Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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皆様、2週間ぶりでございます。

では、色々な人の視点となる75話をどうぞ!





第75話

「はぁー、こりゃまた随分派手にやらかしたなぁあの偏執狂」

 

 

ビルの屋上…給水タンクの上で胡坐をかく金髪碧眼の少女が突如発生した靄に移る巨大物体を見て呟いた。

 

 

かつて一度限りの共闘した同胞が放つ力を感じた火星の騎士アルスはファミレスでの食事を中断し、一目見ようと目を凝らせば事の発端であろう変質者と、もう一人の危険人物を発見。

 

どちらも冬木を二分する鉄橋の上に立ち、何やら会話もせず一心に川の方へと目を向けているではないか。

 

 

「なるほど…連中も奴を狙うのも当然と言えば当然か。さて…」

 

 

アルスはもう手を取り合って同じ道を歩むことは決してない者達へと向けていた碧眼を突如として現れた2体の巨大生物へ、そして河川敷に立ち尽くす男…敢えて取り逃がした『獲物』へと向ける。

 

 

「ここで潰れるのか、それとも状況をひっくり返すのか…見せてもらうぜ、間桐光太郎」

 

 

ガサリと真横に置いたビニール袋の中から屋上へと登る直前に購入したスナック菓子を無造作に取り出し、目を向けないまま封を切るアルス。観戦する準備は万端だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフフ…こう眺めると壮観ではありませんか」

 

「君の考えは相変わらず理解に苦しむ。あんな醜悪な化け物を呼び出すために、治ったかもしれない片腕を犠牲にするなど」

 

「慣れてしまえば、これと言って不便ではありませんがねぇ」

 

 

鉄橋の梁に立ち、夜風に当たりバサバサと自身を覆うボロ布をはためかせるジュピトルスの歪んだ笑みを横目で見る青年は表情を崩さぬまま嫌悪感を隠さずもの申しているが、ジュピトルスはさほど気にする様子もなく今は無き腕が生えていたはずの肩を撫でる。

 

 

「11年前に勃発した聖杯戦争とやらで私の肉体の基となった者は自身の肉体を依り代としてあの大海魔を召喚したようですが、私は片腕で十分に事足ります。それに、あの腕には貴方の協力もあって十分過ぎる程の魔力を凝縮されていますからねぇ」

 

(よく言ったものだ。ワタシが切り刻んだ人間(ゴミ)の死肉を魔力に加工しただけのこどだろう)

 

 

内心で反論する星騎士マキュリアスが指摘するのは、どんな形にしろジュピトルスに協力した訳ではないということだろう。そしてマキュリアスが嫌気をさしているのはあくまで人間の亡骸の臓物や血液を利用した魔力の精製方法であり、マキュリアスが殺害した人間を利用したという鬼畜にも劣る性ではないのだ。

 

 

「それにしても、まさかあのような化け物が間桐光太郎の傍にいたとは…彼も飼い慣らす事に苦労をしたことでしょうねぇ」

 

「………………………」

 

 

続けてジュピトルスが口にしたのは、大海魔の横に佇む無数の蛇を髪の毛のように生やし、大きく、禍々しい赤い眼を持つ怪物…ギリシャ神話に登場するゴルゴンと化したメドゥーサ。

 

人間の姿であったメドゥーサをあのような姿へと変えたジュピトルスによれば、あれが彼女の本来の姿であると語った。

 

彼女の心の奥底…深層意識に押し込められていた殺意・破壊の衝動と理性を『裏返し』た事によりあの姿へと変えることが出来たのだと、ジュピトルスはメドゥーサへ施した過程を思い出し口元を歪に歪める。

 

 

「理由は知りませんが、彼女の精神状態はとても不安定でしたねぇ。さも信じていた者に裏切られ、そう疑ってしまう自分に絶望したような…えぇ、とても愉快な状態でした」

 

「……………」

 

「それ故か、彼女の隠された本能を引き出すのは容易でしたよ。貴方がくれた『宝具』のおかげで」

 

 

どう投げかけられても無言を通すマキュリアスの胸に走る小さな痛み。

 

マキュリアスが抱いた痛みではなく、恐らく身体の基となった英雄…ペルセウスの痛みなのだろうと推測した。

 

 

 

はるか神話の時代。

 

 

本来であれば女神の一柱となる可能性を持った女神は、最愛の姉2人を狙う人間達を次々と殺し、血を吸い続けた事によって身も心も魔へと堕ちた。

 

ついには守るべき存在であった姉2人も飲み込んでしまった怪物は、神々に乗せられて現れた1人の男とその道具により、姉達と平和に暮らしていた頃という悪夢を魅せられる中、首を切り落とされた…

 

 

それが後にペルセウスの英雄譚に登場する『ゴルゴンの怪物』の末路であった。

 

 

 

 

怪魔界で魂を封じられていたマキュリアスは己の出生への皮肉と言うべきか、近しい性分を持つペルセウスの肉体を得て現界。手にした大振りの鎌や、あともう一つの宝具以外は必要ないと手放そうとした宝具がジュピトルスの目に止まってしまう。

 

 

 

鏡像結界の袋(キビシス)

 

 

ペルセウスが魔物と化したメドゥーサの魔眼を反射させ、断たれた首が入れられたとされる袋である。

 

『外』と『内』の概念を反転させる力を持ち、ペルセウスがメドゥーサに勝利する一因である袋を手にしたジュピトルスは、あろうことかマキュリアスの一撃によって瀕死となったメドゥーサの体内へと押し込んだのだ。

 

さらにジュピトルスの魔術が上乗せされた事にで、袋の持つ力も『概念』から『思念』・『感情』へも効果が発動されるようになり、彼女が聖杯戦争時代に召喚され、出会ったマスターと過ごしている内に限りなくゼロへと近づいていた暗く、血を欲してしまう殺意が一気に膨れ上がってしまう。

 

逆に殺意を抑え込んでいた理性がゼロとなったメドゥーサの身は神話と変わりない、巨大な姿へと変貌。光太郎達に前へと現れ、巨大となり、強大となった魔眼キュベレイで見下ろしている。

 

 

ただ、喰らう為に。

 

 

 

 

 

「さて、間桐光太郎…貴方に殺す事ができますかな?」

 

 

「今目の前に聳えるのは、貴方が愛した女性ではなく、無差別に生き物を喰らう化け物なのですからねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、いきなりの呼び出しがあったと思えばあのような事になっているとは…」

 

「そうね」

 

「こちらは予告なしに来訪した聖堂教会の査察官をようやく隣町まで追い払ったばかりだと言うのに」

 

「そうね」

 

「せっかくの休日は潰されたおかげで、以前から計画していた君ご自慢である工房の整理もままならん」

 

「そうね」

 

「…聞いているのかね、凛」

 

「そうね」

 

「………………………」

 

 

戦闘服である赤い外套を纏ったアーチャーはパートナーである遠坂凛の返答が同じ言葉の切り替えしになってしまっている事に眉を寄せる。普段ならば自分と同様に愚痴や査察官への不満を口をするというのに随分と大人しい。

 

事態は一刻を争うと聞かされたアーチャーは時間がないため彼女を抱えて建築物の屋根を足場として夜空を跳躍。聖杯戦争時、幾度となく同じ事を繰り返したというのに、凛の反応はどれとも違っていた。

 

今更高所恐怖症だったともいうのか…

 

もしそうだとしても気の強い彼女の事だ、相手はもちろん自分にすら弱みを見せるべきではないと気を張っていたのだろう。

 

ここで突くのは野暮というものだろうと結論付けたアーチャーは目的地となる深山町と新都の間である未遠川へと急ぎ移動するが、その一方で先ほどから顔を全力で逸らしている遠坂凛は今既に大きな戦いを迎えていたのだ。

 

 

 

 

 

(近い近い近い近い近い近い…なんでよりにもよってこんな掴まり方を指定してくんのよあーもう顔が熱いッ!!!!)

 

 

 

 

という乙女と化した凛の体勢は背中と膝裏をアーチャーの手で支えられ、自身はアーチャーの首に手を回してしがみついている形で抱き上げられている。

 

 

以前のように凛の腰に手を当てて移動する方法も出来なくはないが、より安定した姿勢の方が彼女を振り落としてしまう可能性が低いというアーチャーの申し出に賛成した凛であったが、まさかこのような恥ずかしい恰好となるとは夢にも思えず、ただ一人悶える姿を懸命に隠すことしかできない。

 

 

聖杯戦争時にアーチャーによって支えられて街を飛び回っていた頃には一定の距離はあったのだが、彼の首に両手を回している関係から吐息が耳に当たってしまうほどに顔が接近しているのだ。

 

 

とにかく言われたことには簡単な返事をしなければこの自分の顔が今、どのようになっているかをこの唐変木に悟れてしまうと首が痛むのも忘れて首を逸らしていたが…

 

 

 

 

「凛、結界に入るぞ」

 

「え…?」

 

 

アーチャーの低い声に反応した凛は、自分達が一般の人間にはまず察知される事のない空間へと踏み込んだと気づき、先ほどまで大いに乱れていた心を一気に沈ませると分析へと移る。自身を少女から魔術師へと切り替えたのだ。

 

 

 

「そう…これだけ大きな人避けの結界を張らなきゃならないとなると、余程の事なのね」

 

「どうやら聖杯戦争の際に予め仕掛けておいた術式が功を成したようだな。周囲に人間の気配はない」

 

「邪魔者をどかしてくれる変わりに自分は働かない、か。まぁ、それだけでも十分よね。なんたって…」

 

 

街の一部を飲み込むほどの巨大な結界を巡らせたメディアに連絡と協力に感謝しつつも、凛は視界に捉えた『敵』を見る。

 

 

 

「あんなのが相手じゃ、魔力がいくらあったって足りやしないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…今何ていったんだよ光太郎…」

 

「あれが…メドゥーサ姉さんって…」

 

 

 

光太郎の呟いた名を聞き、どうか自分の勘違いであって欲しいと声を義兄に向ける慎二と桜だったが、彼の反応を見る限り間違いはない。

 

ただ1人、メドゥーサの素性を知らないガロニアだけが周囲の反応についていけず、ただただ動揺するしかなかった。

 

 

「あ、あの…メドゥーサ姉様が、あの巨大な生物とは、一体…?」

 

「…後程説明する。光太郎殿、今は…」

 

 

 

武の言葉を聞き、ゴルゴンの怪物と成り果てたメドゥーサを見上げていた光太郎は一度大きく息を吸い込み、全てを吐き出す程の大声を放った。

 

 

 

「ロードセクターッ!!」

 

 

「了解です。さぁ、月夜の空を―――」

 

 

 

「急げッ!!」

 

 

 

「………モードSへ移行」

 

 

 

 

軽口を遮られ、大人しく光太郎の要望通りに飛行形態へと変形したロードセクター・ネオは主人が飛び乗った途端に急上昇。メドゥーサの巨大な眼を目指して飛翔していく。

 

 

 

「兄さん…」

 

「…今は情報が足りな過ぎる。まずは光太郎を見てどんな反応を示すか知る必要がある。だから僕たちは…」

 

 

飛び立った義兄と、変わり果てたメドゥーサの安否を気遣う桜に、警戒の色を強めた慎二の声が耳に響く。見れば水面から這い上がる不気味な影がゆったりと姿を現した。

 

 

人間と変わらぬ大きさのヒトデような海魔の群は鋭い牙をガチガチと鳴らし、慎二達を喰らおうと飛びかかる。ガロニアを下がらせ、身構える武達だったが、風を切る音と共に自分達を横切った攻撃が海魔を貫く。絶叫と共に燃え上がる敵に驚きつつも、振り返った先にいた者達の姿に桜は笑顔と共に名を叫んだ。

 

 

「姉さん!アーチャーさん!」

 

「全く、なんでアンタ達っていつも騒動の真っただ中にいるのかしら…?」

 

 

それぞれ凛はガントを、アーチャーは黒い弓から矢を打ち出した態勢を解いて桜達の元へ駆け寄ると、説明を求めた。

 

ゴルゴンと化したメドゥーサに突然現れた大海魔とその眷属らしき個体。

 

頭を抑える凛にアーチャーは冷たくも、街の管理者として出す答えを確認した。

 

 

「凛。分かっていると思うが、事態が事態だ。もし結界の外に出てしまうようなことがあれば…」

 

「…分かっているわよ」

 

 

人避けの結界の恩恵により、当事者以外にあの巨大な生物の存在は感知されていない。だが、もし移動を始め、結界の外へと出てしまい多くの人間に姿が露呈してしまえば、混乱は避けられない。

 

 

先ほど帰ったばかりの査察管がこの件を耳にすれば、冬木の管理人は無能であるという烙印を押され、外部からの監視…下手をすれば我が物顔で駐屯する輩が住み着く可能性すらある。自分達は絶対であると言って聞かない連中だ。そんな輩が偉そうな顔をしてこの街を闊歩することも勿論許すつもりはないが、この場所は多くの敵に狙われている。

その大たるクライシス帝国を目の前にしたらあの連中は犬死どころか逆に利用される恐れすらある。

 

 

(なんであの連中の心配なんてしなくちゃないのかしら…)

 

 

自分の沽券以上に犠牲者を増やさない為の割合が大きいなど、自身のお人好加減にうんざりする凛は、由々しき事態を避ける為には騒ぎが大きくなる前にあの大海魔も含め、ゴルゴンとなったメドゥーサをどうにかするしかないと判断する。

 

それがこの場にいる者達の逆鱗に触れる事になろうが、やるしかないのだ。

 

 

「けど、そうなる前に何とかすればいいんだろ?」

 

「え…?」

 

「姉さんの立場も分かってます。だから、頑張って終わらせましょう!」

 

 

自分は何も言ってないのに、どうしてさも聞いたような言葉を投げかけられたのか疑問に思う凛へ、アーチャーは口元を歪めながら両手に夫婦剣を顕現させた。

 

 

 

「どうやら、君は余程顔にでやすいのであろうな」

 

「うるさいわね!」

 

 

こちらの顔を見ただけで気づかれてしまった。桜達にとって、大事な家族に手をかけようととまで考えていた自分の考えを。

 

2人は表情からその人物が抱いているだろう考えを読み取る事に長けているのかもしれない。その観察力を培った相手であろう人物は今、凛の考える最悪の事態を迎えさせない為にも今、立ち上がっているのだ。

 

自分も負けられない。

 

そう強く決意するのは、凛だけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「では、俺はあの大物を切り崩すとしよう!」

 

 

『ブラッドカチドキ!』

 

 

戦極ドライバーを装着し、ロックシードを解錠した武の肩から、これまで隠れていた2匹の初級インベスが飛び降りる。

 

 

「行くぞ、お前達…変身!」

 

 

戦極ドライバーへ装填したロックシードを固定。カッティングブレードを下ろしてキャスパレッドが展開された瞬間、空間を切り裂いて武の頭上に現れた紅く、所々が黒い金属の果実が鎧として展開。

 

武へと装着された。

 

 

 

 

『ブラッドカチドキアームズ!』

 

 

 

 

 

『 い ざ 、血 祭 り ィ !!!』

 

 

 

 

 

『『『エイエイオーッ!!!』』』

 

 

 

 

電子音が鳴り響き、武を重装甲の鎧武者へと変えたロックシードはさらに縮んでいたインベスを元の大きさに戻しただけでなく、2体を一時的に上級インベスへと進化させた。

 

 

身体が閃光に包まれた2体はそれぞれ巨大な翼を持つスザクインベス、亀の甲羅を思わせる重々しい装甲で覆われたゲンブインベスへと姿を変える。うちスザクインベスは翼を羽ばたかせ、少しずつ浮遊すると武を見てゆっくりと頷き自身の背中を向ける。

 

同じく頷いた武がスザクインベスへと飛び乗り、片手に専用武器である火縄大橙DJ銃を構え、うねる声を上げるゲンブインベスへと指示を送った。

 

 

 

「俺は羽三郎と共に本体を叩く。玄四郎は皆と共に雑魚を迎え撃ち、ガロニア殿を守るのだ!」

 

 

『ガゥ!』

 

 

返事とも言うべき咆哮を聞いた武はスザクインベスと共にこちらへと巨大な触手を向けた大海魔へと向かっていく。

 

 

まさかあそこまで怪人と意思疎通を見せるとは驚きであったが、進んで本体を狙ってくれるとは有り難いと、凛はスカートのポケットから今度こそ忘れずに持ち出した宝石を手にして再び沸いて出た海魔達を睨む。

 

(後方支援を慎二と桜に任せて、私とアーチャーで前に出れば…)

 

 

その戦法である程度時間は稼げるだろうと踏んだ凛は、慎二と桜へと指示を送ろうとしたが…

 

 

 

「2人とも、取りあえず――――」

 

 

「遠坂、後任せるぞ」

 

「ゲンちゃんも、2人に協力して下さいね!」

 

 

「ちょッ…」

 

 

 

 

凛の言葉を聞かず前へと駆けだした慎二と桜の姿を見て、思わず手を伸ばしたが、見れば2人の腹部に見覚えのあるようなベルトが巻かれている。

 

 

だが、牙を向いている海魔に接近する2人の助けが先であるとガントを打ち出す体勢に移る凛だったが、それは杞憂へと変わってしまう。

 

 

 

 

 

《TRIGGERッ!》

 

 

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

 

《 シャバ・ドゥビ・タッチ・ヘンシーンッ!シャバ・ドゥビ・タッチ・ヘンシーンッ! 》

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

『変身!』

 

 

 

 

《TRIGGERッ!》

 

 

 

 

《フレア、プィリーズ!メラ…メラ…メラ・メラ・メラァ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え………………………?」

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーへと変身を遂げた慎二と桜はそれぞれの得物を持ち、河川敷に群れなす海魔との戦闘を開始する。

 

 

戦いが終わった直後に、持ち合わせていた疲労回復や魔力の補充に使われる薬草を元にしたサプリを服用し、ある程度回復を施していたのが幸いしたのだろう。

 

 

全力で戦える2人はトリガーマグナムから火を噴かせ、桜はメイガスクロスボウに炎を纏わせて振り回していた。

 

 

 

 

「まさか…あの2人が仮面ライダーになっていたとは…凛?」

 

 

流石に表情を崩して驚愕するアーチャーは見てしまった。

 

 

 

どこか全体的に白くなった自分のマスターの口から、何かが飛び出してしまっている姿を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メドゥーサッ!聞こえるか、聞こえているのなら、返事をしてくれ!!!」

 

 

 

 

飛行するロードセクターと共にメドゥーサの頭上から既に何度目かも分からなくなるほど呼び掛けを繰り返している。

 

光太郎はその強化された視力でいかなる反応も見逃さまいと目を凝らしているが、応じる様子はない。

 

しかし変化はあった。メドゥーサの髪と化している無数の蛇達の視線が、常に光太郎へと向き始めている。それも獲物を見つけたと言わんばかりに、鋭い目つきとなって。

 

 

 

「くそ、時間ばかりが経過している。このままだと…」

 

 

 

(…た…う)

 

「え?」

 

(こ…ろう)

 

「声…まさか、メドゥーサなのか!?」

 

 

 

微かに光太郎の頭に響く、誰かの弱々しい声。

 

その声をメドゥーサの声であると確信した光太郎はさらに声を強めて眼下にいるメドゥーサへと呼び掛けた。

 

 

 

 

「メドゥーサ…聞こえている。聞こえているぞ、メドゥーサッ!!」

 

 

 

 

 

 

(こう…たろう)

 

 

 

 

(おね…がい、です)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私を…ころ、して…)

 

 

 

 




凛お姉ちゃん、びっくり過ぎて昇天寸前でございました。

さて、光太郎はどう答えるか…?

余談ですが冬映画、思った以上に先輩方がガッツリ絡んでくれて嬉しかったです!


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