Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

86 / 112
ご無沙汰です。

ちょいと目が覚めて家なのかそうでないのかという日々が続いておりまして、活動報告に書く気力すら浮かばなかったっす…いろいろと申し訳ありません。

4月以降にはペースを戻したいと願いながら、大変遅くなった85話を投下します。


第85話

「アハハハ…アーハッハッハッハ」

 

 

僅かながらの照明しか差さない空間内に響くソプラノ声を劣悪な高笑いに変えてしまう少女は胸を串刺しにされ、ピクリとも動かなくなった青年へもう届くことのない罵倒を浴びせ続けていた。

 

 

 

「ほぉんとあっけなぁい。これがゴルゴムの支配者を倒した世紀王ぅ?クライシスの怨敵ぃ?今まで挑んだ連中って何手をこまねいていたのかしらぁ。こぉんな奴1人始末できないなんてぇ…」

 

 

口元に指を添え、口元から一筋の赤い液体を漏らす光太郎の頭部をヒールで踏みつける魔術師エミリア・シュミット。恍惚とした表情で今度はヒールの踵で眼球を踏み抜いてやろうかと脚を上げるが、背後に現れた男の声によって止められる。

 

 

「それ以上は止めておけ、魔術師。貴様の役割はあくまで間桐光太郎の行動を私に伝えるだけのはずだぞ」

 

「そう呼ばれるのは好きじゃないわぁ」

 

「ふん…知った事か」

 

 

頬を膨らませるエミリアは上げた脚を暗闇から現れた老人に言われた通りに下ろすが、楽しみを邪魔された腹いせとして光太郎の頭部を足蹴し、クルリを纏ったスカートを靡かせると何事もなかったかのように笑顔を浮かべた。

 

 

「それでぇ?これで私のお仕事はおわりなんでしょぉ?約束は守ったんだからぁ、今度はマリバロン様に私のお願いを…」

 

「まだ任務は完遂していない。間桐光太郎を完全に葬りさるまでな」

 

「…貴方、目は節穴ぁ?こいつを殺した張本人が何を寝ぼけた事言ってるのよぉ。間桐光太郎は死んだ。もう私がこの眼で視た、『未来』通りにねぇ」

 

 

口元を釣り上げるエミリアは光太郎は完全に死んだと確信するが、それでも老人は主の命令通り、例え死体であろうが間桐光太郎という存在を確実に葬り去るまでは殺したとは言い切れない。

 

 

「所詮は魔術師…いや、人間の見解だな」

 

「なによぉ、馬鹿にしてるのぉ?」

 

「まぁいい。奴を処刑場まで運び出せ」

 

 

老人が指を鳴らした直後、空間の一部が扉へと変わり、開かれるとクライシス雑兵チャップ達が次々を現れ、胸部が血だらけとなった光太郎を数体で持ち上げると、他の個体に合図して黒い長方形の物体が運び込まれた。

 

 

「棺桶ぇ?」

 

 

エミリアの言う通り、チャップ達が運び込んだのは黒に塗り固められた棺桶ではあるのだが、エミリアの知る棺桶とは異なり金属で覆われ、重量故なのか下部に車輪が設けられている。重々しい蓋はチャップ達が数人がかりでようやく持ち上がる様子からどれ程の重さなのかうかがえる。

 

棺桶に光太郎を放り込むと、ただ蓋をするだけでなく隙間を溶接するなどという徹底ぶりに呆けるエミリアの様子を見た老人は何も間違っていないと言わんばかりに説明する。

 

 

「間桐光太郎…RXの力の源は太陽の光。もし僅かにでも光を当ててしまえば立ち上がる可能性だってある」

 

「だ、だからぁ!心臓を貫かれて生きている奴なんて…」

 

「いいか。これはマリバロン様の命令だ。否定するのならば、反逆行動と思え」

 

「…ふん、わかったわよぉ」

 

 

カツカツとヒールを床に叩き付けその場を後にするエミリアの後ろ姿を見て老人は溜息をつくと、溶接を終えた上に鎖で棺桶を縛るチャップを見て、これでもまだ足りぬぐらいだと、幾度となくこちらの目論見を潰した怨敵の復活に不安をぬぐえずにいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…随分と優しい製作者な事」

 

 

日々バージョンアップを続けているPCの前で思わず呟いたメディアはブルーレイライトカットの眼鏡を外し、調査様に接続していた配線を慎二から預かったロストドライバーから引き抜く。光太郎から異世界からの贈り物と聞き、興味が尽きない逸品ではあるのだかいざ調べて見るとこの道具、ある程度機械の知識があれば難なくデータを抽出できる仕様となっていたのだ。

 

データの内容はロストドライバーの簡易メンテナンスの方法や摩耗部品のリスト。さらに疑似メモリと慎二が使用したガジェットの設計図が組み込まれていたのだ。流石に本体や慎二の持つトリガーメモリを真似て作るような事はできないが、時間を費やせば分析して作れない事もないだろう。

 

(けど、こうも簡単にデータを開示させるなんて、余程馬鹿にしているのか。それとも信頼しているのか。どちらにしても、助かるのですけど)

 

 

印刷された設計図から、もう2種類ほどのガジェットも部品が揃えば作成可能の状態にまで行きついている。だが、それでもプロテクトの掛かったデータが一つだけ内包されていた。

 

設計図のフォルダの中にただ一つロックがかかっているファイルがあり、それも解除用のパスワードではなんく、なにやらメーターのようなものが表示されているのだ。

 

僅かながら…それも数パーセントのみメーターが満たされている。

 

メディアはその数値とは別に、ドライバーから抽出したデータを重ねあわせて何かが一致していないか検証を始めようとするが、何やら外が騒がしい。

 

 

 

『これ慎二!いきなり押しかけてくるなりメディア殿の部屋に向かうとは何事か!』

 

『だから緊急の用事だって言ってんだろ!?説教なら明日生徒会室で衛宮の入れたお茶啜りながら聞いてやるからさ!』

 

『衛宮のお茶か…っと話をごまかすではないッ!喝ッ!!』

 

『本当に緊急の用事なんです!ごめんなさい柳洞先輩!』

 

『むぅ…まさか桜くんまでそのような…それでは本当に窮する事だというのか…』

 

『お前どんだけ僕を信用してないんだよッ!?』

 

 

 

神聖なる寺の渡り廊下を騒ぎながら迫って来る愛すべき夫の生徒たちの声。そのうち2人は預かった道具が必要となった場合にすぐ取りに向かうと言っていたが、どうやら『必要な時』らしい。

 

深く溜息をついたメディアは調査を中断。預かったドライバーとガイアメモリ、そして部屋の隅で展開される直径15センチ程の魔法陣の中で宙に浮かぶ指輪…桜の変身に使用するウィザードリングを手に取った。

 

 

(こちらも原料となる特殊な宝石はなくとも、代用品で何かを造れそうね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…光太郎?」

 

「何か言ったか?」

 

「…いえ。それよりも、アーチャーが目を付けたという市民会館というのは?」

 

 

遠坂邸

 

 

洋室にて地図の置かれたテーブルを囲むメドゥーサ、アーチャー、赤上 武、そして主である遠坂凛はランサーが行方を追う魔術師が潜んでいるであろう場所を探す中、アーチャーの眼に止まった怪しげな箇所がいくつか候補に上がったのだ。

 

一つは探すまでもなく、誘拐された場合に毎度連れ込まれてしまう廃工場…クライシスだけでなく、ゴルゴムとの闘いから利用されている場所であり、光太郎からギルガメッシュに買い取ってもらい、別の施設を建てて貰おうかとメドゥーサに愚痴った事があった。

 

二つ目は最近1人の老人が住み始めた一軒家。夜間でも明かりを灯している様子が一切なく、家としてではなく、隠れ家として利用されている可能性も十分にある。

 

そして三つ目。メドゥーサが地図上で指さした新都の市民会館。規模の小さいスポーツ大会やカルチャースクールなど多岐の行事を目的に建てられた場所であるが、ここ数日館内のリニューアル工事を名目に閉館していた。だが、工事を予定しているというのに資材の搬入どころか工事の業者すら出入りをしていないのだ。

その代わりに怪しげな男が施設内を俳諧しており、黒いカーテンで室内の窓を覆っていたのだ。怪しいと踏み監視を強めていたアーチャーは見逃さなかった。

 

カーテンを手にした男の1人が気を緩め変装をといてしまい自身の素顔を晒してしまったのだから。

 

 

 

「チャップが、なぜそのような事を…」

 

「現時点では分からん。それにこれだけ探してもエミリア・シュミットの足取りが掴めない以上、市民会館で何かを企んでいるクライシスの連中と与しているという可能性も考えるべきだろう」

 

「…ランサー殿だけでなく光太郎殿の頭を悩ませてしまう状況だな」

 

 

メドゥーサの疑問に自身の予感を交えて答えるアーチャーの言葉に、武は苦笑すると腕組みする凛が満を持して集まった一同へと指示を出した。

 

 

「じゃあ、それぞれの場所に向かって調査しましょう。アーチャーと私は廃工場、メドゥーサと武さんは…」

 

 

凛はクライシス絡みであれば市民会館は光太郎に連絡した後の方が適切であろうと判断し、先に他の候補地へ分担し調査しようとした矢先、室内に電子音が鳴り響く。

失礼、とポケットから原因である携帯電話を取り出したメドゥーサは口を開いたまま固まってしまった凛に一礼すると、発信者の名前をみて即座に携帯を耳に当てる。

 

「シンジ、どうしたのですか?…はい…はい…こ、光太郎がッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ああ、急いでその家に桜と向かったんだけど、もうもぬけの殻。おまけに…」

 

苦虫を噛みしめるような表情を浮かべる慎二は、床に膝をついて先ほどまで液体であり、当に凝固した赤黒い跡を不安そうに見つめる桜を見た。

 

メディアから変身道具を受け取った慎二と桜は急ぎライドロンで老人の住む家へと到着し、室内を捜す中で階段に落とし穴を発見する。念のために変身し、穴へ降りた2人が発見したのは床のあちこちに突き刺さったバナナと、池のように広がった何者かの血液。

 

先行した義兄の身に何が起きていると確信した慎二は情報交換の為にメドゥーサへと連絡し、彼等も自分と同じ場所へ目途を付けていたと知ると電話を切ると急ぎ桜へと振り返る。

 

 

「桜、遠坂達がもう連中の行き先を幾つがピックアップしてる。そこに行くぞ」

 

「…はい」

 

静かながらも、確かな返事を聞いた慎二は桜と共にチャップが使用した扉から地上を目指す。光太郎の無事を信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやったわ、お前たち」

 

「はっ…」

 

「ふふん。私の手にかかれば当然よぉ」

 

 

市民会館の運動ホール。

 

学校の体育館などと同じスペースを持つその場所でクライシス帝国 情報参謀マリバロンは老人とエミリアに労いの言葉を向けるが、老人はともかくエミリアの態度に目を細めるマリバロンであったが時間も惜しい。

 

自分の計画通りにノコノコと現れた間桐光太郎の処刑を実行しようとこの日の為に準備した装置の起動させる。

 

 

「なぁにぃ?そのごっつい機械…」

 

 

チャップ達が操作し、エンジン音を震わせる装置に興味を抱いたのか、エミリアは駆動音と共に首を下げるポラボナアンテナ状へ目を向ける。

 

 

「これは分子破壊光線発射装置。名の通り、この機械から放たれる光を浴びればその名の通り分子レベルまで相手を分解する恐るべき装置。もちろん、キングストーンもろともね」

 

 

マリバロンは光太郎を閉じ込めた黒い棺桶を横目で見つめながらも機械の能力をエミリアに伝えるが、とうのエミリアはごねる子供のように反対の意を唱えた。

 

 

「えぇ~もったいなぁい。せっかく生きの良い身体なんですから分割して怪人の素体なんかにつかったらいいんじゃないんですかぁ。わたしぃ、そういうの得意中の得意ですよぉ?」

 

「貴様…マリバロン様になんという態度を…!」

 

 

眉間に幾層もの皺を寄せる老人は怒りのままに懐から冷凍されたバナナを取り出し、エミリアに向けるが再びあの怪しげな輝きを放つ眼で老人を見つめる。

 

 

「好きなだけお投げなさぁい。どんな角度が、何本同時に投げようが私には無意味なんだからぁ」

 

 

頬に指を当て、歪んだ笑みを浮かべるエミリアの挑発にさらに怒りを増す老人だったが、マリバロンは老人を手で制し、冷静にエミリアへと告げた。

 

 

「エミリアよ。確かに間桐光太郎を一時的にしろ動けなくしたのは大役だった。しかし、決して侮るのではない。間桐光太郎の肉体が完全に消滅するまで、我々に油断は許されないのだ」

 

言い切ったマリバロンはどうにか怒りの鉾を収めた老人と共に再度発射装置の調整を指示する為に踵を返すが、エミリアは話を聞くどころか、より悍ましい笑顔を作り黒い棺桶へと視線を向ける。

 

 

(クライシスがそうまでいて警戒する、キングストーン…もしかしてぇ、それを手に入れちゃえば私って無敵になっちゃうんじゃなぁい?)

 

 

そこに起きる未来全てを見通す眼と、クライシス帝国さえも恐れるというキングストーン。この2つが揃えば恐れるものなど何もなく、魔術協会にも聖堂教会にも怯える事はない。うまくすれば、その2つを潰す事すら容易いであり、クライシスすら自分に従うかも知れない。

 

 

段々と肥大する自分の欲望に笑いを抑えられないエミリアの耳に、第3者の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変わってねぇな。禄でもない妄想に浸ってるお前さんの笑いはよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、彼女の『眼』に映った光景通りに事は起こった。

 

 

 

分子破壊光線発生装置の配線部分に風切り音と共に落下した真紅の槍。その途端に装置からは煙が上がりチャージ中だったエネルギーは全て四散。使い物にならなくなってしまった。

 

ブスブスと焦げる臭いと共に昇る煙を目にし、背後で慌てふためくチャップ達とは相反して冷徹な声と共にマリバロンは尋ねる。息を殺し、潜んでいた曲者に対して。

 

 

「何者だ」

 

「聞かれたからには、名乗っとくのが礼儀ってもんか」

 

 

マリバロンの声に反応し、照明の裏から落下した青い男は装置の上に音もなく着地すると配線部に突き刺さった槍を引き抜き、クルクルと回転させ自身の肩へと当てる。

 

 

 

「初めましてだなぁクライシスの幹部さんよ。俺の事は取りあえず…ランサーとでも呼んでくれや。そして…」

 

 

 

ランサーは気の抜けた声でマリバロンに名乗るが双眸を別人に向けた途端に猛獣の如く鋭く、顔には血管が浮き上がっていた。

 

 

 

 

 

「殺しに来たぜ、エミリア」

 

 




エグゼイドさん、どうやら近年で戦隊ロボに乗り込むというパターンではなく自身がJさんのように巨大化を春映画でお披露目するようで。確かにあのフォームであれば違和感はありませんな…

お気軽に感想など頂ければ幸いです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。