Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

84 / 112
FGOでオルタがでました!
…ランサーアルトリアの。

が、初期段階で黒い甲冑に兜とカッコいい姿を眺めつつ、育てております。

では、83話です




第83話

「くっそぅ、犯人の手がかりが何一つ見つからん…」

 

「でも先輩、現場に残されたバナナが…」

 

「馬鹿野郎!そんなんで特定なんざできるか!ご丁寧に指紋一つ付いてない皮なんかをよぉ」

 

「そ、そりゃそうですが…」

 

 

ここ、冬木警察署の刑事課では最近連続して発生した銀行強盗の犯人捜索を急務として捜査が続けられていたが、警察官を嘲笑うかのように犯行現場に残されたバナナの皮以外、証拠らしい証拠は発見できない。

オマケについ一昨日に被害が起きた3件目の銀行には警察官数名が張りついていたというのに、全員が眠らされ監視カメラは全て破壊された上に金庫の中身は空。そしてバナナの皮が残されるという事態に警察上層部は「これは我々への挑戦だ」と勝手に意気込むが、結局動くのは現場の捜査員。

こうして証拠もないのに証拠を掴めという命令に胃を痛める日々が続き、刑事歴20年を越える男性のストレスは重なるばかりで悪人顔と呼ばれる顔はさらに歪む羽目となってしまう。

空の金庫・残されたバナナの皮の2つだけの手がかりに男性と後輩刑事の口からは溜息しか出てこない。そんな折、調査室の扉をノックされる。

 

「どうも、失礼します」

 

「あぁ…何か証拠になりそうなものは見つかったか?」

 

 

書類と睨み合ったまま、振り向かず適当な応対をする刑事の態度など気に留めず、紺色の作業着を着た小太りの男性は一礼すると律儀に刑事からの質問へと答えた。

 

 

「これと言って進展はありませんな。しかし、金庫の鍵穴に奇妙な形跡が見つかったので報告にお邪魔した次第です」

 

「なんだと?」

 

「それ本当ですか!?」

 

 

鑑識の言葉に食いついた刑事2人に圧倒されながらも、手にしたバインダーに挟まれた調査報告書をゆっくりと読み上げる。それは確かに、奇妙で不可解な内容であった。

 

 

「鍵穴の中に、バナナと同じ成分が見つかった…だぁ?」

 

「その通り。あくまで参考にと鍵穴の奥まで調べていましたら、本来あるはずのない成分が見つかりましてな。科捜研に回してみた結果、その成分はバナナの果汁と一致したのです」

 

「するってーと何ですか?犯人は鍵穴にバナナの実を押し込んで、さらに綺麗に抜き取って行ったって事ですか?」

 

「現状ではそう考える他、ありませんな」

 

「………………………………」

 

 

鑑識の報告に刑事と後輩は目を合わせると、ワザとらしく深く溜息を見せると鑑識の手からバインダーを取り上げ、鑑識の頭頂部を軽く叩く。

 

 

「あのなぁ、俺達が知りたいのは犯人の手がかりであって、鍵穴にバナナを擦りこませるなんて犯人が起こした奇行なんざ二の次なんだよ!」

 

「確かに小さな鍵穴にバナナを突っ込んで、さらに綺麗に洗っていくなんてすごいですけどね」

 

「犯人をほめてんじゃねぇよ。ほれ、もう一回聞き込みに行くぞ!」

 

「あ、先輩待ってください!」

 

 

バインダーを鑑識へと放り投げた刑事は上着を持つと足早に部屋を離れ、後輩も慌てて追いかけていく。室内に残された鑑識は叩かれた頭頂部を抑えながらバインダーに記されたデータを見て、やはり取り合ってくれなかったかとしぶしぶと部屋引き上げるしかなかった。

 

確かに鍵穴にバナナの成分が付着していたというだけでは、何の証拠にもならない。それでも、鑑識はこれが重要な手がかりではないかと確信をもっていた。

 

 

(まさかと思いますが、これも怪人の仕業では…)

 

 

危惧の劣化の為か、点灯と点滅を繰り返す照明が照らす薄暗い廊下を歩く鑑識はふとそんな事を考えいた。

 

彼ら警察や軍隊でも足元に及ばない悍ましき存在。かつてはこの日本だけでなく、世界までも震撼させた異形の怪物『怪人』。この不可解な事件にその怪人が絡んでいたとすれば、相当やっかいな事件なのかもしれない。

 

 

 

 

その予感は当たっている。

 

しかし、彼等の常識がまるで通じない者までが与していようとは、想像すらつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クライス要塞

 

 

指令室内の巨大モニターに映し出される映像に、4隊長とジャーク将軍は黙って視聴を続ける。映像の内容は、冬木市で発生した銀行強盗の一部始終を撮影したものであり、床に倒れて眠る警察官など目にも留めず、金庫の前に悠遊と現れたその姿は、怪人であった。

 

緑色の肌に首元に白い体毛。マントを翻して腰布から取り出した一本のバナナを丁寧に剥きだし、金庫の穴へとゆっくり押し付けていく。鍵穴に入りきらず、潰れた余分な果実がボタボタと床に垂れていくが気に留めることなく押し込み続けると、怪人は掴んだバナナを右へと半回転。途端にカチリ、と歯車がかみ合った金属音が響く。

 

ゆっくりと引き抜かれるバナナの形状は、鍵そのもの。果汁が垂れる様子もなく、満足して頷く怪人は堂々と金庫を開放し、中に眠る札束と金塊へと手を伸ばした―――

 

 

 

 

 

「まるで意味がわからん」

 

「何か文句でもあるのかしら?」

 

 

映像を見て率直な感想を述べたガテゾーンのモノアイをジロリと睨むマリバロン。今回の作戦を立案者として、彼の意見に不服と言わんばかりに剃刀のように鋭い眼をさらに細めると、調子に乗った他2名が続いた。

 

 

「まったくもってガテゾーンの言う通りだぜ!なんでただ盗むだけじゃなくわざわざ証拠として地球のバナナとかいう食いモンを残していくんだぁ?」

 

「これではRXどころか、地球人にすら正体を見破られてしまう可能性があるではないか?なんと馬鹿馬鹿しい作戦だ」

 

 

ゲドリアンとボスガンの指摘にマリバロンは先にガテゾーンに見せた剣幕はなく、むしろ蔑むように2人へと目を向ける。

 

 

「これだから失敗続きの連中は視野が狭くて困るわ…銀行強盗なんて所詮はオマケ。重要なのは、これは人間の手で行われた事件ではないと知らしめるためよ!」

 

 

自信に溢れるマリバロンの作戦は、こうだ。

 

通常の人間には決して不可能な金庫破りとバナナという謎の証拠を見て、間違いなく怨敵間桐光太郎は動き出す。そして無謀にも犯人捜しをする光太郎を変身させぬまま『人間』のまま殺す。

 

確かに仮面ライダーであるRXを倒す事は難しい。しかし、変身前の光太郎は改造人間であっても所詮は全力を出せない状態。人間の姿であれば勝機はある。その為にもこの怪しげな事件を乱発させていたのだ。

 

 

「な、なるほど…じゃなくて、確かにおびき寄せるとはいいアイディアかも知れねぇか、なんであのバナナを使っているのかって話だ!」

 

「これだから無知な者は困るわね。いい?私の情報網によれば、あのバナナなる植物は地球人にとっては食物でありながらも、昔から多くの者が不幸に見舞われているという曰くつきのものなのよ」

 

「な、なんと…そのような危険なものを地球人どもは食しているというのか!?」

 

「ええ。特にバナナの皮は踏んだら最後。どんな強靭な者でも無条件に転倒してしまうと言われているわ」

 

「げ、ゲルぅ…」

 

 

マリバロンのしたり顔で語られるバナナの恐ろしさに顔を青くするボスガンとゲドリアン。まさか変哲のない食物がそこまでの力を持っているのかと動揺する2人と得意顔でさらに解説をするマリバロンを見て、それはコメディの世界のみに通用するものだという事実を知るガテゾーンはただ無言で時を過ぎるのを待つしかなかった。

 

 

 

(まぁ、あれだけヘコんだ後だ。少しは吹っ切れたって事だろうよ)

 

「ガテゾーンよ」

 

「ハッ…」

 

 

盛り上がる3人ではなく、ガテゾーンのみに声をかけるジャーク将軍は振り向かぬまま、モニターに映る怪人の見つめながらも、今回の裏でもう一つの動きについてを訪ねるのであった。

 

 

「例の協力を申し出たという魔術師…今は大人しくしておるのか?」

 

「ええ。奴が動くと無駄に事が大きすぎますからね。今は『ビャッ鬼』の隠れ家で大人しくしてますよ」

 

「そうか…くれぐれも監視を怠るでないぞ」

 

「イエッサー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた」

 

「もう、せっかく部活が早く終わったのに弛みすぎですよ兄さん!」

 

「うるさいなぁ。今日は高体連の報告会に美綴と藤村が参加して休みだと思ったのに、自主練なんて言い渡しやがって…」

 

 

ブツブツと文句を言う慎二をいさめながらも隣を歩く桜は、恐らく部活が休みであるならば来る受験に向けての勉強と武による特訓に従事したかったのだろうと推測。

 

新たな力を使いこなそうと以前よりも数段厳しい訓練を武に申し出た慎二であったが、いざ特訓を始めてはいいが、終われば疲労困憊。そのままベットへと倒れこみ翌朝まで起きれない日々が続いていた。

 

しかし、訓練前には勉強や宿題を片づけているのはさすがと言えるだろう。そんな桜も今以上に魔力のコントロールができるようにと柳洞寺に住むメディアの元へ通い、料理を教えるという条件付きでアドバイスを貰っている。

 

 

少しでも早く、仮面ライダーとしての力を使いこなしたいと意気込む2人に光太郎は今でもあまりいい顔はしないが、それでも、義兄を助け、誰かを守れる力であるのならと訓練を続けている。そう言えばと、目的地であるマウント深山まであと少しの距離まで迫った桜が唐突に最近起きた事件について慎二へと尋ねた。

 

 

「そう言えば慎二兄さん。最近また起きた銀行強盗なんですけど」

 

「あぁ?あのクライシスが起こした奇行ね。それがどうかした?」

 

「え…?」

 

「…何驚いてんだよ。あんなの連中ぐらいしかいないだろ。ゴルゴムの時だって」

 

「あ、はい。そうですよね。マグロの事件の時もそうでしたし…」

 

 

奇妙な事件であるとは認識していたが、慎二の言う通りにクライシスが犯人であればすんなりと納得してしまう。

 

 

考えて見ればこのようなおかしな事件、敵であるクライシスしか思いつかないだろう。まだ聖杯戦争が始まる以前、謎の行方不明者や事件が起きる度に何かと光太郎がゴルゴムが原因だと断言していたが、追いかけてみれば事実ゴルゴムによる作戦が多々あった。

 

 

今回も目的が不明だが、良からぬことを企んでいるのには違いはない。しかし、こんな商店街の入口で考えても仕方がない事だと、2人は買い出しへと向かう。

 

 

「敵の狙いよりも先に今晩の夕食の買い出しです!何か希望とかありますか?」

 

 

ニコニコと笑いながらで今夜の主食を尋ねる桜に、慎二はやれやれと彼女とは別の笑みを浮かべてしまう。クライシスの悪だくみと比べれば、桜の我が家の夕飯事情の方が桜にとっては大事件だ。

 

 

「そうだな。それに、まさかこんなところに敵が――――」

 

 

 

 

 

 

「バナナをある分。全て頂こう」

 

「おいおいまたかぁ?家にゴリラでも飼ってんのかい?」

 

「まぁ、そんなところだ」

 

 

 

 

 

 

いた。

 

 

ものすんごく胡散臭い恰好で、立派な髭を蓄えた老人が。目の下の異様な程に濃い隈を走らせる怪しい老人が。

 

 

 

八百屋の店長が訝し気な顔もものともせずに、ビニール袋から溢れんとばかりに満杯のバナナを受け取った老人は、今しがた買い占めた黄色い果物を見て頷くと、ゆっくりと店から離れていく。珍客に首を傾げる八百屋の店長はまぁ売れ残るよりはいいかと空となった段ボールを片づける中、次の来客者であり常連でもある兄妹の姿を見て作業を中断した。

 

 

「おう、間桐さん家とこの。今日は2人が買い物係かい?」

 

「それよりもおじさん!さっきバナナを買った人がいたんですけど…」

 

「見てたのかい?あんな買い物するの王様以来だせ。それも一週間ぐらい前から毎日ときたもんだ」

 

「一週間前…?」

 

 

 

 

確かバナナの皮を現場に残す銀行強盗が出没したのもその時期だったはず。目を合わせて頷いた慎二と桜は未だ商店街のど真ん中を闊歩する老人の追跡を開始する。

 

 

 

 

 

 

「でも、なんであんなにも分かりやすい人がいるのに、ここの人達は警察に通報しなかったんでしょう?」

 

「…光太郎が言ってたろう。あの王様がここによく出るって…」

 

「あぁ…」

 

 

こちらの姿を察知されぬよう電柱の影に隠れる桜は隣で対象の姿を懐から取り出した青いデジタルカメラで撮影しながら、どこか諦めを含めた答えをだす。桜も目を逸らして納得してしまうのは仕方がないことだろう。

 

彼ならば秘匿など構いもせずに自慢の宝物庫から様々なものをあの場で取り出し、その度に光太郎が手品ですとごまかしていたと聞いた事がある。

 

今回はそれが幸いして、商店街の人々が怪しみ興味本位で後を追うなどというトラブルに巻き込まれずに済んだのだろう。

 

慎二は警戒心の薄い部分は考え物だと思いながらもカメラの解像度を上げ、より明確な姿を捉えようとしたが…

 

 

「―!?桜、隠れろ!」

 

「えッ?」

 

 

カメラで老人の後頭部を捉えた瞬間、老人は突如として振り返った。その目つきは、買い物で見せた好好爺の微塵もない、見た者を射抜かんとする鋭いものだった。

 

桜の肩を掴み急ぎ電柱に身を潜めるが、老人はこちらに迫る様子はない。こちらに目を向けただけで再び歩き始めた老人の姿に胸を撫でおろした慎二は再度標的の姿を見るが、今以上に近づくの危険だろうと次の手を考える。

 

 

「桜、一端引き上げて光太郎達と作戦を練るぞ」

 

「でも、あの人の後を追わなくていいんですか?」

 

「そいつはコイツに任せる」

 

 

と、ポケットから取り出したトリガーとは異なるメモリをカメラへと挿入。途端、カメラの一部分が展開され、蝙蝠を模した小型ロボットへと変形した。

 

 

「~~~~」

 

 

電子音を鳴らしてパタパタと飛び回るその蝙蝠の名はバットショット。

 

慎二が他世界の仮面ライダーから託されたロストドライバーに内臓されていたデータを元にメディアが暇つぶしと称して作り上げたサポートガシェットだ。慎二のパソコンとデータを直結しており、追跡対象の位置はもちろん、映像まで送信できる。

 

 

「なら、私も」

 

≪ ガルーダ、プリィーズ ≫

 

 

負け時と桜も指輪をドライバーへと翳し、小さな魔法陣から赤と銀で彩られた型枠が飛び出し、数個の部品へと分離。さらに空中で合体し鳥の形を形成。最後に指輪を胴体へとはめ込むとより勢いよく羽をばたつかせ、桜の周りを飛び始めた。

 

 

「ガルちゃんも、お願いね」

 

『~~~!』

 

 

鳴き声と共にバットショットの後を追う桜の使い魔レッドガルーダ。2体が老人の後を追い始めると慎二と桜は踵を返し、急ぎ間桐邸へと引き換えしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、ちゃんと餌がつれたのねぇ」

 

 

 

照明が一つもない一室。部屋の中央に置かれた水晶玉に移るのは、慎二と桜が目をつけた老人と、それを追跡する敵の使い魔を見た声の主は口元を釣り上げた女性…エミリア・シュミットはクスクスと笑うとようやくこの茶番も終わりに近づいていると悟る。

 

彼等のとの協力を終えれば、再び自分は美しさに拍車をかけることが出来る。

 

その為には、さっさと要件を片づけなければならない。

 

 

「さぁ、いらっしゃい仮面ライダー…私の為にも、さっさと死んでもらわないと」

 

 

暗がりの中。彼女の黒く、濁った瞳から怪しげな輝きが漏れていた。

 

 

 

 

 

 




さて、次回辺りから本格的な戦闘が…始まればいいなぁ

お気軽に感想等頂ければ幸いです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。