ストロング・ザ・Fate "完結"   作:マッキンリー颪

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第3話

「くっ、屈辱だわ……この私が……教師にあそこまで怒られるなんて」

「グロロー、なんとも情けない話ではないか~」

「……あんたのせいよ」

 

 学校に部外者を連れてきたことを怒られた凛ちゃん。

 かなりグッタリきてしまい、原因である武道に怒鳴ることさえできなくなってしまっている。

 とはいえ突然消えさせるわけにも行かないのが辛いところである。

 魔術師は魔術の秘匿に神経を使わなければならないのだから。

 

 

 凛ちゃんは無意識に武道が霊体化してると思っていたのだが、実はずっと実体化したままだったのだ。

 私は霊体化などしなーい! とでも言わんがばかりの勢いで実体化したままついて来ていたのだ。

 そりゃ登校中も、学校でも、皆が視線を向けるわけだ。

 自分だって3メートル近い剣道着を着た巨人が町や学校を歩いていたら凝視するだろう。

 

 

 そんなこんなでかなり精神的なダメージを負った学校も終わり、放課後である。

 放課後……日も沈み生徒や教師もいなくなったであろう暗い学校に凛ちゃんはやってきた。

 武道が霊体化を嫌がるので目立たない時間帯に動くしかないのだ。

 正直、日中に叱られた精神ダメージを思えば学校の結界なんてどうでもいいかなー、と思わなくもないのだが、仮にも魔術師として冬木のオーナーである凛ちゃんにとって、目に付いた人に害なす結界を放置、などという選択肢はなかった。

 根が善人だからである。

 ここで魔術師的な思考をしていれば、あえて発動させて相手の手の内を観察するのも良いか、なんて考えそうなものだが、凛ちゃんはそれをよしとしない。

 本人は否定するかもしれないが、魔術師になりきれていない魔術師なのだ。

 

 武道からは

 

「自分の縄張りにおいて他人の痕跡を消したいと思う……それも完璧を標榜する我ら完璧超人とどこか重なる部分があるようだな。だからこそ私を召喚できたのであろう」

 

 というお褒めの言葉を頂けているが。

 

 

「ちっ、この結界……どうやら範囲内の生物の生気を吸収するタイプだけど、ひとつふたつ潰したところでほとんど意味がない、すぐに修復されてしまうわ」

「グロロー、なんとも姑息な手段ではないか~。で、凛よ。破壊しても無駄だからと見逃すのか?」

「まさかでしょ。やってもほぼ無意味、であろうとまるきり無意味じゃないんだから、壊すわよ」

「グロロー」

 

 そして、学校に張られた結界についてだが、凛ちゃんの技量を持ってしても完全な除去は難しいということがわかった。

 それでも、結界をかけた相手に対する嫌がらせも込めて、学校に張られた結界、それを維持するための起点を潰してまわろうと決意する凛ちゃん。

 そこに声がかかる。

 

「なんだ壊しちまうのか? もったいねぇ」

「!?」

「グロロー」

 

 後ろからかかった声。

 振り返るとそこに奴がいた。

 青いタイツに身を包み赤い槍を持つ英雄、ランサーだ!

 

「サーヴァント!」

「グロロー」

「その通り。で、嬢ちゃんがマスターでそっちのデカイのがサーヴァント……だな?」

 

 ランサーは好戦的な笑みを浮かべ凛ちゃん、および武道を見る。

 その視線に一般人なら腰を抜かしてしまうほどの殺気を込めて。

 

 しかし武道は当然として凛ちゃんとて一般人ではない。

 ランサーの殺気を受け流し不敵に笑う。

 

「そう、私がマスターでこっちが私のサーヴァントよ。ところであなたがこの結界を張った張本人かしら?」

「いいや? 無関係だぜ。だから俺を倒したからってその結界はビクともしねえわけだが……だったら意味がないって逃げるかい?」

 

 戦う意思を隠しもせずにランサーは凛ちゃんを、武道を挑発する。

 とはいえ、これはただの挑発ではなく相手が何に怒り何を感じるのか、などを探るための小手調べの一種なのだが。

 

「夜の学校にサーヴァントが2人……勝負でしょう」

 

 しかし凛ちゃんはそんな小手調べを一刀両断。

 はっきり言ってしまえば、生前に偉業をなした英雄を相手に舌戦をしても勝てる保証などどこにもない。

 ならば真正面からバッサリ切り結ぶほうが勝率が高いと踏んだのだ。

 ましてや凛ちゃんの持つ刃はストロング・ザ・武道。

 相手がどのようない英雄であろうと負けることはない、という信頼を持っている。

 

「へっ、いきなり小細工なしで真正面からやりあえるとはな。クソみたいな戦争かと思ったがそれなりに楽しめるか?」

「グロロー、前置きなどどうでもいいわ。さっさとかかってくるが良い、下等サーヴァントよ」

 

 

 そうして始まったバトル。

 

「こ、これが聖杯戦争……!」

 

 ランサーの朱槍が走り目にも止まらぬ速さで突きこまれるが、対する武道は一歩も動かず両の手でランサーの槍を捌く。

 上半身に通らぬとなればランサーは武道の足元に突きを放つがどこからともなく取り出した竹刀で武道はそれを弾き返す。

 どれほどの力のぶつかり合いか?

 凄まじい音を立てる竹刀と朱槍だが、その激突でランサーも武道も体勢を崩すことはなく、それどころかさらに激しい戦いが繰り広げられる。

 竹刀と槍の激突のたびに大気が震えるかのような衝撃、その衝撃は並の人間なら余波だけで竦み上がりそうになるようなものだが、それを生み出した二人にとってはなんという事もないかのように。

 まったく構わずに戦いを続ける。

 

 時間にしてはほんの一瞬のはずなのに恐ろしい程の密度のぶつかり合い。

 生身の人間では入り込む余地すらない、まさに英雄の戦いである。

 

 凛ちゃんはその戦いに圧倒され、呼吸するのも忘れたかのよう。

 

 しかし

 

「ちぃっ! てめぇ……」

「グロロー。下等サーヴァントにしては中々やるではないか~。しかしそれだけに実力の差を感じ取ることはできたようだな」

 

 そう。

 ランサーと武道の言葉の通り。

 

 二人共、人間の限界をはるかに上回る戦いを見せていたのだが、その上でなお、圧倒的なのが武道であった。

 何しろ武道は戦いが始まってから一歩も動いていないのだから。

 

 武道が強いのは知っていた。

 聖杯戦争のマスターはサーヴァントを見ればステータスを知ることができる能力が付与される。

 その能力で凛ちゃんが見た武道のステータスは圧倒的だった。

 ほかと比べるまでもなく、強いのだとわかるほどのステータス。

 それは、比較対象である他のサーヴァント……ランサーの登場でより浮き彫りになった。

 

 

 武道は強い!

 

 この戦いで凛ちゃんは確かな手応えを掴んだ。

 私の武道は最強なんだ、などと、10年前のどこかのおじさんみたいな事を言いたくなる気分である。

 

 

「下等……だと」

 

 しかし、そこで空気が変わる。

 元々張り詰めていた空気がより研ぎ澄まされる。

 ランサーの表情も最初の戦いを楽しむかのような顔から、今や追い詰められた獣のような本気を感じ取れるほどだ。

 

 確かにステータスにおいて武道はランサーを圧倒している。

 それでも、凛ちゃんがこの戦いは容易なものではないと気を引き締めるに十分すぎる殺気をランサーが放っている。

 

 これは、フンドシを締め直さないといけないわね。

 

 どこか緩くなりかけていた自分の心を持ち直す凛ちゃん。

 

 しかし、それを台無しにするのが凛ちゃんのサーヴァント、ストロング・ザ・武道なのだ。

 

「グロロー、下等を下等と言って何が悪い。いや、貴様など下等ですらない、たとえいかなる理由があろうと己の立てた誓いすら次々と破った貴様は下等以下の下衆人間、いや、人間以下の犬畜生ではないか~!」

 

 グロロロー!

 武道はそんなことを言ってランサーを嘲り笑い侮辱する。

 

 いや、あんたがランサーの何を知ってるって言うのよ。

 

 凛ちゃんは激しく突っ込みたくなった。

 しかし、当のランサーはツッコミどころではない。

 

「犬といったか」

「犬は犬でも、貴様など道端の痩せ犬よ。首輪に繋がれた飼い犬にすらはるかに劣る存在ではないか~」

 

 武道は天才的だった。

 煽りの天才だ。

 

「殺す」

 

 ランサーは底冷えする殺気とともに、一言殺意を言葉に乗せ、構えた。

 次の瞬間、凄まじい魔力の奔流が始まる。

 

(宝具!)

 

 事ここにいたり、凛ちゃんは己の失策を悟る。

 前日はサーヴァント召喚の疲労と、武道の威圧感に対する恐怖からうっかり気絶してしまったが、凛ちゃんは大事なことを聞き忘れていたのだ。

 それが宝具の存在。

 

 英霊を英霊たらしめる、存在証明とも言える最強の武器。

 サーヴァントのステータスを行使した戦いが肉弾戦だとすれば、宝具は鉄砲や大砲とも言える存在である。

 素手で銃を持った相手に勝てる人間は……ひょっとしたらいるのかも知れない。

 しかし、それでも不利であることに変わりはないだろう。

 宝具というのは、それほどに戦況をひっくり返すに足る切り札なのだ。

 

 その宝具の存在を凛ちゃんは今の今まで失念していた。

 武道の宝具は何か? それを聞いてすらいなかったのだ。

 

 武道が強いのは知っている。見ればわかる。

 

 それでも、果たして宝具に勝てるのだろうか……?

 もし宝具を聞いていたのならもっと安心できたかもしれないし、もしくは自分で有効な使いどころを考えることだって出来たかもしれないのに。

 

 まさに後悔あと先に立たず。

 ここに至れば、もはや凛ちゃんがあがいても仕方ない。

 ランサーの宝具は今にも発動するだろう。

 

 こうなれば、武道に勝負を託す以外のことはできなくなってしまった。

 

(頼んだわよ! 武道!)

 

 はたして武道はランサーの宝具に太刀打ちできるのか!?

 

刺し穿つ(ゲイ)

 

 ついにランサーの宝具が発動……

 

「グロロー」

 

 ぐしゃり。

 

「ぐぶっ」

 

 しなかった。

 発動前に、なんと武道のパンチがランサーの顔面を打ち抜いてしまったのだ。

 

「グロロー。たしかにゲイボルグはまともに食らってはたまらん。だが宝具なんぞというものは発動させなければよいのだ」

 

 との事である。

 

「こ、こいつ……強い」

 

 必殺技を放つ、まさにその瞬間に入った絶妙なカウンター。

 その威力は凄まじくランサーも一瞬で崩れ落ちそうになったが……そうはならなかった。

 

 英雄としての矜持か、サーヴァントとしての使命か、あるいはそれ以外の力の働きによるものか……ランサーは倒れずに踏ん張り、凄まじい速さでバックステップ、そして反転しこの場を脱しようとした。

 

「なっ!?」

 

 これには凛ちゃんも驚いた。

 ランサーがまだあんなに動けるなんて……と、言う意味ではない。

 確かにそれも驚くことだがもっと驚くべきことはある。

 それは。

 

「タトゥー! トゥーター!」

 

 撤退しだしたランサーを遥か上回る速度で追撃する武道に対しての驚きであった。

 速い疾い。

 

 逃げるランサーに後ろから追いつき、その後頭部を掴むと武道は大きく振りかぶりながら飛び上がった。

 何をするのか?

 砕くのだ。

 

「完武・兜砕き!」

 

 武道はランサーの頭を掴み振りかぶった腕を、その勢いのまま己の膝に叩きつけてしまった。

 これは強烈!

 痛そうな技ですよ~!

 

「ゴ……ゴバァ」

 

 凄まじい威力の完武・兜砕き。

 こんな技を受けてはさしものサーヴァントもひとたまりもなかったのだろう。

 ランサーは糸の切れた人形のように力なく倒れるのであった。

 

「終わった」

 

 武道はそう言い、倒れたランサーを仰向けに寝かせその両手を体の前で組ませてやるのであった。

 

 カンカンカァーン!

 

 凛ちゃんはどこかでゴングが鳴る音を聞いた気がした。




作中に反映されるのか不明だけど武道のステータス


クラス:ストロング・ザ・武道
真名:ザ・マン(またの名を超人閻魔)
マスター:遠坂凛
身長:290センチ
体重:320キロ
超人強度:9999万パワー
属性:完璧・完武
パラメーター
筋力:EX
耐久:EX
敏捷:A+
魔力:EX
幸運:C
宝具:EX

クラス別能力
巨大化:C
 巨大怪獣と戦う時には巨大化する
飛行:C
 超人なら誰でも飛べる
自決:A++
 完璧超人の掟。下等との戦いに敗れるようなら自決せよ。ただしそれは存在が極まった始祖には適用されない掟という噂も……?

保有スキル
零の悲劇:A
 相手を生身の人間にしてしまう。気合でレジスト可能。レジストできるかどうかの判定は対魔力などではなく、あくまで気合。
完武・兜砕き:A
 敵の頭を抱え込み自分の膝で砕く恐ろしい技。レンジ1。対象人数1。
武道・岩砕クロー:A
 凄まじい握力で握りこんだ箇所を砕き割る。レンジ1。対象人数1。
ワンハンド・ブレーンバスター:A
 1トンを誇るザ・魔雲天を片手で持ち上げ保持する凄まじいパワー。片手で行われるそのブレーンバスターの威力はかつてテリーマンが魔雲天に放ったブレーンバスターを上回る。レンジ1。対象人数1。
神性:A++
 元は神であったが超人を導くために神を辞め超人となったザ・マン。しかしその高潔さ、慈悲深さは他のどの神よりも、神である。しかし本人が神々に対し強い憤りを持っているために、神性のランクは大きくダウンしている。でもダウンしてなおA++である。

宝具
完璧(パーフェクト)始祖(オリジン)
ランク:EX
 ザ・マンが直々に見出し育て上げた完璧の中の完璧、超人の理想、世界を導く10人の同士。その絆は誰にも断ち切ることはできない。
凛ちゃん「8人しかいないわよ?」
武道「惑わされるな」
凛ちゃん「え、でも……6,7,8……8人よね?」
武道「惑わされるな」
凛ちゃん「武道を入れても9に」
武道「惑わされるなと言っておるーーー!!!」
凛ちゃん「は、はいぃぃぃ!」

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