Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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さて、今回もあの方は絶好調であります。自分の中で…

では、74話をどうぞ!


第74話

「ボスガンッ!貴様のような卑怯者は俺達が断じて許さん…覚悟しろッ!!」

 

 

間桐光太郎…仮面ライダーBLACK RXの叫びが工場内に木霊する。

 

 

天井から差し込む橙色の輝きに照らされたその姿と迫力は、まもなく沈もうとしながらも最後まで輝き、地表を照らし続ける太陽そのもの。

 

 

そして彼の傍らには2人の新たな仮面ライダー、トリガーとメイガス、ボスガン達と光太郎の中間に聳え立つ武神鎧武。

 

光太郎の放った言葉に同調するかのように、それぞれが手にした武器を強く握り、クライシス帝国の怪魔獣人たちを睨む。

 

 

 

 

 

ボスガンの中でなぜ、こうなったと幾度も繰り返される。

 

 

 

立てた作戦は完璧だった。

 

 

非力でただの人間に過ぎない間桐慎二と間桐桜を人質に、騙し討ちにより赤上武から変身能力を奪い、間桐光太郎を変身させないまま抹殺する。

 

 

一体、何がいけなかったのか。

 

 

ただの人間だと決めつけ、下級の怪人を向かわせたからか?

 

 

ベルトさえ取り上げれば、戦う手段はないと決めつけたからか?

 

 

変身させずに脅迫した間桐光太郎を、すぐさま始末しなかったからか…?

 

 

 

だが、そんな疑問は光太郎の放った一つの言葉にかき消される。

 

 

 

卑怯者

 

 

 

敵である光太郎を追い詰める為に策を講じたに過ぎないボスガンから見れば、侮蔑以外のなにものでもない。地球侵略部隊の中で唯一の貴族である事を自負するボスガンは自分を侮辱する者を決して許さない。

 

 

 

侵略作戦を開始する直前、ジャーク将軍の命令により光太郎をクライス要塞へと招くと聞いたボスガンは、将軍が謁見するに相応しい男であるのか光太郎の力を試そうと戦いを挑む。しかしキングストーンを封じてしまえば自分の足元に及ばない存在であり、クライシス皇帝に選ばれた自分には決して敵わないと分からせるため、徹底的に痛めつけた。

 

以来、自分は光太郎に勝っていると思い込むボスガンが放った刺客である怪魔獣人は連戦連敗。

 

不甲斐ない部下の失態に頭を悩ませる日々の中、特殊な能力を利用するため密約を交わしていた星騎士ジュピトルスの暴走により危うくなった立場へと追い込まれてしまう。

 

名誉挽回の為に自ら前線へと出たボスガンを待っていたのは、間桐光太郎の弱点であるはずの人間2人までもが仮面ライダーとなってしまうと予測すらできない事態と、先ほどの罵倒…

 

 

込み上げた怒りが頂点に達したボスガンは怪魔稲妻剣の先を全ての元凶である光太郎へと向け、立ち並ぶ仮面ライダー達の姿に呆けている怪魔獣人たちへと指令を下す。

 

 

 

「何をボサッとしている!今すぐにでもRX達を叩き潰せぇッ!!」

 

 

背後から突然響いた上官の怒鳴り声にビクリとさせた獣人たちは続くように咆哮。狙いを定めた敵へと駆けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、今度は正面切って挑んでくるとは…戦いを挑む度胸はあったようだな?」

 

「喧しい!貴様なんぞ俺の棒術だけでも打ち倒してくれる!」

 

 

仮面ライダー武神鎧武…赤上武へと棍棒を向けるガイナニンポーは敵の頭上を飛び越え、背後に着地するとすぐさまに真横へと前転。

 

視線で追う武の不意を突くため四方八方、素早い動きで翻弄しようと動きを早める。最初の数度は武も目で追ったものの、以降はまるで動きを見せずにいた。

 

 

(キキキ…どうやら俺の超スピードに付いてこれないようだな)

 

 

優越感に浸るガイナニンポーであったが、この男は変身する手段を奪ったというのに慌てるどころかインベスという隠し玉を持ち合わせ意表を突いていきた。また何か妙な手段を取られる前に一気に決着をつけてみせるとガイナニンポーは微動だにしない武の側頭部目掛け、棍棒を振り下ろし―――

 

 

 

「ギギャァッ!?」

 

 

悲鳴と共に床へと落ちた。

 

 

「あ、がが、なぁ…!?」

 

 

胸に走った痛みと弾けた光に目が眩んだガイナニンポーはなぜ自分は痛む目と胸を押させて苦しんでいたのか、何が起こった事すら分からなかった。

 

辛うじて見える目で獲物を見れば、敵は立ち位置を変えず、手にした武器だけを自分が飛んでいた方へと向けている。武の持つ無双セイバーの唾…内臓銃であるムソウマズルからは煙がユラユラと昇り、引き金を引いた武は床を這いつくばる怪人へと目を向けた。

 

 

「いくら相手の目を眩ませるために素早く動こうと、滾らせた殺気を消さなければ意味はない。自分の位置を教えているようなものだ」

 

 

呆れたものだと呟く武は棍棒を杖替わりによろよろと立ち上がるガイナニンポーへ向き直り、西日に反射して煌きを見せる二刀を構えた。

 

 

「関係のない藤村殿を巻き込んだ報い…今度こそ受けてもらうとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん、頼みます!」

 

「無理するなよ。お前が扱ってるのは、間桐にある魔術書じゃ何一つ解明できないもんばっかりなんだからな」

 

「はい!」

 

 

 

カマキリ型の怪魔獣人ガイナカマキルへと駆けだす桜はドライバーのバックルをスライドさせると緑色の指輪を装着した左腕を翳す。

 

 

 

 

≪トルネード、プリィーズ!ビュン!ビュン!ビュンビュン、ビュンビュン!!≫

 

 

 

桜の前方に緑色の魔法陣が現れ、そこを通過した桜の赤い仮面とボディ部分が指輪と同じ色へと変化。

 

 

赤から緑へ。

 

 

炎から風へ。

 

 

ベルトが放つ音声の通り吹き荒れる竜巻のように激しい風を纏い、身体を浮かせたメイガスは『フレアスタイル』から『トルネードスタイル』へと形態を変え敵へと突進。

 

薙刀型へと戻したメイガスソードボウを構え、鋭い鎌を振り上げるガイナカマキルへと肉迫する。

 

 

「ハァッ!」

 

 

気合いと共に刃を横薙ぎに振るう桜の攻撃をガイナカマキルは両腕を交差させて受け止める。形態を変えた事によりスピードが上がっているようだが、その分威力は弱い。

 

これならば自慢の鎌ですぐにでも真っ二つにできると意気込むガイナカマキルは押し返そうと両腕に力を込める寸前、足首へ重く激しい痛みと同時に破裂音が響いた。

 

 

 

「ギギィッ!?」

 

 

ヨロヨロと後退するガイナカマキルは自分の足に攻撃を仕掛けた犯人…狙撃した慎二に目を向ける。しかしガイナカマキルは慎二へ攻撃する暇はない。続いて自分の真横へと移動した桜が頭頂部目掛け振り下ろした攻撃を慌てて右手の鎌で受け止め、残る左腕の鎌で反撃を試みるがやはり動きを見せる直前に慎二の狙撃によって阻まれてしまった。

 

 

桜が注意を逸らした隙に、慎二が銃撃。

 

桜がどのような方角から攻撃しようと、慎二は確実にガイナカマキルが注意を向けない場所を狙い撃つ。

 

完全な連携だが、一歩間違えれば慎二の攻撃は桜に当たりかねない。それでも攻撃が成り立つのは、慎二ならば絶対に自分の動きを予測して狙撃すると踏んで敵を翻弄する桜と、桜ならば自分がどこを狙うか分かって斬撃を繰り出すと照準を合わせる慎二の口に出す必要のない信頼関係があってこそのものなのだろう。

 

敵を確実に追い詰めるこの戦術には、もう一つの理由があった。

 

 

(最小の動きで敵を止めをさせる状態まで追い詰める…それが、今の僕らの限界だな…)

 

 

そう思考する慎二は、トリガーマグナムの引き金を引くたびに走る衝撃に耐えながら狙いを定める。

 

 

仮面ライダーへと変身し、光太郎のサポート以上の戦闘能力を手にした慎二と桜であったが、その負担は大きすぎた。

 

 

小型であるにも関わらず、両腕でしっかりと固定しなければ性格な狙撃どころか反動によって手に痛みが走ってしまうトリガーマグナム。先の戦闘の際に放った必殺技の反動によるダメージが蓄積された慎二には、撃つ度に悲鳴を上げたい程の反動が走る。

 

桜も同様だ。ガロニアとなった副作用で魔力が大きく増幅したといえど、桜は変身、攻撃、さらに必殺技全てにおいて魔力を多量に消費していく。魔法石の指輪に宿る力の補助もあるが、慣れない桜には負担が大きく、ゆえに初の戦闘で見せた指輪を使用した特殊な攻撃は繰り出していない。

 

 

敵に悟られる前に決着を付ける。光太郎への説明は、その後でも十分だろう。

 

 

「うぐぐ…調子に乗るなよッ!!」

 

 

全身に銃痕を作るガイナカマキルはただ黙ってダメージを蓄積させた訳ではない。1対2という不利な状況ではあるが、敵の分析はある程度完了した。

 

緑の仮面ライダーはすばしっこいが攻撃は軽く、しかもその攻撃は青の仮面ライダーの銃撃を確実なものとするためだ。

 

ならばどちらを先に始末するかなど、一目瞭然。

 

 

 

「キエエエェエェェェェェェェェッ!!」

 

 

桜の何度目かになるかも分からない攻撃を無理やり弾いたガイナカマキルは両腕を左右に伸ばし慎二へと迫る。

 

素早い仮面ライダーは後でゆっくりと始末すればいい。先に、チクチクと攻撃する仮面ライダーを先に葬り去れば確実に勝てる!

 

そうすれば新しい仮面ライダーの首を2つも持ち帰ることができると走る脚に力を込めるガイナカマキルであるが、自分が迫っているというのに手にした銃で肩を叩き、余裕の態度を見せている。何を企んでいるかは知らんが、武器をこちらに向けずに待ち構えるという態度に激高したガイナカマキルはさらに大地を踏みしめる足を強めた。

 

ガイナカマキルが後悔する。

 

この仮面ライダーを相手にするのではなかったと。

 

 

 

「ッ!?!?!?!?!?」

 

 

声にならない悲鳴を上げるガイナカマキルの足に、慎二の銃撃とはまた違う痛みが走る。

 

正確には足の裏に棘が突き刺さる刺激が無数に発生し、後退して地面を踏みつければ踏みつける程痛みは増し、深くなっていく。一体何がとガイナカマキルは踏みしめた場所を見ると薄暗い倉庫内では分かりずらかったが無数の黒い『何か』が散らばっている。

 

 

 

撒菱(まきびし)である。

 

 

 

 

「そう素直にひっかかってくれるなんて、こっちは逆に予想外だったよ」

 

 

 

あの攻撃の中で、いずれは自分の身に迫るであろうと予感し、さらに罠を張り巡らせた慎二は再び両手で銃を構える。それだけではなく、背後から響く弦をゆっくりと引く音。桜がメイガスソードボウをアローモードへ変形させ、狙いを定めていたのだ。

 

 

 

 

「お、のれ…小細工をっ…」

 

「手段について、お前達にどうこう言われる筋合いはないね」

 

「私たち…怒っているんですからねッ!!」

 

 

 

鎌である自分の手では突き刺さった撒菱を抜くことができず、もがくガイナカマキルへ上回る怒気を見せる2人の仮面ライダーは容赦なく敵の前後目掛けて容赦なく、その一撃を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トァッ!!」

 

「ぐぅッ!?」

 

 

ガイナギンガムの胸板へ光太郎の拳がめり込み、くぐもった声が上がる。続いて回し蹴り、再度ストレートパンチと怪人を追い詰める光太郎だったが、敵が突如自分に背中を向けた事を警戒して後退すると同時にガイナギンガムの甲羅から生えた無数の棘が火を噴きだして迫って来る。

 

ミサイルの如く飛び交う棘は瞬時に再生、そして発射を繰り返していき、迫る棘は数えるのが馬鹿らしく思える程に大量だ。

 

回避は間に合わないと判断した光太郎は眼前で両腕を交差し、左右へ一気に振り下ろす。

 

 

 

腹部のサンライザーが光を放ち、形状を2つの赤い宝玉から歯車へと変えていく。

 

 

さらに橙色の光を放つ光太郎の姿もRXからロボライダーへと形態を変化。

 

 

赤い複眼を発光させ、右手に握るレーザー銃、ボルテックシューターを次々と連射。迫りくる棘のミサイルの飛ぶ速さ、個々の間隔、全てを一瞬で計算した光太郎にミサイルは全て撃ち落としていき、灰となって舞い落ちていった。

 

 

「ッ!?」

 

驚愕と共に振り返るガイナギンガムへとボルテックシューターを向ける光太郎。この一撃で決まりと引き金に力を入れようとした矢先―――

 

 

 

 

 

 

 

「この時を待っていたのだぁッ!!」

 

 

「ガァッ!?」

 

 

背中に叩き付けれた斬撃。

 

思わずボルテックシューターを取りこぼしてしまった光太郎へさらに攻撃は続く。

 

同じ個所へ何度も、何度も切りつけられるこの下賤な方法。先ほどガイナギンガム達へと指示を飛ばした後、どこかへと立ち去ったのかと思われたボスガンが怪魔稲妻剣を持ち、光太郎へと奇襲をしかけたのだ。

 

 

「ボスガン、貴様っ…!」

 

「フハハハハ…思い知ったか怪魔稲妻剣の威力を!ロボライダーの硬度を越えるこの切れ味…素晴らしいではないか…」

 

 

ブスブスと背中から煙を上げる光太郎は膝を付き、確かに武器の威力は凄まじいと素直に認める。ロボライダーの身体にダメージを与えたのは、初めてだ。しかし、こんな事で屈しるわけにはいかない。

 

 

成功させた不意打ちに酔いしれるボスガンに、光太郎はさらに挑発をしかけた。

 

 

 

「ボスガン…やはり俺の言った事は正しかったようだ」

 

「何…?」

 

 

俯いたまま何をほざくのかと敵の遺言を待つボスガンの余裕は、脆くも崩れ去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様は貴様の言う貴族でも何でもない…ただの卑怯者だッ!!」

 

 

 

 

 

ブチブチとボスガンの中で何かが破裂する。最早敵の言葉に耳を貸すのも下らない、一刻も早くこの男の首を切り落としてくれると、怪魔稲妻剣を大きく振り上げたボスガンと光太郎の姿はさながら死刑囚と首を跳ねる執行人のようにも見えるだろう。

 

これで、宿敵を自分の手で葬ることが出来る。息吹き始めていた『あの感情』を拭うことができる。

 

 

万感の思いと共に振り下ろされた怪魔稲妻剣が光太郎の首に迫るが、変化が起きた。

 

光太郎の身体が青い液状へと変わり、剣は首を刎ねるどころか、液体を突き抜けて地面を叩く。

 

 

 

「こ、これは…!」

 

 

液体はボスガンの頭上を飛び、離れた箇所へと落下すると同時に形を成していく。そのプライド故にガテゾーンから提供された情報に目も向けなかった中にあったあまりにも未知数であるRXの新たな姿。

 

 

バイオライダーとなった光太郎は右手にバイオブレードを顕現させ、唖然とするボスガンへと言い放つ。

 

 

「貴様の怪魔稲妻剣は、もう俺には通用せん!」

 

「何を馬鹿な…この剣がただ敵を切り裂く為のものとでも考えていたかぁッ!!」

 

 

 

剣にエネルギーを蓄積させ、光太郎へ電撃を照射。剣の名の通りである稲妻に身体を液体と化することができても、この電撃は防ぐことなどできまい。そう高を括るボスガンは再度驚くこととなった。

 

 

 

「むぅんッ!」

 

 

迫る電撃に光太郎はバイオブレードを突き立て、そのエネルギーを全て集中させる。避雷針となった刃に全ての電撃が収集された刹那、光太郎はバイオブレードを真横へ振るう。

 

バイオブレードへと集ったエネルギーは拡散し、ボスガンの足元へと次々に落下、爆発を起こしていく。不意の出来事に思わず両手で顔を覆うボスガンはその隙に光太郎が自身の真上へと飛んで来たと気が付いたのは、光太郎がバイオブレードを振り下ろしたまさにその時だったのだ。

 

 

「がぁッ!?」

 

 

反射的に怪魔稲妻剣を振り上げるが既に遅く、バイオブレードがボスガンの手首へと叩き付けられる。剣の落下した、乾いた音が響く中でボスガンは叩かれた手首を抑え蹲りながらも油断なくバイオブレードを構える光太郎を睨む。

 

 

「ぐぅ、己…貴様たち、確実にRXを倒せ!失敗は…許さぬぞッ!!」

 

 

自分の部下に全てを押し付けたボスガンの姿が消える。

 

最後の最後まで自身の力で戦う事のなかったボスガンの指示に従い、こちらへと駆け寄るガイナギンガムの姿を見て哀れと思うも光太郎は思考を切り替え、姿をバイオライダーからRXへと戻り、右手を前方へと翳し、左手をベルトに添える。

 

 

 

 

「リボルケインッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラッドオレンジ、スカッシュッ!!』

 

 

「ぐはぁッ」

 

 

 

エネルギーを込めた大橙丸によって棍棒ごと胸を切断されたガイナニンポーは血をまき散らし、悲鳴を上げるが武は尽かさず大橙丸と無双セイバーの柄を連結。最後の一撃に打って出ようとしたが、敵の表情を見てロックシードに伸ばしたその手を止める。

 

 

「何を笑っている」

 

「き、キキキキ…最後まで食えない奴だ…だがな、だからこそこの手段が取れた訳だ」

 

 

ガイナニンポーの掌にあるのは、白い毛髪。それも無数にあり、これが何を意味するか武は嫌という程に味わっている。

 

 

「もうてめぇの相手をしてる暇はねぇ。ボスガン様からの、最後の命令だからなぁッ!!!」

 

 

 

現れたのは、ガイナニンポーの分身体。しかし、武に見せたような手順を踏んでいたかったのか、全てがやせ細り、眼球が今にも零れ落ちるほどに大きく飛び出した不気味な猿型の怪人が数十体出現した。それも、現れたのは武の前だけではない。

 

 

 

「な、なんだこいつらッ!?」

 

「兄さん、あの怪人、光太郎兄さんの方へ…!」

 

 

 

今から数刻前。

 

 

弱り切ったガイナカマキルに止めを打ち込もうと慎二はベルトのガイアメモリに、桜は指輪のホルダーへと手を伸ばした時だ。

 

何かを悟ったように顔を上げたガイナカマキルは背中から羽を展開。急上昇すると、思わず目で追ってしまった慎二と桜の前にガイナニンポーの分身体が現れ、慎二達の手足へと纏わりついたのだ。

 

 

 

「まさか、奴の狙いは…!?」

 

 

なりそこないの分身体を切って捨てる武は、耳だけを向けていた光太郎とボスガンの戦いで、敵が最後に捨て吐いた言葉を思い出す。

 

 

 

確実にRXを倒せ。

 

 

その命令を実行するというのならば、3体同時に…

 

 

「光太郎殿ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トァッ!!」

 

 

「ぬぉッ!?」

 

 

 

ガイナギンガムの腹部へリボルケインを突き刺し、エネルギーを注ぎ込むためさらに強く押し込む光太郎の右手首を、ガイナギンガムが強く握る。

 

リボルケインが突き刺さった時点で敗北が決定的となったというのに、ガイナギンガムは握る力をさらに強め、自身の首を2メートル以上伸ばした。突然の行動に面を喰らう光太郎は急ぎ離れようとしたが、さらに両足を何者かに押さえつけられてしまった。

 

 

 

「き、キキキキ…逃がさないぜぇRX!」

 

「お前は…ぐぅッ!?」

 

「お前を倒す…ボスガン様、からの、命令だ…」

 

 

蛇のようにうねる長い首で光太郎の首を絞めつけるガイナギンガムの囁きが光太郎の耳元で不気味に響く。完全に身動きを封じられてしまった光太郎へ、さらに着地したガイナカマキルが迫っていた。

 

 

「さぁ、その背中に突き刺してくれるわぁッ!!」

 

 

 

鎌を振り上げ、全力で駆けるガイナカマキルの姿を目にする武達の叫びが木霊する。3人は必死にガイナニンポーの分身体を退け、助けようとするが敵の数が多すぎた。

 

 

そして光太郎は変身前にボスガンから受けたダメージ回復に力を使い過ぎてしまい、さらにロボライダー、バイオライダーへの多段変身を繰り返した為、この場を切り抜けられるであろう液化能力を持つバイオライダーへの変身が不可能となっていた。

 

やはりRXへの変身時に、夕陽を一瞬浴びただけでは完全なパワーを発揮できないのだ。

 

唯一のパワーチャージを施せるロードセクターやアクロバッターも分身体に囲まれ、光太郎の元へ駆け付けることはできない。

 

 

(だからと言って、諦めてたまるか…!)

 

 

 

このまま負ける事など許されない。

 

まだ慎二たちが手にした力についての詳細を聞いていない。

 

助けてくれたガロニアにお礼を言っていない。

 

武へ頑なに力を渡すことを拒んだことを謝っていない。

 

 

 

そして…メドゥーサを助けていない!

 

 

 

「まだ…終わっていないんだッ!!」

 

 

 

赤い複眼を強く輝かせる光太郎。

 

確かに自分の動きは封じられ、首、右手、両足は完全に動けない。この状態では敵の思う通りに、背中から貫通されてしまうだろう。

 

 

だが、敵は忘れていた。

 

 

 

 

 

光太郎の『左手』を封じる事を。

 

 

 

 

 

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!』

 

 

 

 

咆哮と同時に光太郎は左手をサンライザーの左側へと翳す。

 

 

光太郎の叫びに応えるかのように幾層の光の線が重なり、銀色の柄を形成。

 

 

ゆっくりと引き抜き、中央に位置する赤いダイナモが回転すると同時に光が迸り、圧縮された光の刀身が姿を現した。

 

 

 

 

 

「あれは…リボルケインッ!?」

 

 

「2本目…二刀流なんて反則だろ!」

 

 

 

桜と慎二は敵を吹き飛ばしたがらも義兄が起こした無茶な行動に叫ばずにはいられなかった。

 

 

ただでさえ高エネルギーが圧縮されたリボルケインを、ダメージを負った状態で2つも創りだすなど、無茶にも程がある。

 

 

しかし、だからこそ敵すら予測を許さなかったのだ。

 

 

 

2本目のリボルケインを逆手に持ち、今にも自分に鎌を振り下ろそうとしたガイナカマキルの腹部へと突き刺す。強引に自身に宿るエネルギーを流し込むと、その左腕のアンクレットがパワーストライプスへ、RXからBLACKへと戻ってしまっていた。

 

 

「ぐう、うおぉぉぉぉッ!!」

 

 

それでも構わない。

 

エネルギーの注入を止めない光太郎はガイナカマキルが両腕をだらりと下げ、背面から倒れる姿を確認し、尽かさず自分の両足を掴むガイナニンポーの背中へとリボルケインを突き立てた。

 

 

既にサンライザーから下は、BLACKと化している。

 

 

 

「これで…最後だあぁぁぁぁ!!」

 

 

 

渾身の叫びと共に放たれるエネルギーが、ガイナギンガムとガイナニンポーの関節部から火花となって吹き荒れる。

 

 

 

「ま、まさか…このような…」

 

 

「お、弟分たちよ…今、そっちに…」

 

 

 

 

『ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?』

 

 

 

 

 

 

自分を拘束する力が弱まった途端に2本のリボルケインを消失させ、光太郎は転がりながら怪人達から遠ざかる。

 

直後、怪人3体の身体は大爆発の中に消えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…無事でよかった…」

 

 

 

ガイナニンポーが倒されたことによって分身体は消滅。どうにか戦いを切り抜ける事が出来た一同は変身を解除し、工場から離れ新都と深山町を跨ぐ未遠川の付近へと移動していた。

 

 

「しっかし、敵さんも随分凝った手を使ってくれたな」

 

「はい。でも、何とかなりましたね」

 

 

ようやく一息つけると踏んだ慎二と桜であったが、ここに本来いるべきもう一人の姿がないと思い出しハッとする。

 

 

「光太郎兄様…その…」

 

「大丈夫だよガロニアさん。みんな無事だったんだ。きっとメドゥーサだって…」

 

 

光太郎の顔を覗き込むガロニアに心配させまいと、笑って少女の頭を撫でる光太郎は、先ほどから黙っている武へと目を移した。

 

 

「…武君?」

 

どうにも様子がおかしい。まるで何かを警戒しているかのように武の視線は鋭く、月夜に照らされる未遠川を睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「気をつけよ…どうやらまだ終わっていないようだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

武がそう警告した直後、光太郎達の周辺が濃い霧に包まれる。

 

 

光太郎は庇うようにガロニアを背後へと移動させ、慎二と桜は尽かさず変身出来る態勢となる。靄が段々と広がり警戒心を強める一同は、電子音を放つライドロンの方へと目を向ける。

 

 

 

 

『巨大物体、2体出現。川ノ方角ダ』

 

 

 

「何ッ!?」

 

 

 

ライドロンの示した方角へと目を向けた光太郎が見たのは、うっすらと聳え立つ2体の怪物。

 

 

1体はよく見れば海生物の皮膚と軟体生物を思わせる触手を無数に生やしている。この場にいる全員が誰が関係しているのかは直ぐにでも理解できた。

 

 

 

「木星の騎士…たしかジュピトルスだったっけか?」

 

「じゃあ、もう一体は…光太郎兄さん?」

 

 

最も得意とする大海魔を召喚させたのはあの変質者であろうと判断した慎二と、もう1体の怪物を見つめ、光太郎の名を呼ぶ桜だったが、反応が薄い。

 

 

見れば、光太郎の目は見開いており、唇は微かに震えている。

 

 

 

怪物は大海魔と同じ程ではないが、それでも数十メートル以上はあるだろう。

 

 

特徴としては無数の触手…靄のせいではっきりと見えないが動きから見て蛇とも連想させるような動きを見せ、その中央には赤く、巨大な一つの眼が備わっている。

 

 

見るだけでも危険だと分かるその怪物を見上げる光太郎の一言に、桜達は息を飲むしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メドゥーサ…?」




以前からやってみたかったリボルケイン二刀流。土壇場での登場でございました。

そして次週はまことに勝手ながらお休みとさせて頂きます。

ではまた次回!

お気軽に感想など頂けたら幸いです!

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