冒険者に憧れるのは間違っているだろうか   作:ユースティティア

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早いものでこの小説を書き始めて早一月。飽きっぽい作者がここまでかんばって書けたのも読者である皆様の感想などによる温かい言葉のおかげです。本当にありがとうございます。そしてどうか、これからも宜しくお願いします。

そしてなんと、お気に入りが1000件を突破いたしました! 本当にありがとうございます! これからもがんばっていきます!

と言いながら今回は短いです。


奇妙な特訓

 ベルをアイズさんと引き会わせ、立ち去った俺は自宅に向かっていた。ベルに言った通りそもそも今日は仕事の日なのである。ここ最近は遠征で営業していなかったので久し振りの仕事である。

 

 そんなことを考えながら中央広場を通りすぎ、東のメインストリートを歩いている時だった。その人を見かけたのは。

 

 銀髪に犬科の耳。つい最近、命を預け合い共に戦った人。なぜか未だに気にくわない人。

凶狼(ヴァナルガンド)】、ベート・ローガさんである。彼は道行く人を眺めていた。いや、あれは誰かを探しているのか? 彼の交友関係はとても狭そうだからこんな冒険者がいないエリアで見かけるのは正直意外だった。

 

 まあ関係ないだろう、と思い自宅へ向かい歩き出そうとして……ベートさんと目が合った。そしてそのまま俺の方に近づいてくる。

 

「えっ?」

 

 俺の目の前まで来たベートさんはとても不機嫌そうな顔をしていた。

 

「よーやく見つけたぞ、蛇野郎」

 

 どうやら俺を探していたらしい。

 

「あの、俺に何か用ですか?」

「でなきゃこんなとこ、来ねえよ」

 

 ああ、このひどい言い草はやはりベートさんだ。一瞬とてもよく似た人か、生き別れの兄弟か何かかと思っていたのだが。

 

「どのようなご用件で?」

「ここじゃなんだ、場所を変えるぞ」

 

 そういうとさっさと歩いていってしまう。

 

 有無を言わせない言葉にイラつきながらも、ここでついて行かないのはなんか負けたような気がするので大人しくついて行くことにした。

 

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 ベートさんに連れて来られたのはオラリオの街外れにある倉庫だった。広さは大体『中層』のルームほどの大きさだ。

 

「あのベートさん」

「なんだ?」

「前から思ってたんですけどその蛇野郎ってどういう意味ですか?」

 

 ここまで無言でついてきたがいきなり本題にかかるのもあれなので気になっていた俺への呼び名について聞いてみる。【シャドー・デビル】なんて呼ばれているが、あれもあれで嫌だがそれ以上になんか癪に触った。

 

「蛇みたいな殺気出すから蛇野郎だ。んな下らないこと聞くな」

 

 返ってきた答えはさらにこちらを困惑させた。蛇みたいな殺気とは何だろう? 殺気というのはおそらく怪物祭(モンスター・フィリア)の夜に脅した時に出した殺気のことだろう。だが殺気が蛇みたいってなんだ?

 

 とりあえずわからないからそれを置いておいて本題に入る。

 

「で、本題ですがこんなところに連れてきて何をさせるつもりですか?」

 

 問いの答えは高速の蹴りだった。5M(メドル)の距離を一瞬で詰め寄り右のハイキック。予測できていたのでかがんでかわし、足払いをかける。跳んでかわされるがこれも予測できていたのでスキルによる空中迎撃。わずかだがベートさんの戦闘衣(バトル・クロス)を擦った。

 

 再び距離をとるベートさん。

 

「今ので確証した。てめえ俺の動きについて来れるな?」

「ついて行けるというか、予測しているだけです」

「どっちも変わんねえよ。いいから俺の訓練に付き合え」

「……は?」

 

 突然の頼み?事。いや、もはやこれは命令に近い。当然意味がわからなかった。

 

「ちょっと待ってください。なんで俺なんですか? 俺はベートさんが嫌いな下級冒険者(ざこ)ですし、【ロキ・ファミリア】でもありません。俺に頼むのは筋違いではないですか?」

「あいつらに頼み事とかできるかっ。それにてめえは雑魚だがただの雑魚じゃねえ。あの変態野郎と戦って生き残ったんだ。なんか秘密があんだろ? 一人でじゃ効率わりぃし、てめえが一番手っ取り早いんだよ」

 

 えーっと、つまり。同じ【ファミリア】の人には知られたくない。かといって一人だと効率が悪い。そこで俺に白羽の矢が立ったと。

 

 ……こういう人なんて言ったかな? ……そうだギャップ萌えだ。……やっぱりなんか違うな。

 

「わかりました。けど、俺にも予定とか都合があるのでその辺を少し考慮していただきたい」

「あん?」

「具体的にはですね-」

 

 そこから俺とベートさんの特訓のスケジュールについての話し合いが始まった。意固地になるベートさんをなんとか説き伏せ、期限は【ロキ・ファミリア】の遠征まで。俺が仕事の日は特訓は休み。時間は朝から夕方までとなった。

 

 ……本当は今日も仕事なのだが、この際仕方がない。レフィーヤには後で謝っておこう。確か北の外れにあるお店のスイーツが美味しい、って噂をお客さんから聞いたことがあるからそれを持って。

 

「最後にですね……」

「まだあんのかよ……」

「これで最後ですから」

 

 うんざりしているベートさんに忠告をする。

 

「俺のこの影ですがある能力があります」

 

 影を出し、体を覆う。これで大抵の攻撃を防ぐことができるだろう。

 

「その能力とは『神の力(アルカナム)』の無効化。つまり俺は【ステイタス】を無効にすることができます」

「!」

 

 俺の言葉に初めてベートさんが驚愕する。能力をしゃべったことに対して。能力の効果に対して。

 

「ですからこの影の攻撃は貴方の耐久の値を無視してダメージを与えます。この影の防御は貴方の力の値を無視して防ぎます」

「はっ、おもしれぇ」

 

 この言葉を聞いてベートに笑みがこぼれる。

 

「てめぇを訓練相手にしたのは間違いじゃなかったらしいな」

「俺も第一級冒険者の技、盗ませてもらいますよ」

「はっ、ぬかせっ!」

 

 互いのボルテージが上がっていく。そんな中、背中の【ステイタス】が熱を持ち始めた。

 

 どんどん熱くなり、まるで中から焼けるような。しかしそこから力が沸き上がってくるような、不思議な感覚。

 

 心当たりは1つ。新スキル、【挑戦者(フラルクス)】。その能力補正。どこまで通用するかわからないが、一方的な展開だけは避けられそうだ。

 

「いくぞ、蛇野郎。くたばるんじゃねえぞっ!」

「だったらちゃんと手加減してくださいよっ!」

 

 そして、激突。

 

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「ふふふ、あの子もまた強くなったみたいね」

 

 白亜の塔バベル。その最上階。銀髪の女神が一人静かに微笑んでいた。

 

「でも少し強くなりすぎかしら? これではあの子の試練の妨げになってしまうかもしれない」

 

 銀髪の女神にとって最も重要なのは白兎の冒険者の成長。漆黒の冒険者に対する想いは興味止まりでしかない。

 

「そうね……ヘグニ、ヘディン」

「「はっ」」

 

 暗闇から二人の人影が現れた。団長のオッタルがいない代わりにフレイヤの側に控えていたエルフとダークエルフだ。

 

「オッタルと合流してあの子にも試練を与えるようにして。あくまで足止め程度でかまわないわ」

「「承りました」」

 

 二人は静かに消え、銀髪の女神の楽しげな笑い声だけが部屋に響いていた。




ベートの口調、すっごく難しい。あとやっぱり訓練に入る件がぐだぐだ。もの凄く拙い回になってしまった……。申し訳ありません。

後、感想にてベルが活躍するだけだったら原作読んだほうが早いじゃん、というコメントをもらいました。確かにその通りなのですが、この章、トキは活躍しない代わりにベルとトキの関係が若干変化する章となっています。ですからどうか見捨てないでええええええええっ‼

ご意見、ご感想お待ちしております。

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