Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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皆様、明けましておめでとうございます。

新年を迎えたと同時に、ついに始めてしまったFGO。当面は最初にガチャッて出てきました人々…今回久々の登場する方とその因縁深そうな女王様で頑張っていこうと思います。

それでは、今年もよろしくお願いします!


第78話

 

「ターゲットの消滅を確認」

 

「№11(イレブン)、およびパートナーサーヴァント健在」

 

「未遠川を中心に展開されていた広範囲の特殊フィールド、消失していきます」

 

 

巨大モニターから照らされる光が唯一の照明と化している管制室。次々とオペレーターの女性から報告される内容を全て耳へと入れる男性はキッチリと整えられた髪型に皺一つ見当たらないスーツと、まるで隙の無いサラリーマンと印象付ける姿だ。

しかし、そんな姿に不釣り合いである黒い手袋で包まれた右腕で付近の端末を数度操作。男はモニターの隅に展開される望遠カメラを間桐光太郎へと固定する。

 

 

「よくやった…」

 

 

分析を続けるオペレーター達に聞こえぬよう、そう小さく呟いた男は緩ませた。

 

 

「随分と遠回しな手助けをしたものね。貴方と同じライダーなら、名乗っても問題なかったのではないの、『J』?」

 

「そう意地悪を言わないでくれるか、アンリ?」

 

 

音もなく背後に現れたアンリと呼ばれる女性へと男は笑いながら振り返る。目つきはやや鋭いものの、それすら彼女の魅力の一つと思わせる容姿端麗な美女であるアンリエッタ・バーキンは身を包むコートの内側からメモ用紙を取り出し、男へと突き出した。

 

メモを受け取り、書かれた内容に目を通した男はやはりか…と目を一度瞑り、再びモニターへ顔を向けると変身を解いた間桐光太郎が笑顔で兄妹達と接する場面が映し出されていた。

 

 

「…彼等の戦いを離れていた場所で眺めていた存在『星騎士』。少なくとも3体を確認したわ」

 

「一度は彼を瀕死の状態まで追い詰めた存在が3人…理由は不明だが傍観に徹していた、か」

 

「戦いが終わり、弱った№11(イレブン)に襲い掛かる様子もなく、立ち去ったそうよ。理由は不明」

 

「敢えて見逃したか、それとも彼が見せた力を警戒したのか…」

 

 

アンリが示した情報と手近の写真付きファイルを見比べる男は、既に立ち去った星騎士たちが介入せず戦いを眺めるに留めた理由を探ろうとしたが、情報が足りない。写真も星騎士達を警戒して離れすぎた為か画像がブレてしまったものばかりであり、他と比べ解像度の高い写真が撮れたと思えば、中に写る金髪の少女は数キロ以上離れて撮影した者を察していたかのように、視線をレンズに向けて冷たい笑みを浮かべていた。

 

現状、戦力の大半を世界各地へと分散してしまった彼等にはクライシスと同等…それ以上の力を持つであろう星騎士たちに挑む手段がなく、こうして敵の戦力を分析に徹するしか方法がないのだ。

 

 

「風見を№11(イレブン)に接触した直後に呼び戻したのは早計だったかも知れないわね。2人が協力し合えば…」

 

「いや、風見ならどの道日本を彼に任せていたさ。珍しく褒めていた事だしね」

 

「…報告によれば『ようやく羽の使い方を覚えた雛鳥』としか言ってないそうだけど」

 

「それでも、彼にとっては称賛に価する言葉だよ」

 

 

意味が分からない…そう言いたげに眉間へ指を当てる自分の副官を他所に、再び男は巨大モニターへと目を向ける。

 

 

(すまないが、もうしばらく耐えてくれ…世界中に散開したゴルゴムの残党やクライシスの別動隊…君達の戦いの影に隠れて暗躍する者達を叩くまで、俺達は僅かながらの手助けしかできない)

 

 

 

心中で自身と同じ道を歩んでしまった光太郎を憂う男は、自身の可能な限り光太郎達を影ながら支援すると決意を固くするのであった。

 

 

 

「ところで、『彼』なのだけど…」

 

「…『ランス』が飛び出してしまった。というところだろう?」

 

 

先ほどよりも重く頷くアンリの解答は、男にとっては予想通りのものであった。逆にアンリはなぜこうも男は納得してしまうのか、疑問しか残らない。

 

いつ『あの情報』がランスと呼ばれた者の耳に入ったかは分からない。無線による呼びかけも全く応じず、誰にも言わず姿を消した事にパートナーである彼女が放つ無言の圧力に他の隊員達は怯える他なく、上司であるアンリの頭痛の種がまた増えてしまった訳だ。

 

 

「…全く、命令無視の常習犯が今度は無断でいなくなるなんて…滝が変に庇い立てしなければ今頃軍法会議ものよ。周りに示しがたたないわ」

 

「そう言わないでくれ。躍起になっているのは、彼だけじゃない。俺達も同じなんだ。彼の気持ち…分からない訳ではないだろう?」

 

「…そうね」

 

「それに、どうやら思ったよりも近いところにいるらしい…」

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大海魔が完全に消え去った事に呼応して、河川敷に溢れかえった海魔の変異体達は次々と灰となっていく。川の方角へ油断なく銃口を向ける間桐慎二や武器を強く握る間桐桜であったが、再び新しい海魔が出現する様子はない。

 

 

「…終わった」

 

「見たいですね」

 

 

慎二の呟きに同意した桜はそろい自分の腹部に手を当てるとそれぞれがバックルからメモリを引き抜き、レバーをスライドさせると仮面ライダーから人間の姿へと戻る。2人は離れた位置でヨロヨロと支え合いながら立つ光太郎とメドゥーサの元へと走った。

 

 

「光太郎兄さん!大丈夫ですか?」

 

「メドゥーサ…怪我は?」

 

 

駆け寄る義弟と義妹の姿に、変身を解除した光太郎とメドゥーサは心配させまいと笑って答えるが、少しばかり本音を漏らしても構わないだろうと返答すると。

 

 

「大丈夫…とは言えないかな?」

 

「同感ですね。立っているのが、少々堪えています」

 

「なら無理せず座ってろよ!今ライドロン呼ぶから!」

 

「どうしてそんな状態で立とうとしたんですか!治療しますからとにかく大人しくして下さい!」

 

 

怒られてしまった。

 

 

その後も久々に年下組から揃って雷を受けてしまった光太郎とメドゥーサは目を合わせると、つられて吹き出してしまう。何がおかしいんだとその後も慎二と桜にガミガミと怒られる2人の姿をライドロンから降りたガロニアはじっと眺めていた。次第に段々と視界と揺らいでいる事に違和感を覚え、何事かと慌てふためくとガロニアの肩に手を置き、そっとハンカチを差し出す赤上武の声が響いた。

 

 

「良かったではないか。見たかったのだろう、あの関係を」

 

「…はい」

 

 

ガロニアが桜と入れ替わってた頃から亀裂が入ってしまった光太郎とメドゥーサの関係。ガロニアは自分が事の発端となってしまったのではないかと慎二に相談したが、「あんなもの一時的に過ぎないし、そのうちこっちがイラつくくらいに仲直りする」と責めることなく、待っていろとしか言われなかった。

 

その通りだった。

 

光太郎とメドゥーサが共に笑い合う姿を目にし、無意識に涙を流してしまったガロニアは武からハンカチを受け取り、そっと目元に当てる。そんなガロニアを励まそうとしているのであろう。ロックシードの効力が解け、上級から下級へ、さらに小指程の大きさとなったインベスがガロニアの両肩に乗り身振り素振りで元気づけようと躍起になる姿があった。

 

 

「フフッ…感謝いたしますわ」

 

 

微笑むガロニアにつられて武も、光太郎とメドゥーサが本音をさらけ出したことで以前よりも絆を深めることができたのであろうと安堵して口元を緩める。

 

 

「雨降って地固まる、か」

 

 

自分の世界でも通用した言葉であったが、まさにあの2人の為にあるのだろうしか思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、良かったんじゃないの?今後不満を言い合えるのって、ストレス溜まらないでしょうし」

 

「その言い分だと、君はストレスを持ち合わせていない事になるんだがね」

 

「言ったって通用しない相手もいるのよッ!!」

 

「ふむ。それは困った――ッ!?下がれ凛ッ!!」

 

 

腕組をして実妹たちのやり取りを見て呆れつつも、どこか羨望の眼差しを向ける遠坂凛の肩を掴み、自分の後方へ下がらせたアーチャーの眼前に、身体の一部を灰化させながらも襲い掛かる海魔が出現した。

 

地中に潜んでいた個体らしく、所々の肉がなく骨格が露出した状態であるがそれゆえなりふり構わず襲い掛かって来る。

 

「ちぃ…!」

 

「アーチャーッ!?」

 

手に魔力を込め刀剣を投影するアーチャーであったが、彼が攻撃を仕掛けたと同時に恐らく敵の牙が届き、頭を喰いちぎられる。そう嫌な未来しか見えない凛は思わず彼の名を叫ぶと同時であった。

 

 

「ギギャッ…!?」

 

「なっ…」

 

「あれって…」

 

 

海魔が口を大きく開いた直後、頭上から飛来した『何か』に海魔の頭頂部へ突き刺さるだけに留まらず、その先端は地面をも貫いた。

 

海魔を串刺しにしたそれは、紅い槍。

 

その槍をアーチャーと凛は嫌という程その目に焼き付けている。

 

そしてこの槍の担い手は神話の時代も現代でも、たった1人しかない。

 

 

 

 

「ったく、腕鈍ってんじゃねぇのか?弓兵さんよ」

 

 

 

灰となった海魔の姿など目もくれず、槍を放った青い男に目を向ける。

 

 

見慣れぬ私服姿と青い髪を首の当たりで適当に結んでいる男の不遜な態度は変わらない。

 

 

 

「よう嬢ちゃん、ちったぁ妹さん見習って貞淑っての身につけたか?」

 

「いきなり何わけわからない事口走ってんのよ。けどまぁ、助けてくれたんだから聞き逃してあげる。助かったわ、ランサー」

 

「私も感謝だけはしておこう。おかげで命拾いをした」

 

「あーテメェにそう言われんのはなんだか気持ち悪ぃな」

 

 

ガシガシと手で後頭部をかくランサーは真紅の槍を回収し、柄で肩を叩くその姿は聖杯戦争時と変わらない。だが、どこかで違和感を覚えるアーチャーはマスターである女性と共に、とある特殊部隊で厄介になっているとしか説明の無かった男がなぜ自分達の目の前に現れたのかと疑問を抱く中、ランサーは続いて光太郎達の元へ悠遊と向かっていった。

 

 

眉間に皺を寄せるアーチャーは衣服の袖が引かれていると気づき、顔を向けると凛が怪訝な表情を浮かべ、慎二をからかい、ガロニアに言い寄るところを桜に咎められるランサーの姿を見て呟いた。

 

 

「…明日、私たちに聞きたい事があるらしいわ」

 

「聞きたい事?」

 

「ええ、さっきすれ違いざまにぼそっとね。その時のランサーの声。とても…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とても、冷たかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかもう日本に辿り着いてたとはな…流石の行動力だ」

 

「何を褒めているの…居場所が分かったのなら今すぐ村雨達に―――」

 

「いや、彼も1人ではどうにかできないと思いかつての戦友に助けを求めたんだろう。それに、いい機会でもある」

 

 

踵を返し、待機中の人員に連絡しようとするアンリを引き留めた男は変わらず静かな声で告げる。

 

 

 

「これで彼は変わるかもしれない。かつて俺自身も経験したことを、ね」

 

 

男…結城丈二はモニターに映るランサーを見つめるのであった。

 

 

 




と、前回の半分ほどですが今回はここまで。

果たして兄貴の目的とは…?

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