Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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書いてみて改めて思いましたが、「どうやって勝つんだよwwww」と笑うしかない能力ですよね…が、そんな能力をどう追い詰めるのかも楽しみだったりします(byアベ監督)


では、49話です


第49話

間桐光太郎が義妹である間桐桜へ傷だらけにも関わらず必死に呼びかけ、桜の瞳が微かに輝いた直後。

 

クライシス帝国のマリバロンの不意打ちによって意識を失い、牢獄で目を覚ますまでの間に光太郎は、『キングストーンの意思』と共有していた。

 

 

 

 

『よく聞け、光太郎』

 

 

 

 

『この先の戦いでロボライダーでも太刀打ちできない状況に陥ったその時は―――』

 

 

 

 

 

『怒れ。その身に激流が走るような感情を解き放て』

 

 

 

 

 

 

『そうすれば、新たな力がまた一つ、覚醒するだろう』

 

 

 

 

 

『…お前にとって酷であることは分かっている』

 

 

 

 

 

 

 

『11年前…光太郎が人としての肉体を失い、さらに目の前で養父を殺された時、お前は怒りのまま,憎しみのままに怯え、命乞いをする怪人を容赦なく討ち取った』

 

 

 

 

 

 

『当時は知ってしまった真実への混乱と養父を失った悲しみで理性を失ったお前は、感情のままに力を振るった』

 

 

 

 

 

 

『以来、お前は口では敵では相手に怒りを向ける事はあるが、お前はどこかでその怒りを理性で押さえつけてしまっている』

 

 

 

 

 

『敵に自らの怒りをぶつける事は、悪感情であると考えて…』

 

 

 

 

 

 

『だが、お前は私に言った』

 

 

 

 

 

 

『たとえ苦しむことになろうが、感情を否定せず、捨てずに戦うのだと』

 

 

 

 

 

 

『そんなお前を見て、私は知った』

 

 

 

 

 

 

『感情は時として人間を縛る事もあれば、力を与えることもあるのだと』

 

 

 

 

 

 

 

『誰かの笑顔を守れたという喜び、大切な者達と共に未来へと進む楽しみ…』

 

 

 

 

 

 

 

『大切な者を失った喪失感に打ちひしがれながらも、同じ思いを誰にもさせないと決意させる悲しみ』

 

 

 

 

 

 

『そして悪の非道に対し、決して許さないと立ち向かう意思を与える怒り』

 

 

 

 

 

 

 

『自分を失わず、ロボライダーとしての力を手にしたお前なら怒りにその身を支配されず、新たな力を得る事が出来るのだと、私は信じている』

 

 

 

 

 

 

 

 

『光太郎よ、感情のままに怒れ』

 

 

 

 

 

 

 

『獣のように吠えた時、お前は新たな力を手にするだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

伝えるべき事を終えたキングストーンは踵を返し、光太郎の前から遠ざかっていく。

 

 

 

光太郎が目を覚ましたのは、その直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は怒りの王子―――」

 

 

 

「RXッ!!バイオ、ライダーッ!!!」

 

 

 

 

 

新たな姿の名を名乗った間桐光太郎の姿を目にした間桐慎二は、敵に囲われている状況にも関わらずそのような不安が一気に消し飛んでしまった。

 

 

「あいつ、また新しい力を…」

 

 

突然落とし穴へと放り込まれた光太郎の安否と、マリバロンの一撃で命の危険に晒されていたガロニアの無事が同時に解消された事に息を付くと、慎二は思考を切り替える。2人が無事であるならば、次は自分達の安全を確保せねばならない。同じ事を考えているであろうと遠坂凛の方へと顔を向けると―――

 

 

 

「――い…」

 

「あ?」

 

 

顔を青くし、ブツブツと呟く凛の言葉に眉間の皺を寄せる慎二が耳を傾けてみると、呪詛のように今し方現れた光太郎の起こした現実を受け入れられない魔術師がそこにいた。

 

 

「ありえないありえない…流体操作で液体を操るなんてことはともかく、自分を液状化させてさらに元の姿に戻るなんてどれだけの詠唱と儀式の行程が必要が…」

 

「…………………………………」

 

 

また始まってしまった。

 

遡れば光太郎が仮面ライダーに変身するというだけでどうすればああなるのだと疑問を抱え、魔術を基準とした妙な分析を始めてしまうこの優等生は、光太郎が起こす突拍子のない出来事にとにかく驚く。

 

同じ魔術師であるメディアなど、『光太郎だから別に』などと認識…いや、あれは諦めの一種だろう。ともかく受け入れているというのに、いつまでも慣れる様子はないようだ。

 

 

そしてその反応は味方だけとは限らない。

 

 

 

(まさか…まさかRXがさらなる力を手に入れるとは…)

 

 

ガテゾーンから齎されたデータを元にロボライダーでさえ出し抜く罠を用意したというのに、あの男はこちらの予想を全て覆す。これも光太郎を無駄に煽ったジュピトルスが原因であると怒りが込み上げてくる。

 

 

…だが、マリバロンは敵の新しい姿への警戒心、ジュピトルスへの憤り以外にも僅かながら安堵が心にあった。

 

もし、あのまま光太郎が現れなければ、自分はガロニアを…

 

 

「何を考えているのだ私はッ…」

 

 

頭を振るい、脳裏を過った悍ましい考えを否定するマリバロン。なぜ、自分は用済みとなったガロニアを気に掛けるなどという考えを持たなければならないのだ。『本物』のガロニアは、すぐ横にいるというのに…

 

やはり一秒でも早くあの『偽物』を葬らなければならないと、地面を3度踏み鳴らす。

 

 

それはもしもの時に地中で待機させていた者達への合図であった。

 

 

 

 

「むッ!?」

 

 

バイオライダーとなった光太郎は足元が僅かに振動していると察し、ガロニアを背後に移動させた瞬間、光太郎達の四方の地面を突き破り、打ち上げ花火のように上空へと飛び出した4体の怪人が出現。

 

 

光太郎は頭上を越え自分達に向かい落下する怪人達へと目を向けると怪人達は武器を構え、笑いながら言葉を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハ…冥土の土産に教えてやるッ!我は怪魔妖族きっての剣士、()シン様だッ!!」

 

 

 

 

 

「振るう矛で幾千もの敵を貫いたタフガイ、怪魔妖族の矛天道(ムテンドー)っ!!」

 

 

 

 

 

「狙った獲物は決して外さぬッ!怪魔妖族(シャ)ランとは俺の事ッ!!」

 

 

 

 

 

「そして振るった斧で何者をも両断する猛者…怪魔妖族斧剛(フゴウ)なりぃッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『四身一体の攻撃、躱せるものなら躱してみよッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

律儀に名乗りを上げた4体の怪魔妖族達の得物はその名に含まれている通りそれぞれ剣、矛、弓、斧を手にして眼下の光太郎とガロニアを捉える。4体による同時攻撃を受けた者で生き残った者などいない。どのような能力を持とうが不意打ちとならばなす術もないだろうと考えたガロニアだったが、光太郎は『防ぐ』という選択すら選ばなかった。

 

 

 

 

 

「トァッ!!」

 

 

 

4体の怪魔妖族の攻撃が迫る中、光太郎は地面を蹴り自ら自分を狙う怪人達へと跳躍。怪人達は愚かにも自ら死にに来たと考え、得物を握る手に力を込める。

 

 

他の怪魔妖族と違い、特殊な能力を持たずに武術のみで伸し上がった4体に取って怪魔界を脅かす光太郎を討ち取ればマリバロンに認められ、貴族の一員となる大きな好機なのだ。

 

特殊な能力だけが取り柄でマリバロンへとすり寄る他の怪魔妖族を蹴落とす為にも必ずや討ち取ると決意を固めた4体の間合いへと光太郎が迫った時、怪人達は自らの目を疑った。

 

 

 

 

『な、なにぃぃぃぃッ!?』

 

 

 

 

驚くのも無理はない。

 

光太郎の身体の輪郭が突如歪み、青く巨大な雫へと姿を変えると速度を変えないまま4体の怪魔妖族達へと急接近。

 

不規則な動きで4体へ次々と体当たりを繰り返す光太郎に怪人達は対応できず、我武者羅に武器を振るっても掠る事すら出来ない。

 

未だ落下中ということもあり距離を置くことも出来ない怪人達はさらに驚きを重ねる事となる。

 

 

 

「おげぇッ!?」

 

「な、なんだッ!?」

 

「こ、今度は…?」

 

「蛇みたいに伸びるッ!?」

 

 

 

光太郎の青白く光る身体がアメーバのように揺れると落下する4体を覆うかのように伸び始め、輪の形状となると次第にその輪は縮まり4体の怪人を拘束、さらに収縮を始めたのだ。

 

 

 

 

「おがぁッ!?」

 

「く、苦しぃ…ッ!?」

 

 

 

ミシミシと4体が纏った甲冑へ亀裂が走り、苦悶の声を上げる4体の視界が急変。空が下へ、地面が上となる。

 

つまり、4体は頭から地上へと落下しているのだ。

 

 

 

 

「ま、まさかこれはあぁぁ!」

 

「俺達ごと…」

 

「ひっくり返したッ!?」

 

 

 

そう、光太郎は怪人達を拘束しつつ反転させ、怪人達の頭部を地面に向けて落下させている。その結果は…

 

 

 

 

『ごばあぁぁッ!』

 

「きゃぁッ!?」

 

 

 

怪人達が落下した衝撃によって発生した風と土煙に押され、思わず目を瞑って悲鳴を上げたガロニア。土煙が段々と薄まり、ゆっくりと目を開くと落下地点にあるのは片膝を付いて着地した無傷の光太郎と、上半身が地面へと沈み、伸びきった下半身を痙攣させている怪人達の哀れな姿がそこにあった。

 

 

 

「ガロニアさん…」

 

「は、はい!」

 

「君の思いは、聞かせて貰った。どこまで出来るか分からないけど、俺にも協力させてくれ」

 

「光太郎様…ありがとう、ございます」

 

ゆっくりと立ち上がり、振り向く光太郎の呼びかけに思わず緊張して返事をするガロニアだったが、仮面をしてもその下で優しく微笑んで自分の決意を認めてくれた光太郎へ涙を目元に溜まった涙を拭いながら感謝を述べた。

 

自分の抱いた気持ちを共にしてくれる人が傍にいる。たったそれだけでこんなにも暖かい気持ちになれるものなのかと。

 

 

「さぁ、今のうちにライドロンへ。そして慎二くんたちを頼むぞ、ライドロン!」

 

「はい!」

 

「任セテモラオウ」

 

 

ガロニアを乗せたライドロンはタイヤで地面を削り、猛スピードで慎二達の元へと疾走する。2人を囲っているチャップ達は未だ怪魔妖族達が瞬殺されたことに茫然としている為、ライドロンが吹き飛ばすことは容易だろう。

 

慎二達の救出をライドロンに任せた光太郎は改めてマリバロンと桜の前に立つ怪魔ロボットトリプロン達を見据えて構えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムオォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

 

大地を揺るがす程の咆哮を上げる武神鎧武…赤上武の猛攻は続いていた。

 

 

主戦力であり、唯一の遠距離攻撃も備えていた無双セイバーがその刃を失った為に徒手空拳でしか戦えないのであろうと考えた怪人達は一斉に武との距離を詰める。

 

ギガンデスの巨大火球を跳ね返したことによってその大半を消失したサイボーグ怪人ではあったが、数こそ少なくともその攻撃力と耐久力は健在。そしてレイドラグーンや化け猫といった怪人の群れも少数ではあるが生き残り、数にすれば150体。

 

さらにはギガンデスヘルも無傷で控えている状況で武の取った行動は、敵陣への突撃であった。

 

 

武器なしでは何もできまいと爪を向ける化け猫とシアゴーストは裏拳を受けて身体が上下に分断された。

 

真上からナイフを持って奇襲をしかけたマスカレードドーパントは顎に掌底を叩き込まれ、空の彼方へと消えた。

 

正面から突進をしかけたサイボーグサイ怪人は正拳突きで腹部を貫かれ爆発、背後に迫っていた他のサイボーグ怪人も誘発に巻き込まれガラクタへと姿を変えた。

 

 

 

接近戦では敵わぬとようやく悟った怪人達は続いて槍など長物の武器を携えたグール達がが中心となり、一斉に突撃する。敵の動きを見て武が次に起こした行動は、背部に備わった1メートル弱である2本の旗を手に取り構えを取ったのだ。

 

何を血迷ったかと考える者もいたかもしれない。だが、伊達や酔狂で旗を所持しているのではない。

 

『ブラッドカドキ旗』の旗竿は武神鎧武を覆う鎧と同じ金属であり、布にはブラッドカチドキアームズから流れるエネルギーが伝達する事によって振るった瞬間に衝撃波を飛ばす能力がある。

 

故に武の持つ旗は飾りなどではなく、『武器』の一つであると怪人達は身を持って知る羽目となった。

 

 

「うおぉぉぉりゃああぁッ!!」

 

 

武の振るうブラッドカチドキ旗に接触した怪人達は骨が砕け散る音と共に吹き飛び、旗を振るって生じた衝撃波に飲まれた怪人は数十メートル先の崖へと衝突。

 

 

そして旗を高く掲げ地面へと突き立てた瞬間、地面へと伝わった衝撃が武を中心として一斉に爆発。

 

砂塵を舞う中、発生したクレーターの中で立っていたのは武だけであった。

 

 

 

「すごい…慎二には聞いていたけど、武さんはあんなに強かったのか」

 

「関心している暇があるのか衛宮士郎?赤上からの頼まれ事をさっさとすませ」

 

「わ、分かってる!」

 

 

再び『作業』へと集中する衛宮士郎へ注意したアーチャー自身も表情には出さないが武が見せた力には驚かざるを得ない。あれが本来の赤上武の力。間桐光太郎とは異なり、力の源を内側に所持しているのではなく、外側から身に着けると変身方法は根本的に違うようだがあの姿、確かに仮面ライダーに近いものであろう。

 

 

「あの力が戻った。なら、もう…」

 

 

インベスに支えられ、メディアの治療を受けるメデューサの小声が耳に入ったが、アーチャーの目は再度空を見上げる事となる。

 

 

 

 

 

「あれは…」

 

 

旗を後に続いていたインベスに1本ずつ託し、自身は再び拳のみで怪人を鎮めていた武は前方へ佇んでいるギガンデスハデスの左右に巨大な魔法陣が出現に危機感を覚え、自分の渡した旗で怪人を滅多打ちする個体や、指示に従って複数で1体の怪人を倒していたインベス達へと命じた。

 

 

「下がれッ!再びくるぞッ!!」

 

 

武の言葉を耳にしたインベス達は対峙していた怪人達にあっさりと見切りをつけ、士郎達が控えている後方へと一斉に駆け出した。その判断は間違いではない。

 

 

魔法陣から出現と同時に放った攻撃によって、その場で戦っていた者は武を残して消滅してしまったのだから。

 

 

 

 

 

「また、化け物が…」

 

 

 

ギガンデスヘルの両隣に現れたのは、同じ名を冠しながら姿と能力が全く異なる存在。

 

 

巨大な羽を振るって咆哮する白い鳥を思わせるギガンデスヘブン。

 

 

海蛇のような長い胴体を持ち、鋭い牙を覗かせるギガンデスハデス。

 

 

巨大な敵が3体も立ち並ぶ姿はまさに圧巻。だが、武にはその場を引くという選択肢は存在しない。そして動きを見せたのはギガンデス達でであった。

 

 

 

『ガアアァァァァァァァァァッ』

 

 

同時に放たれる火球に両手を交差させて防御する武。ブラッドカチドキアームズは機動性が低下した変わりに防御面が向上しており、火球を受けても多少身動く程度の被害で済んでいる。だが、このまま動きが取れないようでは反撃もままならいと考えた矢先、自分が巨大な影に覆われていると気付いた刹那、武が上げた両手に伸し掛かる巨大な手…接近したギガンデスヘルの手をどうにか受け止める事が出来た。

 

「ぐっ…」

 

だが、受け止めただけだ。両手が完全に塞がれてしまった武を押しつぶそうと手へ徐々に体重をかけるギガンデスヘル。武の足元にある土が陥没を始める中、別のギガンデスが武を余所に移動を始める。その行先は、メデューサ達が避難していた崖の上。

 

 

「ま、まさか奴らッ!?」

 

『そう、そのまさかなのですよ!』

 

 

再びその醜い顔を立体映像で現したジュピトルスだが、先ほどとは違い、どこか疲労が見える。恐らく新たに召喚したギガンデス2体を呼び寄せた事によって魔力の大半を消費した影響なのだろう。

 

そうまでして苦しめたいのか。自分が目を付けた光太郎を。

 

 

『もはや貴方などどうでもいいッ!何の抵抗も出来ないあの亡霊上がりの人間共など一瞬で処理できる!そうすれば調子に乗っている間桐光太郎が嘆く姿を拝めると言うものですよぉ!』

 

 

過呼吸をおこしながらも、滝のような大汗を流しながらも自分の愉悦を求め続ける男は、まさに化け物に相応しい。そしてその悍ましい視線は迫るギガンデス達に身構えるメデューサ達にも向けられた。

 

 

 

『所詮は間桐光太郎の周りに集るしかできない役立たずを潰すなど、赤子の手を捻るよりも簡単なのですからねぇッ!!』

 

 

「…っ!」

 

 

役立たず。

 

その言葉に強く反応してしまったメデューサは唇を噛みしめて下を向くことしか出来なかった。

 

 

(あの者の言う通りだ。私は…光太郎達が戻るまで戦うなど言っておきながら、この体たらく。私は…)

 

この戦いで知った自身の無力。有象無象に過ぎないと勘ぐった怪人達に追い詰められてしまった自分は、ジュピトルスの言う通り、役立たずなのだろう。

 

 

 

だが、メデューサとは全く違う反応を示す者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「役立たず…言ってくれるわね」

 

「ずいぶんと口が達者なようだな外道…」

 

 

「え…?」

 

 

 

 

思わずそんな声を漏らしてしまったメデューサの前で立ち上がったのはメディアとアーチャーだ。ジュピトルスの言葉を受け、自分達を侮辱したことが許せずに立ち上がっただけというのなら、まだ納得は出来た。

 

 

 

 

問題は、回復薬で魔力を補充していたメディアはともかく、アーチャーまでもが視認で切る程の膨大な魔力を身に纏っているということだ。

 

まるで聖杯戦争時のサーヴァントとしての全盛期…いや、それ以上の魔力を感じていた。

 

 

「2人に、一体何が…?」

 

 

メデューサの疑問に答えられる者は、この場にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーチャーに、メディア…?」

 

 

なぜ2人の名を口にしたかは分からない。

 

 

光太郎の意識の…それこそキングストーンと対話した深層意識のそこで、彼等がいたような気となった。

 

だが、今は敵を倒す事が先決だと意識を切り替え改めて構え直す光太郎。

 

 

 

 

マリバロンの命令で前へと出たトリプロン1号のモノアイが妖しく光ると、変化は起こった。左右非対称であるトリプロン2号、3号が肩を組むように接続し、その頭上から2体の頭部を覆うように1号がドッキングする。

 

より蟹の姿へと近づいたこの姿こそ本来のトリプロン。合体したことでパワーも数倍に跳ね上がったレーザーを光太郎に向けて照射する。

 

「っ!」

 

横に転がって回避する光太郎は体勢を整えたと同時に自分の真横へと止まったアクロバッターを見る。

 

 

「よし、行くぞッ!」

 

「任セテクレ」

 

 

光太郎がアクロバッターのグリップを握った途端、光太郎のアンクレットが輝き、そのエネルギーがアクロバッターを包む。輝きに包まれたアクロバッターのボディは大きく変化し、バイオライダー専用マシン、マックジャバーへとなった。

 

 

「行くぞッ!!」

 

 

マックジャバーへと搭乗し、フルスロットルでトリプロンへと迫るがただ接近を許すトリプロンではない。その巨大なモノアイからパルスレーザーやハサミに備えれた怪光線、隠し武器として備えていた膝に機関銃を展開し一斉に砲撃を開始する。

 

高感度センサーにより誤差を細かく照準を修正し、間違いなくトリプロンが放った攻撃は全て光太郎とマックジャバーへと命中した。

 

 

だが…

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ間桐慎二君…」

 

「なんだよ遠坂凛」

 

「どうやら私は夢を見ているようね。そう、夢じゃなきゃいけないのよ」

 

「残念だけど、あれは現実だぁ」

 

「嘘よだって…だって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぉして敵の攻撃全部が光太郎さんの身体を突き抜けているのよォォォォォォォッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

凛の叫んだ通り、トリプロンの放った攻撃全てが光太郎の身体をすり抜け、背後で爆発しているのだ。それも光太郎だけでなく、彼が操るマックジャバーへも攻撃が通用せず、同様に攻撃がレーザー、弾丸全てが浸透しているのだ。

 

 

そして驚きの声を上げているのは凛だけではない。

 

攻撃を命じたマリバロンも光太郎の能力を知ろうとモニターを向けていたが、許容できない能力に分析も忘れただ見ていることしか出来ないでいた。

 

 

 

「なんということ…恐るべし、恐るべしRXッ!」

 

 

 

 

 

 

「いくぞッ!トァッ!!」

 

 

トリプロンとの距離を詰め、マックジャバーから跳躍した光太郎はトリプロンの頭上を飛び越え、着地したと同時に両手をベルトの前へと翳し、左側へ刀を抜刀するような構えのまま両手を移動する。

 

 

 

 

「バイオブレードッ!!!」

 

 

光太郎が叫ぶと同時に手の中で光のエネルギーが凝縮し、一振りの剣が完成。左手に添えられ、右手に握られた両刃の剣『バイオブレード』

 

 

「トァッ!!」

 

「う、ごぉッ!?」

 

 

トリプロンが振り返ったと同時に駆ける2つの剣閃は金属で出来た巨大な鋏を切り落とす。両腕を失い、後ろへと下がるトリプロン。

 

しかしさらに間合いを詰めた光太郎は両手でバイオブレードを構え、刀身が青く輝くエネルギーを纏った直後、逆袈裟斬りをトリプロンのボディへと叩き込む。

 

 

 

スパークカッター

 

 

 

太陽のエネルギーを瞬間的に込め、万物を切り裂く必殺技。

 

 

『お、おおぉぉぉおぉぉっ!!』

 

 

斜めに切り裂かれた傷痕から火花が散り、爆発を起こすトリプロンを背にし、片膝をついてバイオブレードを構えた光太郎背後で、巨大な爆発が起きるのであった。

 

 

これでトリプロンは倒した。後はマリバロンから桜を取り戻す。

 

 

 

それで終わると思われたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、おのれ…よくも2号と3号を…』

 

 

「むっ!」

 

 

煙が晴れた後、フラフラと揺れながら姿を現したトリプロン1号。どうやら爆発寸前に他のトリプロンを切り離して無事でいたようだが、完全に無傷とは言い切れず、バチバチと火花を放っている。

 

 

 

 

 

 

「こうなれば最後の手段ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いでよトリプロン0号ッ!!」

 

 

 

トリプロン1号が叫んだ瞬間、距離を取って戦いの行く末を見守っていた凛達が立っていられない程の地震が発生する。

 

 

 

 

「え、な、何ッ!?」

 

「また新手が現れるってのか?」

 

「でも…揺れ方が今までとまるで違います!」

 

 

 

ガロニアの予測通り、2度に渡り地中から現れた敵は自分達と同じ程度の大きさであったが、3度目の出現となる怪人は、まるで大きさが違った。

 

 

地表を破り、最初に現れたのか鋏。それも合体したトリプロンとは比べものにならず、優に2メートルは超えている。

 

 

そしてついに全身を現した敵の姿は、蟹だった。

 

 

それも大きく、人1人は平然と飲み込んでしまう程に巨大な蟹であった。

 

 

 

「これぞまさしく最後の手段…覚悟しろRXッ!!」

 

 

巨大蟹の頭部へ1号がドッキングしたことで完成した真のトリプロンはより強力となったパルスレーザーや全身に仕込まれたミサイルを一斉射撃。再び剣を構えた光太郎へと迫る。

 

 

「…っ!?」

 

そして気付く。トリプロンが放ったレーザーは先ほどとは変わりないが、ミサイルは回避したというのに一直線へと飛んで行かず、光太郎を追ってくる追尾ミサイルであった。

 

 

「くッ!」

 

「ハハハ…無駄だ。そのミサイルは一度狙った者に当たって爆発するまで絶対に止まらんのだ!今貴様を追うミサイルは40基さらに60基以上が追えばどうなるか…

 

 

節足の装甲がすべて展開し、トリプロンが宣言したミサイル全てが発射される。

 

 

 

「これで合計100基のミサイルが貴様を狙う!さぁ、避けきれるか!!」

 

 

「………………………」

 

 

レーザーを回避しつつ、上空から迫るミサイルへと目を向ける光太郎は無言のまま数メートル先で立ち止まるとバイオブレードの構えを解き、両手を交差させて防御の体勢を取った。

 

 

「まさか、全てを受けきる気か?馬鹿め、私のミサイルはそれ程甘いものではないわぁッ!!!」

 

 

 

そしてついに降り注ぐミサイルの雨。

 

 

断続的に続く爆発の中、光太郎の名を慎二達は呼び続けるが、爆音にかき消され誰の耳にも届くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの鳥モドキは任せるぞ」

 

「それじゃ、あの蛇モドキをよろしく」

 

 

立ち並んだまま、視線を躱さずに2人は同時に動き出す。

 

メディアはギガンデスヘブンへと飛翔し、アーチャーはギガンデスハデスへと向かい崖を飛び降りた。

 

 

 

「くらいなさい!」

 

魔力の散弾をギガンデスヘブンへと放射。紫色に輝く魔力の雨に少なからず押されながらも、火球やレーザーなどで反撃するが全てが防御壁によって阻まれてるが、メディアがまるで意識を向けていない方角から火球が迫る。

 

どうにか手を翳して火球を出鱈目な方向へと飛ばす事に成功するが、安堵するより先に地上を走る男へとメディアは怒鳴り散らす。

 

 

「しっかりそちらの相手をなさい!私を巻き込まないでッ!」

 

「それは敵に言って貰おうかッ!!」

 

 

 

反論しながらもアーチャーは地上を走りながら番えた矢を放ち、新たに投影した矢を再び番える…さらに言えば投影した矢は全て名を轟かせた刀剣を変形させたものであり、通常の怪人なら一撃で葬る威力を誇る一級品だ。

 

苦しみ悶えるギガンデスハデスは火球を吐いて抵抗するが、アーチャーの鷹の目はそんな出鱈目に放たれる攻撃などカスリもしない。

 

 

 

 

「フッ…どうやら、いらぬ心配だったようだ」

 

 

小さく笑う武は今尚押しつぶそうと伸し掛かるギガンデスヘルの手をただ『受け止める』状態から『掴む』方へと切り替える。ギガンデスに取っては多少の痛みが走る程度ではあったが、次第にそれは大きな焦りへと変わっていく。

 

 

 

『ッ…!?!?!?!?!?!?!』

 

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 

ギガンデスヘルは自分に起きている事がまるで理解が追いつかなかった。それはそうだろう。自分にとってまるで蟻程度の大きさに過ぎない武を手で押しつぶそうとしているのに関わらず、自分の身体が薄気味の悪い浮遊感を感じている。

 

 

そう、武は掴んだ巨大な手を起点として、大きさも重量も遥かに上回るギガンデスヘルを持ち上げているのだ。

 

 

 

「ウオリャアアァァァァァァッ!!!!」

 

 

混乱するギガンデスに構わず武は腕を引き地面へ背中から叩き付ける。大きな地響きと土煙を上げて倒れるギガンデスが震えながら立ち上がろうとする最中、武の手には新たな武器が握られていた。

 

 

 

ブラッドオレンジアームズで大橙丸がそうであるように、ブラッドカチドキアームズ専用である重火器『火縄大橙DJ銃』

 

 

引き金付近に設置されたピッチを調整、銃側面のディスクをスクラッチしエネルギーをチャージし、強力な砲撃を次々と放つ。全てがギガンデスハデスの頭部へと命中し、その巨大な角をへし折る事に成功する。

 

 

 

 

 

 

「では、仕上げと行くかッ!!」

 

 

一端弓を手元から消滅させたアーチャーは白黒の夫婦剣を生み出し、ギガンデスハデスの両目へと投擲。既に関節という関節に刀剣から生み出した矢を受けてうまく身動きが取れないギガンデスは回避することが出来ず、眼球へ刀剣が突き刺さった瞬間、ギガンデスは喉が裂ける程の咆哮を上げる。

 

干将と莫耶を手放した時点でギガンデスの真下へと移動したアーチャーは黒い弓と、生み出した捻じれた剣を番える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――I am the bone of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)

 

 

 

 

「―――“偽・螺旋剣”(カラド、ボルグ)!!!」

 

 

 

 

アーチャーが番えた()を放ち、敵の胴体へと触れた瞬間、怪物は空間ごと削り取られ、跡形もなくその姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでッ!」

 

 

空へと浮かぶメディアの頭上に展開された巨大な魔法陣。詠唱無しに瞬時で生み出す攻撃魔術とは違い、メディアでさえ魔法陣を完成さえるのに5秒は要してしまう攻撃魔術だ。そこから放たれる光に撃たれれば、怪人など触れただけで蒸発してしまうだろう。それが、怪人であればの話だ。

 

 

『ギャオオォォォォォォォォッ!!』

 

 

目の前で大きな口を開け、ギガンデスヘルと堂々の巨大火球を生成するギガンデスヘブン。それぞれの攻撃が衝突し、押し合いになった場合は力のない方が負ける。

 

 

「全く、こんな事私のやり口ではないというのに…けど、思い知らせなければならないわね…」

 

魔法陣がバチバチと放電し、中央から出現した眩くも極彩色の光の柱がギガンデスへと迫る。ギガンデスも負けじと巨大な火球を放ち、両者の中間で轟音が起きると共に衝突。燻りながら拮抗するが、次第に魔力の光は弱まり、火球は収縮。遂にはどちらも完全に沈黙し、互いの攻撃は対消滅という結果となった。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 

杖をギガンデスに向けたまま息を荒立てるメディアに向かい、ギガンデスは再度巨大な火球を生成する。同じ攻撃をしかけようとしても、魔法陣を出現させてから攻撃に移るまでの隙を、ギガンデスが見逃すはずがない。

 

 

「ふぅ…慣れない事はするものじゃないわね」

 

 

だが、追い詰められているはずのメディアは焦るどころか余裕を見せつけるようにその長い髪の毛を手で櫛上げる。さらに火球が膨らんでいく光景を眺めながらメディアは告げた。

 

 

 

「大型の攻撃魔術をしかけながら、詠唱無しで他の魔法陣を組み立てる…理論は以前からあったけど、実際にやってみると意外と大変」

 

 

 

『……?』

 

 

「けど、やった甲斐はあったわ」

 

 

 

 

『ッ!?』

 

 

 

 

 

ようやくメディアの言葉を理解したギガンデスだったが既に遅い。

 

 

 

空中を浮遊するギガンデスの周囲には先ほどメディアが生成した大型の魔法陣が帯電した状態で囲んでいる。それも無数に。

 

 

メディアはギガンデスと攻撃をぶつけあった最中にこの無数の魔法陣を既に設置を終えていたのだ。

 

 

 

 

「では、ごきげんよう」

 

 

 

メディアが振り返ると同時に、魔法陣から飛び出した光はギガンデスを飲み込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーチャー、メディア…貴方達のその力は…」

 

 

 

茫然と空を見上げるメデューサにはまるで理解出来なかった。彼等は聖杯戦争の終焉と共にその身を人間へと落とし、以前のように戦える程の魔力を有していないはずだ。しかし、ジュピトルスの言葉を受けた直後に2人の魔力は爆発的に高まり、その攻撃は聖杯戦争時とは比べものにならない程までに向上している。

 

まるで、光太郎がBLACKからRXへと進化したように。

 

 

投影完了(トレース・オン)…よし、成功だ」

 

「シロウ…?そ、それは」

 

 

 

アーチャーとメディアの戦闘に夢中となっていたメデューサは士郎が投影した剣を見て驚愕する。全員が回復している間にずっと右手に魔力を集中、凝縮させていたとは知っていたがまさか投影魔術を行使していたとは気づきもしなかったのだ。

 

 

(今の私には、それほど集中力が欠けていた、ということですね)

 

 

無意識に手を握る力が強まっているメデューサを余所に、士郎は手にした『それ』を本来の持ち主の名を叫んで、全力で放り投げる。

 

 

 

 

 

 

 

「武さんッ!!受け取ってくださいッ!!!」

 

 

 

 

 

回転して迫る刀剣を武は振り向かず、腕だけを背後に伸ばして柄を掴みとる。それは紛れもない、ギガンデスの火球を受け止めた際に刀身の大半を消失した無双セイバーだ。

 

 

「…感謝するぞ、士郎殿ッ!!」

 

 

武の声が届き、笑顔で頷く士郎。

 

武の依頼で投影魔術により幻想の形として生み出した無双セイバー。自分の依頼を完遂した士郎の心意気に応える為にも、ようやく立ち上がったギガンデスの真正面に立った武は最大の攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

火縄大橙DJ銃の銃口からレールを展開し、そのレールを通じて銃口へ無双セイバーの刀身を差し込む。連動して銃のグリップ部がスライド、中から刃がせり上がった。

 

 

 

2つの武器が合体し、大型剣となった火縄大橙DJ銃の側面にドライバーから取り外したブラッドカチドキロックシードを装填。

 

 

 

『ロックオン』

 

 

 

ロックシードから流れるエネルギーが武器へ、そして武の全身に駆け巡っていく。

 

 

 

 

 

『イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン・オク・チョウッ!!』

 

 

 

 

電子音声の数値が高まるにつれて大剣の刃を纏うエネルギーが高まり、その刀身は10メートルを越える。

 

 

 

 

 

『無 量、大 数ッ!!!』

 

 

 

 

音声と共に振り下ろされた紅いエネルギーの刃はギガンデスを頭頂部から切り裂いた。

 

 

 

大剣を振り下ろし、武が踵を返した直後に、真っ二つとなったギガンデスは爆発の中に消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…塵も残らなかったようだな」

 

 

煙が晴れ、光太郎が立っていた位置には巨大なクレーターが生まれ、その中には光太郎の影すら残っていない。

 

 

ふぅ…とゆっくりと息を吹くマリバロンは背後で口を押え、屈んでいた桜を起こすと改めてミサイルが降り注いだ場所へと目を向ける。

 

 

 

(流石にあれ程の攻撃を受ければ…だが何故だ。あの異様な能力を見たせいか、私は何一つ安心できていない)

 

 

 

光太郎が液体のように身体を変質させ、物理的な攻撃を全て通過させてしまう新たな能力。それを見越して逃げ場のないところで次々と爆発を起こせば生き残る可能性は万が一もありえない。

 

それでもマリバロンは不安を拭いきれないでいた。

 

 

 

「さて、では残る者を片付けるとするか…」

 

地響きを立てて慎二達のもとへむかうトリプロンの姿をみて、ガロニアを庇うように凛と慎二は前へと出る。その目には、光太郎を失ったという絶望の色がまるでない事に疑問を抱いたトリプロンはレーザーの照準を向けながらも尋ねた。

 

 

 

「小僧、なぜ落ち着いていられる?貴様等の希望であるRXはこの手で倒したのだぞ?」

 

「その言葉、そのまま返させてもらおうかね」

 

 

汗を流しつつ、口元を強引に歪ませた慎二は頭上でモノアイを光らせるトリプロンを睨んだ。

 

 

 

「どうして倒したって確信を持てるのかね?」

 

「何だと?」

 

「よく見なよ。アンタが打ち込んだミサイルの位置をさ」

 

「なんだ…まさかッ!!」

 

 

 

 

センサーで拡大した爆心地の中央。そこには、穴が。直径で2、3cmでしかない穴が確かに開いていた。

 

 

 

「そして、アンタたちが馬鹿みたいに飛び出した穴は、いくつも開いているんだぜ。一番近い場所は…」

 

 

「―――お前の背後だッ!!トリプロンッ!!!」

 

 

 

 

 

慎二の言葉に続き、トリプロンの足元に空いた穴から飛び出した青い液体はトリプロンの眼前で人型となり、輪郭がはっきりと形となった直後にトリプロンのモノアイへと手にした剣の切っ先を突き刺した。

 

 

 

「お、ががががあぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 

 

バイオブレードを引き抜いた光太郎は着地したと同時に地面を蹴り、トリプロンの巨体を支える右側の節足を切り落とす。その結果、片側の足だけでは支えきれないトリプロンは地面へと沈んでしまった。

 

 

 

「ま、まさか貴様…」

 

サブカメラに切り替え、光太郎を睨むトリプロンが慎二の言葉からなぜ光太郎が無傷で自分へ奇襲を仕掛けられたのかを推測する。

 

 

光太郎はミサイルが衝突するギリギリまであの場へと引き込み、当たる寸前に自分の身体を液体化させあの小さな穴から逃れたのだ。いくら誘導ミサイルといってもあのような穴を通れる訳もなく、地面へぶつかった瞬間に爆発。後のミサイルも同様だったのだろう。

 

 

そして地中の穴を辿り、自分へ奇襲が可能である穴まで移動したのだ。

 

 

 

 

「な、んという奴だ。だが、それでも俺はぁッ!!」

 

 

移動が出来ず、地面へと沈んだ状態であろうが巨大な鋏を振るうトリプロンの攻撃を躱し、一端距離を置いた光太郎は右手を天に翳し、左手をベルトへ添えた構えを取る。

 

ベルトの中央が強く発光し、その姿はバイオライダーからRXと変わると続いて右手を前方に突出し、左手を腰に添えた構えを取った。

 

 

 

 

「リボルケインッ!!」

 

 

左腕を大きく回しながら広げた手を腹部のサンライザーへと翳す。

 

 

サンライザーの左側の結晶から幾層もの光の線が重なり、洗練された円形の柄が現れた。

 

 

柄を光太郎が掴むと同時に柄の中央にある赤いダイナモが光を迸りながら高速で回り出し、柄を引き抜くと光のエネルギーが凝縮されたリボルケインが姿を現す。

 

 

 

引き抜いたリボルケインを左手から右手に持ち替え、水平に構えると、今にもレーザーを放とうとするトリプロンのモノアイへとリボルケインの先端を突き立てた。

 

 

 

 

「ウオォォォォォォォォォォッ!!」

 

「ムゥンッ!!」

 

 

さらにリボルケインを深く突き刺し、トリプロンの体内へ光のエネルギーを注ぎこんで行く。

 

 

トリプロンの体内で飽和状態となったエネルギーが火花となって関節部から漏れ始める。

 

 

 

「まさか、まさか0号ですら敵わないとはぁあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

トリプロンからリボルケインを一気に引き抜き、断末魔の声を背にして光太郎は大きく光の杖を頭上で旋回。

 

 

 

 

両手首を頭上で交差し、左手をベルト サンライザーへ添え、リボルケインを握る右腕を振り払う。

 

 

 

残心の構えを取ったと同時に叫ぶトリプロンは大爆発の中へ消えるのであった。

 

 

 

 




という、地球組頑張ったの巻でございました。

そして次回は短くなりますが一区切り。この桜救出編も数えてみれば…え?約半年…?

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