ストロング・ザ・Fate "完結"   作:マッキンリー颪

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第2話

「……?」

 

 朝である。

 登校である。

 

 遠坂の家訓、いついかなる時でも優雅であれ。

 サーヴァント召喚、そして呼んだサーヴァントがかなりの曲者であったことによる精神的ストレスなどから、体調は良くない凛ちゃんだが、そんな不調を表面には出さずに普段通り、優雅な登校をしているのだが……

 

(なにかしら? 妙に視線を感じるわ)

 

 周りの態度に不審を感じる。

 しかし、その不信感を無遠慮に出すのは優雅とは言えない。

 だから凛ちゃん、なるべく普段通りの登校をする。

 

 ズシンズシンと、背後に続く足音が聞こえないままに。

 

 

 

 そして学校に到着した。

 

 ざわっ!

 

 凛ちゃんの登校に合わせたように、校舎の雰囲気が一変するが、凛ちゃんは周りの生徒たちにことさらなにを見ているのか、などと聞かない。

 いついかなる時でも優雅なのだ。

 

 それに、凛ちゃんにとって気にすべき点はほかにあるのだし。

 

「グロロー。凛よ、気づいたか?」

「ええ、この学校……結界が張られてるわ!」

 

 凛ちゃんは学生でもあるが、その本質は魔術師であり、今は聖杯戦争に参加するマスターなのだ。

 だから凛ちゃんにとっての優先順位は、魔術関連、聖杯戦争関連のものが上に立つ。

 その凛ちゃんは学校に何らかの魔術的な細工がされてるのを感じ取っていたのだ。

 

(それにしても武道も感じたなんて……この結界、かなりわかりにくい感じなのに、大したものだわ)

 

 凛ちゃんにとっては普段から通う学園であり、今日はなんだか生徒の態度が変だな~? と思ったから深く観察し、ようやく気付けたような結界。

 それを一発で看破する武道に対し、付き合うのに精神力がゴッソリ持って行かれそうだけどすごいサーヴァントでもあるのだと、評価を上げた。

 

 とはいえ、今すぐに魔術師として動くわけでもない凛ちゃんは、そういった内面の感情は表に出さずに、教室へ向かう。

 後ろにズシンズシンと響く足音が聞こえないままに。

 

 

 

(おかしいわ……やっぱりおかしい!)

 

 凛ちゃんは学校の人気者。

 だからいつでも、ニコリと笑えば相手も笑顔になるのが定番。

 だというのに、偶然目があった生徒に笑顔を向けても

 

「ひっ!」

 

 と、目を逸らされる。

 意味がわからない。

 これは一体?

 

「武道、これって私に何らかの暗示をかけられた、とかいうことかしら?」

「グロロロー、私の見た限りお前自身に何かをした訳ではないはずだ」

「そう……よね」

「ウム。そして周りの下衆人間どもも特別なにかをされてるわけではないようだぞ」

 

 ならば一体、何で生徒たちの視線が変なのだろうか?

 ついでに言えば、教室に入った担任の教師も凛ちゃんを見るなり

 

「ゲェー!?」

 

 なんて大声を上げながらも、凛ちゃんが

 

「どうかしました?」

 

 と聞けば

 

「ななな、なんでもありません!」

 

 と返事する。

 全く意味がわからなかった。

 

 

(この学校にかけられた結界で、魔術の素養のない一般人が魔力を持つ魔術師を見たら恐怖を感じるような暗示でもかけたというの? そんな魔術があるのなら、魔術師を見つけるという一点に関しては優れた結界だけど……)

 

 

 しかしそんな結界をこの学園に張る意味がわからない。

 よほどのモグリ魔術師でもなければ、凛ちゃんが遠坂の現当主でありこの冬木の街を管理する魔術師であるということは、知っていて当然の情報なのだ。

 凛ちゃんが聖杯戦争の参加者であるか、魔術師であるか、そんな事はわざわざ探ろうとしなくても知っていて当然の情報、のはず。

 ましてやこの学園に凛ちゃんが通っていることまで調べがついているのなら、凛ちゃんを察知するための小細工など必要ないはず。

 

(それとも、この学校に私以外のマスターが? ……ないわね。慎二にマスターの資格があるわけないし、桜が参加するとも思えない。じゃあ私と桜以外の魔術師がこの学園にいる? ……ないわ)

 

 ならば生徒たちの態度と結界は無関係?

 だったら一体なんで周りのみんなはこんな態度なのだろう。

 

 凛ちゃんはそんな事を考えながら、学業をこなしていったのだが……

 

「あれー? 遠坂さん後ろの人は誰? 保護者の方かしら。ダメじゃないの学校に保護者の方を同伴するなんてー」

 

 と、ほかの生徒や教師と違い、態度がいつもと変わらない藤村先生が言った。

 

「え? 後ろ?」

「呼んだか?」

 

 凛ちゃんが後ろを振り向くと、でかく、ごつく、ぶあつい体躯のストロング・ザ・武道がそこにいた。

 バッチリ実体化したままで。

 

「うわお」

 

 これには凛ちゃんも絶句するしかなかったという。


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