やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。 作:AIthe
青春とは嘘であり、悪である。
青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き自らを取り巻く環境 を肯定的にとらえる。彼らは青春の二文字の前ならば、どんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。
彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗さえも、青春のスパイスでしかないのだ。仮に失敗することが青春の証であるのなら友達作りに失敗した人間もまた青春のド真ん中でなければおかしいではないか。
しかし、彼らはそれを認めないだろう。すべては彼らのご都合主義でしかない。結論を言おう。
青春を楽しむ愚か者ども、砕け散れ。
なんて思ってた時期が僕にもありました。こんな作文を書いて提出してみれば、「生き遅れ 何歳から」とか「婚活 千葉」なんて検索していてもおかしくない平塚先生に愛の暴力を振るわれ、奉仕部とかいう雪ノ下に罵倒されるだけの部活に入る羽目になった。
それから由比ヶ浜が来てクッキーと言う名の大量殺人兵器を生産したり、天使(戸塚)のテニス部を手伝ったり、天使と挨拶したり天使とお喋りしたりもう俺戸塚と結婚するわ。
そんなこんなである日。俺の通う総武高校で男子にのみ、IS適正検査が行われる。ISとは世界最強のパワードスーツ型の兵器である。詳しくは知らないが、その兵器は女性にしか扱えず、世界に四百機程しか存在しないらしい。
この兵器の登場により男女のパワーバランスは崩壊し、世界は女尊男卑が当たり前になった。が、そもそも女子と話さないぼっちの俺には無関係。ぼっち最高。
では、何故男子にIS適正の検査をするのか。
答えは簡単。つい最近、世界初の男性IS適正者が見つかったからだ。テレビや新聞のメディアはそれを大きく取り上げた。たしか織m‥‥織なんとかさんだった。我が愛しの妹小町とテレビを見ながら、「この人顔もイケてるし、モテるんだろうねー。」なんて話をしていた記憶がある。ああもうリア充爆ぜろ。
「はい、次の人。」
「あっ、ひ、比企谷八幡です。」
「あっ」てなんだ「あっ」て。八幡緊張しスギィ!
まあ、織なんとかさんみたいな
俺は男心をくすぐる見た目をしたパワードスーツに、恐る恐る手を伸ばす。
すると、突然そのパワードスーツが光を放ち始め───
「ISが反応した!?」
「し、至急連絡を!」
「ヒキタニくんマジパネェー!」
「ヒキタニくん‥‥なんで‥‥‥」
武者を模った灰色の装甲が、俺の全身に纏わりついていた。
女性にしか反応しないISが、俺に反応してしまった(意味深)。これはマズイ。
俺はどうなっちまうの?教えてエロい人‥‥‥‥‥あと小町‥‥‥‥‥
───2───
その後、テンプレ的な黒服の方々に両腕を掴まれ、これまたテンプレ的な黒いリムジンに乗せられた。
高一の始めに似たような車に轢かれた事を思い出し、少しだけ顔を顰める。
隣には平塚先生が深刻な面持ちで座っている。きっと婚活の事で悩んでいるんだ。うん、そうに違いない。むしろそうであれ。
「比企谷。なんかすまんな。」
「某パズルゲームプロデューサーのみたいなこと言わないで下さい先生。俺は大丈夫ですよ。」
全然大丈夫じゃないですマジ助けて下さい。
ISが動かせちまったせいで、明るい未来(専業主夫)が見えない。マジ深淵見えちゃう。このシナリオは虚淵さんが担当なのかな?
真面目な話をすると、俺は家族が───特に小町が心配だ。二人目のISを動かした男性として俺もメディアの注目を浴びることになるだろうが、その被害が小町に加わるかもしれない。親は大人だから問題はないだろうが、小町はまだ学生だ。この数十分だけで俺がここまで疲弊しているのに、小町がそれに耐えられるとは思えない。
「‥‥比企谷。お前は優しいな。」
「人の心配してないで、先生は結kグフゥ!」
愛が重いです先生。死にます。結婚できない理由がわかった気がします。
「‥‥恐らく妹の事が心配なのだろうが、私に任せておけ。教員としてではなく、私個人がお前の為に、お前の妹の事を見ておいてやる。」
完全に見通されている。平塚先生はこんなに優しいのに何故結婚できないんだ‥‥誰か貰ってあげてよぉ!
「で、俺はどうなるんですか?」
研究所のモルモットとかになったら死ぬ。物理的にも、精神的にも。
もしかしたら、どこぞの劣等生の様に魔改造されるかもしれない。俺は妹への愛以外の感情がない的な?あの劣等生も千葉県民なのか?もうこれわかんねえな‥‥‥‥
「あの織斑一夏と同様、お前もIS学園に入学する事になるだろうな。それも明日から。」
「はぁ‥‥IS学園‥‥‥‥‥」
名は体を表すというが、まさにその通りだ。IS搭乗者を育てる学園。以上。
ということは、生徒は女子ばかりという事になる。いやー、ハーレムだ嬉しいなぁ(棒)。
確実にストレスで死ねる。次の日に発作を起こし、冷たくなった比企谷八幡が見つかるレベル。
余談だが、IS学園は東京にできる予定であった。が、空いている土地の少なさとか様々な事情があり、千葉に建てられている。これ千葉県民キレてもいいよね?東京ディスティニーランドもそうだけど東京都民千葉に色々押し付け過ぎ。俺が新世界の神だったら拾った黒色のノートに名前書き連ねちゃってる。
というより千葉県色々あり過ぎだろ。ディスティニーランドにIS学園、お兄様もいらっしゃるなんて‥‥なかなかできることじゃないよ(白目)
「毎日連絡するからな。」
「結構です。」
怖えよ。毎日とか愛が重いよ。愛が重い‥‥結婚ができない‥‥あっ(察し)
「そんな顔をするな。雪ノ下にも由比ヶ浜にもまた会えるさ。」
「‥‥‥‥そうですね。」
二人の顔が脳裏をよぎる。
俺は車に揺られながら、先生に今の顔を見せぬように俯いた。
───3───
今日のところリムジンで贅沢な帰宅をした俺は、帰り際平塚先生に肩を叩かれ、「ガンバレ」と励まされてしまった。なんで結婚できないんだ(三度目)。
というか帰宅するならリムジン乗った意味無いよね?
家に入ると両親と小町が玄関で待っており、何故か歓迎ムードを出していた。おかしい。こんなの絶対おかしいよ。
色々事情を説明して、現在比企谷家の居間。今日の事を小町に相談していた。
「と、いうわけなんだが小町。」
「うんうん、つまりお兄ちゃんのお嫁さん候補が増えるってことだね!あ、今の小町的にポイント高い!」
「話聞けよ。」
話聞いてないとかお兄ちゃん的にはポイント低いです。なんなのこの妹、兄の悲劇に心の底から嬉々としてるんだけど。
「でも、IS学園って全寮制だから小町登校するの面倒になっちゃうな。」
お兄ちゃんは登校に便利な自転車程度にしか思われていなかったのか‥‥‥絶望した!
「あ、お兄ちゃんホーシブはどうするの?」
「奉仕部な。そりゃあ、辞めるしか無いだろ。」
「ほうほう‥‥‥」
あそこは案外気に入っていたのだが、仕方がない。まあ、雪ノ下も由比ヶ浜も、俺が総武校から去って数ヶ月もすれば関係も切れてしまうだろう。所詮、部活動なんてそんなものだ。
だが、小町は疑わしげな表情を俺に向けてくる。まるで、飲み会を残業と偽る夫に「今日どこに行ってきたの?」と問い詰める妻のようだ。小町は俺の奥さんだったのか‥‥いや、俺には戸塚がいる。(戸塚と結婚する事を)強いられているんだ!
「最近のお兄ちゃん、とっても楽しそうだったよ?」
「そんな事ないぞ。俺はいつでも楽しく人生を送ってる。むしろ楽しくない人生を送っていないまでである。」
「ふーん、お兄ちゃんがそう言うならそれでいいけど。部活の人を大事にしなよ?」
「へいへい。」
なんだか面倒になりそうなので会話を適当に流し、砂糖たっぷりのヌルいコーヒーを喉に流し込む。
「じゃ、そろそろ荷物準備するわ。もう明日からIS学園に行かなきゃいけないからな。」
「うん、小町も手伝ったげる。」
「いいって。受験勉強でもしてろ。」
そう言い残し、考えたくもない明日からの生活の準備の為、俺は自分の部屋に戻った。
「お兄ちゃんがいない総武校なんて‥‥‥‥‥」
そんな小町の呟き声が聞こえた気がしたが、俺にはそれを聞き届ける勇気がなかった。
その夜、準備を終えた俺は、逃げるように布団に潜り込んだ。
次話から頑張ります。