やはり俺の青春は仮想現実の中でも間違っている   作:レオン・デュミナス

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SAOのプログレッシブ買って読みました、今回はその内容を織り交ぜて進行します。序盤は八幡の苦悩を描写するためにどうしても長くなりがちですが、その分読みごたえはあると思います(汗)


エピソード1-4 彼らと彼女らは邂逅を果たす

次の日、日の光が出るか出ないかという明け方に目を覚ました俺は、すばやく荷物を確認し(といってもゲーム内なのでストレージと呼ばれるシステム内に保管されてるので、荷物らしい荷物は武器だけだが…)宿を引き払うとすぐさまフィールドへと足を運び、この第一層の迷宮区へ向けて探索を始める。

 

「はぁ…まったく、いったい俺は何をしているんだ……」

 

まったく理解できない自身の行動に、またもやため息と愚痴がこぼれる。しかし、そんな俺の思考とは完全に乖離されてしまっているかのように体の方は攻略へ向けて前進し続ける。

 

これはアレだろうか、明らかな異常事態に俺の頭がおかしく成ってしまったのだろうか?第二の人格ガイアでも生まれてしまったのか?

 

無駄すぎる思考を遮るかのように獣型のモンスターが出現する。俺は淀み無い動作で曲刀を抜き放ち、モンスターを俊敏極振りの速度を生かした動きで滅多切りにする。

このモンスターは街を移動する道中でも何度も戦ったため、弱点は熟知している。弱点狙いの俺の攻撃は連続でクリティカルを出し、ソードスキルを使用するまでも無くモンスターをポリゴンの破片へと変える。

 

「ふぅ…」

 

一息ついて俺は、直ぐさまフィールドを進んで行く。

 

「…………………何をあせってんだよ?」

 

俺は自分の体に問いかける。しかし、当然のごとく返答は無い。自分自身にまで無視されるとか…

 

モンスターがポップする、倒す、進む。またモンスターがポップする、倒す、進む。ポップ、倒す、進む。出る、殺す(やる)、前進。emerge(出現)kill(殺す)go(前進)以下エンドレス――――何これ?終わらないエンドレスワルツ?

 

頭は疲れたダルイもう休めと言っているのに、体はまるで何かに取り憑かれたかのように無機質に、機械的に三拍子を刻んで行く。そろそろ休憩の独奏曲(アリア)にしようぜ……

 

俺の願いが届いたのか、はたまた唯の効率なのか、モンスターの出現の切れ目が訪れた瞬間、腰を下ろし休憩し始める。

 

「何なんだよいったい……」

 

やはり掴めぬ自身の行動に、俺は何度目かも分からない溜息をつく。メインメニューを開き時計を確認する。もう直ぐ10時に成ろうとしていた。それを確認した瞬間、新たなモンスターがポップして来た。索敵でそれを察知した俺は、素早く隠蔽スキル発動し、モンスターに気づかれる事無く接近し弱点部位を一刀の元に切り伏せる。

 

だから…何なんだ…?この胸の奥から湧き上がるような焦燥感は………何をあせっているんだ俺は…?深入りするんじゃない、今すぐ街にもどれ!!

 

 

 

 

 

結局、俺は日が暮れるまでレベル上げとフィールド攻略に精を出すのだった。チャンチャン――――――何でだよ……何時の間に俺はこんな勤労精神溢れる社畜になってしまったのか…現実の俺だったら、奉仕部で材木座のメンドクサイ絡みに付き合ってやったり、一色の持ち込む面倒事に手を貸してやったり、お悩み相談に来るメールに逐一返事書いたり、文化祭や体育祭の準備に奔走したり……あれ?普通に現実でも社蓄のごとく働いてね俺?じゃあ、何時も通りの行動か、なーんだ。………って、そんな訳あるかい!!!!

 

明らかに異常だろ俺、自分の思考と行動が一致しないって精神病患者か俺は!!誰かーっイエロー救急車呼んで!!つってもこのゲーム内に救急車なんて存在しないと思うが…

 

 

 

 

それからは俺は、迷宮区へ向けてレベル上げと攻略を続ける日々を送って数日が経過した。その間も俺の中に燻る焦燥感は拭えずに居た…

 

今日も今日とて昨日まで攻略したマップと睨めっこしながら、固いパンをモソモソと齧って今日の行動範囲を模索していた。そんな時、近場で街中のカフェのテラスに座り談笑している男たちの声が聞こえてきた。

 

「おい、聴いたか?”隠しログアウトスポット”の話。」

 

「はぁ?どうせガセネタだろ。」

 

隠しログアウトスポット…?良くある都合のいい妄想に尾ヒレ背ビレ胸ビレが付いた話か……アホらし………

 

「いや、それがあの”鼠”の情報らしーんだよ。」

 

「マジか!?鼠ってあの情報屋のだろ?それって結構信憑性あるんじゃねーの?」

 

俺は、アホらしいと吐き捨てたくせにその場から動く事をせず、男たちの話に聞き耳を立てていた。

 

「西の森の奥にいかにもな洞窟があってな…行った奴は誰も帰ってきてないんだと。」

 

「いや、お前それただモンスターに殺られただけだろ…」

 

まったくだ…そんな都合のいい話がある分けがない、俺がGMや開発組みならそんな穴などつくりはしない。と、思っているくせに…俺の体は件の西の森へと一直線に向かい始めていた。だから、何をやってるんだよお前は……理解不能の行動に対し、その辺りはまだマッピングを済ませていないからと言い訳が頭を掠める。都合のいい話につられたわけじゃない、これは当然の行動だと欺瞞を振りかざし、俺は西の森を突き進む。

 

「此処か…」

 

男たちが話していた洞窟へと到着した俺は、真っ暗な中を軽く確認するように覗き込む。外からの光が殆ど入り込まないこの洞窟は所謂(いわゆる)暗闇(ブラインド)マップと呼ばれるもだろう、モンスターの発見がしづらく不意の攻撃を受けやすく、逆にこちらの隠蔽、索敵スキルなどが弱体化する危険なダンジョンだ。こんなところ入るべきではない……って言ってんのに無視して突き進むな体ぁ!!

 

「ちっくしょ~……」

 

もはや別人の体と入れ替わったのではないだろうかと思わずには居られない。誰かオペオペの実でも食ったやつがログインして居るのではないだろうか?

 

ギィイイッン―――――――とそんな益体の無い思考を遮るかのように、金属を擦り合わせたかのような不快な音が洞窟内に響く。暗闇の中目を凝らしてみると、そこにはこの洞窟のボスと思われるモンスターと、赤いフードつきのローブを装備した細剣使い(フェンサー)の姿が。こいつも”隠しログアウトスポット”に釣られた奴か…?

 

「やぁああああっ!!」

 

腹の底から絞り出すような声とともに、突きを繰り出す細剣使い。しかし、暗闇のせいでその攻撃は殆どがカス当たり、大したダメージは与えられていない。そうこうしている内にボスの攻撃が細剣使いにいい感じにヒットしてしまった、細剣使いのHPは一瞬でレッドゾーンへ、そのまま吹っ飛ばされて細剣使いは動かなくなってしまう。

 

「ちっ!!」

 

気が付けば俺は駆け出していた、効果が薄いのは分かっているが隠蔽スキルを発動し、ボスに肉薄しソードスキルを発動し切り付ける。上手い具合にヒットしてくれたらしく、ボスにダメージを与えボスのヘイトが俺に向かう。

 

「やべぇ…」

 

ソードスキルを発動した事により、俺の体には硬直が発生し、ボスの追撃をかわすにはギリギリだ。間に合うか!!?俺は硬直から解放された瞬間、身を捩り攻撃の回避行動に入る。がしかし、無慈悲にもボスの攻撃は俺の頭蓋を打ち砕かんと絶妙な軌道を描いている、これは回避できない。あぁ…此処までか……すまん、小町。お兄ちゃん死んじまううらしい……雪ノ下…由比ヶ浜………そうして俺は目を閉じた。

 

「あれ…?」

 

しかし、何時までたってもボスの攻撃が飛んでこない。気になって目を開いてみると、そこには真っ二つになったボスと、真っ二つにした張本人であろう黒ずくめの少年が剣を背中の鞘に納刀するところだった。




はい、という訳で八幡とキリトとアスナの邂逅編です。因みに全然出てきてないですけどアルゴもいます(笑)

此処から八幡はキリアスと関わる事で様々な事を感じていく事になります、現実への想いとゲーム内で揺れ動く八幡を上手く描写できるといいなぁ(願望)

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