Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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前回と比べて短めです。

今回は『彼ら』にとってのプロローグ的なお話になっているかもしれません。

では、第5話です!


第5話

間桐光太郎が太陽の力により進化した新たな姿。その名は仮面ライダーBLACK RX。

 

クライシス帝国は予想外のパワーアップを警戒し戦力を結集するために一時退散するが光太郎は同じくパワーアップを果たしたバトルホッパー…『アクロバッター』と共に追跡を開始する。

 

一方、間桐家の地中に潜んでいた怪人の素体が桜へと襲い掛かるがメデューサがこれを撃退。その時、メデューサは素体を粉砕した自分自身の力に驚きを隠せずにいた。

 

採掘場に結集し、光太郎を亡き者にしようと襲い掛かる怪人軍団であったが光太郎は圧倒的な力で次々と倒していく。

 

そして正体を現した怪魔ロボット キューブリカンは怪人達の犠牲も訪わない攻撃を仕掛けるが光太郎は卑劣な敵に対し新たな必殺技『リボルクラッシュ』を炸裂させる。

 

ついにキューブリカンを倒すのであった。

 

 

その戦いから数日が経過し―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァっ!!……………駄目か」

 

光太郎は自室でRXとなった時と同様に右手を天井に翳し、左手を腹部に添えた構えから流れるような動作を何度も繰り返していた。だが、一向に変わる様子はない。あの時はこの構えを取った途端に力が爆発的に高まったが、その兆しも見られない。

顎に手を添えて考える光太郎はその要因を自分なりに探っているが…

 

「う~ん。やっぱり掛け声も必要なのかな」

 

すぅ…と空気を吸い、腹に力を込めて叫ぼうと気合を込める!

 

「太陽よ…!俺にちか――――」

「おい……………」

「らを―――って、慎二君、どうしたの?」

 

妙に疲れを感じさせる声に反応した光太郎は動作を中断し、額に手を当て眉間に皺を寄せる慎二に尋ねる。ヒクヒクと眉毛を動かすあの顔は明らかに不機嫌である証。もしや大声を出そうとしたことで勉強の邪魔をしたのだろうかと危惧する光太郎だったが…

 

「別に、大声出そうが訓練しようが構いやしないよ。いざとなれば地下蔵にお前をぶち込めばいい…」

「何気に物騒な発案だね、それ」

「そんな事はどうでもいい…いや、RXについては分からない部分も多いから研究しようとする熱意は買ってやるよ。けどな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自室とはいえBLACK(その姿)で練習するってのもどうかと思うんだけど…」

「え~そうかな~」

(うぜぇ…)

 

 

 

 

 

 

 

と、普段なら頼りになる黒き戦士が目の前で首を傾げ間抜けな声を上げる姿を見て慎二はどう罵倒してやろうかと思い悩んでいた。

 

これが世界を救い、今も新たな侵略者に対して悠然と立ち上がった戦士の素の姿であるというのだから始末に負えない。深くため息をつく義弟の心中を察することなく光太郎は変身を解き、窓から夜空を見上げていた。

 

「…今日は、満月なんだね」

「話の切り替えが急過ぎだろ。どんだけマイペースなん…」

 

おちゃらけた態度から急変し大人しくなった光太郎の背中を見た慎二は怒鳴るのを止めた。顔など見なくても今義兄が月を見てどのような表情をしているかなんて、手に取るようにわかる。

 

(気にしない方が、おかしいか)

 

光太郎の言うように、今夜は雲一つない空には満月が街を静かに照らし、冷たくも夜道の道標となる優しい輝きは、光太郎に嫌でも『彼』を連想させてしまう。

 

 

 

 

 

ゴルゴムとの戦いで光太郎は自分と相対する存在。もう一人の世紀王『シャドームーン』…光太郎の親友だった『秋月信彦』と死闘を繰り広げた。互いの持つキングストーンを奪い合い、新たな創世王となる為に…

 

だが、その戦いそのものが創世王の『意思』が新たな肉体を得る為に仕組まれた戦いと知った際に2人は共闘。シャドームーンの助力により創世王を倒すことに成功する。

 

全ての因縁に終止符が打たれたと思われたが、傷だらけのシャドームーンはそれでも光太郎の決着を望む。

 

光太郎は敵対する相手を世紀王シャドームーン以前に幼い時を共に過ごした秋月信彦である彼に対し拳を上げることが出来ず戦意を喪失しかけたが、光太郎を仮面ライダーとして立ち直らせたのも、また彼であった。

 

涙を流しながらも全ての力を絞り出し、技を放った光太郎はシャドームーンに勝利し、最期に彼が自分の名をはっきりと呼んだと思い振り返った時には、落石の中に彼の姿が消えていたのであった。

 

 

 

「……ごめん。なんだかしんみりさせちゃったね」

「無理に笑うなよ気持ち悪い」

 

振り返り、黙って見守ってくれた義弟が言った通りに作り笑いを浮かべる光太郎は、慎二のように自分へはっきりと正直な意見を言ってくれる事に感謝していた。そうでなければ、もうそんな表情しか浮かべなくなっていたかも知れない。

 

「落ち込みたい時は好きなだけ落ち込めよ。そんでいつも見たいにバカみたいに笑え。じゃないと…調子が狂う」

「慎二君…」

 

顔を背けて、彼なりに自分を励ましてくれる慎二へ光太郎は先程とは違う、本当の笑顔となって礼を述べた。

 

「ありがとう」

「ふん…」

 

『兄さんたちー!ご飯冷めちゃいますよー!!』

「あー…忘れてた。夕飯出来上がったから呼びに来たんだった」

「それを早く言ってよ!もうお腹空いちゃって…」

 

桜の呼び声に応じて部屋を後にしていく慎二と光太郎。いつもの会話。いつもの日常。

 

『人間』を失ってしまった自分に取っては過ぎたものかもしれないと考える光太郎だったが、やはり思ってしまう。

 

もし、今自分の生活の中に信彦が居てくれたのなら、と。

 

 

 

だが光太郎は知らない。

 

彼が…シャドームーンが生きている事を。

 

そして光太郎と同じく、新たな戦いに直面している事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月影信彦

 

 

それが彼…世紀王シャドームーンが人間の姿でいる際に名乗る名前だ。

 

シャドームーン…信彦は調整設備が残されていたゴルゴムの拠点で自身の完全な修理を終えた後、拠点を破壊。あてのない旅を続けていた。

 

資金に関してはゴルゴムの隠し財産を彼の『同居人』が表に出ていた際に一部持ち去っており、それを資本金とした株投資をすることで生活には困ることなく…どころか100年先も余裕のある金額を手に収めてしまっている。

 

いっそラスベガスに行こうぜと下品に笑う『同居人』の意見を無視して旅を続けていた信彦はある町へと辿りつく。

 

日によっては1日と待たずに次の町へと流れていた信彦達だが、彼等はその町へ滞在し1ヶ月以上が経過しようとしていた。

 

 

理由は、彼が待ち合わせている人物達と大きく関係している。

 

 

 

 

 

 

その日は休日だからだろう。午前中だと言うのに普段と比べ人通りが多く、特に子供連れが目立つ。行き交う人々が見せる様々な表情を横目で見ながら進む信彦の様子を同居人はやれやれと肩を竦ませる。

 

 

(やめてくれよ。唯でさえ淀んだ目してるアンタが挙動不審に辺りへガン飛ばしてたら通報されちまうぞ?)

「安心しろ、その時は貴様も道連れだ」

(うわぁーい。うーれしーなー…ま、あんたの気持ちも分からんでもないよ。数か月前はゴルゴム騒ぎ、そんでつい先日はあんな事があったってのに、笑ってられるとは呑気なもんだからな)

「………………」

 

信彦の無言は、同居人が述べた事の肯定だった。しかし、自分とすれ違っていく人々を見て信彦は呆れはするものの、愚かだとは思わない。

かつて襲った恐怖に怯える事なく今という日を生きているという一つの強さではないかと信彦は考える。

 

人類にその強さを与えた男…自分の宿敵が願い、実現させた世界なのだから。

 

だから信彦はそんな世界を見て回ると決めていた。

 

死に損なった自分にはちょうどいい役回りであると自嘲する信彦であったが、思いもよらない出会い…信彦を発見して声を掛けてくる少年との出会いによって今も同じ町に留まっていた。

 

 

 

「あ、月影さん!こっちです」

 

 

 

自分が名乗っている名を呼ぶ少年はあどけない笑みを信彦に向けて駆け寄ってくる。やや大きめの眼鏡をかけ、自分の正体を知りながらも未だに怖気着くことのない少年に対し信彦は淡々と声をかける。

 

 

 

「…待たせたか?」

「いえ、俺も今来たばかりで…でも、アイツは先に店で待っているみたいですよ」

 

 

苦笑交じりで待ち合わせ場所の前にある店を指さす少年は眼鏡の位置を整えながら行きましょうと先導して足を進めていき、信彦も続いて扉を潜る。カラン…と鈴の音が鳴ると同時に開かれた扉の中は落ち着いた雰囲気の洋風な作り。店内の奥には少年の言う『アイツ』とされる人物へと目を向ける。

 

 

店の一画に設けられたテーブルに座る1人の女性。白い長そでのセーターにロングスカートとシンプルな服装が逆に女性を冴え立たせる印象となっていた。

 

 

店内に差し込む日の光が反射して煌めいている幻覚に見舞われるような金色の髪。

 

目を合わせた者を凍りつかせ、魂をも奪いさると思わせる冷たく赤い瞳。

 

彼女を一言で表すなら「美しい」という言葉以外はないだろう。

 

彼女がいる場所がまるで絵画を切り取ったかのごとく、他とは違う空間のように感じられ店内にいる人々全て…男女の境なしに見惚れている中、女性は入店した少年を目にすると表情が一変する。

 

席に着いている間、無表情でしかなかった女性は少年を視界に捉えた途端に顔はパァっとひまわりのような明るい笑顔となったが、少年の背後に佇んでいた信彦も見つけた途端にむすり…と整った眉をへの字にしてプイっと顔を逸らしてしまう。

 

唖然。

 

女性の百面相に驚く中、女性の様子を見てため息交じりに少年は隣へと座る。

 

「…どうしたんだよ。月影さんさんが来るって言ってたよな俺」

「べっつにー?アイツがいれば私はいつもこーだもんっ!」

(ぐっひゃひゃひゃひゃひゃ…!ほんっとに嫌われてんなぁあんた…)

「…………………」

 

頭の中で下品な笑いが木霊することに構うことなく信彦も少年達と同じテーブルに相席し、懐から取り出したタバコを口にする。すると女性は今度は駄々を捏ねる子供のように声を上げながら信彦が今にも火を付けようとするタバコを指さした。

 

「あーッ!ここは『キンエン』なのよ!人間と同じ格好してるならルールぐらい守りなさいよ!」

「お、おいッ!声がでかいって…」

「何よ、私にはいつも非常識って言ってくるじゃない!どうしてコイツの肩を持つのッ!?」

 

立ち上がり、腰に手を当てて指摘してくる女性に小声で少年は注意を促すが、どうやら矛先はあちら側になってしまったようだ。このまま放っておいても構わないが、話が進まないと判断した信彦はテーブル上に備えてあった灰皿をコンコンと指で突く。信彦の行動に察しが付いた少年は改めて自分達のテーブルを見回すと、誰もが入店時に必ず気かされる問いかけを女性に尋ねた。

 

「なぁ…この店に入った時、ちゃんと禁煙席って指定したのか?」

「え?私はここに座りたいからとにかくここって言ったけど?」

「…はぁ~~~」

「え?なになに?何がおかしいの?」

 

額を押さえて深くため息をつく少年が余程不思議だったのか、女性は打って変わり取り乱し、少年が額を押さえつつも反対の手で指差す方へと顔を向ける。

 

指が向けられた先は、信彦達の座る席が、『喫煙席』のエリアにあると現す看板であった。

 

「あ………」

「よーやく理解したかバカ女…」

「うー…」

 

少年に諭されて静かに席へ戻った女性は「あー」「うー」など親に怒られて上手く言葉が話せない子供のようにしおらしくなっている。ようやく静かになった所を境に信彦は手に取ったタバコを箱へと戻し、備え付けのメニュー表を手に取る。

 

「あの…いいんですか?」

「構わん。嫌な顔をされてまで吸うものでもあるまい」

「ほら、今回はお前に非があるんだからちゃんと謝っとけ」

 

遠慮がちに尋ねる少年に信彦はメニューから目を離さずに答えるが女性は少年が信彦を庇っていると思いこんだ為か頬を膨らませて再び顔を背けてしまう。

 

「ふんだッ!いいじゃない、ソイツは結局吸わないことにしたんだから!」

「あのなぁ。いい加減にしろよ」

「な、何よ…」

 

強めの口調となった少年を横目で見る女性は若干だがたじろいでいる。迫力に押されたというわけでもないだろうが、どうやら少年に対しては信彦程強気にはなれないらしい。

 

「…今こうしてお前と一緒にいられるのも、身体が安定しているのも、月影さんの助けがあってこそだろ?だから、そういう風に邪険にして欲しくない」

「……………………」

 

 

少年の説得に無言で頷いた女性はゆっくりと信彦の方へと顔を向け始めた。メニューを吟味していながらも会話は耳に入れていた信彦はそれに合わせ顔を上げ、少年はこの成り行きを不安になりながらも見守る。数十秒か数分か。時間をとても長く感じさせながら女性はようやく信彦と目を合わせると…

 

 

 

 

 

 

「べーッ!」

 

 

 

 

 

 

信彦に向かって目をつむり小さな口からかわいらしい舌を覗かせ、謝ってやるものかと行動で示したのであった。

 

 

流石に我慢出来なくなった少年は女性の脳天に手刀を叩き込む。無論加減はしているだろうが、女性は打たれた頭を押さえ、涙ぐみながら抗議を開始する。

 

 

 

 

 

「いったーいッ!?何するのよぉ!やっぱりコイツの味方なんだッ!この浮気者ッ!!」

「なっ!?誤解を招くような事を言うなバカ女ッ!!」

 

 

ギャーギャーと再開された痴話喧嘩を余所に信彦は再びメニューへと目を向けていると頭の中では同居人の爆笑が響き渡っている。そろそろ黙らせるために同居人が苦手とするブラックコーヒーでも注文してやろうかと思いつきながらも、目の前で口論を続けている男女が再びこうして悪ふざけが出来るなど『あの時』は夢にも思わなかっただろう。

 

本来ならば出会うどころか、お互いに認識できるはずがない者同士。しかし、出会い…出会ってしまったという言い分の方が正しいかと考えながら信彦は、女性と初めて顔を合わせた際に口から出た冷たい一言を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アナタ…何?』

 

 

 

 

 

 

 

まるで親の仇でも見るような冷え切った目で、彼女は信彦へそう告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

それが今では…今でもかなり嫌われているようだが最初よりはましになっているだろう。それも、この少年という緩和剤がいてくれたからだろう。そうでなければ、信彦と女性は確実に殺し合いを始めていたはずだ。そして少年は女性にとってこれまでにない大きな存在だ。

 

この町で起きた血塗られた事件を通し、2人は決して相容れない存在同士だと理解した上で今もムキになって言い争い、そして愛し合っている。どのような未来を迎えようとも、『今』を選択した少年と女性の姿は信彦が良く知る2人と重なっていく。

 

(気になるなら会いに行けってあの頃から言ってるだろ~。ったく手に負えない捻くれ者…お願いしますコーヒーに塩なんて洒落になりませんすいませんでした)

 

同居者を黙らせた信彦は備え付けのベルを鳴らし、注文を受けに来る店員を待つ。いい加減注文しなければならないだろうし、他人が現れれば熱くなっている2人も落ち着くだろう。

 

互いに言い分を譲ろうとしない少年と女性―――

 

 

 

対象を殺すことに長け、常に死と隣り合わせで生きていた『遠野 志貫』

 

真祖と呼ばれる吸血鬼の白き姫『アルクェイド・ブリュンスタッド』

 

 

信彦はこの2人となぜ行動を共にしているのかは、信彦自身もよく分かっていない。

 

それも、注文したコーヒーが届く頃には思い出しているかもしれないと、注文を聞きに来るはずの店員を待つことにしたのであった。

 

そして今回集まった理由。

 

信彦が滞在する三咲町を震撼させた吸血鬼事件の後始末が予想外の展開となっていると知らされるのは、2人の言い争いが終わった後であった。

 

 




言わば信彦サイドと呼ぶべきお話。彼が殺人貫とお姫様にどのような出会いを果たしたのかは光太郎サイドが一区切りつく度に載せていこうと思います。
てか別作品で書いた方がいいのでは…という意見が出そうですが、すいません。同時に2作品は自分にとって難しいです。


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