ストロング・ザ・Fate "完結"   作:マッキンリー颪

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エピローグ

 遠坂凛。

 

 200年以上続いた大儀式「聖杯戦争」において、戦闘開始したその一夜で決着を付けた「完勝」の魔術師として名を知られることになる。

 と、同時に1000年続いた大家、アインツベルンの儀式を完全に破壊した当事者として魔術社会から一時期、指名手配を受けることになるが、突如として現れた超常の力を持つ魔術師二人を従え反発。

 なんと「魔術協会」という大組織を相手に一歩も引かず、むしろ相手に一定の譲渡を引き出させるほどの戦いを見せた。

 それが故に彼女は「完勝の魔術師」という二つ名が確固たるものとして語られることになるのだが本人はたいそう嫌がっていたという。

 

「だから私は完璧魔術師とかじゃないんだってば」

 

 

 

 衛宮士郎。

 

 完璧魔術師として「敗北=自決」の運命に従い生きた結果、気づいたら政治家になり政治家としても勝利し続けて将来において日本の英雄になる。

 30~40の頃は、それでも外国人から見たら「鬱陶しいやつ」という認識を持たれ嫌われてもいたのだが、さらに未来に起きた国際的な問題を解決しきったことで、国際社会からも無二の英雄として祭り上げられてしまう。

 本人はいつ失策して「自決の掟」が発動するのかわからないので、さっさと引退したいのになかなか後任を見つけられなくて困る。

 色々と女性関係でスキャンダルが多そうなのだが、衛宮士郎を探るブン屋さんはなぜか気づいたら自分の持つ全データを破棄して大通りで裸踊りをしていたりして、いつからかマスコミも衛宮士郎を狙ってはいけない、という暗黙の了解が出来てしまうことになるのだが、その真相は表沙汰になっていない。

 もし未来において聖杯戦争のようなシステムで英霊として呼び出されることになれば「古の神秘」を纏わない英雄でありながらも、最大級の英霊として降臨しそうな勢いである。

 クラスは「セイヴァー」で確定だろう。

 

「なんでさ」

 

 

 

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

 ホムンクルスから人間になった存在、という事で実家から緊急収集の令が下るがガン無視。

 追っ手もやってきたが全部を同居人が返り討ちにしてくれたので安泰である。

 仲のいいメイドも実家より自分を選んでくれたこともあり悠々自適な毎日を過ごす。

 復活した母親と失った時間を取り戻すように幸せな人生を歩んだという。

 なお、隣に住む藤村大河とはそれなりに仲がよく、よく衛宮邸の道場でイリヤは体操服(ブルマ)を、大河は剣道着を着て遊んでいたりするのだが、その様子を見た衛宮士郎は何だか知らないが不思議な記憶が刺激される気分になったとか。

 きっと気のせいである。

 それなりに運動を頑張ってスポーツ万能になって、学生の大会などでも優勝、入賞を果たして人生をエンジョイすることとなる。

 

「これからは解説役じゃなく、私が選手になるわ!」

 

 

 

 桜。

 

 間桐の家には置いていられない。

 それは彼女の周りの人間全員による一致した意見となった。

 魔術師としての才能もなくなり暗示をかけやすくなったことも手伝い、とりあえず暗示をかけた。

 その暗示は「桜はアインツベルンの家に預けられることになった。そしてそこのイリヤが父親の実家、ということもあり衛宮家で世話になるために、イリヤと一緒に衛宮の家で世話になる事とする。他所の家の養子になった、とはいえ10歳年上の姉とは会いたいときに会えるくらい緩い関係である」と言うもの。

 姉の遠坂凛との姉妹仲も良好、時々年齢差に違和感を感じることもあるらしいが上手いフォローを繰り返すうちに、次第に違和感を感じなくなった。

 ちなみに本人にかけた暗示より、その周りの人間関係にかけて回る暗示の方が大変だった事は言うまでもない。

 将来の夢は士郎のお嫁さんらしいが、士郎がどちらかというと巨乳派であり、自分が10歳も年下なので中々焦れているが、将来は高確率で巨乳になるので焦らずに頑張るといい。

 

「食べ物の好き嫌いはダメってわかるけど……どうしてかワカメは好きになれません」

 

 

 

 間桐慎二。

 

 間桐の家の魔術的なとしての資料、その他を売り払いひと財産を得たあとは故郷の冬木を逃げるように離れ、魔術と関係のない普通の、だけど人並み以上には成功した人生を送ったと思われる。

 

「もう魔術なんてこりごりだよ」

 

 

 

 言峰綺礼。

 

 自主して法の裁きを受ける。

 とは言え、そもそも自分の命にそれ程の価値を感じていない自分である。仮に死刑の判決をくだされたとてなんとも思うまいよ。

 そう思っていた。

 そして、実際に死刑になることはなく、それどころか終身刑ですらなく40年程、ひょっとしたらそれより短くなる程度の刑期だと言われ、この程度の裁きは私になんの苦痛ももたらすことはできない、と、最初は哂っていた。

 しかしその余裕は数ヶ月しないうちに崩れ去る。

 美しいものを美しいと感じれない異常性、他人の不幸を己の幸福とする邪悪さ、それは己一人のものではなく、当たり前に常人が持つ感情の一つでしかないということを刑務所の暮らしの中で知ってしまう。

 さらに、自分以外の囚人の邪悪さ、邪悪でありながらもそれを誇ることもなく、諦めることもなく、特別視することすらない者の「己は普通である」「捕まるのは理不尽だ」などという身勝手な主張がまかり通るという現実は、自分の若かりし頃から積み重ねた苦行の全否定。

 衛宮切嗣以上に許容しがたいものであるのに、自分たちを取り締まる看守たちから、そんな自分をも肯定し向き合い、更正させようという精神性を見せられ、自分の小ささをより浮き彫りにされることとなり苦痛の余生を送ることとなる。

 ただの苦行であればいくらでも受け入れることはできても、許され肯定され続けるという「ぬるま湯」は言峰綺礼にとって想像を絶する地獄になったらしい。

 さらに言えば仮にもキリスト教徒の言峰綺礼に自害は許されず、ただただ苦痛を耐えるしかできない事実はより神経をすり減らす結果となったようだ。

 今は自分の刑期が終わり、この地獄から抜け出せる日々をひたすら祈っている。

 

「私は……なぜだ……罪とは……悪とは……私は一体なんなんだ……」

 

 

 

 アイリスフィール・フォン・アインツベルン。

 

 ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルンの記憶と人格がリセットされたことで、アイリスフィールの人格、記憶が現れたことで、諦めていたイリヤとの親子生活が再開したことを喜んでいる。

 魔術師の家の娘であった事がアイデンティティの一つでもあるので、魔術回路が完全になくなったことはそれなりにショックだが、娘との暮らしの前には些細なことらしい。

 実家からの帰宅命令は完全無視。イリヤから聞いたアインツベルン家での暮らしや教えられていたことを聞いて、もう実家に対する思いは完全になくなってるらしい。

 夫である切嗣の息子である衛宮士郎も息子として受け入れてはいるけど、若干距離感を掴みづらいのが目下の悩み。

 隣の家の藤村大河に対しては、どうもソリが合わないのか会うたびに必要のない挑発をしたりしている。

 ついでに現在の自分の肉体年齢を「18歳」と言い切っているので、イリヤの年齢から逆算して「切嗣ってそういう人なのよ」などと言って藤村大河をからかって遊んでいる。嫌っているわけではないらしいのだが。

 遠坂の用意した戸籍の年齢も本当にそうなっているので、書類上切嗣はとんだロリコン野郎として記録に残ってしまうが……些細な犠牲であろう。

 

 

「いや、まぁ……実年齢を考えると切嗣って0歳児とヤッてた訳だし……まるっきり風評被害じゃないわよね?」

 

 

 

 

 

 

 ランサー「クー・フーリン」

 

 聖杯に望んだ願い、ある意味叶ったと言えるのだがなんとも釈然としない。

 しかし敗北は自分が相手より弱かっただけ、と受け入れる度量はあるので納得はしてる……はず。

 

「今一気に食わんがまぁまぁだったな。できれば次は勝てなくていいから互角くらいの相手と戦いたいもんだ」

 

 

 

 セイバー「アルトリア・ペンドラゴン」

 

 カムランの丘で一言呟いた。

 

「なんでさ」

 

 

 

 バーサーカー「ヘラクレス」 

 

 一時期人間になりかけたが拒否したので英霊のままである。

 英霊であるより生きた人間としてイリヤの守護者をした方が良かったのかもしれないが、それでもきっと自分の選択に後悔はない。

 

「あの子も救われたみたいで本当に良かった」

 

 

 

 アーチャー「ギルガメッシュ」

 

 誰かがふと思った。

 あれ? ギルガメッシュって別に人類最古の英雄でもなければ伝説の原点でも何でもないような気がするぞ?

 と。

 特にそれを証明する歴史的発見はなされていないのに、何故かその考えが世界中に浸透してしまう。

 

「馬鹿な……この(オレ)がなぜこんな……」

 

 

 

 キャスター「葛木メディア」

 

 武道の零の悲劇で英霊でなくなり人間となったメディア。

 実は英霊の座からもその身分が剥奪されたのだが、本人にとってはむしろラッキー。

 望むところ。

 愛する夫とイチャイチャしながら時々、遠坂からの頼まれごともこなして雑魚魔術師相手に無双し、陰険な姑のような小僧に溜め込まされたストレスを発散して人生をエンジョイしている。

 

「ひゃっほう! やったー!」

 

 

 

 アサシン「佐々木小次郎」

 

 本当は佐々木小次郎じゃない、ただの浮遊霊だったので浮遊霊に戻った。

 閻魔大王に負けたのがそれなりに悔しく、死んでも地獄には落ちてやらないと今日も成仏せずに浮遊霊生活をエンジョイしている。

 時々メディアからの命令で柳洞寺でラップ現象を起こしてメディアにとって陰険な姑の如き小僧をビビらせる仕事をする事に。

 

「きゃつめ、まさか聖杯戦争が終わってまで幽霊使いが荒いとは思いもせなんだわ」

 

 

 

 ライダー「メドゥーサ」

 

 メディアと同じく、英霊の座から名前が削除されてしまい、姉たちとの繋がりが絶たれた気分でショックを受けたが、大事なのは記録などではなく真実の記憶、と思うことで落ち着いた。

 桜を守り続けるために、ということで戸籍の上ではアインツベルンの人間、として世間的には「イリヤと桜の姉」として衛宮家に住む事に。

 サーヴァントでもないので吸血の必要もなく、普通の暮らしをしているけど街で可愛い女の子を見たらなんだか疼くので、ひょっとして自分は性癖が変なのでは? と、少し悩んでいる。

 基本的に桜が大事、一応はイリヤも守ってあげる、というスタンス。

 

「桜の通う児童学校の生徒にも中々かわいい()が……いやいや、私はノーマル、ノーマルのはず……うぅ」

 

 

 

 

 

 

 そして……超人墓場。

 その深奥、超人閻魔の間にて、男が一人。

 石造りの重厚な椅子に気だるげに座るが、その眼光の鋭さに気だるげな空気は一切ない。

 彼は既に決意している。

 己のなすべきことを。

 先程まで、自分の一欠片を飛ばして行っていた戦いは所詮は前哨戦に過ぎない。

 

 だが、やる事は同じである。

 正さねばならぬ。

 そのためには粛清が必要だ。

 

 だからこそ、立つのだ。

 

 重々しい動きで椅子から立ち上がり、向かう。

 次代のために。

 

「グロロロー。さあ行くぞ!」

 

 ストロング・ザ・武道は動く。

 これから始まる戦いのために。




これにて本編部分は完結です。
「”完結”ストロング・ザ・Fateー! グロロー!」

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