魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

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はい、始まりました
京勇樹の最新作です!


プロローグ 運命の日

ある日のある世界

 

そこでは、雪が降っていた

 

だが、その白かった雪は

 

真っ赤に染まっていた

 

「アキ! 戻れ! 今のお前の怪我じゃ!!」

 

そう叫んでいるのは、赤いゴスロリ風の騎士甲冑を纏っている少女で、名前はヴィータという

 

そのヴィータの腕には、白いバリアジャケットを赤く染めている少女が抱かれている

 

その少女の名前は高町なのは

 

そのなのはは、怪我を負っていて、出血していた

 

だが、バリアジャケットに付着している血の大半はなのはのモノではない

 

その血の大半は、数m先に立っている少年

 

吉井明久(よしいあきひさ)のモノだ

 

明久の胸部は刃によって貫かれており、今も出血が続いている

 

「ヴィータ……なのはを連れて…撤退して……」

 

明久は自身のデバイスである剣

 

<カイト>で姿勢を維持するのがやっとなのに、そう告げた

 

「な!? なに言ってやがる! お前のほうが重傷じゃねーか! そんなお前を放って撤退なんざ!!」

 

ヴィータがそう言うが、明久は首を振ってある方向を指差した

 

「あれを……」

 

ヴィータは明久の指差した方向を見て、そして絶句した

 

そこには、カマキリを彷彿させる機械の群れが大挙して向かってきていた

 

そう、それこそが明久に大怪我を負わせ、なのはを撃墜した敵だった

 

「あ、あれは……っ!」

 

「幾らヴィータでも……僕となのはを抱えながら撤退してたんじゃ……追いつかれちゃう……」

 

「だからって、お前を置いて!!」

 

明久の言葉に、ヴィータは食って掛かるが

 

「お願い……ヴィータ……なのはを……守って……」

 

明久は首を振ってヴィータを制止して、剣を構えた

 

それを見たヴィータは、唇をかみ締めて

 

「すぐに戻る……絶対に、生きてろよ!!」

 

なのはを抱えて、空を飛んでいった

 

「頼むよ……ヴィータ……」

 

明久はヴィータを見送ると、相棒のカイトを見て

 

「ごめんね……カイト……貧乏くじを……引かせちゃったみたいで……」

 

<それは言わない約束でしょ? わかってるさ。君は守るためなら、自分も犠牲にするってことは>

 

インテリジェントデバイスであるカイトは苦笑交じりの声で、そう返答した

 

「来たね……それじゃあ、行こうか。相棒」

 

<ああ、行こう。蒼炎の剣士の実力を相手に見せてやろう!!>

 

カイトの激励の言葉に、明久はうなずくと

 

「蒼炎の剣士……吉井明久……行くぞ!!」

 

大怪我を押して、守るために、敵に突撃した…………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「誰か! 誰か応答してくれ!! このままじゃ、なのはも明久も死んじまう!!」

 

ヴィータはなのはを抱えたまま、涙声で通信を試みていた

 

その背後では、爆発音が聞こえてくる

 

「頼む! 誰か……誰か、応答してくれ!!」

 

何度目かわからないが、そう言った時

 

通信画面が開いた

 

『こちらシャマル! ようやく繋がったわ! ヴィータちゃん、なにがあったの!?』

 

その声が聞こえた時、ヴィータは心底安堵した

 

ショートカットの金髪に優しそうな緑色の眼

 

その人物の名はシャマル

 

通称、湖の騎士と呼ばれている現在は見習いの医務官である

 

「シャマル! 頼む、今すぐに医療班を送ってくれ! このままじゃ、なのはと明久が死んじまう!!」

 

『ちょっ、ちょっと! 落ち着いて! いいから、状況を!』

 

慌てているヴィータをシャマルは落ち着かせようとするが、ヴィータは涙をにじませて

 

「頼むよ! 医療班をすぐに送ってくれ!! そうしないと……なのはと明久が……」

 

と、シャマルを急かした

 

『今、そっちにはやてちゃんとシグナムが向かってるわ! 私達も向かうから、待ってて!』

 

ヴィータの必死さから状況を察したのか、シャマルはそう告げた

 

「頼む……っ!」

 

ヴィータがそう言うと、シャマルがうなずいて通信画面は閉じた

 

その数分後、ヴィータははやてとシグナムに合流

 

さらに数分後、シャマル率いる医療班が合流

 

ヴィータはなのはを医療班に預けると、シグナムとはやての二人と一緒に明久の場所へと戻った

 

だが、三人が見たのは

 

夥しい数の機械の残骸と血痕

 

そして、明久が身に着けていた三個のペンダント

 

それだけだった…………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数十日後

 

場所 時空管理局次元航行艦<アースラ>

 

「ふっざけんなっ!!」

 

その怒号と共に、ヴィータは拳を壁にたたきつけた

 

「ヴィータ、落ち着け!!」

 

「これが落ち着いていられるか!!」

 

激昂しているヴィータをシグナムが宥めようとしているが、ヴィータはシグナムの制止を振り払った

 

「シグナム達だって納得いかねぇだろ、こんなん!!」

 

ヴィータはそう言いながら、机の上の書類を突きつけた

 

そこには

 

 

<報告書>

 

先日行われた捜査の結果、吉井明久空曹長をMIAと認定

 

さらには、吉井明久元空曹長を命令違反の咎により降格処分とする

 

 

としか、書かれていなかった

 

さらに、机の上には雑誌が置かれており

 

<スクープ! エース・オブ・エース撃墜される!? 原因は同僚の命令違反!?>

 

と、見出しに大きく書かれていた

 

「あれはどう考えても、なのはのミスじゃねーか! 明久はそれを守っただけだろ!? なのに、なんで明久が処罰されるんだよ!!」

 

と、ヴィータが怒鳴った時、ドアが開いて女性が入ってきた

 

「それが、上層部の判断した結果なのよ……エース・オブ・エースが撃墜された理由として、明久くんを生贄にしたのよ……」

 

女性、リンディ・ハラオウンは苦い表情でそう告げた

 

「なんだよそれ……ふざけんなよ!!」

 

ヴィータは怒鳴ると、部屋を飛び出した

 

「すいません、リンディ提督……」

 

「仕方ないわ。ヴィータちゃん、明久くんと仲良かったものね……」

 

リンディには年齢が明久に近い息子と、同い年の養子の女の子が居るために、親として複雑だった

 

「それで、主はやてとテスタロッサは?」

 

「今は二人とも、なのはさんの所に居るわ……」

 

「そう……ですか……」

 

リンディの言葉に、シグナムは鎮痛な表情を浮かべていた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時空管理局本局 医務室

 

その一部屋に、なのはは入院していた

 

その意識は回復しており、自分の容態も聞いた

 

重傷だが、リハビリすればすぐに空も飛べるようになる

 

それ自体はいい結果だろう

 

だが、はやてと金髪の幼馴染

 

フェイト・T・ハラオウンから聞いた言葉を聞いて、なのはは泣いてしまった

 

「私のせいで……アキくんが……」

 

「なのは……」

 

「なのはちゃん……」

 

はやてとフェイトの二人はなのはを慰めようとしたが、言葉が出てこなかった

 

「ごめん……アキくん……ごめん……っ!」

 

なのはは、声を大きく泣いた

 

フェイトとはやての二人は、そんななのはを抱きしめることしか出来なかった

 

この後、なのはは教導官への道を進み

 

はやては捜査官と指揮官としての経験を積み

 

フェイトは執務官になって、いろいろな事件を解決していった

 

そして、新暦75年

 

新部隊<時空管理局遺失物管理部 機動六課>がはやてによって設立されて、なのはとフェイトは分隊長として着任した

 

この事件で、彼女達は思わぬ再会をすることになるが、今はまだ知らない




あ、プレシアとアインスは生きてますよ

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