ストロング・ザ・Fate "完結"   作:マッキンリー颪

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第5話

「あ、頭が痛い」

 

 聖杯戦争、敵サーヴァントを撃破したところを一般人に見られ神秘の秘匿のために暗示で記憶を改ざんしようとしたら、実は相手が一般人ではなく野良の三流ではあっても魔術師の端くれだったので、ちょっと締めつけが必要かな、と思っていたら。

 

「ばぶー」

「グロロー。凛よ、赤子を育てるにはガラガラを購入せねばなるまい。さっそく買いに行こうではないか~」

 

 その対象は赤子になってしまいました。

 なんだそのアクロバティックな状況は。

 

 凛ちゃんはもう頭が痛すぎてその場に卒倒したくなるくらいのダメージだ。

 遠坂家の家訓、いついかなる時でも優雅であれ、に従いそんな楽な道は選べないのだが。

 

「あー、もう……どうしよう」

「グロロー」

「びえー! びえー!」

 

 凛ちゃんが途方にくれ武道がいつも通りグロローと言っていると、突然衛宮くんが泣き出した。

 赤ちゃんだからである。

 

「グロロー。凛よ、はやくガラガラを買いにゆくのだ~」

 

 

 

 

「え、ええと……お買い上げ……ありがとうございます」

「グロロー、よかったなピーク・ア・ブーよ」

「きゃっきゃっ」

「あー、もう。めっちゃ目立ってるし」

 

 結局、衛宮くんが泣いてうるさかったのでガラガラを買う羽目になった凛ちゃん。

 衛宮くんは武道におんぶ紐で背負われているが、ガラガラを買ってもらってご満喫だ。

 しかし、3メートル近い剣道着姿の筋肉パンパンの巨人が高校生くらいの少年を背負っている姿は……目立つ。

 非常に目立つのだ。

 神秘の秘匿もなにもあったものではない。

 

 

 衛宮くんがこんな事になってしまっては衛宮くんを帰宅させることはできないなぁ、という問題だけでも大きいというのに。

 

 それでも凛ちゃんは一旦衛宮くんを自分の家に連れ帰ることにした。

 

 衛宮くんを実家に送って、ご家族さんになんと言えばいいのか……と、悩んだのが原因ではない。

 武道が言うには、こんな状態の衛宮くんだけど、ガラガラがあれば割とすぐに成長することもできる、という話を聞いたからだ。

 

 どこまで信用していいのかは不明だけど、凛ちゃんは半ば投げやりな気分で信じることにした。

 

 

 

 そして帰宅。

 

「さて、武道。衛宮くんはどうやったら元に戻るのかしら?」

「グロロー、本人は赤子のままでも構わんと言ってるように思うのだがな~」

「ばぶー、ばぶー」

「うっさいわね、明日以降学校でどうするのか、ってなるでしょ。早くしてよ」

「ふむ、仕方のないやつだ……ならば戦え!」

「はぁ?」

 

 さっそく衛宮くんを治そう、そう思った凛ちゃんに武道はわけのわからぬことを言う。

 いや、むしろ武道にとっては平常運転のような気はするのだが。

 

「グロロー、いまのこやつは赤子となりまっさらな状態よ。しかし戦いを重ね相手の技術を学ぶことで完璧に身に付ける事ができるのだ」

「んなアホな……」

 

 しかし凛ちゃんは度重なるストレスのせいで混乱していた。

 正直、ストレスを発散したくて仕方がなかったのだ。

 だから。

 

「やってやろうじゃないの!」

 

 試合開始である。

 

 カァーン!

 凛ちゃんはどこかでゴングが鳴ったように感じた。

 

「くらいなさい! ガント!」

 

 凛ちゃんの先制攻撃。

 このガント。本来なら相手に若干の不調を与える程度のしょぼい攻撃魔術のはずだが、凛ちゃんほどの魔術師が撃てば、すさまじい攻撃力を発揮する技になる。

 

 どかんどかん、凛ちゃんは撃ちまくる。

 その結果家具が壊れまくる。

 凛ちゃんの家の家具が。

 

「あー! な、なんてことを!」

「ぶぶー、ナンテコトヲ、ナンテコトヲ」

 

 それなりに格式のある家具なのに……と頭を抱えていると、衛宮くんも同じようなポーズをとる。

 

「きー! あんた舐めてるの!? 悪いのはあんたでしょうが!」

 

 それにイラッとする凛ちゃん。

 するとキャッキャと笑いながら衛宮くんは次に凛ちゃんに人差し指を向ける。

 

「は? なに? 私のガントの真似でもしてるつもり? ガントなんて簡単な魔術だけどぶっちゃけ衛宮くんにできることでは」

「狙え、一斉射撃」

 

 ガントの真似でもするつもりか、と鼻で笑う凛ちゃんだけど、衛宮くんは本当に凛ちゃんの真似をした。

 しかも。

 

 どかんどかん!

 

「なっ!」

 

 なんと、凛ちゃんに追随する威力、連射性のガントである。

 咄嗟に避けた凛ちゃんだけど絶句する。

 だって家の家具がさらに壊れたから。

 

「アー! ナ、ナンテコトヲ!」

 

 そして家具を壊したことで頭を抱える真似をする衛宮くん。

 

「ほ、本気で私を怒らせたいみたいね? もう、許せん! これでもくらえ!」

 

 そして凛ちゃんはうっかり、自分の虎の子の宝石を使った魔術を発動する。

 その威力たるや、人間の魔術でありながら並のサーヴァントに大打撃を与えうる恐ろしい魔術である。

 くらうのが人間だったら死ぬし、魔術師でもよっぽどの備えがないと死ぬ。

 そんな魔術だ。

 

「あー! うっかり手加減せずにやっちゃった!」

 

 正直やりすぎたかも、と後悔あと先に立たず。

 しかし衛宮くんはなんとか凛ちゃんの魔術をやり過ごしていたらしい。

 そして、凛ちゃんと全く同じ詠唱をして魔術を発動する。

 何故かその手には、凛ちゃんが使って消費したはずの宝石があった。

 

「うわっ!」

 

 間一髪避けることができた……いや、わざと避けさせられた?

 どちらにしろ凛ちゃんは九死に一生を得たのだが……そんなことよりも困惑する。

 

「え、衛宮くんが……私と同じ魔術を?」

「グロロー、試合前に言ったではないか~。そやつはいかなる攻撃も学習することができると」

 

 確かに言ってたけど……と、思う凛ちゃんだけど、正直信じていなかった。

 当たり前だ。

 凛ちゃんは天舞の才を持ちその上で努力を怠らずに上を目指し続けてたどり着いた今日なのだ。

 その凛ちゃんに、ヘボ魔術師の衛宮くんが一日で……いや、一試合で自分に追いつくなんて? と思ってしまう。

 さらにそれだけではない。

 自分に追いついたところで、凛ちゃんの魔術は宝石というツールがあってこその魔術なので、宝石を持っていない貧乏学生の衛宮くんに向いてる魔術とは言えないのだ。

 それなのに、衛宮くんは宝石魔術を使った。

 

 これは一体どういうからくりが?

 

「くくく、驚いてるようだな遠坂」

「え、衛宮くん! 正気に戻ったの!?」

「ああ、戦いを通じて成長することで本来の自分を取り戻すことに成長したぜ」

 

 どうやら、本当に赤ちゃんの状態からアッサリ元に戻れるらしい。

 驚くことばかりだね。

 

「そ、そうなんだ……ところで、なんで衛宮くんは私の宝石魔術を……いや、技術を学習したのを100歩譲って認めたとして、宝石はどこから出したの?」

「そりゃあ簡単よ。俺は遠坂の魔術を学習する傍らで、俺本来の魔術の性質が混ざり合ってより完璧なものに昇華した姿で完成したのだ」

「グロロー、ただ学習し模倣するだけでなく、相手と自分の個性を取り入れ上回る。これぞ恐怖の完璧超人ピーク・ア・ブーの真の姿よ~。もっとも貴様は超人ではないので、完偽の魔術師とでも名乗るべきか~」

「もう、滅茶苦茶すぎるわ。でも衛宮くんが正気に戻ったならこの茶番は終わりよね」

 

 頭が痛くて早退したい気分、と思う凛ちゃん。

 早退もなにもここは凛ちゃんの実家である。

 

 とりあえず今は何も考えたくないし、衛宮くんを家に帰してひと晩休んで、何か考えるのは明日からにしたい気分だった。

 しかしそれに待ったがかかる。

 

「おおっと、ここで終わられると困るな」

「はぁ? 何言ってるの衛宮くん」

「このまま終わると、俺は魔術師のルールとしてお前にショバ代を払ったりしなきゃならなくなってしまうんだろう?」

「そりゃそうでしょ。それに衛宮くんは何か知らないけど、私の宝石を量産する魔術を持ってそうじゃない? だからそっちから徴収させてもらう予定だけど」

「それが困るんだよ!」

 

 衛宮くんは言う。

 

「魔術社会のルールでこの街を支配してるのは遠坂だってのはわかった」

「ええ。で、その私の決定に、モグリの三流衛宮くんがどんな意見を言うつもり?」

「だが、魔術社会においては偉さは魔術の腕で決まる……そうだろう?」

「何が言いたいのよ」

「わからないか! 遠坂の魔術を学習した俺は、既に遠坂の魔術師を名乗っても問題ない……いや! むしろ俺こそが遠坂の後継者! つまり俺がこの町の魔術師としての支配者だってことだー!」

 

 衛宮くんは、権力欲に取り付かれてしまったらしい。

 なんということだろうか。

 

「グロロー。何を言うピークよ。お前の能力は相手を学習してなんぼのもの。戦いが終われば再びリセットしなければならないということを忘れたのか~」

「何がリセットだ! そんなのもう懲り懲りなんだよ!」

 

 衛宮くんの野望に文句を言う武道。

 しかし衛宮くんは武道にこそ怒りを持っているのか、ガラガラを投げつけてしまった。

 武道の面に当たったガラガラは割れて壊れる。

 

「グロロー。壊れてしまってはまた買わねばならないではないか~」

「もう買わなければいいだろ! 俺は遠坂の魔術を身につけたんだ! これ以上魔術師として学ぶものなんてないな!」

 

 衛宮くんはものすごく怒っている。

 しかし、もっと怒っているのは凛ちゃんだ。

 

「ふっ……ふふふっ……人様の土地に無断で魔術師が入り込んでたと思ったら……私の魔術を学んで……遠坂に成り代わろうですって? な、舐めたまねを!」

 

 凛ちゃんの攻撃!

 

「へっ! 舐めるもなにも、強いものが弱いものを支配する! これが順当なルールだろうが! 俺はこの力で正義の味方になるんだ!」

 

 しかし衛宮くんはそれを模倣しカウンターを仕掛けた!

 

「わけのわからないことを! あなたごときコピー魔術師が私に勝てるとでも!?」

 

 凛ちゃんはダメージを受けても諦めない!

 

「ふっ、強がりはよすんだな。もはや俺は遠坂の魔術の全てを手に入れたんだ。お前の魔術は俺には効かないぜ。宝石剣でも使ってみるかい?」

 

 しかし現実は非情である!

 

 怒りの凛ちゃんは衛宮くんに襲いかかるも、繰り出す魔術すべてを模倣され跳ね返され窮地に立たされてしまう。

 

 なんという強さか。

 凛ちゃんに勝ち目はないのか。

 

「グロロー。凛よ。お前はこのまま負けてしまうのか?」

「ぐぬぬ……元凶のくせに人事みたいに……! あんた後で覚えてなさいよ! 衛宮くんをやっつけたらあんたもぶん殴ってやる!」

「はっはっは、倒す? お前が? 俺を? 出来もしないことは言うもんじゃないぜ遠坂。お前の魔術はもう俺には通用しないのさ」

「……そうね、魔術は通用しないかもしれない」

 

 しかし、凛ちゃんはダメージを受けたことで逆に冷静になったのか。

 落ち着きを取り戻す。

 

「魔術師の魔術が通用しない……これはもう勝負ありだろ? 降参して俺に遠坂家の権利を全部明け渡すべきだと思うが?」

「ふん、衛宮くん。あなたの弱点を教えてあげるわ!」

 

 ひと呼吸吐き出し、凛ちゃんは鋭く踏み込む。

 衛宮くんはどんな魔術を使われようと対応してみせる、と凛ちゃんを観察するが、その身に魔術発動の兆候は見られない。

 見られないまま間合いを詰めたりんちゃんは、鋭い掌打を放つ。

 

「ごぶぇー!?」

 

 その一撃、五臓六腑に染み渡る。

 あまりのダメージに衛宮くんは口から大量の胃液を吐き出してしまう。

 

「がっ! がはっ!」

「知ってる? 衛宮くん。最近の魔術師はね……体を鍛えてナンボなのよ!」

 

 凛ちゃんの逆襲が始まる!

 中国拳法の雨あられ。

 魔術は使えても中国拳法は使えない衛宮くんにはなすすべもなかった。

 

 そしてついに決着の時。

 

「うりゃー! 連環腿!」

 

 凛ちゃんの飛び二段蹴りが炸裂!

 衛宮くんはダウンし、もはや立ち上がることはできなかった。

 

 カンカンカァーン!

 

 どこかで試合終了のゴングが鳴った気がする凛ちゃん。

 見事な逆転勝利であった。

 

 

 

 

「その、遠坂……さん。す、すみません、ちょっと調子に乗ってました」

「ちょっとどころじゃないわよ」

「グロロー」

 

 試合が終われば後始末である。

 頑張って魔術で家具を修復したりんちゃん。

 衛宮くんも大怪我してたが無理やり手伝わされた。

 決め手は

 

「手伝わなくてもいいけど、衛宮くんが壊した家具……弁償代は日本円で7桁から8桁よ?」

 

 との慈悲深いお言葉である。

 衛宮くんは手伝う、手伝わないの選択肢を与えられた上で、手伝うことができたのだから、どんなに疲労しても文句を言える立場ではなかった。

 

「さて、衛宮くんの処分をどうしたものかしら?」

「え、ええと……俺は魔術師としての落とし前は卒業してからまた考えるんで……今日はもう帰っていいかなぁ、って思うんだ。大丈夫、聖杯戦争のことは周りに言わないし神秘の秘匿はバッチリするから」

 

 衛宮くんはもう凛ちゃんに関わるのが嫌だという態度を隠しもしない。

 さんざんボコボコにされて苦手意識がついたみたいである。

 当たり前か。

 

 しかし凛ちゃんはそれを許さない。

 

「衛宮くんがヘボ魔術師だったらそれで良かったんだけど……うふふ、衛宮くんってば、もはや私なんて足元にも及ばない魔術師なんだっけ~?」

「い、いや、そんなことは言ってな」

「遠坂の家を乗っ取れるくらいの実力者だったっけ~?」

「す、すみません……急に成長したもんでさっきまでなんか、精神のテンションが変だったんです。ほんとに許して」

 

 凛ちゃんにプレッシャーをかけられて小さくなる衛宮くん。

 床に正座しててかわいそう。

 

「グロロー。凛よ。ところで気づいているとは思うのだが、こやつは聖杯戦争のマスターのようだぞ」

 

 そこで武道のお声がかかる。

 主人公のくせして今回は存在感が空気だったが、こうして要所要所で核心を突いたセリフを言うことで最低限の存在感をアピールするのだ。

 

「なんですって!? 衛宮くん! あんた屈服したふりして私の寝首を掻くつもりだったの!?」

「な、何を言ってるんだ! ……ですか! お、俺は聖杯戦争とかわからないって……」

「グロロー、お前の手の甲に令呪に成りかけの痣があるではないか~」

 

 武道の鋭い推察力。

 それを元に分かったのは、衛宮くんが聖杯戦争の最後のマスター候補らしい、ということだった。

 

 

 その後の話し合いの結果……衛宮くんの処分が決まった。

 

「じゃ、これから衛宮くんの工房でサーヴァント召喚。直後に命呪全部を消費してサーヴァントを自害させて、聖杯戦争から脱落しなさい」

「は、はい……」

「その上で衛宮くんはこれからの人生、定期的に投影魔術で作った宝石を寄越す事で今回の罪を不問とするわ。私って慈悲深いわね」

「ちぇっ、どこが慈悲深いんだよ」

「普通の魔術師ならあなたをホルマリン漬けしてると思うし、十分以上に慈悲深いと思うんだけど?」

 

 衛宮くんは納得しないし、凛ちゃん自身ちょっとやりすぎかな? と思っていたりする処分である。

 しかし凛ちゃんの言うように、普通の魔術師に比べれば十分に優しい結末だったといえよう。

 凛ちゃんだけならば。

 

「さて、ピーク。いや、完偽・衛宮士郎よ」

「な、なんだよ」

「きさま完璧魔術師となりながらも下等魔術師の凛に負けおったな~。本来なら完璧超人のルールに照合し今すぐ自決させるところだが」

 

 武道はやたら血走った目で衛宮くんを睨みつける。

 正直失禁してもおかしくない恐怖である。

 しかし凛ちゃんに死ぬ間際までボコボコにされたおかげでトラウマを抱えた反面、今は若干精神が麻痺していて恐怖による精神ダメージを多少少なくなっているのでなんとか耐えることができた。

 

「今回は特別に恩赦を与える。しかし次以降はいかなる戦いであろうと敗れた時には自決してもらうということを忘れるでないぞ」

 

 武道はそう言い、燃える竹刀を取り出し軽く手放した。

 どういう力が働いているのか、その竹刀はピタリと空中に固定される。

 

 ぼぼぼぼ。

 勢いよく炎を放つその竹刀を見ていると、衛宮くんはなんだか無性にジャンプして背中からその竹刀に突き刺されたい衝動に駆られる。

 

「グロロー。貴様はこれからの人生、敗北を覚えることがあればこの竹刀に飛び込んで自決してしまうということを忘れるな~」

「え? マジで? ……え?」

「ねえ武道。その敗北って……テストの点で負けた時とかにも作用されるの?」

「グロロー。当然だ」

「え、衛宮くん……がんばって?」

「……なんでさ」

 

 ただでさえこれからの人生、凛ちゃんに宝石提供ということで時間を拘束されるというのに、さらにあらゆる勝負に負けることが許されなくなった衛宮くんの人生は大変なものとなった。

 

 

 

 しかし、テストで常に最高の成績を叩き出し、教師の覚えも良くなった衛宮くん。この後いい大学を紹介され、その受験戦争にも合格という形で勝利。さらに人生という勝負でも勝利を重ねるうちになぜか政治家となる。幾度の選挙を超え不敗、さらに政策も民衆からの支持率が常に高く、敗北らしい敗北を知らない完璧政治家となった。

 後の世の歴史で、日本を不況から救い、世界中の環境問題にも正面から取り組み解決への道を示した彼は英雄と評され、やがて英霊の座へたどり着いてしまうのだから、世の中何が起こるかわからないものである。

 衛宮くん、期せずして「正義の味方になる」という夢が最高の形で叶うことになるのだが……それはまだまだ遠い話。

 今はただ。

 

「今は2月頭なんで次のテストまでそんなに時間がないんだけど……」

「えーと、衛宮くん。私は聖杯戦争で忙しいしテスト勉強とかやってる暇ないわー、あはは。だからあなたの勉強は見てあげれないの。一人で頑張ってね?」

 

 孤独な戦いのはじまりに対して、ただただ恐怖を覚えるだけの毎日となるのであった。


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