Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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どうにか落ち着いた…けど疲れが抜けないが為にいつも以上に短くなってしまいました。

お許しいただきたい87話となります。

そんな中でもFGOだけは続けてる当たり、自分は大分染まってるなぁ…ちなみに呪符でヘラクレスさんがいらっしゃいました。


第87話

時間は、間桐光太郎が敵の凶弾を受ける寸前にまで遡る。

 

 

 

 

 

 

「くっ、このままではいずれ―――」

 

『―――間桐光太郎』

 

「ッ!?キングストーン…」

 

『いいか。よく聞け。このまま―――』

 

 

 

『無抵抗に敵の攻撃を受けろ』

 

 

「なっ―――」

 

 

 

 

突然自分の頭に響くキングストーンの意思による指示に驚愕する光太郎。ただでさえ未来視を持つ難敵と暗闇からの攻撃に苦戦する中、あえて攻撃を受けるという声に混乱するしかない光太郎は反応が遅れ、危機を察する事ができたが既に遅く光太郎は衣服を床へと縫い付けられ、仰向けのまま動きを封じれてしまう。

 

 

 

「し、しまったッ!?」

 

 

「と言った貴方に、無情にも敵の攻撃が突き刺さるの。そう―――」

 

 

 

 

 

「貴方の心臓にね」

 

 

 

 

ズブリと、光太郎の胸に潜り込む黄色の細長い3本の果実。

 

「…っ…っ!?」

 

 

口と胸元から赤く、暖かい液体を流す光太郎は痙攣した後に、ピクリとも動かなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

閉ざされた空間の中でエミリアの高笑いが木霊する中、光太郎の意識奥深くでは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇ!?すっごく痛い!今の俺、意識だけなのにすっごい痛いんですけどキングストーンさんッ!!」

 

『当然だ。今、お前の肉体は常人であれば死んでいるはずのダメージを負っている。それが精神体であるお前に反映されるのは当然の帰結だ』

 

「冷静に言わないでくれよ!いきなり攻撃を技と受けろって言われてこっちは訳がわからないし…」

 

『その訳の分からぬ方法があったからこそ、敵は我々が死んだと誤解している。時間稼ぎはできるという訳だ』

 

「え…?でも、彼女には俺が死んだ未来が見えるって…」

 

『あくまであのふざけだ攻撃で倒れたお前の姿でも視えていたのだろう。ならば、その状況を作り出してやることで反撃の糸口を掴めるかもしれん』

 

 

 

エミリアと敵対した室内とは違い、本当に何一つ光が差さない…いや、光など差すことのないこの空間は、光太郎の深層意識。その中で胸を押さえて蹲って激しい痛みの走る胸を抑える光太郎に淡々と状況を説明するのは、仮面ライダーBLACKの姿を借りた神秘の石キングストーンの意思だ。

光太郎は外因よる大きなダメージを受けた際に度々訪れるこの空間にもはや慣れつつあり、キングストーンとの会話にも違和感を忘れてかけていたが、今回キングストーンが立てた策を耳にして改めて彼の力の底知れなさを思い知る事となる。

 

 

『確かにあの果物はお前の胸に突き刺さっている。だが、その直前に心臓の位置を動かし直撃は避けている。臓器の急激な移した反動でやや出血は多いようだがな。おまけに瞳孔を開いたまま呼吸も止めているので体内全てが悲鳴を上げている』

 

「いや聞くだけでも滅茶苦茶痛いだよ!?」

 

『何を言う。例え心臓に突き刺さろうとしてもお前の改造された心臓は通常の数十倍以上の熱を発している。冷凍された果実など迫った段階で解凍され、お前の胸と柔らかくなった果実が結合されたまま、痛みと不快感を織り交ぜた気分を味わう羽目になったのだぞ?』

 

「何その今の状態がまだマシに思える状況…」

 

 

確かに改造された光太郎の肉体は普通の人間とは違うものになってしまっているが、今回は忌むべき改造手術に救われた形になってしまっている。

敵への対策が見つからない今、キングストーンの言う通りに倒されたと思わせる方が得策だったのだろう。

 

 

『ただし、対策が浮かんだとしても戦える状態に回復するには時間がかかる。今突き刺さった果実の消滅させ、損傷している肉体の修復に全ての力を注ぎ込んでいるからな』

 

「え…?そんな事をして、エミリア達にばれないのか?」

 

『ああ、これを幸運と言っていいのか分からんが、連中はお前の身体を棺桶に放り投げ、どこかに運んでいるらしい。せっかくの偽装工作もあまり意味をなさなかったな』

 

「あ、アハハ…そうか…」

 

 

そうそう会える訳でもないのだが、会う度にどこか人間味が増して…というよりもこれが本来の彼ではないのかと思い始める光太郎は、ふと以前から抱いていた疑問をキングストーンへとぶつける。

 

 

「君は…何者なんだ?」

 

『それはお前が一番理解しているだろう。キングストーンの意思だ」

 

「いや、そういう意味じゃない。キングストーンが長い時間をかけて意思を持った。あれだけの力を発揮できる君たちならば、確かに納得のいく話だよ。けど、俺には…もっと以前からあるように思えるんだ」

 

 

 

 

「キングストーンという力の結晶が誕生する以前から…君自身の心が」

 

 

 

『……………………………』

 

 

 

 

以前から不思議に思っていたことだった。

 

 

キングストーンの出自を知るであろう創世王はもういない。そのため、キングストーンという石がいつ、どこで生まれたか知る者は不在のままだ。だから、長い時間をかけて神秘を宿したキングストーンが自らの意思を持ったとう憶測でしか語れない。

 

だからだろう。創世王の新たな肉体を選ぶ儀式から解放され、危機を迎える光太郎に声をかけ、力を授けてくれるキングストーンへ本人が言う力の塊に過ぎない石に、それ以前から確かな意思があったのではないか…

 

光太郎の質問を受けて無言を貫いていたキングストーン…BLACKは赤い二つの複眼を光太郎に向ける。

 

 

 

『私は…むッ!?』

 

「どうした…これは!」

 

 

キングストーンと光太郎の全身に巡り、流れ来る『何か』

 

激流の如く込み上がる怒りと哀しみ、そして後悔。

 

 

キングストーンと光太郎の精神に揺さぶりかけるこの感情は、先日メディアから聞かされた光太郎に残る大聖杯の残滓を通して伝わる、サーヴァントによるもの。

 

 

そして脳裏に流れる、彼の記憶…

 

 

「そうか…そういう事だったのかランサー」

 

『未来視を持つ女を相手に、誰かを巻き込まぬよう単独で活動していたというところか。』

 

「キングストーン…悪いけど」

 

『解っている。話は後だ。そして治療を中断して変身、だな』

 

「あぁ!」

 

 

仲間の危機を前にして光太郎の行動など言うまでもなく見抜いていたキングストーンは頷くと、光太郎の意識を覚醒させるため掌を翳す。黒い掌から光が広がり、周囲の風景も黒から白へと染め上がっていく。

 

 

『だがいいか。例え目覚めた後にRXとなってもお前の傷は完全には塞がらない。それ程の傷であるという事を注意して戦え』

 

「忠告ありがとう。でも、俺は負けない」

 

 

キングストーンの忠告に力強く頷いた光太郎の姿にキングストーンの意思もまた深く頷く。やがてキングストーンの意思の姿が消えると光太郎の意識は一度深く息を吐いた。

 

 

(結局、聞きはぐっちゃったかな…でも、今は!)

 

 

彼と出会えるのは、今回のような非常事態のみ。だから、もし次に会う事が可能な日がくるならば、改めて聞いてみたい。そう考えた光太郎は意識を切り替える。

 

 

 

 

 

 

右半身に重心を置き、両腕を大きく振るうと右頬の前で握り拳を作る。

 

 

ギリギリと音が聞こえる程込めた力を解放するような勢いで右腕を左下へ突出し、素早く右腰に添えると入替えるように伸ばした左腕を右上へ突き出す。

 

 

「変っ―――」

 

 

伸ばした左腕で扇を描くように、ゆっくりと右半身から左半身へと旋回し――

 

 

「―――身ッ!!」

 

 

両腕を同時に右側へと突き出した。

 

 

 

光太郎の腹部にキングストーンを宿した銀色のベルト『エナジーリアクター』が出現し、光太郎を眩い光で包んでいく。

 

その閃光は光太郎の遺伝子を組み換え、バッタ怪人へと姿を変貌させる。

 

だがそれも一瞬。

 

エナジーリアクターから流れ続ける光はバッタ怪人を強化皮膚『リプラスフォース』で包み込み、黒い戦士へと姿を変えた。

 

 

左胸に走るエンブレム。触覚を思わせる一対のアンテナ。真紅の複眼。そして黒いボディ――

 

 

 

 

仮面ライダーBLACKへと変身した光太郎は抉るような痛みに耐えながらも、自分を閉じ込める黒い棺を内側から破壊する。その行動が既に敵に読まれていたのか、銃弾の雨が降り注ぐがそんなものは通用しない。

 

 

敵の攻撃が止まると光太郎は自分に被さった破片を関節部から漏れる余剰エネルギーの蒸気で払い飛ばし、ゆっくりと立ち上がる。

 

 

光太郎を見て警戒する者、臆する者、そして傷を負いながらもニヤリと笑う者…様々な反応を見せる中、光太郎は足を屈め、その場から跳躍。

 

 

 

「トァッ!」

 

 

 

空中で前転し、音もなく着地した場所は背中からドクドクと流血を続けながらも立ち上がるランサーのすぐ隣。光太郎は自分達を囲いながらも距離を取るチャップ達に向かい構え、息を荒いままであるランサーへと声をかけた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「へっ…らしくなく頭に血ぃ登ってたところだったんで程よく抜けたってもんだ。お前さんこそ随分手痛くやられたみたいじゃねぇか…」

 

「ああ…だからこそ、借りは返さなきゃね…」

 

 

犠牲となったランサーの仲間達の為にも。

 

 

言葉にすることなく、決意を固めた光太郎はマリバロンの影に隠れる濁った眼を恐怖に染める女性を指差し、運動場に声を轟かせた。

 

 

 

 

「…魔術師エミリア・シュミットッ!!」

 

 

「ッ!?」

 

 

「自らの欲望の為に多くの人々から命と身体を奪ったことを、俺達は断じて許さんッ!!」




次回辺りで決着…かな?

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