Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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何気なくランキングを覗いてみましたら、この作品がランクインしてわが目を疑いました。
これも日頃から閲覧し、応援してくれた皆さんのおかげです。
本当に、ありがとうございました!

それでは第4話です!


第4話

クライシス帝国によりキングストーンを破壊され、宇宙空間へ追放された間桐光太郎は謎の力に触れる。重症を負いながらも地球へと帰還した光太郎はメデューサ達によって保護されたが、深い眠りに陥ってしまう。

 

一方、光太郎が生きていると知ったクライシス帝国は今度こそ光太郎の息の根を止める為、怪魔ロボット キューブリカンを始めとした刺客を放つ。

 

これを阻止する為に立ち向かうメデューサ、慎二、桜だったが敵の強大な力によって次第に追い詰められてしまう。

 

だが、キングストーンと意思を通わせ、仮面ライダーBLACKへと変身した光太郎が間一髪メデューサ達の危機を救い、新たな力を発動させたのであった。

 

 

 

 

「太陽よ…俺に力をッ!!」

 

 

 

 

姿を見せた太陽を掴むように天へ右手を翳し、左手をベルトの前へと移動。

 

 

右手首の角度を変え、ゆっくりと右腕を下ろすと素早く左肩の位置まで手首を動かし、空を切るような動作で右側へと払うと握り拳を作り脇に当てる。

 

 

 

その動作と同時に左手を右から大きく振るって左肩から左肘を水平にし、左拳を上へ向けた構えとなる。

 

 

 

光太郎の赤い複眼の奥で光が爆発する。

 

 

 

体内に宿ったキングストーンの力と光太郎へと降り注ぐ太陽の力が融合した『ハイブリットエネルギー』により光太郎のベルトは2つの力を秘めた『サンライザー』へと変化。

 

 

 

サンライザーから放たれる2つの異なる輝きが光太郎の全身を包み、彼を『光の戦士』へと進化させた。

 

 

 

 

 

 

黒いボディの一部が深い緑色へと変わり、胸部には太陽の力をエネルギーへと変換する『サンバスク』が出現。よりバッタへとイメージが近づいた仮面、より強く光る真っ赤な目を思わせる複眼と一対のアンテナ。

 

 

再び右手を天に翳した光太郎は敵に向かい、新たな力を手にした名を轟かせた。

 

 

 

 

 

 

「俺は太陽の子――ッ!!」

 

 

 

 

 

「仮面ライダーBLACK!!RX!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「R…X?」

 

「光太郎の…新しい力…」

 

 

桜と慎二は茫然と姿を変えた光太郎の後ろ姿を見つめている。

 

遅れて現れた上にさらなる力を手に入れていたとは、なんて出鱈目な兄なのだろう。

 

 

 

 

「みんな。後は任せてくれ」

 

 

 

 

そして、その言葉がどうしようもなく頼もしい。

 

 

 

「光太郎…」

 

 

そう名前を呟くメデューサはただ嬉しかった。見た事もない姿へ光太郎が変わったという驚きよりも、こうして普段通りに自分達の前に現れ、安心させようと優しい言葉をかけてくれることに。

 

 

 

 

 

 

一方、遥か宇宙では3人とはまるで逆の状況となっている者達もいた。

 

 

 

 

 

 

クライス要塞 指令室

 

 

 

「なんだ…なんなのだあれはっ!?」

「ゲル―ッ!?す、姿が変わりやがった…」

 

眩い輝きを放ち、姿を変えた光太郎をモニターで目にしたボスガンは混乱の余りに声を荒げ、ゲドリアンは普段以上に落ち着きなく飛び跳ねるしか出来なかった。

 

無理もない。二度と変身が出来なくした上で宇宙に放り出し、光太郎の命とも言うべきキングストーンを確実に破壊した光景をこの場にいる全員が目にしている。だというのに間桐光太郎は生存し、新たな力を得て現れたのだ。

 

マリバロンも口には出さないもののボスガンやゲドリアンと同じく動揺している。ゴルゴムの残党や地球上に散らばっていた過去の組織から奪い取った仮面ライダーのデータ…特にBLACKの戦闘データは徹底的に調べ、全てを把握したはずだ。だが、データーの中にあのような力など微塵もない。

 

だとするならば…

 

「奴は…進化した」

 

マリバロンと同じ結論に至ったガテゾーンは赤いモノアイを光らせ、食い入るようにモニターを見つめている。

 

「ガテゾーンの言う通りだ。奴は…間桐光太郎は、我々の知らない新しい仮面ライダーへと進化を遂げたのだ」

 

杖を強く握りしめるジャーク将軍はマントを翻し、敵の思いもよらない姿に平常心を失いつつある部下へと命令を下した。

 

「マリバロンよ。魔術師共に放っていた『サンプル』共へ招集をかけよ。全力を持って間桐光太郎を…いや、RXを抹殺するのだッ!!」

「は、はい!招致致しました!!」

 

 

 

 

 

 

「む…」

「え…?」

 

背中を合わせ、遠坂邸に襲撃した敵と戦闘を繰り広げていたアーチャーと遠坂凜は同時にそんな声を漏らした。自分達に対する攻撃をピタリとやめた怪人や素体は一斉に同時の方向へと目を向けた途端に地を蹴り、屋敷の塀を飛び越えていく。

何が起きたか分からないが、どうやら危機を乗り越えたと大きく息を吐く凜は魔力を込めた右腕をゆっくりと下ろす。

 

「全く…アーチャーの言った通り警戒しといて正解ではあったけど、まさか真夜中に来るなんて…」

「敵を倒すのに夜襲も有効な戦法だ。ゴルゴムが間桐の家へその手段を使わなかったのが不思議なくらいだ」

「あんたは…」

 

相も変わらずな皮肉を口にするアーチャーへと振り向く凜だったが、そのアーチャーは凛の視線など全く気が付く素振りもなく自身が手に持つ剣を見つめている。彼が投影魔術によって生み出した2振りの夫婦剣は折れてこそいないものの刃の所々が欠け、無残な状態となっていた。

投影とは、自身の心象をそのまま形にする魔術。もし砕かれてしまうような武器であれば、所詮それまでの創造でしかない。

先日、とある少年との戯れた際にそう言い放ったのだが…

 

 

 

「…衛宮士郎を笑えんな」

 

 

 

敵である以上、彼は一切の躊躇も油断もなく全力で挑む。だが、今の戦いの結果が剣の状態へと現れてしまった。

 

自分自身という敵を乗り越える。それこそが投影の真髄だ。折られても、砕け散っても、それ以上に自分を強くすればいい。だが、今のようにただ傷つくだけで済むなど論外だ。

相手を切り伏せることも出来ず、壊されて自身の心を超え、鍛えることすら出来なかった中途半端な状態。それが今の自分であると訴えているように。

 

(俺も、まだまだということなのか)

 

かつての力を発揮できなかったからと言い訳にするつもりはない。だからこそ負けるわけにはいかない。

 

自身の宿命を乗り越えたあの男のように。

 

 

 

 

 

 

同じことを、投影した剣が消滅していく光景を眺めながら少年は思っていた。

 

(そうだ。だからまだまだ俺は強くならなきゃいけない)

 

衛宮士郎は拳を強く握り、決意を固めた直後に後頭部へ鈍い痛みが走る。

 

「…………っ!?」

 

しゃがみ込んで打たれた部分を抑える士郎は攻撃を繰り出した犯人の方へと振り向くと、メディアが不機嫌な顔で見下ろしている。

 

「な、何すんだよ!?」

「気取っている所悪いのですけど、急いで朝食の準備をしてきなさい。私は後片付けをしなけばならないわ」

「はぁ?」

 

突拍子のないことを告げるメディアの視線の先を見れば…成程、山門を潜った辺りから戦いの形跡が刻まれている。彼女の魔術によって眠っている一成や住職達が目を覚ます前に修繕を終わらせなければ大騒ぎとなってしまうだろう。

彼女が望む宗一郎との平穏な生活。こんなことで台無しにするわけにはいかないのだ。

 

「本来なら私が宗一郎様の朝食を…私が、私がっ…!!」

 

自分で発言し、自身にダメージを負っている奥様の姿を見てこれ以上刺激しないよう、士郎は足音を立てずにその場から離れていく。行き慣れた道を辿る途中、自分とメディアと同じく奇襲をかけた怪人達と闘った宗一郎と遭遇。寝間着のまま戦い、敵が去った直後に学校に向かう支度をすると早々と自室に戻っていた彼の姿は見慣れたスーツ姿だ。

 

「あ、葛木先生…」

「…今日は学校を休むがいい。藤村先生と柳洞には私から言い繕っておこう」

「えと、はい。助かります」

 

正直ありがたい話だ。普段鍛えているからと言っても真夜中から朝方までの数時間全力で戦い、その後に半日学校で何事もなかった様に過ごすのは酷だ。宗一郎は間桐や遠坂に同じ事を伝言するように指示すると再び自室へと戻るのだった。

 

「…よしッ!」

 

では台所を借りて今懸命に隠蔽工作をしているメディアに代わり朝食を急ぎ作り、それが終わったら間桐の家に向かおう。

 

敵が撤収したということは、何かがあったはずだ。

 

敵の狙いである間桐光太郎に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「引くぞ」

 

男の一言で背後に控えていたスカル魔達が塀を飛び越え、壁の向こうからはエンジンのうねる音が響いてきた。恐らく、ここまで移動手段として使っていたバイクや車に飛び乗ったのだろう。

 

「逃がさんッ!バトルホッパーッ!!」

 

光太郎の言葉に従い、ガレージの奥から緑色のオフロードバイク、バトルホッパーが飛び出し主の前で停車する。バトルホッパーに搭乗し、グリップを回しエンジンの調子を確かめた光太郎は急発進。逃げていく敵の追跡を開始した。

 

そして、残された3人は。

 

 

「よし、追いましょう2人とも!」

「何時にもなく決断が早いなお前。まぁ、僕のそのつもりだったけどさ」

 

 

両手を胸の前でグっと強く握る桜は同意を2人へと求める。先の戦いで疲労困憊が見るよりも明らかだった桜の目は戦う前よりも生き生きと…というよりキラキラしていることに溜息を付く慎二も早く光太郎の後を追うこと事態を否定していない。

むしろ光太郎の後を追うと桜が言い出さなければ慎二が言っていたのだろう。

 

光太郎の隣に立てるように頑張っている2人。その目標たる人物はさらなに前進してしまった。なら、追いつくためにも彼の力を誰よりも早く目にしなければならない。

 

何が義兄を変えてしまったのかという原因よりも、追いつきたいという気持ちが強い2人の姿にメデューサは思わず笑みを零してしまう。

 

そんな安心が油断と繋がってしまったのは仕方がないことかも知れない。

 

「―――ッ!?サクラッ!?」

「え――?」

 

『シャアアァァァァァァァッ!!』

 

突如地面から這い出た怪人の素体。メデューサ達が撃ち漏らした者ではなく、他の素体やスカル魔との戦いの最中に地中へと潜伏してずっと機会を伺っていたのだろう。

 

敵は全て去ったと思いこんだ、完全な失念。素体は背中を向けている桜の顔を切り裂こうと鋭い爪を振り下ろしそうとする寸前。

 

「キャッ!?」

 

短い悲鳴を上げた桜の目に映ったのは自分の手を引き後方へ移動させた代わりに、素体の爪が当たるまであと数センチの距離まで接近されてしまったメデューサだった。

 

「メデューサねえさ――ッ!?」

 

その先の言葉が聞けるまで、自分は無事でいられないだろう。そんな諦めが彼女の意識を締める一方、この不意打ちを仕掛けた曲者に対しての怒りがあった。

 

(あの人の…私の大切な人を傷つけるようなことは、決して――ッ)

 

 

 

「許さないッ!!」

 

 

メデューサは素体に向け拳を放ったのは無意識に行ったことだった。だから、その結果が彼女だけでなく庇われた桜と状況が飲み込めなかった慎二を驚かせるには十分だったのだろう。

 

敵の攻撃より早くメデューサに叩き込まれた拳によって、素体の身体は『粉砕』された。

 

身体を貫くでもなく、2つに割ったでもなく、弾けた。肉片と呼べるモノと判別が付かなくなるまで細かく粉砕されてしまった。

 

「………………」

 

メデューサも訳が分からぬまま拳を突き出したまま固まっている。聖杯戦争時と比べ、力が半減した彼女にとっては素体を殴り飛ばすぐらいの筋力しかない。だが、今の攻撃した際に聖杯戦争時と同様、もしかしたらそれ以上の力が自分に宿っていた気がした。

それだけなく、素体を粉砕したのは、間違いなく『石化』により相手を砕きやすい状態へと変えてしまっていた。相手の動きを鈍らす程度にしか効果を発揮しないはずの魔眼の力も、自分の任意とはいえより強力なものとなっていると分かる。

 

メデューサは粉微塵となった素体に目もくれず、己の拳を見つめていると不意に肩を軽く叩かれた。

 

「…シンジ」

「今はたっぷりと自分のことを調べたいところだろうけど…」

「…ええ。今は光太郎を追いましょう」

 

 

今は悩んでも仕方がない。しかし、今は敵の討伐に向かった光太郎の後を追う事を優先させると思いこむことで、メデューサは先程の力に関して考える事を放棄しようとした。そんな折、光太郎の後を追う準備を進める中、今度は桜から声を掛けられる。

 

「あの、メデューサ姉さん」

「…サクラ?」

「助けてくれて、ありがとうございました!」

 

笑顔でペコリと頭を下げる少女を見て、ようやく固くなった表情を柔らかくしたメデューサは微笑みながら桜へと答える。

 

「ええ。無事で何よりです」

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたッ!」

 

バトルホッパーを駆り、逃亡した敵の追跡を続ける光太郎はようやく敵を視界に捉える。まだ日が昇ってからそれ程の時間が経過していないため、周囲に人影や他の車両はない。ならば、今自分と共に疾走する相棒に遠慮させる必要などない。

 

「このまま飛ばすぞッ!!」

 

「PiPiPiPi―――ッ!?」

 

「こ、これは―――ッ?!」

 

 

バトルホッパーが光太郎に答え、電子音を鳴らした直後だった。

 

光太郎のサンライザーが放った強い光が、走行を続けるバトルホッパーの全身を包んだのだ。光はバトルホッパーを覆うだけでなく、その形状すら変えていった。

 

バッタの意匠を遺しながらも流れるようなフォルムとなり、カラーを緑色から青へと変わる。

 

そのスピードは以前を遥かに上回り、動力源であるモトクリスタルから力強い波動が光太郎へと伝っていく。

 

「…そうか。お前もパワーアップしたのか」

「PiPiPiPiッ!!」

 

 

肯定するように再び電子音を鳴らすバトルホッパーだったバイクは、主の号令を待つ。

 

 

「よし、行くぞッ!『アクロバッター』ッ!!」

 

「マカセロ、コウタロウ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん…?と光太郎は敵から目を離し、自らのバイクへと視線を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――え?ちょ、ちょっと!?今アクロバッター喋って―――」

「イマハ、オウコトガセンケツダ!」

 

 

 

搭乗者に有無を言わさず、初めて言葉を発したバトルホッパー改めアクロバッターはバイクに乗るスカル魔達の追跡を再開する。かつてないスピードを出し、光太郎の操縦を無視して。

 

 

 

 

 

 

冬木 新都の外れにある採掘場

 

 

 

 

アクロバッターから降りた光太郎を待ちかまていたのは間桐邸に侵入した男とスカル魔。その前衛には、穂群原学園と同様にヘルメットや機械を身体に組み込まれてたゴルゴム怪人が待ち構えていた。

その数は、50を超えている。

 

 

 

 

 

クライス要塞の指令室でその光景を目の当りにする4大隊長の1人、ゲドリアンは勝ち誇るように飛び跳ね後にジャーク将軍の前で膝を付く。

 

 

「ジャーク将軍ッ!これから間桐光太郎が相手をするサンプル共は数日前に奴目の力を図る為の捨石と違い、力を以前の5倍に強化した者共でございます!」

「ほう…」

「その変わり、無理な改造を施した為寿命はあと数日と言ったところでしょうがね…」

 

顔を上げないゲドリアンの口は、醜く歪んでいた事を他の隊長は気付いてはいても特に追及せずにモニターへと再び視線を移す。

 

海外に散らばっていたゴルゴムの残党を捕獲し、サンプルとして扱っていたクライシス帝国。洗脳することで自分達の私兵として扱っていた。ゴルゴムを率いていた3大神官、そして創世王が滅びた今怪人達の拠り所は世界にはどこにもなく、失意にあった怪人の中には自ら捕獲された個体も少なくはなかった。

なんの抵抗もせず、されるがままに再改造を受け言われるがままに動く兵。そして、地球の怪人を調べる上での『サンプル』として…

 

 

「…だが、散る命には変わりあるまい。無駄に散らさぬため、彼奴の力を確実に図るのだ」

「承りました」

 

ジャーク将軍の指令を受け、マリバロンはスーパーコンピューターを起動させた。

光太郎の力を図る為に。

 

 

 

 

 

 

 

「行け」

 

男が短く呟くと同時に一斉に行動を開始した怪人達。段々と距離が縮まるにつれて光太郎も気合を込め、叫びと同時に駆け出した。

 

 

「行くぞッ!!」

 

 

地響きを立てて迫る怪人達との距離が10メートルを切ったと同時。光太郎はその場で屈むと大地を強く蹴り大空へと跳躍。既に頭上へと迫っていたタカ怪人とコウモリ怪人達を超え、その高さは60メートルを超える。

 

「トァッ!!」

 

落下を始めた光太郎に一時的とは言え自分達より高く舞い上がった事へ怒りをむき出しにし迫ってくる怪人2体だったが、光太郎にその攻撃が当たることなくすれ違ってしまう。

光太郎は何事も無かったかのように着地し、他の怪人達に向かい構えを取った直後、光太郎の頭上で2つの爆発が起きた。

 

 

 

 

「なんということ…!」

 

マリバロンがスローモーションで分析した結果、光太郎は迫る怪人達の攻撃を躱しただけでなく、同時に手刀を蹴りを怪人2体へと叩き込んでいたのだ。

 

「ジャンプ力もBLACKを遥かに超え、スピードだけじゃねぇ…攻撃力もパワーアップしてやがる」

 

ガテゾーンも分析に加わり、より強化されたはずの怪人をたった一撃で葬りさった光太郎の動きを必死に追い始める。

 

 

 

 

 

「トァッ!!」

 

光太郎の拳を腹部に受けたサイ怪人が打たれた箇所を両手で押さえながら後退し、続けて突進してくるタマムシ怪人も蹴りを一発受けただけで身体をくの字にして大地へと沈んだ。

 

背後から腕を振り下ろしたカミキリ怪人の腕を左腕で払うと同時に左肘を叩き込み、回し蹴りで後方に控えていたクロネコ怪人ごと吹き飛ばす。

 

俊敏性に猛るヒョウ怪人はスピードを最大限の状態でアンモナイト怪人の甲羅を膝蹴りで砕く光太郎の真横へと接近。気付かれる間もなく牙が光太郎の首へと突き立てられると思われたが。

 

「…グッ!…ギィッ!?」

 

光太郎はヒョウ怪人の方へ身体を向けることなく、自身の右側へ拳を伸ばす。拳はヒョウ怪人の胸部を叩き、怪人がダメージによる悲鳴を上げる前に素早く腹部、頭部へと続けて裏拳打ち込んだ。

 

ガクリと膝を付くヒョウ怪人に続き突進してきたマンモス怪人の牙を掴み、左足を軸にしたローキックを怪人の太腿へと叩きつける。それも一発だけではない。

 

「ハアアァァァァァッ!!」

 

一度引いた足が地面に着いたと同時に再び同じ個所へと蹴りを叩き込む…同じ攻撃を5度、6度と繰り返し、7度目の蹴りがマンモス怪人の頭部へと炸裂。ヘルメットが砕けると同時に爆発した。

 

 

 

 

 

 

「う、嘘だ…クライシスに劣るゴルゴム共の怪人共とはいえ俺様が再改造したサンプル共をああも簡単に」

「データの更新が追いつかない…なんという凄まじきパワーなの」

「だが、防御力はどうかな?」

 

 

ゲドリアンとマリバロンは光太郎の攻撃によって次々と倒されていく怪人の姿を見て圧倒される中、ガテゾーンのモノアイは光太郎に忍び寄る一つの影の存在に気付いていた。

 

 

 

 

 

 

「ムッ!?」

 

怪人の爆発に紛れ光太郎の前に姿を現したスカル魔は手にした大鎌を振う。光太郎は回避することが出来ず、切り裂く音と共に胸板へ斜に大きな傷が刻まれてしまった。

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

「フフフ、これで奴も…なッ!?」

 

ボスガンは自身の目を疑う。モニターの奥で確かな深手を負った光太郎の傷が、一瞬にして消えたのだ。

 

これに驚くスカル魔だったが、その一瞬の隙が命取りとなる。大鎌の刃を光太郎が掴み、握り砕かれた直後に拳が顎へと直撃。そのまま光太郎は腕を振り上げ、骸骨の顔に顎からひび割れていくスカル魔は放物線を描きながら吹き飛び、爆発した。

 

「これは…再生。一秒にも満たない時間でスカル魔に受けた傷を再生させたというの!?」

 

モニターでスカル魔が光太郎の胸板に傷を付けた直後の映像をスローモーションで分析したマリバロン。光太郎の胸板に深い傷が刻まれた直後に一瞬眩く光り、その光が消えた時には光太郎には傷一つ残っていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「トァッ!!」

 

バイクを駆り突進をしかけた別個体のスカル魔2体は同時に大鎌で光太郎を切り裂こうと接近を試みたが、突然目の前を横切ったアクロバッターの妨害により操縦が乱れ、そこを光太郎に飛び蹴りを受けてしまいバイクごと転倒。爆発の中に飲まれてしまう。

 

「なんという奴だ…」

 

予想外の戦闘能力に悪態をつく男を視界に捉えた光太郎は膝を付き、右手を大地に強く打ち付ける。大地を蹴って跳躍した光太郎は身体を後転しつつも前方へと落下するという離れ業を見せながら両足にエネルギーを集中。

 

 

 

「RX!!キィックッ!!!」

「ぐ、オオォオォォォォォッ!?」

 

 

身体を捻りながら両足を胸板へと叩き付けられた男は踏みとどまることが出来ず、数十メートル先へと吹き飛ばされてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「RXキック…以前奴が必殺技としていたライダーキックの…さ、3倍を超えている…」

「だが、その程度でやられる奴じゃない。怪魔ロボット最強の名は伊達じゃないぜ…」

 

 

弾きだされる攻撃力のデータを見るマリバロンはもう読み上げることしか出来ない。その一方でガテゾーンは自分の部下がまだ倒された訳ではないと確信していた。

 

 

 

 

 

着地して油断なく構える光太郎は吹き飛ばされた男が何事も無かったかのように立ち上がる姿を見る。しかし、無傷とは言えず衣服の至る所が避け、裂けた皮膚の下から機械のボディを露わになっている。

そしてもはや人間へ擬態する必要がないと考えた男は衣服と皮膚を引き裂き、自ら正体を現した。

 

重厚な機械で全身を包み、関節ごとにむき出しとなっているチューブの束。右手と頭部の横にそれぞれ巨大なレーザー砲を持つロボット…

 

「それが、お前の正体か」

「我が名はキューブリカン。怪魔ロボット最強の名にかけ、貴様を破壊する!」

 

言うと同時に右腕から次々とレーザーを照射するキューブリカンの攻撃を光太郎は真横、前方へと転がりながら回避を続けていく。

敵との距離は50メートル前後。何とか接近戦に持ち込もうと考えるが、突如背後に現れたイカ怪人に羽交い絞めを受けてしまう。それだけでなくバラ怪人やサンショウウオ怪人達が纏わりつき、光太郎は身動きを封じられ、これを好機とキューブリカンはゆっくりと照準を光太郎へと向けた。

 

「貴様…まかさ怪人達ごと!?」

「所詮持ってあと数日の命…有効活用しているに過ぎん」

「…ッ!?」

 

敵の冷徹な言葉に怒りを向ける光太郎は必至に振り払おうと身体を捩るがイカ怪人の吸盤は決して光太郎を離そうとしない。そして、キューブリカンはチャージしたエネルギーを右手のレーザー砲を向けた。

 

「これでお終いだッ!!」

 

発射されたレーザーは間違いなく光太郎ごと怪人達を射抜き、大爆発を起こす。怪人達の肉片が爆風によって四散する中、自らの勝利を確信したキューブリカンは通信機能をオンにし敵を始末したと報告を送るつもりであったが、それよりも先に主であるガテゾーンからの通信が届く。

 

『キューブリカン。まだ終わってないぞ』

「は?しかし奴は確かに…」

『奴のエネルギーは全く消えていない。よく見てみろ!』

「ッ!?」

 

通信を終えたキューブリカンは再び爆発へと目を向ける。未だ消えない炎の中からゆっくりとした足取りで現れたのは、『無傷』の光太郎であった。

 

 

「そ、そんな馬鹿な…あれだけの攻撃を受けて…」

「…怪魔ロボット、キューブリカン」

 

トーンを落とした光太郎に名を呼ばれたキューブリカンは寒気を感じる。ロボットである自分がそのような事を感じるなどありえないと思考しながらも、光太郎の言葉にはっきりとそれがどのような感情であるかを認めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「かつては世界を恐怖に陥れたゴルゴムの怪人とは言え、自らの目的の為に命を弄び、犠牲にするなど、俺は絶対に許さんッ!!」

 

 

 

『恐怖』

 

 

それが光太郎に対してキューブリカンが抱き、彼のAIを支配する感情だった。

 

 

 

 

「アクロバッターッ!!」

 

光太郎の叫びに答え、爆走して現れたアクロバッターに飛び乗った光太郎はキューブリカンへと一気に接近を仕掛ける。土煙を上げ、けたましいエンジン音を鳴らしながら迫る敵にキューブリカンは当たり構わずレーザーを乱射する。しかし、正確に狙いを定めず発射されたレーザーは当たることなく、光太郎達とはまるで違う方へと放たれるだけであった。

爆発の中を迷うことなく爆走する中、光太郎はグリップを手放し左手を腰に添え、右手を前方へ突き出した構えとなる。

 

 

 

 

「行くぞッ!キューブリカン―――」

 

 

 

 

「リボルケインッ!!」

 

 

 

最初の構えとは逆に素早く右手を腰に当て、左腕を大きく回しながら広げた手を腹部のサンライザーへと翳す。

 

 

 

サンライザーの左側の結晶から幾層もの光の線が重なり、洗練された円形の柄が現れる。

 

 

中央に赤い風車のようなダイナモがあり、柄を光太郎が掴むと同時に光を迸りながら高速で回り出した。

 

 

柄をサンライザーから引き抜くと眩い青い光―――圧縮された光のエネルギーが結晶化した光子剣『リボルケイン』を形成。

 

 

リボルケインを左手から右手に持ち替え、水平に構えた光太郎は一度飛び上がりアクロバッターの座席へ一度着地し、それを足場にして天高く跳躍する。

 

 

 

「ッ!?」

 

思わず上を見上げたキューブリカンは急ぎレーザーを乱射。しかし、太陽を背に落下してくる光太郎にかすることすら出来なかった。

 

 

「トアァッ!!」

「グぁッ!?」

 

 

光太郎は着地と同時にキューブリガンの腹部へリボルケインを深々と突き刺す。そして担い手である光太郎のエネルギーがキューブリカンへと流れ込んでいく。

 

柄を握る力を強くした光太郎はリボルケインをさらにキューブリカンへと押し込んでいく。敵が光のエネルギーを内包しきれず、背中から突き抜けたリボルケインの先端や身体の節々からエネルギーが火花となって漏れ出し始めていた。

 

 

 

「この世界に光ある限り、仮面ライダーBLACK RXは不滅。そして―――」

 

 

 

 

「貴様達から、この星に生きとし生けるものを守って見せるッ!!」

 

 

 

後退しながらリボルケインを一気に引き抜いた光太郎は断末魔の声を上げるキューブリカンを背にし、円を描くような動きでリボルケインを振り回し両手首を頭上で交差。

 

そしてリボルケインを真横へと振るったと同時に、地へ沈んだキューブリカンは大爆発の中で消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

「もう、終わったみたいだな」

「ですね…」

 

採掘場に到着した慎二と桜が見たのは、光が消失したリボルケインを持ち、自分達へゆっくりと近づく光太郎だった。その姿はRXからBLACKへ、BLACKから光太郎へと戻っていく。

 

「お疲れ様でした。こうた――」

 

迎えようと前に出たメデューサが言いかけている途中、光太郎は糸の切れた人形のように前へと身体を倒れていく。間一髪メデューサが受け止めた地面に沈むことは免れたがメデューサは光太郎を揺さぶり、意識があるかを確認する。もしや、新たな変身による副作用が現れたのかと不安が過るが…

 

 

「眠い…」

「は?」

 

自分の顔の横でうとうととして緊張感のない声を聞き、メデューサは思わずそんな声を上げてしまった。

 

「あの力使うと…とんでもなく疲れる見たい…お腹も減ったし…もう…げんか…い…」

 

光太郎はそれ以上話すことなく、寝息を立てている。しばしの間沈黙が続くが、誰からか分からないがクスクスと、そして大声で笑い始めていた。

 

「な、なんだよこいつ…ククッ…ついさっきまで寝てたくせにまた寝るって…」

「フフッ…兄さんったら。こっちがどれだけ心配したか知らないで…」

「マッタクダ。コウタロウハ、ハンセイシナケレバナラナイ」

「ああ。全く…って何だこのバイク!?喋ったぞッ!?」

「え…もしかして、ホッパーちゃん?」

 

突然の乱入者に慌てふためく2人を見ながら、メデューサは膝の上に光太郎の頭部を乗せて優しく微笑んでいた。

 

「お疲れ様です。今は、ゆっくりと休んでください」

 

メデューサに頬を撫でられる光太郎の寝顔は、先ほどの激闘を繰り広げた戦士と同じ人物とは思えないほど穏やかなものであった。




書いてて思いましたがチートと無双って似てるようで違いますよね…というか書いていて楽しかったな。

ちなみに本日登場したみんなの嫁様は桜からホッパーちゃんと呼ばれることに何の抵抗も示していない裏設定があったりします。


さて、次回は光太郎が眠っている間に『彼ら』がどんな動きをしていたかを書く予定です。予定ですからね!

お気軽に感想など書いて頂ければ幸いです。

また次回!

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