魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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不穏

『そっか……また黄昏空間に……』

 

「うん。詳細は、書類にするね。じゃあ」

 

通信ではやてにそう言うと、明久は通信を切った

そして、現場検分に戻った

今戦場だった場所では、地上本部から派遣されてきた検査部隊が残骸を回収していた

今明久は、その部隊の護衛に回っていた

すると、一人の白衣を着た男性が近寄り

 

「吉井上等空士、少々伺いたいことが」

 

と明久に声をかけてきた

 

「はい、なんでしょうか」

 

明久はその男性の後に続いた

場所は変わり、地下駐車場

そこに、なのはは居た

 

「んー……これ、未認証の品だね……はやてちゃん」

 

『ん、了解や。主催者さんと、トラックの持ち主さんに事情聴取やね』

 

その地下駐車場は、ホテルへの資材搬入用だった

その地下駐車場の見回りをしていた警備員の一人から、地下駐車場に変なのが居ると連絡があり、なのはが来たのである

そして来てみたら、一台のトラックの荷台に大穴が空いており、中を見てみたら、出品目録にはないロストロギアを多数発見

それら全て、未認証の品だったのだ

 

『今そっちに、検査部隊を向かわせたから。なのはちゃんは戻ってな』

 

「了解」

 

そこではやてとの通信は終わり、なのはは少し黙考すると

 

「あの預言……なんだったのかな……」

 

どうにも、嫌な内容だったな

となのはは思った

まるで、誰かが死ぬような預言だった

そこまで考えると、なのはは頭を振って

 

「戻って、ティアナとお話しないとね……」

 

と言って、地下駐車場から出た

それから十数分後、機動六課は撤収

こうして、ホテルアグスタでの任務は終結した

二度場所は変わり、会議室

そこには、はやてとなのは、フェイトの三人が集まっていた

三人の表情は一様に固い

その理由が、なのはが言った預言だった

 

「死の恐怖に蒼炎貫かれし時、再誕はなる……か」

 

「死の恐怖って、私のスケィスのこと……だよね?」

 

「せやろね……」

 

三人は紙に書いた預言を見ながら、そう言った

 

「私が、蒼炎……明久を貫くと、再誕が発動する……」

 

「……嫌な預言やね」

 

「そうだね……」

 

三人はそこで会話を終わらせると、部屋から出た

時は経ち、夜

殆どの人員が寝る時間帯

六課の敷地の一角で、ティアナが一人で訓練していた

そして一段落着いたのか、動きが止まった

その時

 

「もう止めとけよ……何時間やるつもりだ?」

 

と、ヴァイスが声をかけた

 

「ヴァイス陸曹……見てたんてすか?」

 

ティアナがそう問い掛けると、ヴァイスは近くのヘリのハンガーを指差して

 

「ヘリのメンテナンスをしながら、時々な」

 

と答えて、持っていた缶コーヒーをティアナに投げ渡した

 

「あ、ありがとうございます……」

 

ティアナは受け取ると、プルタブを開けて飲み始めた

ヴァイスも同じように、缶コーヒーを飲んだ

そして飲み終わったらしく、ティアナは空き缶を近くのベンチに置いて

 

「コーヒー、ありがとうございました」

 

と言って、ヴァイスに背を向けた

 

「……まだやるつもりか?」

 

「私……非才の身なので」

 

ヴァイスの問い掛けにそう答えると、ティアナは自主トレを再開した

それを見送り、ヴァイスは頭をガシガシと乱雑に掻いた

すると、ヴァイスの隣にスッとシュテルが現れて

 

「無茶をする子ですね」

 

と呟いた

 

「うお、スタークス一等空尉殿!?」

 

どうやら気付かなかったらしく、ヴァイスは本気で驚いていた

 

「……元とはいえ、武装隊員がそれは如何かと」

 

「す、すいません」

 

シュテルの苦言に、ヴァイスは素直に頭を下げた

そして、シュテルはティアナの方に視線を向けて

 

「何故、気付かないんでしょうね」

 

と呟いた

 

「へ? 何がですか?」

 

とヴァイスが問い掛けると、シュテルは

 

「力は力に引かれる……そして、黄昏因子は黄昏因子に引かれるということがですよ」

 

と言った

そして、身を翻すと

 

「では、私は待機に戻ります」

 

と言って、去った

ヴァイスはそれを見送ると、ヘリのハンガーに戻った

ティアナが自主トレを止めたのは、それから約一時間後だった

事態が大きく動いたのは、翌日だった

翌日、六課は訓練スペースで各分隊で模擬戦をしていた

最初はスターズ分隊

つまり、スバル&ティアナVSなのはだった

それを、少し離れた場所で他のメンバーが観戦していた

この時、明久はどうにも胸騒ぎがしていた

嫌な事が起きるかもしれないと

そして、明久のその胸騒ぎは現実になった

 

「ティアナ! それは、無茶だよ!」

 

「つっ!?」

 

見ている先では、スバルを押さえているなのはの頭上から魔力刃で攻撃しようとしているティアナの姿があった

その魔力刃を、なのははバリアジャケットの防護機能を解除して掴んだ

 

「ヤバい……なのはがキレた!」

 

それを見て、明久が動いた

どうしても、それだけで終わらない予感がしたからだ

そして明久が近くのビルに着地した時、なのはの魔力弾がティアナに命中

爆発が起きた

爆煙が晴れた中から見えたのは、ポニーテールにした長い髪だった

 

「マズイ! なのは!」

 

それを見た明久は、更になのは達に近付いた

その時、なのは、明久、スバルの三人の耳にあの音

ハ長調ラ音が聞こえた

次の瞬間、黄昏空間が展開された

その中心地に居たのは、ティアナ

否、八相

 

「メイガス!」

 

増殖・メイガスだった


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