魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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それぞれの一日

地球から帰った二日後、機動六課は念のために一日休みとなった

特に、黄昏空間に取り込まれて戦いを間近で見たフォワード陣ははやての予想以上に魔力を消費していた

恐らくは、間近に現れたイニスのプレッシャーがそうさせたのだろう。というのが、明久の談である

とにかく、そんな状態では訓練も出来ないだろうと判断して、休みとしたのだ

そんな日に、明久は……

 

「ねえ、フェイト……一つ聞いていいかな?」

 

「な、なに?」

 

うつ伏せの明久が問い掛けると、運転席に居たフェイトは体を僅かに震わせた

そして、明久は

 

「なんで僕はこんな扱いで、車の後部座席に放り込まれてるのさ!」

 

と訴えた

今の明久の状態を言うならば、釣り上げられた魚だろう

体をバインドで拘束されて、車の後部座席でビチビチと暴れている

 

「あ、あはははは……」

 

明久の苦情を聞いて、フェイトは苦笑いを浮かべることしか出来なかった

なぜ明久がそんな扱いかと言うと、それは少し時を遡る

今朝、はやてが休日と決めた時だった

突如として

 

「そういえば、アキ君……私服が無かったなぁ」

 

と呟いたのだ

それを聞いた瞬間、隊長格が集められていた部屋に、緊張が走った

すると、シャマルがどこからか箱を持ってきて

 

「第何回かはわすれたけど、アキ君との買い物決定くじ引き、始めまーす!」

 

と告げた

その直後、なのは、はやて、フェイトの三人は無言で箱の中からくじを引いた

そして、互いの顔を見て

 

「恨みつらみは無しやで?」

 

「わかってるよ、はやてちゃん」

 

「正々堂々、一発勝負」

 

と言うと、くじを開いた

そして、フェイトが勝ち取ったのである

そこからは早かった

はやて、なのは、シャマルの三人は幸村と談笑していた明久を見つけると、バインドで拘束

拉致って、フェイトの車の後部座席に放り込んだのである

そして、今に至る

明久はバインドを外そうともがいているが、簡単に外れる訳がない

そんな状況なので、釣り上げられた魚状態なのだ

なお、カイトは手元には無い

今は久しぶりの戦闘後の損耗具合を確認するために、プレシアに預けている

そして、カイトを手放した明久は古代魔法を殆ど使えない

これは、古代魔法の複雑さにある

明久が過去に聞いた話し相手では、その複雑さは軽く倍らしい

今は失われし古代魔法

今の魔法たるミッド式やベルカ式より、よりオカルト面が強く、世界に干渉する魔法

固有結界すらある

そこから古代魔法を研究していたプレシアは、古代魔法を

 

ザ・ワールド

 

と名付けた

閑話休題(話を戻して)

フェイトが運転する車はカーブに差し掛かり、フェイトはハンドルを切った

それに伴って、座席の上で暴れて(ジタバタして)いた明久は、座席から落ちた

 

「あ痛っ!?」

 

顔面から落ちて、明久が悶絶していると

 

「明久、大丈夫?」

 

とフェイトが、バックミラーで後ろを確認しながら問い掛けた

それに対して、明久は呻きながら

 

「だったら、車を停めてバインドを解除して」

 

「ごめん。今は無理かな」

 

明久の嘆願に、フェイトは申し訳なさそうに答えた

今車が走っているのは、機動六課隊舎のある埋め立て地とミッドを繋ぐ架け橋である

走ってる車の数は少ない(というか、フェイトの車しか見えない)が、この架け橋は駐車禁止だ

時空管理局執務官として、自分が法律を破るわけにはいかない

そう思ったフェイトは、気持ち程度だが、車のスピードを上げた

早く目的地に到着させるために

なお、法定速度は守って(時空管理局執務官として、以下略)

あと、サメザメと泣く明久が可哀想になったから

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

休日の機動六課

だと言うのに、部屋で休まずにデータ閲覧室にて調べ物をする人影があった

その人物

ティアナ・ランスターはパソコンを操作し、ある人物のことを調べていた

 

「………あった。吉井明久上等空士」

 

ティアナが探していたのは、明久のデータだった

 

「吉井明久上等空士……新暦65年に嘱託魔導士として登録。三年後に正式に時空管理局に所属。空曹長となるが、その一年後の新暦69年の任務中に行方不明。翌日に捜索が行われたが、半日後終了。MIAと認定される……半日で捜索終了?」

 

ティアナはその早さに首を傾げた

ティアナが知る限り、普通は最低でも三日は捜索が行われるはずである

ティアナの亡くなった兄

ティーダ・ランスターの時も、犯人の手掛かりを探したり、ティーダの落とし物等を探すのに一週間やっていたのを知っている

しかし、明久の場合は僅か半日で終わっている

幾らなんでも、早すぎる

しかも、何処の管理・管理外世界かも、何があったのかも書かれていない

 

「まるで、何か隠してるみたい……」

 

ティアナはそう一人呟くと、更に読み進めた

 

「新暦75年、保護されて復帰。現在、機動六課出向扱い。本来は、時空管理局本局…………本局? 確か、八神隊長も本局だったわね……何か、関係あるのかしら……」

 

ティアナはそう言いながら首を傾げ、更に読み進めようとした

だが、それ以上は無理だった

なぜならば、アクセス制限と表示されたからだ

 

「アクセス制限? 階級での制限かしら……これ以上は無理ね」

 

ティアナはそう判断すると、検索画面を閉じた

そして、パソコンの電源を切った

そして、最後にポツリと

 

「………やっぱり、凡人は私だけか……」

 

と呟くと、部屋から出た

その時、ティアナの背後に黄色い服を着た長い髪の男の姿がうっすらと見えた……


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