちろん、分かってます」

 

と頷いた

するとはやては

 

「ならば、処分は後々通達するから、もう休みいや」

 

と言った

 

「はい」

 

明久は頷くと、立ち上がって部屋へと戻ろうとした

すると、シャマルが

 

『アキ君。もう一度検査したいから、医務室に来なさい』

 

と言った

それを聞いて、明久は医務室に向かったのだった


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