Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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さて、春映画は45周年記念作品…らしいですね。様々な噂や憶測が飛び交う中、1号がフューチャーされるということでまた藤岡さんが来てくれる!?という淡い期待をしております。
でも個人的にはウルトラマンの映画の方がドキドキしていたり。あの予告は反則です…


では、30話となります!


第30話

それは月影信彦と筑波洋が接触する2日前のことだった。

 

 

 

 

洋は休暇中にフィンランドのある地方に建つ城…今では孤児院となっているその場所を訪れ、友人であるフレイアと共に多くの子供たちと楽しいひと時を過ごしていた。一息入れようと子供達が遊んでいる庭から孤児院の周りは勿論その地域全体の景色が見渡せる一室へと移動し、フレイアがお茶を入れてくると席を外した直後、洋が所持していた携帯電話に着信が入る。

表示される名前を見て、短い休みが終わりを告げたと確信した洋は携帯電話を耳へと当てるのであった。

 

 

 

 

 

「日本にゴルゴムの残党が向かっている…?」

 

『ああそうだ。統率もとれてない連中がこぞって日本のある一カ所に集まっていやがるらしい』

 

 

通話相手から齎された情報に洋は眉をしかめる。数ヶ月前の戦いで支配者である創世王を失ったゴルゴムの怪人達はその統率が一気に崩れ、世界各国の支部を取り仕切っていた幹部怪人も洋達によって倒されている。組織再編を目論んではいるものの、元となった生物の本能に近い動きしかできないゴルゴム怪人には他の個体を統率する程の知能は持ち合わせていない。

しかし、その怪人達が集める者が日本におり、再び世界征服を企むのならば放っておくことは出来ない

 

 

『俺や他の奴らも最近組織の施設を狙っている連中の足を追って身動きが取れない。…休み中に悪いとは思うが」

「いえ、前に先輩だってガモン共和国にいる子供達へ会いに向かう途中で戦いに向かったんですから。俺1人だけ我が儘言う訳にいきませんよ」

『…すまねぇな。けど、別れのキスの一つするぐらいならバチは当たらないぜ?』

「ちょ、先輩!?俺とフレイアさんはそんなんじゃ…!」

『ハハハ…っておい、うるせぇがんがんなんちゃらッ!?冗談に決まって―――』

 

携帯電話の向こうで友人が騒がしくなる前に携帯電話の通話ボタンを切った洋はふう…と息を漏らして振り返ると、部屋の入り口に手に紅茶を乗せたトレイを持った金髪の女性…フレイアが何時の間にが戻っており、その美しい碧眼は悲しみに満ちていた。

 

 

「…聞こえていた、みたいだね」

「また、始まったんですね。戦いが…」

「…………………」

 

質問に無言で頷く洋を見たフレイアはトレイをそっとテーブルに乗せ、洋の横を抜けるとガラス戸をそっと開き、テラスへと出る。風が彼女の髪をそっと揺らす様子を見て、洋はフレイアの名を呼んだ。

 

「フレイアさん…?」

「わかってる。私や庭で遊んでいる子供たちがこうして平穏に暮らせるのも、洋さん達が戦って勝ちえたからこそだって。そして、その為にまた戦いに行ってしまうという事も…」

 

だけど、と振り返ったフレイアは先ほど見せた悲しい目…目の前に立つ青年が再び戦いの渦中へ再び身を投じ、傷ついてしまうという隠しきれない不安を拭うため、笑顔を洋に向ける。

 

「信じています。またこうして私達に元気な姿で会いに来てくれるって!」

 

目元に涙の跡を残しながらも微笑みを向けてくれるフレイアに応えるように、洋もまた笑顔で頷いた。

 

 

自分を信じてくれる彼女の笑顔が無理矢理作ったものではなく、本物のでいられるように…

 

 

 

 

 

そしてフレイアの元を離れた洋は急ぎ日本へと渡り、怪人が集結しているとされる場所…三咲町へと到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

信彦は警戒を怠ることなく目の前の人物を睨み続けている。信彦が到着したその時、倒れていたアルクェイド・ブリュンスタッドに手を伸ばそうとした怪人達に向け、手にまとった緑色の雷をぶつけようと力を込める寸前に、彼は空から舞い降りた。

 

一撃を持ってゴルゴム怪人を倒したその戦士は、記録によれば彼は宿敵である間桐光太郎よりも前に仮面ライダーとして改造され、戦い続けていた存在。ゴルゴムと同じく世界征服を目論む組織と対立し、そして壊滅させた後は身を忍ばせ、次々と現れる世界を狙う組織と戦い続けているという。

 

彼等が新たにその姿を現したのは数か月前…ゴルゴムが世界征服を宣言すると共に世界各地で潜伏していたゴルゴム怪人が一斉蜂起した際に最後まで人間を守る為に抵抗を続けていた。

 

 

 

この時の信彦は知らないが、創世王の横槍により、自分の手で死んでしまった宿敵が甦る寸前に激を飛ばした先輩の1人でもある。

 

 

 

 

そのような文字通り正義の戦士である彼が自分を…ゴルゴムを束ねていた世紀王を見逃すはずがない。例え過去の出来事であっても。

 

自分の手によって怪人1体を倒したとはいえ、今の状況で信彦がアルクェイドを襲えと指示したという内容が一番わかりやすい構図だ。

 

…つい先日ならば、倒されても構わないという考えだったが今は眠っている反英霊の言葉を受けてから思い止め始めた信彦は自分でも気が付かぬままこの場をどう乗り切るか考え始めていたが…

 

 

「さて、落ち着いて話せる場所はあるかな?」

「…………?」

 

変身を解除した洋は身構えている信彦とは異なり、まるで攻撃をする気配を出さず、むしろ気軽に話しかけている。続いて困ったような笑みを作る洋が指差す方へと振る変える信彦が目にしたのは、自分達が到着する寸前までアルクェイドが死徒やゴルゴム相手に繰り広げた戦いによって生じた痛々しい傷痕。

 

資材は燃え尽き、アスファルトは獣の爪によって切り裂かれたように捲り上がっている。

 

遅かれ早かれ人間が寄ってくれば確かに面倒なことになりそうだ。

 

 

「…ついて来い」

「助かるよ」

 

 

信彦はまだ警戒を解かない。何の目的があって自分の前に現れたのかはっきりするまでは、アルクェイドを優しく抱き上げる戦士に気を許す訳にはいかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか仮面ライダーが姿を現すとは…」

 

 

2人の接触を別の場所から浮遊する水晶玉を通して見つめるその存在は異質だった。

 

 

全身を白いローブで包み、素顔に影が差すまで深くかぶったフードによって表情は伺えない。

 

 

だが、水晶に映る信彦を見る目は血走り、彼を憎悪する声と共に吐き出された。

 

 

 

「…世紀王の面汚しめッ!!よくも我が怪人を…」

「なるほど、そいつがお前達の狙いということか…」

 

ローブを纏った人物の背後に立つ別の人物はそう言うと既に空となった缶コーヒーの指先で撫でながら横目で同じ水晶玉を見つめる。今度は信彦から洋の手で抱きかかえられ、意識を失っている真祖の姫の姿があった。

 

 

「…安心しろ。我らの命を救った代わりに、貴殿の望みを果たす。真祖を目の前に差し出して見せよう」

「俺としてもお前達のような人でない者の魂に触れるという貴重な体験が出来た。それだけでも充分なのだが、な」

 

片目を瞑り、再度水晶玉を見た男はコートを羽織ると離れていく。

 

「期待はしないで待っていよう。俺には俺の準備があるからな」

 

 

男が完全にその場から離れたことを確認した人物は口元を吊り上げ、見下すように笑う。

 

「…フンッ。自分の脅威となる者と知らずに我らに身体を与えるとは、やはり元は人間。愚かな者だ」

 

 

水晶玉を消滅させ、男とは逆の方向へと歩み始める。

 

 

「復活の祝いだ…挨拶の一つでもせねばな…」

 

 

その背後には、不気味な産声を上げる、今までのゴルゴム怪人とは異なる存在を引き連れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…」

 

今度は夢を見ることなく目を覚ましたアルクェイドは自分が別の場所で目を覚ましたことに気付く。場所はアルクェイドが志貴と待ち合わせによく利用する公園にある砂場近くに設置されたベンチの上だ。

 

 

(私、確か…って、これは?)

 

ゆっくりと身体を起こすと、自分の身体の下にはどかで調達してきただろう段ボールが敷かれており、さらには寝ていた上から黒いコートがかかっていたらしい。それにこのコートには見覚えがある。

 

 

「……………………………」

 

 

持ち主の顔が浮かんだ途端にコートを払いのけ、壁を伝って立ち上がったアルクェイドは歩いて移動するくらいまで体力が回復していた。ならば長居は無用と立ち去ろうとするが突然耳に響いた会話を聞き、植栽の陰へと隠れる。悟られぬようそっと覗いてみると、自分が嫌悪する世紀王ともう一人…見覚えのない青年が立っていた。

 

(いけない…!)

 

今の自分が人間を見るだけで再び底のない吸血衝動に駆られてしまうと身体を急ぎ屈めるが、何時までたってもあの青年を襲い、血を吸おうとする衝動が湧きおこらない。

 

何で…と疑問を抱くが直後にその答えは理解出来た。

 

吸血鬼である彼女は欲するのは人間の血液であり、それが近くにあれば嫌でも彼女は強い欲求が生じてしまう。

 

だが彼女の瞳に映る2人の人物。元より嫌っている世紀王の血などとっくに人のそれとは別のモノに変わってしまっている為、吸血衝動は湧いてこない。

 

そして同じく衝動が起きないということは、彼もまた…人間ではない。

 

 

 

 

 

 

「ゴルゴムの怪人が、この町に?」

「ああ。理由は分からないがここを中心として集まっているという話だ」

 

この公園に到着し、アルクェイドを寝かせた後に街へ来た理由を問うた信彦は、すらすらと目的を話す洋の様子を見て恐らく嘘はないと判断した。何かを誤魔化そうとするような話方もないのも勿論だが、彼と話す姿を見て他の誰かと重ねてしまったのかもしれない。

 

馬鹿正直に戦いを止めようと訴えかけてきた愚かで何処までも優しい宿敵の姿に。

 

 

「…では、俺が狙いではないのか?」

「なんで、そう考えるんだい?」

「…俺はゴルゴムの世紀王だ。俺が奴らを集め、再び世界を滅ぼそうとする事が、一番納得のする結論だろう?」

 

先程浮かんだ考えを口にする信彦の考えに、木陰にいるアルクェイドはその通りではないのかと驚くが、それ以上に驚いた洋が成程と手を叩く様子に思わず首を傾げてしまう。

 

「ああ、そういう考えもあるよな!」

「…ふざけているのか?」

 

こちらとしては相手が同じ考えであれば今すぐにでも敵対しなければならないと神経過敏であるのに、青年は笑顔を崩さない。それに、隠れているつもりであろうあの真祖もどこかあきれた様子だが、それによって彼女の気配を察知したようだ。

 

 

「あ、気が付いたんだね。身体の調子はどうだい?」

 

信彦へと同様に笑顔を向ける洋に気を許さず、ジリジリと距離を詰めるアルクェイドの眼は、信彦へと向けているものと同様にまるで気を許していない。

 

 

「どういうつもり…?」

 

 

自分を助けた戦士が、信彦と同じように自分へ笑顔を向けている青年が変身した姿であると察したアルクェイドは理解できない故に尋ねる。

 

彼のおかげで自分は命拾いしたのは確かだ。だが、何の理由もなく自分を助けるはずがない。そんな存在など、彼以外―――自分と契約した志貴以外にいるはずがない。

 

だというのに、目の前の青年はアルクェイドの考えをあっさりと覆した。

 

 

「君が危なかったから…それだけだよ」

「なに、それ…?」

 

 

意味が分からなかった。

 

 

人間同士なら同じ種族だからと、納得が出来る。しかし、自分は違う。

 

 

アルクェイドは吸血鬼であり、真祖だ。人間を同じ吸血鬼に変え、自分の吸血衝動に負けていずれは自分でも制御できない怪物へと堕ちる存在。

 

 

だた人間と同じ形をしているだけの、中身は化け物だ。きっとこの青年はそれを分かっていない。だから、教えなければならない。

 

 

アルクェイドは手を差し向け、白く細い指を禍々しく鋭い爪へと変貌させ、赤い瞳を金色に染めて洋へと見せつける。

 

しかし、彼の表情は、変わらない。

 

 

 

 

「どぉ、これでも危なかったからって言える?私は、違う。彼方が助けたのは、人間じゃないのッ!!!」

 

「………………………」

 

「彼方に助けられるような生き物じゃない。人間といるなんて、そんな資格…持って、いないの…」

 

 

自分に事実を突き付けた埋葬機関と同じ言葉を口にしたアルクェイドは、自分が涙目になっているとも自覚なく語り続けた。

 

 

「きっと、近いうちに…ううん、もう既に限界なんてとっくに迎えてる。私は志貴達を…人間を本能のまま貪り殺すわ!だから…」

 

 

あのまま、殺されても良かった。

 

 

かつて信彦が抱いた同じ言葉と、アルクェイドの言った『資格』が信彦の胸に突き刺さる。

 

 

確かに彼女や、自分のような存在が人間の中で生きていくなど、到底不可能だ。自分達の未来はただ一つ。孤独に消えるしかないのだと。

 

 

 

 

 

だが、洋は2人の考えを否定した。

 

 

 

 

 

 

 

「資格なら、あるよ」

「…ッ!?」

 

 

俯いていたアルクェイドはいつの間にか洋が自分の前に立ち、伸ばした爪に触れていることにようやく気が付いた。自分に悟られず近づき、手に触れたことよりも、アルクェイドは洋の言葉に唖然とする。

 

 

資格がある?

 

 

この男は自分の話を聞いていたのだろうか?なぜそう簡単に自分の言葉を覆そうとするのか?

 

 

洋は放心状態にあるアルクェイドに続けて述べていく。変わらず、笑顔のまま。

 

 

 

 

 

 

 

「確かに君は人ではない。多くの人間は、この爪を見て、その瞳で見られて恐怖を抱くかもしれない。けど―――」

 

 

 

 

「君がそのように言えるのは、君が誰かを思える気持ちを持っているからこそだ」

 

 

 

 

「その気持ちがあるなら…いや、その気持ちだけを持つだけで、資格なんて十分だよ」

 

 

 

 

「君は…誰かと共にいられる資格は…ある」

 

 

 

 

はっきりと告げられた言葉に、アルクェイドへ衝撃が走る。

 

 

いつの間にか、洋が触れていたアルクェイドの爪は人と同じモノに戻っていた。

 

 

瞳は澄んだ朱へと戻り、頬を涙が濡らしていた。

 

 

埋葬機関の女とは真逆の言葉。

 

 

そう、ただ言葉にしているに過ぎない。

 

 

なのに、なぜこうも心に染みわたるのだろう。

 

 

アルクェイドは数歩下がり、それでも自分はと続けようとしたが、洋の口の方が早く開いてしまう。

 

 

 

 

「もし、どうしてもまだ納得が出来ないようなら、会って確かめた方が納得するかな?」

「会って…?」

 

もう、まるで理解の追いつかないアルクェイドはハッと周囲を見渡した。

 

 

彼女は、ここからそう離れていない場所にある気配を感じ取った。

 

 

 

なんで、なんでここに『彼』がいるのだろうか。

 

 

 

自分は逃げ出したはずなのに。

 

 

怯えさせたはずなのに。

 

 

あの女から一緒にいられない存在と、散々言われているはずなのに。

 

 

 

アルクェイドの逡巡する中、洋の言葉が彼女の背中をそっと押した。

 

 

 

 

「行ってくるんだ。彼は…君の事を待っているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知っていたのか?あの女の素性を」

 

「ここに到着する寸前にね。世界中を回っていると、いろんな人と接触する機会がある。教会もその一つさ」

 

 

アルクェイドがこの場を去った後、信彦は彼女の背中を見守る洋へ目を向けずに尋ねた。

 

 

正直に言えば、この男と話したくない。

 

 

 

アルクェイドへと投げかけた言葉が、まるで自分に向けても言われていたような気分になっていた為だ。今はアンリマユが眠っている事が本当に幸いした。そうでなかれば外側からも内側からも、同じ話をされてしまうだろう。しかし、それでも信彦は確認しなければならなかった。

 

 

 

「…先ほどの言葉は、本気で言っていたのか?」

 

「ああ、勿論さ。無論、君もね」

 

「…知っていてそれを言っているのか。俺の、正体を」

 

「それでも、だよ。君は彼女が襲われた時、先に君が着いていたら同じ事をしたはずだ。だから――」

 

「だがそれはッ!!まだあの女が手遅れではないからだッ!!」

 

 

 

自分でも驚く程の大声を上げた信彦は洋へと詰め寄る。話をしたくないだと、もう言っていられない。

 

 

アルクェイドや自分は、人間ではない。いや、自分は人間ではなくなったと言った方が正しい。

 

最初からそうあるアルクェイドは自分の役割だったとはいえ同族を次々を葬っていったが、あくまでその種族の間で押し付けられた話だ。彼女は元来、他の命を望んで奪う者ではない。

 

 

だが自分は違う。たとえ改造され、世紀王としての記憶を植え付けられたとしても世界中の怪人に命じたのだ。世界征服の邪魔になる者を抹殺せよと。シャドームーンは直接関与はしていないが、それによる傷痕はこの数か月間で嫌というほど目にしている。

 

 

「俺は…俺という存在によって家族をバラバラにし、多くの命を奪う事に加担したッ!!そしてこれから先、創世王のように成り果てるとも分からないッ!!」

 

 

アンリマユの言葉によって揺らいでも、決して消える事のない慟哭と未来への不安。信彦…シャドームーンはそれまで心のどこかで溜めていたものを一気に吐き出すように、洋へとぶつける。

 

 

「俺はアイツとは違う!許される存在じゃないんだッ!!」

 

 

もう、手遅れなのだと。

 

宿敵…光太郎とは違い、戻れないところまで堕ちているのだと。彼のように、誰かの為に生き、戦うなど烏滸がましいにも程がある。

 

 

信彦は誰かにそうだと認められたった。そうすれば、諦めが付く。自分を終わらせることが出来ると。

 

 

 

 

 

「だから俺はッ――――」

 

「それでも」

 

 

洋の言葉は、変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「君は、生きていい」

 

 

「君は、戦っていいんだ」

 

 

「間桐光太郎もきっと、それを望んでいる」

 

 

 

 

もう、信彦は言い返すことが出来なかった。

 

 

 

どこまでも真っ直ぐと見つめてくる瞳には、なんの偽りもない。

 

 

この男は…仮面ライダーは、自分を擁護することも、断罪することもなく、光太郎のような生き方を望んでもいいと告げた。

 

 

 

 

 

 

 

だが直後、2人の間に緊張が走る。

 

 

数十メートル先に、街灯の下で全身を白いローブで纏っている影がゆらゆらと浮遊し、信彦と洋の元へと向かっている。

 

 

 

 

「そんな馬鹿な…」

「…そうか。お前達が」

 

 

その姿を見た途端に目を見開く信彦の様子から、洋は自分がここに来た理由…ゴルゴム怪人を招集する存在に違いないと踏み、咄嗟に構えるが――

 

 

 

 

 

「がッ!?」

 

 

一瞬の事であった。ローブを纏った存在が手を翳した途端に洋は吹き飛ばされ、街灯へと叩き付けられてしまった。しかも落下することなく、ミシミシと音を立てながらくの字に曲がった街灯に押し付けられ続けている。

 

 

「ね、念動力か…」

 

「まさか…やはり貴様なのか、ダロムッ!?」

 

 

 

 

「ククククク…流石はシャドームーン様…直ぐにお気づきになられるとはこのダロム、感激いたしております。しかし、私だけではありませんぞ…?」

 

 

 

 

 

洋へと右手を翳したまま、信彦の言葉を肯定した人物は残る左手で自身の顔を覆うフードを持ち、ゆっくりと捲る。その途中、信彦が名を呼んだダロム以外の笑い声が同じフードの中で木霊した。

 

一方はダロム同様に男の声。もう一つは高い女性の声だ。

 

 

信彦の嫌な予感はどんどん大きくなっていく。

 

 

そしてフードを取ったその者の顔に、信彦と、苦しみながらも目を向ける洋は言葉を失う。

 

 

 

 

ローブを纏った者の頭部には、3つの顔があった。

 

鉄仮面のような男の顔

 

白く、皺だらけの皮膚を持つ男の顔

 

刺青の走らせる女性の顔

 

 

どれもが溶け合うように歪んだ形で顔を形成し、不気味な笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

 

ダロム、バラオム、ビシュム…

 

 

 

 

かつてゴルゴムの3神官であり、後に大怪人となって光太郎とサーヴァント達に敗れ去り、死んだはずの存在だった。




冒頭部分はまだ連載中ですが、将来的にはこういう関係になってくれたらなぁ…という描写でございました。

アルクェイドの下りはコミックス6巻あたりで再度志貴と待ち合わせの場所に向かう寸前といったところです。

そしてアシュラ男爵を越えた3つ顔で3神官復活でございます。かれらの活躍はいかに…?


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