御影悠の日常彩る化学式   作:月宮如月

9 / 21
早く夏休みならないかな~
4日間だけだけど……


第9話

 

 

俺がふざけたタイトルの本に火をつけようとした時、カナに止められた。

 

「ちょっ!? 悠君何しようとしてるの!?」

「えっ?何って焚書」

「焚書!?いくらふざけた本でも、そんなことしちゃだめでしょ!」

「あっそうだよな。ちゃんと外で焼かないと」

「それもちがーう! まずその火を消しなさい!!」

 

それにしても随分と変わった本があるな。

部室の本棚には実験の本や文化祭などに出したであろう冊子が置かれている。一部関係なさそうなものもいくつか見られるが、それにしても……

 

「メガネ部長~このふざけたタイトルの本いったいどうしたんですか?」

「まて、御影!お前まで俺をメガネというのか!?おい、月宮!お前がメガネ言うから御影まで真似したじゃないか!」

「ふっ、私の所為ではないだろう。そのメガネの方が貴様自身よりも存在感を上回っているだけだろう?」

「ところで部長の名前ってなんでしたっけ?」

「忘れていたのか!?だからって月宮のまねはするな!修だ!三日月修、ちゃんと覚えておけ!!」

 

まぁ冗談だけど。月宮先輩がメガネ言うからついね。

 

「なになに、あっそれ見つけたんだ。懐かしいな~。たしか兄さんが買ってきたんだよね?」

 

結衣先輩が近づいてきて本を取ってパラパラとめくりだした。

っていうか修部長が買ってきたんだ。

 

「あぁ確か1年前に俺が買ってきてここに置いておいたんだったな」

「兄さんは二次元にしか興味ない変態だからね。だからってこんなのを買って勉強するなんてひくよ」

「そうだ、こいつは萌え豚というやつだ。キモいだろ」

「お前ら好き勝手言いやがって……」

「なるほど部長はオタクと」

「まぁ別に隠しことでもないが、さすがに2次元にしか興味ないってことはないぞ。2次元とには2次元の、3次元には3次元の魅力があってだな……」

「なぁ結衣お前のバカ兄がなんか語りだしたぞ。こいつ追い出さないか?」

「桜花さん放っておこうよ。ミカッチ、カナちゃんこんな人間になっちゃ駄目だよ」

「「あっ、はい」」

 

さすがにこれは引きますよ。桜花先輩に言われなくてもこうはなりたくないよ。

修部長が語っているのを無視し、桜花先輩と月宮先輩は本棚の中を眺めていた。

 

「それにしてもいつの間にかに随分と増えているよね。ほら小学生の理科の教科書まであるよ」

 

確かに小学生から高校生までの理科関係の教科書が置いてある。小学生のは明らかに必要ないだろ。と思いつつ、俺達はついつい小学生の教科書を取って読み始めた。

 

「うわぁ~なつかし、そういえばこんなことやったよね」

「たしかにな。いまこうやって読んでみるとなかなか興味深いな」

「そうですね。小学生のころを思い出してしまいますね。あっカナ、これ覚えてる?」

「うっそれってたしか……」

「えっ、なになにミカッチ何か見つけたの?」

「ん?これはたしか塩の結晶をつくる実験だったな。飽和水溶液を用いた」

 

そう、塩をお湯に溶かしてモールなどを浸して塩の結晶を作る実験だ。

小学校でこの実験をやった時のことを思い出した。懐かしいな。

 

「この実験、カナだけ結晶がなかなかできなかったんですよ」

「それでこっそり家に持ち帰って接着剤で塩をつけて戻そうとしたんですけど、悠君が先生にバラしちゃんたんですよ」

「ミカッチ、そこは黙っておいてあげようよ……」

 

 

 

 

「というわけで今日はカナちゃんのリベンジをしょう!塩の結晶をつくろー!!」

「おー!!」

「おー?」

 

なんか実験をすることになった。だが修部長と月宮先輩はやらないそうだ。修部長はやることがあるそうなのでどこかに行った。月宮先輩は「イベントが17時まで、今から追い込みをかける!」とか言って携帯をずっと操作している。

 

「結晶を作るのはいいですけど塩って置いてあるんですか?」

「そのくらい食堂でもらえると思うよ。よしカナちゃん!今から食堂に行って塩をもらってくるのだ!私たちはその間お湯の準備をしている!」

「わかりました!結城彼方行ってきます!!」

 

カナは結衣先輩に敬礼をして食堂に向かっていった。カナを見送った後、結衣先輩と準備に取り掛かった。といってもビーカーを用意してお湯を沸かして、モールで形を作るだけだが。

 

「あれ?そういえばモールなんてなかったかも」

「えっ、ないんですか?まぁないなら仕方ないですよ。代用できるもので……」

「形はどうしようか?無難に星とか丸にする?」

「いえ、俺にいい案があります。ちょっと待ってください」

「うわっミカッチ器用だね!」

 

準備を進める数十分。カナが塩を手に戻ってきた。

 

「お塩貰ってきたよー!準備できてる?」

「おぉカナちゃん戻ったか~。準備はばっちりできてるよ!」

「戻ってきたか。それじゃコイツを頼んだぞ」

 

そういい針金とタコ糸で代用して作ったカナをかたちどったものを渡した。

 

「悠君何作ってるの!?」

 

 

 

 

 

「それにしてもよくできてるね。悠君ほんと無駄に器用だね」

「よくできてるだろ。モールがなかったんで針金とタコ糸で代用してみた」

「まぁそれよりも早く塩を溶かしちゃおうよ。お湯が冷めちゃうよ」

 

お湯に溶かせるだけ塩を投入して、その塩水にカナを入れた。

 

「よし、これで大丈夫だよね。これって明日にはできるのかな?」

「あれ?どうだったっけ。結衣先輩わかります?」

「う~ん、ちょっと調べてみるね。え~とっ、うん。2、3週間でできるみたい」

「「長っ!!」

「そんなに時間かかるんですか!?」

「そういえば教室の後ろでずっと放置していたような」

 

思ったよりも結晶ができるのが遅いことに驚きつつ結衣先輩が補足をしてくれる。

 

「ミョウバンならすぐに結晶ができるみたいなんだけどね~。うちにはないから」

「ミョウバン?あ~なんか教科書にありましたね。たいした説明はされてませんが、なんかキレイな結晶が」

「でも2週間ほど様子見か~。とりあえず勝手にかたずけられないように閉まっておかないと」

 

そういいカナはビーカーを持って置き場所を探し始めた。

 

「よし、ここに置こう。もしかしたらここから新しい生物が生まれるかも」

 

カナは塩水に浸っている自分をかたちどったものを見ながらそう呟いた。

カナは何言ってるんだろう。いや、カナの形をしたのを入れたわけだからもしかしたら……。なんて少し思ってしまった。

 

 

 




塩の結晶?
僕の学校ではやらなかったけどなにか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。