Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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最近の人形劇ってすげぇ・・・・と思いきや原案があの虚淵氏、だと…?

というのをここ最近深夜枠で見かけたワタクシです。

では、64話をどうぞ!


第64話

「ここが…光太郎兄様の通う大学ですのね…!」

 

両指を口の前で合わせ、歓喜の声を上げるガロニアは周囲に並び立つ校舎を見上げた。

 

一秒でも早く間桐慎二と間桐桜と同じ高校に通いたいと願うガロニアの姿を見たメドゥーサは少しでも学校という雰囲気を感じて貰おうと、出入りしても特別な制限のない光太郎が在籍する大学へガロニアと共に足を運んでいた。

 

 

 

 

その際、大学までの道のりを電車やバスで移動したいというガロニアの希望もあり、待機する事となったアクロバッター達ビークル勢は少々がっかりしたという。

 

 

 

 

「見てくださいメドゥーサ姉さま!あの天井が半球型になっている建物…図書館と書いてありますわ!」

 

「ええ、何でもこの大学を卒業したデザイナーの方が携わっているとか…」

 

「母校の為にその力を振るうなんて…素晴らしい…」

 

 

一度桜と入れ替わって侵入した穂群原学園とはまた違う設備や研究棟をキラキラとした目で眺め、また一つ新たな建造物を見つけてはメドゥーサへと報告する姿はさながら初めて遊園地に訪れてはしゃぐ子供のように思える。

いや、恐らく遊園地でも同じ行動を取るのであろうが…

 

あの建物の中でどれ程の人が、どのような講義や研究をしているのだろう。その中で、きっと多くの人たちが関わり、繋がりを紡いでいく…

 

ガロニアが抱く夢…怪魔界を争いのない平和な世界へと導く第一歩として学び舎での人々を間近で知る為に決めた学校通いもこれではますます待ちきれない。そろそろ戻っているであろう光太郎に次の課題を教えて貰う為に帰宅したい反面、もう少しこの場を楽しみたいという気持ちに揺れるガロニアの後ろ姿を眺めるメドゥーサはどこか浮かない表情を浮かべていた。

 

 

 

(光太郎が普段過ごす場所にくれば、何かあると思いましたが…)

 

 

未だ溝が埋まらない光太郎との関係。光太郎が通う大学に訪れ、同じ空気を吸えば彼と話せるきっかけが見つかると考えたメドゥーサだったが、逆に分からなくなってしまった。

 

メドゥーサは、間桐家に住む光太郎しか知らない。彼がこの大学でどのような講義を受け、どのような学生生活を送っているのだろうか…?

 

 

以前通りの関係ならば目を瞑っていたとしても見える彼の笑顔。だが、今のメドゥーサの頭には靄のようなものがかかり、光太郎の顔を曇らせてしまっている。

 

 

(いや、恐れてはダメです。どうにかしなければ)

 

 

頭を振るい、弱気な考えではダメだと自分に言い聞かすメドゥーサ。塞ぎこんではいけないと顔を上げた時、通りすがる学生の会話が耳に届いた。

 

 

 

「あれが噂の間桐先輩?かっこいいよね~!」

 

「ほんとほんと!」

 

(光太郎…?ダイスケの家にお邪魔しているはずでは…)

 

 

休日中にも関わらず、手に筆記用具や参考書を手に移動している様子から図書館の利用者なのだろう。2人組の女生徒がまるで有名アイドルでも目にしたようにハイテンションで騒いでいたが、続けて聞き逃せない言葉が放たれてしまった。

 

 

 

「でも噂本当だったんだね~。間桐先輩がミスコン優勝の紫苑先輩と付き合ってるって」

 

 

 

(え…?)

 

 

 

「お似合いだよね~さすが我が大学のベストカップル!」

 

 

(え…………?)

 

 

 

 

 

普段のメドゥーサならば、そんな事は笑い飛ばすふりをしながらも光太郎に詰め寄り、弁明を聞かせるというだけで済んでいた話だったろう。

 

だが、今の彼女は光太郎と紫苑良子との関係を知っていながらも適格に判断する事が出来きず、気が付けば生徒が歩いてきた方へと走り出していた。

 

 

 

「…っ!」

 

 

「メドゥーサ姉さま!あそこに休日でも営業しているオープンカフェが…姉様?」

 

 

 

ただ1人残されてしまったガロニアの心情を現すかのように、季節に反して冷たい風が吹くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(光太郎…そんな事、そんな事が…)

 

 

 

 

走るメドゥーサが思うのは、聞こえてしまった事への否定。光太郎と、友人である良子が男女の仲ではないし、第一に良子には大輔という相手がいるはずだ。だが、今でも思いを打ち明けられずに彼の親友である光太郎に相談しているという事実も知っているメドゥーサに、嫌な予感だけが膨らみ続けてしまう。

 

同時に、下らないと一笑付してしまうような考えすら、メドゥーサの中で生まれてしまった。

 

 

もし、光太郎がこんな自分を見限り、良子を選んでしまったら…

 

 

 

(…………)

 

 

 

ズキリと、胸が痛む。

 

そんな考えを…光太郎を疑う考えを抱いてしまう自分がとても嫌になる。この醜い感情を抱いてしまう自分は、神話の時代と変わらない、化け物ではないのだろうか。

 

 

「私は、なにを…!」

 

 

思ってしまった邪な考えを消し去る為にも、メドゥーサは走る。もう気まずいという言い訳など、どうでもいい。生徒たちから聞いてしまった事実を、光太郎本人から聞きたい…違う、否定して欲しいという願望を抱いて、メドゥーサは走り続けた。

 

 

 

 

 

 

「光太郎…!」

 

 

 

 

見つけた。

 

 

10メートル程先にある中庭のベンチに腰掛け、隣に座る誰かと話しているようだが、植栽の木が邪魔して誰かまでは判別がつかない。

 

友人の家に行っているはずの光太郎がなぜここにいるのか。

 

女生徒の言った言葉は真実なのか。

 

尋ねたい事は幾つもある。

 

…いや、それ以上に、光太郎の声を聴きたい。彼と話すことができれば、この嫌な気分も四散するはず。あと数メートル進めば、光太郎と話が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――やっぱり――――――リョウちゃんは頼りになるや」

 

 

 

 

 

 

メドゥーサの足が、その場で止まる。彼の口から聞こえたのは生徒たちの話題となった、光太郎の幼馴染みの名前。ならば、今光太郎と話している相手は、本人に間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

「―――、メドゥーサには――――――聞かせないさ」

 

 

 

 

 

 

途切れ途切れでしか聞こえなかったが、何かに悩んだ光太郎は自分ではなく、良子に頼った。

 

そして…自分には、聞かせられないような話を…良子に聞かせている。

 

心臓を締め付けられるような感覚に陥ったメドゥーサは今にも崩れ落ちる事を耐え、周囲の目など気にかけることなく跳躍。

 

建物の屋根を足場として移動を開始した。少しでも遠くへ逃れるために。

 

 

 

(私は…私は…)

 

 

考えてしまった嫌な予感が現実となってしまった。そう考える他無かったメドゥーサは当てもなく、ただひたすら跳び続ける。

 

 

あの場に切り込んで光太郎に話を聞くという選択肢は選べなかった。聞くことすら、怖くなってしまった。

 

もう、自分は頼りにならないという言葉を光太郎本人から直接聞かされることが、どうしても嫌だった。

 

 

 

(もう、見えない…)

 

 

 

以前、光太郎から綺麗だと褒めてくれた瞳から漏れる涙を散らしならがら飛び続けるメドゥーサには、もう見えなくなっていた。

 

 

あれ程見慣れたはずの、自分に向けられた光太郎のまぶしい笑顔が。

 

 

 

今は、もう全く見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メドゥーサが大学内で光太郎を発見する直前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…暇つぶしに大学で勉強していて、ほんっとーに珍しく大輔君から電話があったと思ったら…」

 

 

 

『悪いけどさ、コータの相談に乗ってくれないか?俺には無理っぽくてさー』

 

 

 

「…私には用事ないのに電話をよこしたという不満半分と頼られた嬉しさ半分。このせめぎ合いはどうすればいいのかしら」

 

 

(やばい相談できる空気じゃない)

 

 

 

大輔の店で食事中だった光太郎は突如彼の勧めもあって良子にメドゥーサの件に関して相談するように言わるがままに大学までバイクで移動したのだが、当の本人は浮き沈みが激しい状態となっていた。

 

それに今回の相談内容も考えてると、なかなか話を切り出せない光太郎だったが、そんな良子が深く溜息を洩らした後、光太郎に困った笑みを浮かべてるとヘルメット片手に立ち尽くしている幼馴染みへ自分の隣座るよう勧めた。

 

「立ちっぱなしじゃ話もできないでしょ?座ったら?」

 

「え…大丈夫…なの?」

 

「もう整理は付けたわ。せっかくここまで足を運んだっていうのに、私がいつまでも不機嫌だったら話が進まないじゃない」

 

「リョウちゃん…」

 

 

ベンチに腰掛けた光太郎は、とある人物と気まずい関係になってしまったと打ち明ける。良子は最後まで口を挟まずに、光太郎の説明を真剣に、頷きながら聞き続けた。

 

 

 

「まるで小学生ね」

 

「うぐ…ダイ君と同じ感想を…」

 

「でも、光太郎君はいつまでも今の状態を続けるつもりはない。だからこそ私のところに来たんでしょ?」

 

「うん…」

 

 

到着前に購入していた缶コーヒーを煽る光太郎に、良子は笑いながら思った。普段悩み事など絶対に他人に見せない光太郎が、こうも誰かを頼りにするなど本当に珍しい。

 

それに望んでもいないのに、良子本人は周への面倒見の良さから恋愛相談も多く、経験もないのにと思いつつも親身になって話をしているうちに、数々のカップルを誕生させてしまったのだった。

 

望んでもいないキューピットという二つ名を隠し続けていた良子だが、昔から影で自分達を助けてくれていた幼馴染みのためなら、この力を存分に振るってみようと視線を下へ向ける光太郎の肩を叩く。

 

 

「任せなさい。あくまで解決するのは光太郎くんとメドゥーサさんだけど、アドバイスくらいなら私にも全力でできるから」

 

「…ありがとう」

 

「でも、お礼はしっかりしてもらうわよ!」

 

「ハハハ。任せてよ。やっぱり、こういう時リョウちゃんは頼りになるや」

 

「けど、私にこう言われたからというのは、厳禁よ。ただでさえ関係がデリケートな時に他の女の人の名前を聞いたら、女の人は色々と勘繰られちゃうんだから」

 

「うん。どの道、メドゥーサには恥ずかしくて聞かせないさ」

         

「あら、やっぱりカッコつけたい?」

 

「もちろ――ん?」

 

 

 

慎二などから見れば『恥ずかしい質問』に部類する内容に即座に頷いた光太郎は、背後で何者かが跳んだ気配を感じ振り返ってみるが、誰の姿もない。

 

 

だが、この場にいるはずのない人物の名を口に出してしまった。

 

 

 

 

「……メドゥーサ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………」

 

 

気が付けば、人気のいない公園へと訪れていたメドゥーサはブランコに腰を下ろし、泣きはらした目を擦っていた。

 

忘れようとも、耳にから離れない光太郎の言葉。だが、事実でもある。いつまでも子供のように会話すら逃げていた光太郎が自分に愛想をつかしてしまうのは、当然のこと。

 

そう思い込み途方に暮れるメドゥーサは、今後自分がどうすればいいかを悩んでいる時だった。

 

 

「どうしたのお姉さん?こんなところで1人でいてさ」

 

 

いつの間にか接近した男性に声を掛けられていた。

 

メドゥーサは一般人が近づいていたことに気が付かないなど、とことん落ちぶれてしまったと自嘲しながらも男性の声に応える。視線は相変わらず下に向けたまま失礼ではあるが、このような顔は例え光太郎にだって見せられない。

 

 

「いえ別に…なんでもありません」

 

「え~こうして会ったのも何かの縁だからさ。話してごらんよ。もしかしたら、何かすっきりするかも知れないしさ」

 

「お構いなく。私はこれで―――」

 

 

 

立ち上がろうとした瞬間、メドゥーサは全身の筋肉が強張ったように動けない事に気づく。それだけではない。冷や汗を流し、今までブランコの鎖を掴んでいた手も震えているではないか。

 

 

(な…)

 

 

なぜこのような状態に陥ったのかまるで理解できない。心音も外部に漏れているのではないかと思えるほどに早く、大きく聞こえてしまうメドゥーサに、男は再び声をかけた。

 

 

 

「…どうしたんですか?まるで蛇に睨まれたカエルのように動かなくなっていますけど?」

 

 

「…!?」

 

 

口調は先ほどと変わらない。純粋にこちらを心配しての、優しく柔らかい声だ。

 

だが、メドゥーサの動悸はさらに強まり、呼吸すらままならない。なぜ、声を聴いただけでここまで自分の身体に異常をきたしてしまうのか…メドゥーサはギギギと壊れた人形のように、ぎこちない動きで動けない自分を見下ろしているであろう男性へと顔を向けた。

 

 

 

 

そして理解したと同時に、疑問が生まれる。

 

 

 

なぜ自分が、男性の言う通りにまるで身動きが取れなかったのか。

 

 

なぜ、『この男』がこの世界に…いや、この時代に存在するのか。

 

 

 

「くっ…!」

 

 

 

身に力を振り絞り、その場から離れる事に成功したメドゥーサは手に鎖を顕現させ、未だにこちらへ微笑みかける男へ向かい攻撃をしかけるべき手を振り上げる。

 

 

鎖の先端にある釘で男を貫こうとしたよりも速く、男が既に動いていた。

 

 

 

ジャラジャラと音を立て、細かく切断された鎖と共に公園の地面へと流れる、赤い液体。

 

 

「か…あぁ…」

 

 

 

自身の胸にくっきりと刻まれた深い傷から流れる血を見て、膝をつくメドゥーサは確信した。

 

 

遠くなる意識の中で、やはり変わらず笑顔のまま手にした鎌剣を煌かせる男の名を呼ぶ。

 

 

 

「あ、なたは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペル、セウス…」

 

 

それはかつて神話の時代、メドゥーサの首を切り落とした英雄の名前だった。

 

 

地へと沈み、意識を失ったメドゥーサに向けて、鎌剣…ハルペーを翳したペルセウスと呼ばれた男は笑顔のまま、彼女の言葉を否定する。

 

 

 

「あぁ、確かにこの身体は彼のものだろう。だが、あいにく『魂』は違っていてね」

 

 

 

 

「ワタシの名はマキュリアス。かつてクライシス帝国の、水星の星騎士と呼ばれた男さ」




思い込んだら一直線の彼の登場でございました。資料でしか知らないので彼の内面を描くのが全く自身がありませんが頑張っていきます。

次回はさらなるピンチが面々に…?


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