と、内容とまるで関係のない話でしたが45話をどうぞ
「ええい、しつこいッ!!」
タキシード姿に歪なマスクで顔を覆う怪人と忍者のような風貌の怪人を切り伏せた赤上武は絶叫と共に背後に迫ったミイラへと回し蹴りを叩き込む。
倒れた途端に砕け散った硬貨になってしまった怪人に目もくれず、武は続いて出現した数十体の怪人へと走り出した。
「オフッオフッオフッオフッ…」
不気味な声を上げる怪人…ヤゴを思わせるシアゴーストは戦闘能力はさほど高くない。メディアの攻撃魔術、メデューサの鉄杭などで致命的な攻撃を叩き込めば爆発してくれる。
だが攻撃が浅く、地面へと転がる程度で終わってはさらに厄介な相手となってしまうのだ。
「オフッ!?」
「くッ、しまった…!?」
鉄杭を握った拳をシアゴーストの顎へめり込ませ、勢い良く振り上げたメデューサは敵が咄嗟に身体を引いた事で威力を殺していた事に舌打ちする。
地面へ落下したシアゴーストは立ち上がろうとせず、手足を屈めダルマのような恰好となると数度痙攣を起こしたように身体を震わせた。
「オフッ…オフッ…オフッ…」
直後、シアゴーストの背中がパックリと割れ、中から後頭部にトンボを彷彿させる羽を後頭部に生やし、それまで丸みを帯びた体面のシアゴーストとは逆に鋭く、所々が尖った意匠を持つ青い怪人…レイドラグーンへと姿を変える。
シアゴーストの恐ろしさは他の怪人同様、集団で敵を責めるだけでなく、敵の強さに応じてその姿を変える事にあった。
現れた当初はシアゴーストの能力を知らず、他の怪人達との入り乱れた戦いから戦闘能力を奪う事に徹していたが、見る見るうちに空が青い群れに囲われていくことに気付いた一同はシアゴーストに対しては全力で叩き潰す事に方針を変更。
この中で唯一飛行能力を持つメディアに狙いを絞るレイドラグーンをこれ以上増やす訳にはいかないのだ。
「ああもう、やっぱり見送りなんて来るのが間違っていたわッ!!」
自身に迫る怪人の羽に狙いを定めて空気を圧縮し、刃と化した攻撃魔術を飛ばすメディアは、羽を刈り取られ撃墜するレイドラグーンの末路などに目もくれず、ヘソクリである溜め込んでいた予備の魔力を消費しながら続いて迫る青い怪人の群れと地表からの攻撃に応対し、負傷した武とメデューサに遠隔で治癒魔術を施すという離れ業をやってのけるが、相手の数が多すぎる。
思わず当り散らす様に大声を上げるが、言った所で敵の数は減ってはくれない。それでも自分で言った事に反し戦いの場から離れようともせず、魔力を練り続けるメディアの背後に、魔法陣が出現。新手の怪人が出現した。
「…っ!?」
迂闊だった。
まさか、この世界に転移した直後から脱皮した姿…レイドラグーンが現れるとは。怪人は驚愕するメディアの隙を逃さない。
目の前の魔術師の命を捕食しようと伸ばした怪人の腕は、下方から飛来する矢によって阻まれた。
あらぬ方向へと腕が向いた事に首を傾げたレイドラグーンが何だと下を向いた途端、今度は無数の矢が怪人の顔へと突き刺さっていた。
「まさかこのような事になっていたとはな…」
赤い外套を纏った弓兵は続いて番えた矢を魔法陣から無数に出現する怪人達へと向けて打ち放つ。矢を生み出し、射るという機械にも近い繰り返しの、しかも正確さも求められる行程に一切の迷いもブレもなく放たれる一撃は怪人達へ致命傷を与えていった。
無論、そんな脅威となりつつある存在を他の怪人が放っておくはずがない。
男へと銃を構えたタキシードの怪人を、魔力で生み出した夫婦剣で吹き飛ばした少年の姿に、武は新たに戦列に加わった2人の名を呼ばずにはいられなかった。
「アーチャー殿、士郎殿…」
まさかあれだけの啖呵を切りながら自分の切り札を忘れるという失態を犯した主へ宝石を届けようとしたアーチャーは、息を切らし、屋敷の前で立っていた少年から今武達が陥っている状況に関して聞かされた。
自分がクライシスに囚われてから慎二や桜の勧めもあって購入した携帯電話に送られたメールを見た士郎は急ぎ遠坂家へと向かい、協力を仰ぎに来たという訳だ。
自分に代わり、武達を助けてくれと。
クライシスへの転移に時間も無かった為、普段のような言い分が使えず送られた単純な内容からより危機感を覚えた士郎は全力で応える為に、この場へと立っている。
以前の戦いからしばしの時が経過しても未だ未熟という事は自覚している。だが、それでも今時分に出来ること全力をこの戦いでぶつけて見せる。
(アーチャーが空を飛ぶ怪人に集中するなら、それを邪魔させない事が、今俺がすべき事だ…)
手にした剣を前方へと放り、また剣を幻想させた士郎はアーチャーを狙う黒装束の忍者へと駆けていく。回転して自分に迫る剣の存在にようやく気が付いた忍者は腰に差していた刀で打ち払うがもう遅い。既に攻撃に最適な間合いまで迫った士郎に刀をへし折られ、一刀のもとに伏せられ消滅してしまう。
そして息も付く間もなく、新たに出現した白い猫の怪人の群れに向かい、剣を構えた。
(これで何とかなる、かも知れませんね)
戦況を盛り返した状況に安堵するメデューサは再びノロノロとした歩調で迫るシアゴーストの首を鎖で巻き付け、他の個体へと衝突させる。
爆発する中でメデューサはアーチャーと士郎が登場する寸前に目の前から消えたアクロバッターが行く先、呼んだ者の存在を名を思わず口にしていた。
「光太郎…」
「行くぞおぉぉぉぉぉッ!!」
現れたアクロバッターに搭乗し、スロットルグリップを回す仮面ライダーBLACK…間桐光太郎はアクロバッターと共に再生ゴルゴム怪人達に向かい、爆音を轟かせて疾走。つられて突進する怪人軍団だったが、光太郎は急ブレーキをかけ車体の向きを強引に真横へと傾けた。
「ハッ!!」
だがアクロバッターは停止することなく、ガリガリと砂利でタイヤを摩擦させながら正面の怪人達にむけて前進して先頭を進んでいたネズミ怪人やシカ怪人を次々と跳ね飛ばしていく。
正面では体当たりが出来る怪人の数が1~2体となってしまう為に、機体を真横に向けてより多くの怪人を巻き込む方法を選択したのだろう。
数体の怪人を再起不能にし、怪人素体を下敷きにしてようやく停止したアクロバッターのグリップを再度捻った光太郎は数メートル先の壁に向かい、アクロバッターをウィリー走行させる。前輪が壁へと接触させた途端に、斜度が80度以上あるにも関わらず壁を走らせ、2メートル以上登るとすぐに再度車体を真横へと向けて走行。
アクロバッターと共に壁を『横』に爆走させるという強引な走行に怪人達が慄く間に光太郎はアクロバッターから飛び降り、コブラ怪人の尾を握ると力任せに持ち上げ、自分を軸にて回転しジャイアントスイングで他の怪人を吹き飛ばしながら、こちらへと向かっていた第2陣へとコブラ怪人を投げ飛ばす!
「おおぉりゃッ!!」
コブラ怪人という砲丸を受けて地へと伏せていく怪人達はどうにか立ち上がろうとするが、さらに追い打ちとなる攻撃が迫っていた。
『ギャアァァァァぁぁぁァァッ!!?』
時間差で壁から落下したアクロバッターの下敷きになった怪人達の断末魔が響き、止めと言わんばかりにアクロバッターは顔を上げようとしたタマムシ怪人の頭部に後輪で踏み、猛スピードで回転。怪人の山から脱出すると同時に爆発を起こすのであった。
「うっわー、絶好調だなあいつら…」
下で繰り広げられていた戦いに戦慄すら覚える間桐慎二は目を義兄達に向けたまま器用に弾丸を補充させ、崖上からこちらに向けて銃撃を続けるチャップ達を1体、また1体と確実に打ち貫いていた。
『それにしても初めての空中戦にここまで対応されるとは驚きです。以前に経験があったのでしょうか?』
「…………………………………」
ロードセクター・ネオの賞賛に慎二は閉口して狙いを定める。
そうでもしなければ、『あの時の恐怖』に身を竦ませてしまうからだ…
それはライドロンが完成した間もない頃。その日も慎二は武による訓練を受けることになっていたのだが…
誰でも簡単に出来る料理レシピをダシにメディアから人避けの結界を学んだ桜によって誰一人いない河川敷。そこには慎二と武以外に2人の人物が参加していた。
「では、今日の訓練を開始するとしよう」
「おい…」
「今回はメデューサ殿と光太郎殿が協力してくれている。なので慎二殿も精を出して―――」
「おいって言ってんだよッ!?なんだよこのでっかい鉄の輪はッ!?そしてなんで僕はその輪に両手両足を縛らているんだよぉッ!!」
武は絶叫する慎二の言い分にはて、何処におかしい要素が…と慎二の訴えに疑問すら浮かんでいなかった。
慎二はこの時、本人の言うようにタイヤをそのまま人の身長以上に巨大化させたような鉄製の輪の中で両手両足を縄で固定され、自分の意思では決して動けない状況に陥っていたのだ。これには流石の光太郎(変身済)とメデューサ(戦闘装束)も困惑するが、武の説明に納得してしまう。
「今後、慎二殿が敵と高所での戦いに備えたものだ。たとえば空を飛ぶ乗り物…飛行機といったか。その乗り物の上で敵と対峙した際に空中でも平衡感覚を失わぬよう、慣れて貰う必要がある」
「そんなアクション映画みたいな目に合う訳ないだろうガァッ!?」
「なるほど…」
「一理ありますね」
「何納得してんのッ!?そして何でさもあり得るみたいな言い方するんだよお前らぁッ!?」
慎二の訴えなどまるで耳に届かず、ついに訓練は開始されてしまった。
「…っ…っ…………っ…」
「良いか慎二殿ッ!回転にまけずしっかりと目を開けて周囲を把握できるまで今回の訓練は終わらんぞッ!!」
もはや悲鳴すら上げられない慎二はメデューサの手により、自身を拘束する鉄の輪ごと空へと浮いている…というか回されていた。
「そしてメデューサ殿の次は光太郎殿に回して貰うッ!最終的には両手の拘束を解いて慎二殿の得意とする銃を浮かせた風船に命中出来るようにするぞッ!!」
これって虐待じゃね…?と気を失った振りをしても水をぶっかけられてしまう慎二は武によるメニューを一分一秒早く終わらせるために訓練へと励んだのだった。文字通り、命をかけて。
(そして何で言われた通りに出来てるんだよ僕は)
と、悠々と空で加速するロードセクターの機体上でもバランスを崩すことなくまた1体のチャップを狙撃する慎二はいつかあの3人の頭上に腐った生卵を叩き落としてやるという地味な報復を誓っていた頃を思い出していた。
あのいじめのおかげでこうして戦えているのだからまぁ、いいかと自己完結した慎二はチャップ達のいる後方で、巨大な滝とその付近に建つ巨大な宮殿を発見。さらに目を凝らせばその宮殿の出口から新手のチャップが武装してこちらに向かっているではないか。
「まさか、あそこに…」
「わかった、俺達も直ぐに向かう!」
慎二からの無線を聞いた光太郎は頷くと、後方でライドロンの影に隠れていた凛とガロニアに向けて大声で報告した。
「慎二君が崖の向こうで建物を発見した!桜ちゃんが幽閉されている可能性がある!!俺達は先に向かうから、ここで待っていてくれッ!」
「わかったわ、何かあったらすぐ知らせて頂戴ッ!!」
凛の言葉に頷いた光太郎はアクロバッターに搭乗し、もう怪人達が現れる事のなくなった坂道を駆けていく。その姿を見送った凛は隣で今も息を切らせているガロニアがライドロンに乗り込もうとする姿に思わず声を荒げて待ったをかけた。
「ちょっと、そんな身体でどうするつもりッ!?」
「止めないで…くださいまし。この先に桜さんがいるのなら、ワタクシは…」
「そんな身体で何ができるの?あなた、さっき時空の穴を開けるのに力を使い過ぎたんじゃ…?」
「それ、は…」
凛に手を掴まれたガロニアは光太郎達の向かった宮殿へと向かおうとしたが凛の指摘を否定できず、目を逸らしてしまう。さらにそれの裏付けをしたのが、センサーを向けたライドロンによる解析だった。
『バイタルチェック完了…ガロニア、君ハ凛ノ言ウ通リ体力モ著シク消耗シテイル。回復スルマデ動カナイ方ガイイ』
「そんな…」
「ほら、待ちましょう。その変わり、あの連中がしくじったら私達の出番なんだからねッ!」
凛の励ましに、ガロニアはクスリと微笑んで頷くと、彼女に導かれるままライドロンのシートに腰をおろし、ゆっくりと息を整えていく。
しかし凛はガロニアを留める為に使った言葉が、まさか現実になるとはこの時、夢にも思わなかった。
「こいつはとんだ歓迎だな…」
ついに宮殿が見える位置までに接近した光太郎を待ち構えていたのは、怪魔界で量産されていたサイボーグ怪人の大軍だった。
アーチャーや武と戦ったサイボーグサイ怪人にサイボーグシカ怪人…さらにはどこから出現したのか、周囲にサイボーグタカ怪人の大群を従えた空中母艦まで現れている。
だが、ここまで戦力を上げて警戒をしているということは、その先にマリバロンが連れていたという人物が…桜がいる可能性が高い。ならば、こちらも出し惜しみをする必要はない!
「ロードセクターッ!!」
『了解、ソーラーチャージシステム作動。エネルギーを照射します』
慎二を乗せて飛行するロードセクターは機体後部から小型のパラボラアンテナを出現させ、地上の光太郎へと向けると赤いエネルギーを照射。
左手をベルトに添えた構え、右手を天に翳した構えを取った光太郎にエネルギーが降り注ぎ、キングストーンが更なる輝きを放ったそこに現れたのは光の戦士。
仮面ライダーBLACK RXへと姿を変えた光太郎はさらに拳を力強く握ると眼前で腕を交差し、同時に振り下ろすとベルト『サンライザー』が幾つもの歯車を宿したベルトへと変化し、歯車の回転と伴い橙色の閃光が光太郎の全身を包みこんでいく。
「俺は悲しみの王子、RXッ!!ロボライダーッ!!!」
光太郎が名乗ると同時に攻撃を開始したサイボーグ怪人達の容赦ない砲撃が降り注ぐが、光太郎はものともせず、関節からモーターの駆動音を響かせながら前進し、その手に光のエネルギーを結晶化させ、リボルケインを変形させたレーザー銃を握ると、前方から迫る怪人達へと狙いを定めた。
「ボルテックシューターッ!!」
自身の重量故にRX時のスピードを殺してしまった変わりにどのような攻撃も通用しない重装甲となったロボライダーには、サイボーグ怪人達の放つ銃火器は一切通用せず、敵陣へと歩みながら放たれるボルテックシューターの閃光はサイボーグ怪人を貫いた途端に爆発を起こす。
地上で待ち伏せていたサイボーグ怪人の陣に光太郎がたどり着く頃にはその数は半分にも満たず、接近戦を挑んでも光太郎が腕を振るうだけでサイボーグ怪人はその身が2つに分かれ、蹴りを受ければ数十メートル先まで吹き飛ばし、原型を止めていない状態で落下していた。
「…っ」
ここで初めて光太郎の動きが止まる。身体自体にはダメージはないが、光太郎の捉えられないスピードで次々と攻撃を繰り出すサイボーグヒョウ怪人の群れが現れ、攻撃をぶつけては距離を置く戦法へと変更したのだ。
光太郎のセンサーで位置は把握し、無限の射程を持つボルテックシューターで狙いを定められたとしても、1体ずつしか照準は絞れない。
「ならば、こちらも相手に負けない速さで追いかければいいだけの話だ。アクロバッターッ!!」
主の言葉に従い、光太郎の前で停車したアクロバッターのグリップを光太郎が握った瞬間、変化が起こる。
光太郎の手首にあるアンクルリストから流れるエネルギーがアクロバッターの全身を包み、バッタの意匠を受ける姿から、白を基調としたロボライダー専用バイク『ロボイザー』へと姿を変えた。
ロボイザーへと搭乗し、急発進する光太郎を追って数十体のサイボーグヒョウ怪人も追跡を開始する。その間にも他のサイボーグ怪人達は銃火器で攻撃を仕掛けてくるが、光太郎は正面を向いたままボルテックシューターを握る左手を後方…怪人達に向けて次々と発射。その弾道は全て怪人の動力部を射抜き、機能停止へと追い込んでいた。
疾走するロボイザーと光太郎を追跡するサイボーグヒョウ怪人達が一定の距離となった時、ロボイザーの音声が光太郎へ指示を送る。
『射程距離内。撃ツナラ今ダ!」
「分かったッ!!」
光太郎は右グリップに備え付けられたボタンを押し込み、ロボイザーのマフラー部に備え付けられたロケット砲が火を噴き、サイボーグヒョウ怪人の脚部へ次々と命中。
敵の動きが止まったと同時に急ブレーキをかけ、ロボイザーをドリフトさせながらボルテックシューターからエネルギー弾を立て続けに連射する。その全てがサイボーグヒョウ怪人の胸を貫き、巨大な爆発の中に怪人達は飲まれていった。
だが、まだ敵の攻撃は止まらない。
光太郎とロボイザーのいる地上へ爆弾を投下するサイボーグタカ怪人。そして小型空母からは新手のサイボーグ怪人が出撃する準備を整えている。
ボルテックシューターで怪人1体を撃ち落とすことは容易いが、これではジリ貧となると考えた矢先、光太郎とロボイザーの付近に今まで慎二を乗せて飛行していたロードクターが着地し、バイクモードへと変形した。
『お困りのようですね、マスター』
「ああ、どうにかまとめて倒せる方法があれば…」
『では、試してみましょう』
突然の発言に光太郎と慎二は再度驚く間もなく、その合成音声を響かせた。
『モードBへ移行。変形を開始します』
後部のブースターで浮遊するロードセクターから飛び降りた慎二はまだ隠し玉を持っていた事に文句を言いたかったが、ロードセクターの変形に目を奪われ、声を発することを忘れてしまう。
前輪と後輪を内部へと収納後、ジェット機のノズルを思わせるヘッド部が上へとスライドし、巨大な銃身がせり出した。
機体後部に銃を銃口を挿入するような接続部が出現し、変形が完了。
巨大は砲塔となったロードセクターは唖然とする光太郎の前方へと移動し、空中で固定すると自身の説明を開始した。
『バスターモード。マスターが今の姿へと進化したように、私も合わせて自身を変化させてみました』
「みましたってお前…」
という事はこの形態は今さっき完成したということなのか…?
慎二の疑問は積るばかりだが、今は空を飛ぶ敵の殲滅させることが先だろう。
「よし、頼むぞロードセクター!」
手にしたボルテックシューターの銃身をロードセクターに接続し、完全にリンクしたロードセクターはバーニアから火を吹かし、光太郎が狙う敵陣に向け、その巨大な銃口を向ける。
敵の動きに勘付いたのか、爆弾の降下を止めたサイボーグ怪人達は光太郎を直接叩く為に槍やかぎ爪を持って急降下するが、既に遅い。
ボルテックシューターと接続された時点で光太郎のエネルギーを取り込んだロードセクターは既にフルチャージ状態だ。
「いけぇッ!!ハードブラスターッ!!」
光太郎が叫びと共にロードセクターが放たれたエネルギーの束は、接近したサイボーグ怪人を一瞬で蒸発させた。
そして収まることを知らない攻撃を放ち続けながら光太郎は手にしたボルテックシューターごとロードセクターの銃身を敵の空母へと向ける。
地上から天に伸びる光の柱は追いかけるように逃げ続ける怪人を次々と飲み込み、ついには敵の空母までがエネルギーに叩き付けられ、大爆発が起きる。
ロードセクターが放ったエネルギーを収めたその時には、光太郎達を狙う者は空には存在していなかった。
「なんというか…すごいの一言だったな」
『そうでしょう?もっと褒めて下さい』
『ロードセクター…君トイウ奴ハ…』
RXへと戻った光太郎は今し方起きた事にそんな感想しか漏らす事が出来ない所へ図々しく悪乗りをするロードセクターの発言に、アクロバッターは呆れるしかなかった。
「まぁ色々言いたい事はあるだろうけど…まずはあちらさんの苦情を聞くとしようよ」
慎二の言葉に視線を宮殿へと向けた光太郎の視界に入ったのは、数人のチャップを率いたマリバロン。
そして彼女の後方に立つ見覚えがないはずなのに、知っている人物が佇んでいた。
「桜、ちゃん…?」
「知らんな。そんな名前」
純白のドレスを纏い、紫色の髪を靡かせる女性は黒く冷たい瞳に光太郎の姿を映して、冷たく言い放った。
「私の名はガロニア。偉大なるクライシス皇帝の娘にして、地球の新たなる支配者だ」
と、いう訳で予言されてしまっていましたが新たな力のお披露目のローセクさんがドヤ顔(?)するお話でした。
そして久々の光太郎無双がちょっと楽しかったです。
お気軽に感想など書いて頂ければ幸いです!