Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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今朝見て参りました劇場版ウルトラマンX

いやぁ、まさに『ウルトラマン』たる映画でございました。機会があればまた行きたい!


…それが原因で短くなったわけではない、と言い訳をしといて、42話の投下です。


第42話

クライシス帝国によって誘拐された間桐桜の居場所が怪魔界と判明し、救出する為に準備を進めていく間桐光太郎はライドロンに搭載されたディメンション・ダイブ・システムを使用し、怪魔界へと転移する計画を立てる。

 

 

だが怪魔界では太陽の光が差すことがなくRXへの変身は不可能であるという大きなハンデに不安を覚える慎二達だったが、そこに改修され、新たな力を秘めたロードセクターが帰還。

 

 

その名はロードセクター・ネオ。

 

 

ライドロンと同等の速度に至り、転移に追走できるだけでなく、太陽光がなくとも光太郎をRXへ変身させるソーラーチャージシステムを備えられたことで光太郎の戦闘時間を大幅に広げる事が可能となった。

 

 

ロードセクターの強化改造に立ち会った衛宮士郎にガロニアは必ず桜を連れ戻すと宣言するが、同じく改造に携わっていたアーチャーと慎二に止められてしまう。

 

 

クライシス皇帝の娘であるガロニアが光太郎達と同行した場合、怪魔界での活動に支障が出る。それ以上に桜へ危険が及ぶという理由を聞き、何も言えない彼女を地球に残って守ると名乗りでたのは未だ光太郎との間に不和を残すメデューサだった。

 

 

翌日の明朝、出発の準備を整えた光太郎達の前に星騎士ジュピトルスによって召喚された怪人軍団が出現。ライドロンに搭乗していた赤上武は怪人達と戦闘を始めたメデューサ、メディアの助太刀する為に残ると飛び出してしまう。

 

 

戦闘が激化する中、ライドロンとロードセクターを発進させた慎二と光太郎は仲間達の無事を信じて怪魔界へと突入する。

 

 

出発する以前にライドロンへと隠れていたガロニアと遠坂凛を連れて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや…」

 

クライス要塞の一室にあるモニターを見て、ジュピトルスは拍子抜けとばかりに呟いた。諜報部にあった情報を盗み聞きしたボスガンの進言通り、間桐光太郎達が何かを企て、いざというところを一網打尽にする作戦だったが、どうやら敵の動きの方が早かったようだ。

 

光太郎達が乗った機会共が揃ってあの場から消えたのは、恐らくどこかへ転移する実験だったのだろう。行き先は気になるが、今はどうでもいい。新たに間桐光太郎を苦しめる方法を思いついたのだから。

 

 

「やはり紛い物ではなく、本物を殺せなくてはねぇ…」

 

 

三日月の如く口を吊り上げて笑うジュピトルスは光太郎を送り出すために、現れた異界の怪人と戦い続ける赤上 武、メデューサ、メディアへと映像を固定する。

 

間桐桜は新たなガロニア姫に仕立て上げるが為にクローンを作る手間があったが今度はそうはいかない。いや、『加減』する理由がないのだ。一度ならず二度も自分の立てた策を破った光太郎には相応の罰を与えなければなるまい。

 

身勝手な都合に浸るジュピトルスは尚も抵抗を続けている武達をどのような方法で処刑し、どの部位を光太郎の前で晒してやろうかと悩む中、血相を変えて部屋に飛び込んできたボスガンによって中断されてしまう。

 

 

「た、大変ですぞジュピトルス殿ッ!」

 

「ボスガン、私は今この画面に映る者達の身体を使いどのようなオブジェを築き上げるかイメージを固めているのです。静粛に」

 

「そんな事を言っている場合ではない!RXが、あの間桐光太郎が怪魔界へと現れたのですぞ!」

 

「なんと!」

 

 

ボスガンの報告を聞き、ジュピトルスの出目金のような目が驚きに染まるが数刻前に姿を消した光太郎達の行動を見て逆に合点がいく。成程と指で顎をなぞるジュピトルスの表情は再び凍りつくような微笑みを浮かべていた。

 

 

「つまり…今度は邪魔が入ることなく間桐光太郎の仲間を殺せるということですね?」

 

「は?」

 

「これは絶好の機会です!さぁ、次はどの世界から怪人を呼びましょうかねぇ…!」

 

 

手に取った悲鳴を上げるような人の顔が表紙となっている本を捲るジュピトルスの目は玩具を与えられたばかりの子供のように爛々と輝いている。どのような悲痛の声が聴けるか見物ですと呟くその姿は、怪魔界でかつてその名を轟かせた戦士の面影はまるで見られない。

 

ましてや、自分の生まれた世界である怪魔界にクライシス帝国に取って最大の敵が乗り込んだと言うのにまるで興味を示さない星騎士を見て、ボスガンは自分はとんでもない人物を取り入れようとしているのではないのかと、余りにも遅すぎる後悔をする羽目になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂塵と岩のみが自己主張している世界。

 

始めて異世界へと踏み込んだ遠坂凛の感想はそれだけだった。

 

 

本来なら自分の住む世界とは別の場所に訪れた事に対し彼女の相棒が面白がる反応を示すのだが、彼女にはそんな余裕はない。今回の目的…実妹である間桐桜の救出が唯一の目的である凛に取っては場所がどこであろうが既に関係ない。妹を助ける。凜にはそれだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ってなんでいきなりこんな強風に晒されなきゃいけないのよぉッ!?」

 

 

「気取って岩の上に立って遠い目してなきゃもっと早く気づけたろうけどね。ほらさっさとこれ被っとけ」

 

 

 

雰囲気をぶち壊した突然の突風に不満をぶつけながら髪とスカートを手で押さえる凛へ大きな布を手渡し、全身を包むように促した慎二はライドロンの中で俯いているガロニアへと目を向けた。

 

 

 

怪魔界へと到着後、改めて付いてきた理由はやはり桜を危険な目に合わせてしまった罪悪感からだった。慎二とアーチャーに言われてもなお桜を助けたいと願うガロニアは寝静まった時間を見計らい、ライドロンへと頼み込んだと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いします。ワタクシを、連れて行って下さいませ!」

 

『…ソレハ出来ナイ。ワタシモ慎二ト同ジ意見ダ。ココデ待ッテイテクレ』

 

「それは十分に分かっていますわ。慎二様とアーチャー様の言葉はきっと正しい。そして間違っているのはワタクシという事も」

 

『ナラバ…』

 

「ですが、それでも助けたい。桜さんを本来いるべき場所へと戻すための手伝いがしたいのです!」

 

 

ライドロンの前で膝を付き、祈るように手を握る少女は目には涙が浮かんでいた。身勝手な願いであることも十分に理解しているし、自分を乗せるという事はライドロンの主である光太郎達の意向に反するということも。

 

それでも彼女は懇願し続ける。自分の我が儘を発端に起きてしまった事件を収める為に。

 

 

 

「けど、貴女1人が背負う必要もないわよ」

 

「え…?」

 

 

ドサリとボストンバックを床に下ろした少女はガロニアと視線を合わせるように膝を付くと、彼女の目元をそっと拭う。突然現れた存在にガロニアは名を呼びながら何故、この場に現れたのかを尋ねた。

 

 

「凛様…なぜ?」

 

「貴女と一緒よ」

 

 

ガロニアの頭を優しく撫でた凛はライドロンへと歩み寄り、車体にゆっくりと触れる。

 

 

「私からもお願い。桜を…私に妹を助けさせて」

 

「凛様…」

 

「生まれたばかりの貴方が、光太郎さんやロードセクターを助けに行ったように、私も力になりたいの」

 

 

『……………………………」

 

 

 

 

祈るように囁きかけた凛の願いを受け止めたか、ライドロンはしばし沈黙続けた後、ドアを解放。人間であったのなら、深いため息をついていただろう言葉を続けた。

 

 

 

『…光太郎達ニハ後デ私カラ説明シヨウ』

 

 

「ライドロン様…!」

 

 

感極まり口元を抑えるガロニアの方へと顔を向けた凛は優しく微笑んだ。そして、彼女達に味方してくれたのは、ライドロンだけでは無いらしい。

 

 

『ライドロンダケデナク、私モ一緒ニ怒ラレルトシヨウ』

 

『ならば、この場を見過ごそうとしている私も同罪でしょう』

 

 

事の一部始終を見守っていたアクロバッターとロードセクター・ネオは揃って凛とガロニアの前まで移動すると、そんな電子音を響かせる。彼等は本当に機械なのだろうかと疑いたくなる凛ではあるが、この場の空気を壊すような発言をするほど間抜けではない。

 

いや、むしろ感謝しなければならない。主の意に背いてまで、自分達の希望を叶えてくれたのだから。

 

 

『桜の為ですから。間桐家ではない貴女の為ではありません』

 

『ロードセクター、君ハ修理中ニ何ノデータヲダウンロードシタノダ?』

 

 

 

叫んで問いただしたい気持ちを必死に抑え、凛はガロニアと共にライドロンの後部スペースに隠れ、夜を明かすことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁん、ロードセクターまた随分と勉強したんだな」

 

「ちょっと、話を聞いといて気になるのはそこなの?」

 

 

風がより強さを増した為ライドロンの操縦席へと戻った慎二は凛からの説明を受けてそんな感想を漏らした。ジト目で睨む同級生の視線などお構いなく、後部座席で眠っているガロニアへと目を向ける。

 

 

怪魔界へと到着するまでの間に小さい欠伸を繰り返していたガロニアは目的地へ到着後、直に眠りについてしまった。昨晩からライドロンに凛と乗り込んだまではいいものの、緊張の余り眠れなかったのだろう。静かな寝息を立てる少女の顔は、やはり自分の義妹とよく似ている。

 

正面を向いて、先ほどよりは風の勢いが下がったかと砂漠を見つめる慎二はふと気になったことを凛に尋ねた。冬木の管理人を強く自負している遠坂の人間が、立場に構わず別世界にこれたものだなと…

 

 

 

 

「それ、聞いちゃうの…?」

 

 

先程まであった凛々しい顔はどこへやら。ゲンナリと周囲に負のオーラを纏った凛だが、どうやらライドロンの前に辿りつく前に相方であるアーチャーとひと悶着あったらしい。

 

 

事の詳細を話すと時間が…と言っていたので簡略に経緯の説明を聞くと、こういうことらしい…

 

 

 

 

 

 

 

 

自分も怪魔界へと向かうと言い出した凛にアーチャーは猛反対。危険過ぎる、君はこの街の管理人としての自覚はあるのか云々に反論すること数時間。互いに譲らぬまま平行線のまま収拾がつかず夜になった頃だ。

 

もう桜を見捨てたくないという凛の主張にアーチャーは深く、それもワザとらしく溜息を付くと振り返り、好きにしたまえとキッチンに向かってしまった。

 

折れた振りをしてくれたであろうアーチャーの背中を目で追うが、今以上の言葉をかけてくれないだろうと準備に取り掛かる為に自室へ向かおうとした凛の耳に、背を向けたままの弓兵の声が届く。

 

 

 

 

 

『約束してくれ。必ず生きてここに戻るとな』

 

 

『その代わり、君の帰る場所は私が必ず守ろう』

 

 

 

 

 

 

そしてライドロン達マシンが眠っている倉庫への侵入口を聞いた凛は荷物を持ってガロニアと合流したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい御馳走様」

 

 

「なんでそんな感想が出てくるのよッ!?」

 

 

 

だって途中から顔を赤らめて話すんだもんこの乙女。こんな所に来てまで惚気はやめて下さい、とは死んでも口には出さない。言った瞬間に彼女はきっと満面な笑みを浮かべてあの手この手で慎二への報復に躍起になるだろうと踏んだ慎二は強引に話題をすり替えた。

 

 

 

 

「そういや光太郎の戻り遅いな?」

 

「ああ、そう言えば行っておきたい場所があるって聞いたけど、怪魔界に知り合いでもいるの?」

 

「…ま、同じようなも―――遠坂」

 

「ええ、見えたわ」

 

 

すり替え成功と内心でガッツポーズを取ろうとした慎二だったがその話すら遮って予め準備だけは済ませておいた武器を手に取る。

 

 

とうに風は止んでおり、それを見計らったかのように人影が次々と姿を現し、自分達の元へ近づいて来る。

 

 

慎二は急ぎ無線機のスイッチへ手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「掘り起こすのも無理、か」

 

 

光太郎はライドロンから数百メートル離れた岩石地帯へと足を運んでいた。そこは、過去に一度怪魔界へ迷い込んでしまった際に自分とメディアを匿ってくれたクライシス人の科学者が隠れ家として利用していた場所だった。

 

 

(ワールド博士。貴方が俺に託してくれた武君は元気です。そしてライドロンは、無事完成しました。俺達の心強い仲間です)

 

 

怪魔獣人ガイナギスカンとの戦いで勝利したのもつかの間。光太郎の存在を聞き付けて現れたクライシスの大軍から自分達を逃がす為に地球への転送装置を起動させ、後を追わせない為に装置を破壊したワールドは隠れ家と運命を共にした。

 

爆発の中で、光太郎達の無事を信じて。

 

 

(…博士の言葉は、決して忘れません。ですが、今は家族を取り戻す事を優先させることを許してください)

 

 

光太郎は中でも新しく爆発後の目立つ大岩…その地下にワールドの隠れ家が合ったであろう場所の前でしゃがみ、両手を合わせると今は地球と、そして怪魔界を救う以前に私情を優先させてしまっていることを詫びた。

 

 

ワールドを始めとした多くのクライシス人がかつて愛した怪魔界を取り戻すことも、光太郎の戦いの一つなのだ。

 

 

今だけは自分の家族の為に動いてしまっている光太郎に、ワールドが別れ際に言った言葉が突如として浮き上がった。

 

 

 

 

 

『星総べる王、世界の命運を止める』

 

 

 

 

 

「あれは、どういう意味だったんだ…?」

 

 

立ち上がった光太郎は、ワールドの言った言葉に妙な違和感を覚えた。いや、今まで何故気にもしなかった言葉が今ではとてつもなく不安にさせるのだろうかと必死に意味を探り始めている。

 

 

 

 

「星総べる王…単純に、今俺がいる怪魔界を統率しているクライシスの親玉だと思ったけど…何なんだこの違和感は?」

 

 

顎に手を当て、ワールドの言う星に残る言い伝えにどうしてここまで拘ってしまうのか。その起因は、ここ数日で光太郎に接触を図った新たな敵の出現だった。

 

 

 

火星のアルス

 

 

木星のジュピトルス

 

 

 

皆、その名に星の名を称した戦士だ。

 

 

まるで結びつくかのように姿を現した敵の存在が、光太郎の疑問をさらに深刻化させる。

 

 

 

「もしかして、星総べるというのは…」

 

 

だが光太郎の推測は付近に止めてあったロードセクターの無線によってかき消されてしまった。

 

 

「慎二君、何かあった?」

 

『悪いけど急いで戻ってもらえる?よく分からない連中が迫ってきてるんだよ』

 

「分かった、直に戻る!」

 

 

ヘルメットを装着した光太郎は一度隠れ家のあった場所へと目を向けると、すぐに振り向き、ロードセクターを疾走させた。

 

 

 




こちらとは関係ないのですが、前作がUA160,000突破、お気に入りが790を突破しておりました。こちらでもお気に入り登録して頂いている方々、ありがとうございます!

800突破したら記念の番外編作ろうかしら…?


活動報告に書けばいいこと言って、この辺で!


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