魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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第二の開眼

「アキ、こいつは……!?」

 

「予言者・フィドヘルだ! 気を付けて、かなり特殊な攻撃してくるよ!!」

 

ヴィータにそう説明すると、明久は双剣の連撃を放った

だがフィドヘルは、その連撃を鉄扇で全て弾いた

しかも、そこから不思議な呪文を唱え始めた

 

「彼の者達に、裁きの雷が降り注ぐ」

 

唱えた直後、頭上から雷撃が放たれた

 

「蒼炎天蓋!!」

 

明久が両腕を掲げながら唱えると、全員の頭上に蒼炎の膜が形成され、それで雷撃は全て防がれた

だがその直後、フィドヘルが鉄扇で明久を殴り飛ばした

蒼炎天蓋の欠点

それは、味方は守れるが、代わりに自分が無防備になってしまうのだ

しかし、現状ではそれしか無かった

 

「ガハッ!?」

 

「アキ!? 野郎!!」

 

ヴィータがアイゼンで殴り掛かったが、それをフィドヘルは受け流して、逆にヴィータを投げ飛ばした

 

「うあっ!?」

 

地面に叩き付けられたが、ヴィータはすぐに起き上がった

なぜならば、先程までヴィータの頭が有った場所に鋭い蹴りが放たれていたからだ

下手したら、一撃でヴィータの意識は奪われていただろう

 

「こいつ……妙な技を使いやがる……」

 

「合気鉄扇だね……かなり厄介だ」

 

ヴィータの呟きを聞いて、明久はそう教えた

合気鉄扇

名前から分かる通り、合気道に連なる技術である

修得は非常に難しく、長い年月を必要とする

そもそも、合気道というのは技術に傾倒している武術である

空手や柔道と違い、力をさほど使わない武術なのだ

よく、空手は剛

柔道は柔と言われる

そして、合気道は技と言われている

そしてなにより、合気道と書かれている通りに相手の力に合わせて技を使うのが合気道なのだ

故に、その技の殆どが後の先

つまり、カウンターなのだ

その合気道から派生したのが、合気鉄扇だ

技の合気道に、古流武術

柔術の技と鉄扇による防御力を兼ね備えた武術

それが、合気鉄扇である

正に、攻防兼ね備えた武術なのだ

 

「厄介だからって、引くわけにはいかないけどね……あの予言の方がヤバイし」

 

「それだ。さっき、アイツが言ったことが本当になってたな。魔力、あの呪文を唱えてた間しか感じなかったな」

 

明久の話にヴィータが同意してそう言うと、明久は頷いて

 

「それが予言者たる理由だよ」

 

《フィドヘルが言ったことが、全部本当になるのさ》

 

「反則くせぇ……」

 

明久とカイトの説明を聞いて、ヴィータは渋面を浮かべた

しかし、それも仕方ないだろう

つまりはフィドヘルが言えば、天変地異だろうがなんだろうが実現が可能なのだから

 

「さてと……どうするかなあ」

 

明久はそう言いながらも、周囲に蒼炎による魔力弾を形成

それを一気に放った

しかし、その蒼炎魔力弾は全てフィドヘルの魔力弾によって迎撃された

しかし、それは明久の策だった

明久は迎撃によって発生した爆煙に隠れて、フィドヘルに一気に肉薄

そして

 

「三爪炎痕!!」

 

蒼炎を纏った双剣で、三角形を描くように連撃を放った

 

「手応えあり……なっ!?」

 

明久としては手応えがあったのだが、フィドヘルはほぼ無傷だった

 

「なんで……つっ!?」

 

驚きながらも、明久は気付いた

予言とは何も、言葉だけではないと

その証拠に、フィドヘルが持っている鉄扇に文字が書かれていることに

鉄扇には

 

《蒼炎の威力、半減》

 

と書かれていた

 

「やられた!?」

 

明久は驚愕しながらも、一気に後退

距離を取った

 

「どうなってやがる!? アキの必殺技が、大して効いてないぞ!?」

 

「予言書の形を取られてた……僕からの攻撃は、半減される」

 

明久の説明を聞いて、ヴィータは舌打ちした

蒼炎とは、恐らくは明久を指し示しているだろう

こうなったら、明久の攻撃では大したダメージは期待出来ない

それでも明久は諦めず、双剣でフィドヘルに切りかかった

それを、後方からフォワード陣は見ていることしか出来なかった

 

「ヴィータ副隊長と明久さん、押されてる……」

 

「動きが速すぎて、僕達じゃあ手出しできない……」

 

スバルとエリオがそう言った時

 

《呼べ……私を》

 

とキャロは声を聞いた

聞いたことない声だった

 

「ケリュケイオン、何か言った?」

 

《いえ、何も》

 

違うと分かりながらもキャロは問い掛けたが、ケリュケイオンから返ってきたのは予想通りの否定の言葉

周囲を見れば、瓦礫から顔を出して戦況を見守っているスバルとエリオ(キャロには、姉弟に見えた)

横を見れば、どうすればいいのか考えてるらしく、腕組みしてるティアナの姿がある

 

(気のせい?)

 

とキャロは首を傾げた

次の瞬間

 

《呼べ……私の名前を!!》

 

とキャロの頭の中で声が響いた

そして、キャロは思い出した

自分の中に入った、一つの存在を

 

(名前は確か……)

 

名前を思い出すのに少々時間が掛かったものの、キャロはその名前を口にする

 

「……イニス……?」

 

その名前を言った瞬間、キャロは踞った

激しい動悸に襲われたからだった

 

「キャロ!?」

 

そんなキャロに最初に気付いたのは、ティアナだった

ティアナの声に気付いて、スバルとエリオもキャロに近寄った

三人が声を掛けるが、キャロはそれどころでは無かった

激しい破壊衝動と自分が自分では無くなるという衝動に、必死に耐えていた

その時だった

 

《呼びなさい……私の名前を!》

 

と三度その声が聞こえた

その声を聞いて、キャロはある予想が頭によぎった

それに従って、キャロは戦ってる明久達に視線を向けて

 

「来て……私は、ここに居る……イニス!!」

 

とその名前を叫んだ

そして彼女も、黄昏の因子の戦いに加わることになる


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