Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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FGO運営さんお願いです。パールヴァティーさんの霊衣をぜひメドゥーサ姐さんに…立ち絵だけなんてもったいない!

…なんて願望を口にしつつ98話です。

100話まであと2話か…


第98話

098

 

 

「変身」

 

 

その一言と共に、間桐慎二の姿が変わる。

 

 

全身青色のスーツに包まれ、赤い複眼を煌かせた慎二は銃を目前の敵に向けてこう言い放った。

 

 

 

標的(ターゲット)は…お前だ!」

 

 

 

 

特有の形状を持つ銃口を敵へと向ける慎二の姿や言葉に、彼女は混乱せずにはいられなかった。

 

 

 

 

(え、なにどうゆうこと?慎二って魔術回路持ってないっていってたわよねそうよねだから桜は間桐の家に養子にされちゃったのよね?だってのになにあの恰好なにあの武器?何かの礼装?何かの魔術?慎二の言う別世界ってあんな魔術が主流なの?もう何が何だか分からない誰か説明しなさい誰か誰カダレカダレカダレカダ―…)

 

 

頭頂部から煙を吹き出し、見るからに思考回路が色々とショートしている姿を遠目に身ながら、慎二は開いていた左手でトリガーマグナムを持つ右手へと添える。両手でしっかりと構えた銃口を凛程でないにしろ、なぜ変身できたのかと混乱するズノー陣へと向けられた。

 

 

「しまっ―――」

 

 

気が付いた時にはもう遅い。慎二の指はトリガーマグナムの引き金を素早く2回引いていた。即ち、2発のエネルギー弾がズノー陣に向けて発射された事になる。不意打ちにより片目を潰され、慎二が変身したという不測の事態に判断が遅れたズノー陣は手を交差させて防御態勢となる。だが、耳元に風切り音が響いただけで数秒たっても自身の身体に痛みはない。

 

ゆっくりと腕を解くと、眼前には変わらず慎二がトリガーマグナムを構えたまま。ズノー陣は自分が生きているという安堵と共に、この近距離で狙いを外した慎二へ嘲笑する。

 

 

「く…クハハハハハ!手負いの俺にこの距離で外すとは、どうやらその大層な銃と姿は飾り物のようだな間桐慎二!」

 

「あっそ。そう思うってんならどうぞご自由に。こっちだって弾丸(タマ)の狙いを見極められない奴に笑われたくないんでね」

 

「な、に…」

 

 

ズノー陣の笑いなど露程も反応しない慎二の発言に、ズノー陣の呼吸は止まる。もはや片目でしかとらえられない慎二はトリガーマグナムで肩を叩きながらズノー陣の背後を見据えていた。慎二の狙いは、最初から眼前にいるズノー陣ではなく…

 

 

 

「あーもう、慎二!後でゆっくりと説明してもらうからねッ!!!」

 

「そう激情に駆られながらも狙いを外すことなくガントを放てるとは、恐れ入ったよマスター…」

 

「同感です、アーチャー…」

 

 

振り向いた先では、サイボーグクモ怪人の特殊ワイヤーによって動きを封じられていた凛やアーチャー、ライダーが自由の身となり再度戦闘を再開する姿があった。

 

ズノー陣の足もとへ転がってきたクモ怪人だった頭部を見れば、ワイヤーを射出する口元が黒く焼き焦げている…

 

慎二の狙いはズノー陣ではなく、捕らわれた凛達の開放だったのだ。慎二の放った弾丸により開放された凛のガントが次々と雑兵チャップを屠り、ライダーの鎖に絡まれ動きを封じられたサイボーグ怪人の関節部に、アーチャーの放った矢が一ミリのズレなく関節部へと突き刺さる。

慎二が魔術をかき消してしまうコーティングを施したサイボーグ怪人相手への対応策として授けた戦法を忠実に熟すサーヴァント達の力量とヤケとなって魔術を振るう凛の様子にこれならばもう自身の戦いに集中できると、今度こそトリガーマグナムをズノー陣へと向けた。

 

 

「さて、いきなり嘘ついちゃったお詫びとして、今度こそ僕の的になってもらうよ」

 

「お、おのれ…図に乗るなぁッ!!」

 

 

手に鉾を持ったズノー陣は、慎二の胴体に風穴を穿とうと突撃。だが、怒りの余りに単調となった動きなど、今の慎二には通用しない。

 

 

「…っらッ!」

 

「ぬぉッ!!」

 

 

慎二の腹へ鉾があと十数センチまで迫った直後。慎二はトリガーマグナムを振りかぶり、銃床を鉾の先端へと叩き付けた。軌道がずれた鉾は慎二の身体ではなく石垣を貫き、ズノー陣も思わず鉾の柄を握ったままつんのめてしまった。急ぎ鉾を引き抜かねばと足場に力を込めるズノー陣の頭頂部へ急に重みが伸し掛かる。

 

ミシリ…と頭蓋骨へと走る痛みに何が起きたかズノー陣は理解する。

 

慎二はズノー陣が鉾を引き抜こうと躍起になっている最中、敵の頭部を踏み台にして背後へ着地したのだ。

 

 

 

「ば、馬鹿にしよってーっ!!」

 

 

屈辱的な慎二の行動によって頭に血が上ったズノー陣は引き抜き、未だ着地した体勢…石垣へ片膝を付いた慎二の背中へ向けて鉾を振りかぶる。

 

無防備な姿をさらした事を後悔させる…だが、それすら慎二の企みだったとズノー陣は思い知った。

 

 

「ご、ガァッ!?」

 

 

腕を大きく振り上げたズノー陣の胸部に生じる爆発の連続。何が…と立ち昇る煙の向こう側には、相変わらず着地した体勢のまま背中を向ける慎二。異なっているとすれば、トリガーマグナムを握る右腕のみが、ズノー陣に向けられていた事だろう。

 

 

「そらよぉッ!」

 

ズノー陣へトリガーマグナムを向けたまま慎二は右足を軸に反転。トリガーマグナムを両手で構え、より正確な射撃可能な状態となって弾丸を連射した。ズノー陣の胸部の一点に叩き込まれたエネルギーの爆発は、銀色の鎧へ亀裂を走らせるだけなく、ズノー陣の膝を地へ付かせるには十分なダメージを与える事に成功する。

 

 

「な、こんな、ことでぇ…」

 

 

片目を失い、さらに満身創痍となったズノー陣の眉間へトリガーマグナムの銃口が突き付けられる。残る片目で睨みつけられる慎二だが、先ほど感じた恐怖はもう、微塵もない。

 

 

「さて、聞きたい事がいくつかあるんだけどね」

 

「まさかとは思うが…勝ったつもりか?」

 

「…………………」

 

「忘れたか?我らの手には、あのサーヴァント共がいるのだぞ?」

 

 

 

 

「アイツ…!」

 

手足を強化魔術で硬質化した凛は八極拳でチャップ達を倒しながら、ズノー陣の聞き捨てならない卑怯な手段に嫌悪感を露わにする。ズノー陣の言葉に従い、チャップ達は柱に拘束されているキャスターとアサシン、そしてマスターである葛木宗一郎のコメカミに銃を突き付けた。

 

聖杯戦争参加者である凛にとっては、競争相手が減る好機でもある。先の事を考えれば、この場で脱落させた方が効率的ではある。

しかし、彼女の性分がそれをさせなかった。それに、慎二の言葉を信じるなら、桜を救うにはキャスターの手助けも必要と慎二は言っていた。この場で彼女たちを見捨てる選択は凛に存在しない。どうにかこの窮地を脱しようと考えこむが、彼女の考えを察したサーヴァントは普段と変わらぬ声色で主を宥めた。

 

 

「心配は不要だよ凛」

 

「アーチャー…」

 

「どうやら我々は間桐慎二に一杯食わされたようだ。先ほど怯えてばかりいたというのに、ここまで考えていたというのなら、大したものだ」

 

「どういう事…?」

 

「奴は私達に言ったな。『キャスター達は気にせず、回りの連中を叩け』と。だが、敵は初見の者ばかりで間桐慎二の助言があるとは言え手こずるのは必須。否応なく時間ばかりが経過するつまり…」

 

 

 

 

 

「時間稼ぎには最適であった訳だ」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…言うと思ったよやっぱりね」

 

「き、貴様…人質が死んでもいいと言うのかッ!?」

 

「さて…こう言ってるけど、実際どうなのさ若奥様ぁ!!」

 

 

 

慎二は銃口をズノー陣の額から離したものの、どうにも敵の言動に呆れたという態度を見せる。ズノー陣は怒りを見せるが、矛先である慎二は見向きもせずに別の存在へと意識を向けている。ふざけた呼び名であるのだが、その本人を刺激にするには十分な効果を齎した。

 

 

 

 

 

 

「全く…学校の時といい今といい…何かを見透かしたようなその態度、気に食わないと言ったないわッ!!」

 

 

 

何度目か分からない爆発に、凛は身を屈める。アーチャーに庇われ、ゆっくりと晴れる土煙のその向こうで浮遊するサーヴァントの姿に、彼女は一瞬呼吸を忘れた。

 

 

翼のように展開されたローブと、彼女の周囲に出現する無数の魔法陣。

 

自分の知る攻撃魔術とは明らかに次元が異なる光景に、改めてサーヴァントという規格外の存在に圧倒されてしまった。

 

 

 

「な、なぜだ…奴を拘束していた鎖は魔術を封じる術式とやらが組み込まれていたはずだぞ!?」

 

「あらお生憎様。私の動きを封じるというそのアイディア事態は良かったし、木偶の坊たちへ同様の仕様にした事は私相手には非常に有効だったわ」

 

 

それが彼女たちが囚われた最大の原因であった。

 

 

柳洞寺を強襲したサイボーグ怪人達へ攻撃魔術を行使したたものの、その全てが拡散されてしまったキャスターに戦う手段もなく、素手と刀が武器である宗一郎とアサシンは苦戦の一方。その結果、数に勝るクライシスによって囚われてしまい、魔術を封じる鎖で拘束されてしまったのだが、彼女はそんな事で終わるはずがなかった。

 

 

 

「奸計にかけては随一と言って良いからな、あの女狐は。それに合わせて一芝居を儲けた者だが、これまた歯痒いものであったよ」

 

「お黙りなさいアサシン!」

 

 

 

罵られようともどこ吹く風であるアサシンのサーヴァント。同じく自由となった葛木宗一郎と共に混乱が生じたチャップや怪人素体へと斬りかかる。彼の生み出す刀の軌道は流れるように華麗であり、その後は敵の鮮血が散るばかりだ。そして宗一郎も拳をキャスターの魔術によって強化され、チャップ達、そしてサイボーグ怪人の胸を貫くに至った。

 

 

「な、なぜだ…サイボーグ怪人には魔術を拡散するコーティングがされているはず…」

 

「確かに。そのおかげで私達は捕まるという事になったわ。けど、勉強が足りなかったわね…」

 

 

 

「どうせなら、常に術式が組変わるようにしておかないと、簡単に解析されてしまうわよ?」

 

 

 

キャスターの放った言葉は、ズノー陣だけでなく、凛たちも驚愕に値するものであった。

 

つまり、キャスターは自分の魔術が通用しない術式やサイボーグ怪人の装甲へ通じるように自身の魔術を書き換えたと言っているのであろう。自分を縛り、力を封じる術式を解析し、それすら無効とする術式の構築。これを詠唱無しに実践した神代の魔術師は次々と攻撃魔術を打ち放ち、敵を葬っていく。

 

 

「ば、馬鹿な…」

 

 

「形勢逆転、だね」

 

 

当初は圧倒的な有利に立っていたはずのクライシス軍団が、いまではサーヴァントとマスター達によって蹂躙される様子に慎二は素直な感想を述べると、ドライバーへ装填されたトリガーメモリへと手を伸ばす。

 

 

「あんたら…この世界には光太郎がいないから、仮面ライダーが存在しないからって高を括ってみたいだけど、それは見当違いもいいところだ」

 

 

 

《TRIGGERッ!MAXIMUM DRIVEッ!!!》

 

 

 

引き抜いたトリガーメモリをトリガーマグナムへ装填。マキシマムモードへと移行した。

 

 

「ここには目的は違えど…絶対に負けられないっていう連中が集ってる。相手が悪すぎたよ」

 

 

エネルギーのチャージ音を響かせ、頭上で掲げたトリガーマグナムをゆっくりとズノー陣へと向ける。

 

 

 

「お、おのれ…間桐光太郎ならともかく…貴様のような脆弱な人間に…!」

 

「お前、そう言った時点で光太郎に敵わないって言ってるようなもんだよ」

 

「なっ…」

 

「せっかく生き返ったんだから僕をどうにかして光太郎を苦しめるなんて選択…取らなきゃよかったのにね」

 

「き…さまぁーッ!!」

 

 

今回の任務で下された命令以外に、間桐光太郎が手の届かない所で身内を苦しませると言う本心にあった目的を悟られてしまったズノー陣は我武者羅となって跳びかかる。

 

 

もはや狙い定める必要のない一撃を、慎二は静かに放った。

 

 

 

「ライダーショット」

 

 

 

 

圧縮されたエネルギー弾が、ズノー陣の胸を射抜く。

 

 

ゆっくりと倒れ、柳洞時の石段を転がるズノー陣に見向きもしない慎二はトリガーマグナムからメモリを引き抜き、メモリをドライバーに、マグナムを左胸へとマウント。

 

 

直後、石段の遥か下から爆発音が山中へと鳴り響いた。




人間として生まれ変わっていないという点で、あちら側のサーヴァントの皆様は本来の力を発揮している、だけという事です。

さて、次回はもう一つの決着となります。

お気軽に感想など頂けたら、幸いです。

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