Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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それでは、あんな連中やこんな人も登場する第2話をどうぞ!


第2話

冬木の街を騒がす不審な存在をキングストーンによる予言と重ねた間桐光太郎は独自に調査を開始。その最中に怪しげな影を発見し、これを追跡する光太郎は慎二や桜が通う穂群原学園へと誘われる。

そこで光太郎を待ち受けていたのは何者かによって機械を組み込まれたゴルゴムの怪人達であった。

光太郎は仮面ライダーBLACKへと変身し戦いを始める。謎の影が校舎の上から様子を見ているとは知らずに…

 

 

 

 

 

骸骨の顔を持つ黒い影は、眼下で繰り広げられる光太郎…仮面ライダーBLACKとゴルゴム怪人達の戦う様子を自らの目を通し、自らの主へとテレパシーで送っていた。

映像を受信する者達は遥か上空…成層圏を抜けた宇宙で移動する巨大な物体にある暗室へと集っている。

 

暗室に映し出される光太郎とゴルゴム怪人の戦い。光太郎が握った拳をコウモリ怪人の腹部へと叩き込まれたその瞬間に発生した威力とスピードが画面横に設置されている巨大な機械によって次々と計測、計算されていく。

 

 

「…コイツが、仮面ライダーBLACKか」

 

機械の身体に革のジャケットを纏った赤い一つ目を持つロボット…『ガテゾーン』は愛銃を指先でクルクルと回しながらホルダーへと収める。

 

 

「キェヘヘヘヘヘ!大したことなさそうだな!」

 

 

外見とは裏腹に高い声で笑い、獣のような落ち着きのない動きをする『ゲドリアン』は昆虫のような顎の下にある口元を歪ませながら光太郎の戦いを低く評した。

 

 

 

「フン…このような輩に敗れるとは、地球の『創世王』やらの実力など多寡が知れているな」

 

 

 

軍服を纏い、長身であることに反し赤いバイザーの上部に位置する小さな頭部を持つ風貌の『ボスガン』は光太郎を、そしてゴルゴムの首領である創世王を見下しながら嘲笑する。

 

 

 

「スカル魔。そのままデータの更新が終わるまで送り続けなさい」

 

 

光太郎の戦いのデータを送り続ける骸骨の影…スカル魔に命令する黒い装束とヘルメットを身に着ける女性『マリバロン』は冷徹な瞳で戦いを見ながらも、コンピューターに次々と送られる情報を取り入れ、自分が収集した情報と掛け合わせる作業へと取り掛かった。

 

 

一室に集う地球に住む人間とはかけ離れた姿を持つ4人…映像に映る光太郎の印象を口にした後、再び静寂が訪れると思われたがボスガンは自分達に下された『命令』に納得が出来ず、苛立ちを隠さず小さな口から不満を放つ。

 

「しかしわからん…なぜ『将軍』はあのような者と謁見されるなど」

「将軍には何かお考えがあるはず。私達が疑問を抱くこと自体が間違っているわ」

「フンッ…」

 

視線を向けることなくデータの確認を続けるマリバロンの反論に答えず、ボスガンは部屋の出口へと向かう。彼の行先にそれとなく予測がついたガテゾーンはボスガンを呼び止め、彼の口から聞き出そうとした。

 

「待てよ。行ってどうするつもりだ」

「フフフ…将軍は何も『傷つけず』間桐光太郎を連れてこいとは言っておらん」

 

嫌らしく口元を歪めるボスガンの狙いを悟ったガテゾーンは、彼の悪い癖が出たと心中で溜息を付きたくなる。この男、自分達の世界では誇り高き貴族であると自身では口にしているがその実、自分以外の全てを見下している節がある。

今回も『将軍』が地球人である間桐光太郎に直接会うということが気に食わないことが理由なのだろう。

 

「それに、あの者が将軍に口答えなど出来ぬよう、我らの力を教えてやるのだ」

「ハァ…なら俺も行く。お前さんは加減ができそうにないからな」

「そういう事なら俺も付き合ってやるぜ!」

 

珍しく意見が一致した3人は部屋から移動し、テレポートスペースへと向かう。最後にガテゾーンは部屋を出る前に分析を続けるマリバロンへと告げた。

 

「すまんが行ってくる。データの解析が終了次第、俺の頭に送ってくれ」

「わかったわ。くれぐれも、ボスガンが殺さないように見張っていて頂戴」

 

マリバロンの忠告に片手を上げて答えたガテゾーンは先にテレポートスペースに向かった2人を追い、移動を開始するのであった。

 

 

 

 

 

「ライダー―――」

 

 

ベルトのエネルギーを右手首に集中。赤い光が灯った手を手刀へと変え、光太郎は自分に向かい同時に駆け出してくる怪人と素体が自分の間合いへと踏み込んだ瞬間。

右足を軸に手刀で真横を切りながら身体を回転。

 

 

「―――チョップッ!!」

『ギャアァァァァぁァァッ!!』

 

手刀によって胴体に横一文字の傷を負った怪人達は傷口を押さえながら断末魔の叫びを木霊させる。そして身体からは炎が上がり、灰となって消滅した。

 

 

(何だったんだ。一体)

 

光太郎は変身を解かないまま、自分を襲った怪人達の亡骸である灰へと顔を向ける。これまでゴルゴムの残党は海外にしか出没していない。ゴルゴムの守護神とまで言われていた創世王を倒した存在が住まう国では活動が出来ないのではないかというのが義弟の見解だったが、それは十分に納得が出来る意見だ。

ならば、今回現れた怪人達は恐らく海外で身を潜めていた者だったのだろう。

戦いを通して分かったが、怪人達からは自分を恨んで戦いを挑んだとは、とても思えない。可能性があるとすれば、怪人達が身に着けていた機械仕掛けのヘルメット…あれが怪人達を操っていたとすれば、自分を襲おうとした黒幕は別にいる。

 

そう光太郎が結論付けた時と同時だった。

 

 

「これは――――!?」

 

 

 

 

 

 

 

「光太郎…?」

 

シャワーを浴びていたメデューサは急ぎバスタオルで身体を包むと急ぎ窓から飛び出し、間桐邸の屋根へと移動する。夜の為人の目に留まることはないが、今はそのようなことは気にしていられない。

 

「光太郎の気配が…途絶えた…?」

 

かつてサーヴァントだった時とマスターであった光太郎は魔力供給のためにレイラインによる繋がりでお互いの状況確認が可能であった。それは大聖杯という大元があってこそであったが、大聖杯は以前の戦いで完全に消滅している。

しかし、光太郎とメデューサは戦いの中でレイライン以外にキングストーンによる力の供給によってより強い繋がりが生じていた。

その繋がりによってそれとなく光太郎が無事であるということが分かっていたのだが突然何かに遮られるような感覚が彼女を襲い、光太郎の存在が掴めない状況へと陥ってしまう。

 

 

「光太郎の身に…何かが…!」

 

ライダーは屋根を蹴り、その身をかつての戦闘装束で包むと最後に光太郎が向ったと思われる方角へと飛んでいく。

 

(光太郎…どうか無事で…)

 

 

 

 

 

 

 

「空が灰色に…いや、何らかの結界が張られたのか」

 

星空がはっきりと見渡せる夜空が今では光太郎の言った通りに淀んだ灰色と化してしまっている。キングストーンの力を使えばなんとか解除は可能かも知れないが、その前に片づけなければならないことがあった。

 

「これはお前達の仕業なのか?」

 

光太郎を囲むように現れた新たな影。光太郎が最初に追っていたローブを纏った骸骨、スカル魔が3人も姿を現す。全員が巨大な鎌を手にしており、今にも光太郎を切り裂かんと距離を詰めている。

 

「答えろッ!お前達は何者だッ!?」

『我らは…怪魔妖族、スカル魔。仮面ライダーBLACKよ、我らと共に来てもらおう』

 

ようやく口をきいたその声は不気味なほどに低く、生気をまるで帯びていない。光太郎はスカル魔の言葉に応えないまま、無言で構えを取る。それを拒否と受け取ったスカル魔達は地を蹴り、同時に光太郎へと攻撃を開始した。

 

「クッ…!?」

 

鎌の軌道に合わせて鋭い刃を次々と紙一重で回避を続け、一定の距離を取った光太郎は両腕を左右に展開。バイタルチャージによって力の解放しようとしたその時…

 

「いまだ!機能停止ビーム発射!!」

「なッ!?」

 

別方向から聞こえた声と共に放たれた光線が光太郎へ次々と突き刺さる。光線が当たった途端、光太郎の全身を駆け巡る痛みとは別の作用が現れ始めた。

 

 

「き、キングストーンの力が…抜けていく…!?」

 

片膝を着き、どうにか倒れずにいたがいつまで持つか分からない。見れば、普段なら眩い輝きを宿すベルトの中央部が鈍く暗い光しか放っていない。まさかキングストーンを弱体化させる兵器を開発していたとは…と思案する光太郎だったが、記憶の片隅に

同じような兵器を思い出す。

その時は義弟と義妹の機転によって身に受けることは無く、そして破壊したはずだ。

 

「も…しや」

 

嫌な予感を駆り立てる中、スカル魔とは別に光太郎へと接近する足音。震えながら顔を上げる光太郎の複眼に映ったのは、撤退したスカル魔の変わりに現れた見たことのない異形の姿を持つ3人だった。

 

 

「フフフ…ゴルゴムとやらも少しは役に立つものを遺してくれたではないか」

「ヒャハハハハ!全くだぜぃ!」

「………………」

 

弱った光太郎の姿を嬉々として嘲笑うボスガンとゲドリアンの後で腕を組み、ため息交じりに同僚を見守るガテゾーン。彼等の存在も勿論だが、光太郎はボスガンの言葉にゴルゴムの名を呼んでいたことを聞き逃さすわけにはいかなかった。

 

「ゴルゴムが…遺した…もの。まさかお前達、あの時に」

「なるほど。察しはいいようだ」

「グハッ!?」

 

ボスガンは光太郎へと近づくと同時に胸部を蹴り上げ、仰向けに倒れる姿を愉快そうに見つめながら光太郎の疑問へ回答する。

 

「貴様がかつて戦ったゴルゴム共が残した機械。破壊されたものを修理していた組織から奪い去り、さらに強化したのだよ」

「その効果は絶大だったみたいだなぁ。どうだ、思うように身体を動かせないだろう?」

 

ボスガンに続き光太郎へと向かったゲドリアンは震えながらも立ち上がろうとする光太郎の周りをはしゃぐように飛び跳ねている。

 

「なん、なんだお前たちは…」

「知りたいか…ならば教えてやろうではないか」

 

どうにか立ち上がった光太郎に向けて腰に下げていた剣を引きくボスガンに静観を続けるガテゾーンは注意を促す。『将軍』が所望するのはあくまで間桐光太郎との対面。殺すことではない。

 

「やり過ぎんなよ。殺したら意味がない」

「フン、黙ってそこで見ていろ」

 

一応は聞いてくれたかと肩を竦めるガテゾーンを余所に、ボスガンは震える足で敵意を向ける光太郎を鼻で笑いながら刃を振り下ろす。

 

「ガハァッ!!」

 

切り裂かれた胸板から火花が散り、煙が上がりながらも構えを続ける光太郎に向け、次々と剣撃を放つボスガンは光太郎の耳に届くように大声で自分達の名を、野望を告げる。

 

「我らはクライシス帝国!この宇宙とは別の次元より地球を征服ためにやってきたのだッ!!」

「なん…だと…!」

「地球人を皆殺しにし、我らクライシスの民が住まう楽園とする。そうすればこの地球にとっても有意義なことでろう。フハハハ…」

「…っ!」

 

剣を身に受けながらも、敵の目的を知った光太郎は拳に力を込める。

 

 

ようやく訪れた平和を壊そうとする者達が現れた。

 

人々を再び戦いによる恐怖に陥れようとしている。

 

そんなことを、光太郎は認めるわけにはいかない。

 

 

「むッ!?」

「許さない…この星の平和を脅かす奴は…俺が絶対に許さんッ!!」

 

光太郎が渾身の力で放ったストレートパンチ。狙うはボスガンの顔面であったが横にそれることで回避されてしまう。

 

「遅いわッ!!」

 

避けられ、前のめりになった光太郎の背中にボスガンの剣が叩きつけられる。背中から煙を上げて倒れる光太郎は背中をボスガンに踵で踏みにじられながらも立ち上がろうと手足に力込めるが思うように動かすことができなかった。

 

「か…身体が…」

「不思議だろぉ!今のお前は機能停止ビームによってキングストーンのエネルギーを解放できないだけでなく、本来の力の半分…いや、10分の1も発揮出来ない状態にあるんだよ!!」

「…ッ!?」

 

屈んで光太郎の顔を覗き込むゲドリアンの説明に光太郎は言葉を失う。もし本当なのなら、自分に抗う術はないのではないか…

 

「フン…誤解をせぬように言っておくが、貴様が本来の力を持っていたとしてもこの私には手も足も出ないことを教えてくれるわッ!!」

「がぁ…!」

 

光太郎を踏みつける足に力を加えるボスガンと傷を抉られ、苦悶の声を上げる光太郎の姿を見て気分を高揚するゲドリアン。その同僚2人のやり口にガテゾーンは同じように溜息をつく。

 

(弱った相手を痛めつけて何が楽しいのかね…ボスガンは元からそうだが、ゲドリアンも悪乗りし過ぎだ…ん?)

 

ガテゾーンの知能であるメインコンピューターに通信データが送られる。どうやらマリバロンが先ほどの光太郎の戦闘データを送信してくれたらしい。今もなお光太郎を痛めつけているボスガンや観戦しているゲドリアンを余所にガテゾーンはデータの検証を開始。

もはや見るまでもないデータと考えていたガテゾーンだったが、その内容を見た瞬間に思わず声を漏らしてしまう。

 

「そんな馬鹿な…!」

 

 

その数値は驚くべきことだった。

 

光太郎が怪人達へ向けて放った攻撃力を数値化し、これまで地球に潜んでいた組織から奪った研究データを対比した結果。

 

仮面ライダーBLACKの戦闘能力はこれまでにない程向上しているのだ。

 

攻撃を繰り出した破壊力。それに耐える手足の強度。それも、キングストーンの力を籠めることなく、だ。この力ならば彼が戦い始めた頃のゴルゴム怪人であれば、ただの一撃で消滅させるほどの力に該当する。

 

それは最後に戦いが確認された創世王との決戦の時よりも、短い期間で遥かに強く…

 

もし彼が対となる世紀王との決戦で見せた力を解放したとしたのなら…彼の戦闘能力の上昇はもはや図りきれない力と化している。もしこのまま成長を続けたら、自分たちに取って恐るべき存在となるだろう。

 

 

 

ロボットである自分がコンピューターによってはじき出された結果を疑うなどない。しかし、このデータが本当だとしたら自分は…いや、あの場にいた全員が間桐光太郎という存在を侮っていたことになる。改めて光太郎の姿を見ると先ほどと変わらず地に伏しているが、僅かに、徐々に、ボスガンに踏みつけられながらも彼に気付かない程度だが身体を持ち上げ始めている。

 

(あいつ…力の動力源が絶たれているというのに…何故?)

 

ガテゾーンには理解できなかった。あれ程までに傷ついた光太郎を立ち上がせようとするものは、なんなのか。

 

 

 

 

「ではこれで最後にしよう…私の力を思い知るがいい!!」

「やめろボスガン」

「邪魔をするなガテゾーン!こいつに我らの恐ろしさを教えねば…」

「もうこいつには嫌ってほど伝わってるだろうよ。それに…これ以上騒げばお前の命に係わるぞ?」

「何…?」

 

無防備の光太郎に剣を振り下ろそうとするボスガンは呼び止めるガテゾーンに剣を掲げたまま顔を向けると、折角の楽しみを中断させた事に文句を物申そうとしたが『命』という部分を強調しながら首の辺りを指され、言われた場所へと手を翳す。

ボスガンが触れた場所に発生した小さな違和感。それはボスガンを驚愕させるには充分であった。

 

「こ、これは…!?」

「お前さんの首と胴体を繋いでいるパイプ…そいつは呼吸をするための大事な機関だったな。そこに僅かだが亀裂が走ってる。このまま放っておいたら、どうなる?」

「た、確かにこのままでは私の命に危ない。だが、ここにくるまで傷どころか汚れ一つなかったはずだ!」

「なんだぁ?だったら誰かに傷つけられたってことかぁ?」

「ああ、いるじゃねぇか。その本人が足元に」

「…!?」

 

ゲドリアンの疑問にあっさりと答えたガテゾーンは視線を下へと向ける。視線の先を追ったボスガンは呼吸を行う首元のパイプをこれ以上傷つけまいと手で押さえながら始めて光太郎に対し、戦慄を覚えた。

 

「も、もしやあの時…」

「そう…ボスガンに向か拳を放ったあの時…確かに拳そのものは避けられたが、こいつの拳圧でパイプに亀裂を走らせたことになる。もし、こいつの力が本来通りで拳が当たっていたとしたら…」

「あ、ありえん!クライシスの貴族である私がこのような輩に遅れをとるようなことなど…!」

 

ガテゾーンに突き付けられた光太郎の真の力。認めるわけには行かないボスガンは再び剣を掲げて今度こそ光太郎へ突き立てようとするが、威圧と共に放たれた声によって止まってしまう。

 

『―――何をしておるのだ』

 

「こ、これは…!?」

「将軍のお出ましか…」

「ち、違うのです!この者に我らクライシスの力を示すためであって…」

 

『黙れ』

 

「う…!」

 

 

だた、黙れという一言でボスガンは萎縮しまう姿を見て意識をなんとか保っていた光太郎は謎の声の持ち主がどれほどの力を持つ存在なのかと考えていると、自分がいつの間にか掲げられていると気付く。

 

「…ぐっ!」

「傷に響くか?まぁ我慢してくれ。大人しくしてくれたらこっちから何もしない」

「……………」

「気を失ったか」

 

ボスガンは意識を失った光太郎を肩に担ぎ、懐から取り出した小型のコントローラーを数度操作。すると学校全体を包んでいた灰色のシールドが消滅し、遥か上空から彼等を包むように光が差し込む。その光が消えたと同時に、光太郎達の姿は校庭から消えていたのであった。

 

 

 

 

光太郎の異変を察知したメデューサと街を見回っていたアーチャーが校庭に到着したのは、それから数分後であった。

 

 

 

 

 

 

 

「こ、ここは…?」

 

変身が解けていた光太郎が目を覚ましたのは見たこともない部屋の一室…いや、指令室とも言えばいいのだろうか。

 

地球には存在しないであろう機械に囲まれ、巨大な円から浮かび上がる立体映像は間違いなく、自分達が住む地球を映し出している。

 

だが、そんな状況確認などする余裕をなくような威圧感が自分へ接近していると感じた光太郎は急ぎ立ち上がり変身しようと構えるを取るが、一向に姿が変わる気配はない。

それどころか、まるでキングストーンの力を感じないのだ。

 

「変身…でき、ない」

 

「―――当然であろう。ここに放り込まれる前に、貴様へ『変身機能破壊ビーム』を浴びせている。もはや仮面ライダーに変身することはできないのだ」

「誰だ!」

 

光太郎へと声を放った存在はカツン、カツンと床を踵で打ち鳴らしながらその姿を露わにしていく。頭部と上半身を黄金の金属で覆われ、漆黒のマントを翻して現れた男が一歩、また一歩近づく度に光太郎の呼吸が荒くなっていく。

 

 

「余の名はジャーク。全知全能であるクライシス皇帝より地球侵略の任を任されし最高司令官である」

「ジャーク…クライシス皇帝…」

 

聞いたことのない名前に眉を潜めるが、やはり地球を狙う新たな敵であるに違いないと判断した光太郎は警戒を解くことなく、相手の出方を伺うがジャーク将軍の言葉を聞いて目を見開いてしまう。

 

「間桐光太郎よ…まずは部下による突然の非礼を許してもらおう」

「…そんなことより、何のために俺を呼びだしたんだ?」

 

光太郎は今まで敵対していた相手と違い、謝罪をしたことに驚くが一番の疑問をぶつける。自分を誘い出す為に冬木で騒ぎを起こし、力を封じた上で何をしようというのか。光太郎の疑問に答えるようにジャーク将軍は手を差し出し、試すように告げた。

 

「間桐光太郎。いや、仮面ライダーBLACKよ。我らクライシス帝国に忠誠を誓い、共に地球を支配しようではないか」

「…………………」

「無論、ただとは言わない。クライシスの戦士となった暁にはそちを再び変身できるようにするだけでなく力を今の2倍にし、そちの家族をクライシスの貴族として迎え入れてやろう」

 

 

光太郎を連れてきた本当の理由。それは戦力として勧誘することだった。しかもただ従うだけでなく彼と、彼の家族への待遇も考えると言う。

 

だが、光太郎の返事など最初から決まりきっている。

 

「断る」

「何故だ?これ以上ない条件ではないか。そちが一番大事にしている『家族』も守ってやる言っているのだぞ?」

 

確かに光太郎に取っては家族とは最大の弱点となっている。だが、それ以上に力をくれる『彼等』はそんなことを決して望まない。自分達だけが助かり、地球侵略の片棒を担ぐなど、決して許さないだろう。何より、慎二と桜は『弱点扱い』されることを一番嫌っているのだ。

そしてメデューサに…そんな情けない自分を見せるわけには行かない。

 

「…俺は…俺達は地球の支配なんて望んでいない」

「愚かな…地球は我らに支配されれこと真の平和が訪れるのだぞ?ゴルゴムのような侵略者など現れず、争いのない世界が生まれるのだ」

「誰かに支配された平和なんて間違っている!俺達が望む平和は誰もが自由であり、笑い合える世界のことだ!」

 

 

光太郎の心からの望み。ジャーク将軍が、クライシス帝国が言う『平和』とは完全に反するものだ。光太郎の言葉を聞いたジャーク将軍はしばしの間を繋いだ後、再度光太郎へと尋ねる。

 

「…最後に聞く。こちらに付く気はないのだな?」

「俺の信念は…変わらないッ!!」

 

言い切った光太郎を睨むジャーク将軍は踵を返すと、光太郎の眼前で突如シャッターが下り、スピーカーからジャーク将軍の声が響く。

 

『ならば貴様に用はない。宇宙の藻屑となって、地球が我らに支配される様を見続けるがいい』

「なにを…グっ!?」

 

ジャーク将軍の放った言葉を理解するよりも早く、光太郎のいる場所が急激に一方向へと空気が流れていくことに気付く。バランスを取ろうと部屋の一部に捕まるも身体が宙に浮きだしてしまいる。

 

「こ、これは…まさかッ!?うわあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

空気と共に光太郎が吸い込まれ、排出されたその先。どこまでも闇が広がる空間…宇宙だった。

 

(奴らの基地は宇宙に…しかし、このままでは…)

 

敵の本拠地が地球以外にあると判明したが、宇宙空間に放り出された光太郎はなす術もなく流されていってしまう。絶対零度に近い空間でも恒常性を保っていられるのは改造人間であるが故なのか、少し冷静でいる自分に呆れながらも光太郎は先程まで自分がいた場所を見た。

 

巨大な蛇のような頭部と昆虫の節足を思わせる無数の足を常に動かしながら移動する旗艦。あれが敵の基地なのかと考える光太郎へと一筋の光が伸びる。

 

その目指す先は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光太郎…?」

 

図書館を出た慎二は、思わず義兄の名を呼んで空を見上げる。

 

 

 

 

「光太郎兄さん…」

 

衛宮邸を後にし、藤村大河に家付近まで送迎された桜は嫌な予感を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「が…あぁ…」

 

 

 

 

 

クライシス要塞から延びた光の槍。

 

槍は光太郎の腹部をキングストーンごと貫いていた。

 

 

 

(…………………)

 

がくりと項垂れた光太郎から槍が抜かれると、顔を上げることなく宇宙空間に流されていった。

 

その様子をモニターで見ていたジャーク将軍は背後で膝間着く部下達へ指令を下す。自分達の障害となるのは地球にいる他の仮面ライダー達のみ。

 

 

「世界中に散っていた各支部隊へ伝令!今こそ地球征服の為に行動を開始せよ!」

『ハハァ!!』

 

号令に応えたボスガン、ゲドリアン、マリバロン、ガテゾーン達四大隊長は一斉に行動に移る。自分達が指揮する部隊へ指令を出すために次々と指令室を後にするが、ただ1人部屋に残ったガテゾーンは最期を迎えた光太郎の姿を映していたモニターを見上げていた。

 

「どうしたのだ、ガテゾーンよ」

「いえ、何も…」

「貴様の怪魔ロボットの活躍、期待しておるぞ」

「アイアイサー…」

 

動力源であるキングストーンなしでもスペック以上の力を発揮した光太郎の力に興味があったが、今となっては知り得ることは敵わない。ジャーク将軍の言葉に空返事をするなど、この時が初めてであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙空間を彷徨う光太郎は必至に身体を動かそうと働きかけるが、指先一つ動く気配はない。それどころか力も消え失せ、意識も遠のいていく。

 

(信彦も、こんな状態だったの、か)

 

数か月前の戦いで、キングストーンの力を制御していたベルトを破損しながらも自分との死闘を繰り広げた親友の姿を思い出す。彼の場合はキングストーンそのものにダメージを受けたわけではないが、光太郎は

自分のキングストーンが砕け散った感覚がはっきりと分かってしまっていた。

 

再生される様子もなく、今こうして考えたり誰かを思い出すことすら不思議なほどだ。

 

だからだろうか。信彦の事だけでなく、次々と大事な人の姿が浮かんでくる。

 

(ま、だだ。俺は…こんなところで…)

 

敵の言った通り、もう変身することすら敵わないかもしれない。命もあと僅かかも知れない。だが、それでも光太郎は諦めようとしなかった。

その気持ちに応えたかのように手がかすかに動き、その先にある青く美しい星…地球へと手を伸ばす。

 

 

(本当に…綺麗だ。俺達が戦って守れたというのなら、これかも…みんなと一緒に…)

 

震える指の隙間に映る母なる星。その地球の背後から少しずつ、眩い光が広がり始めていた。

 

 

(暖かい…この光は、太陽…?)

 

 

地球へ様々な恩恵を与えてくれる太陽。その光が光太郎の全身を照らした、その時だった。

 

 

 

 

 

(…!?)

 

 

砕け散ったはずのキングストーンに力が宿り、急速で再生を始める。これまでにない力と輝きを放つキングストーンの光に包まれた光太郎の意識は段々と遠のいて行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

夜の街を歩き続ける黒い革のコートを纏った青年はふと空を見上げる。虫の知らせというべきだろうか。具体的にそれが何であるかは分からない。

 

ただ、それが自分に深く関係しているということだけは、わかっている。

 

『どーしたんだいノブヒー、柄にもなく星に願い事かい?』

「なんでもない。それと、その呼び方はやめろアヴェンジャー」

『あんだが俺をアンリマユって呼んでくれたら考えるよ。ったく、もう聖杯は無いんだからクラスの名前は意味がねぇって何度言えば…』

「…………………………」

『ノックしてもしもーっし!?いくら1人言になるからって無視するのはよくないと思いまーす!!』

 

 

自分の中にいる『もう1人』の意見を聞き流し、再び青年は移動を開始する。そして空では、一筋の流星が走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…、光太郎ッ!!しっかりして下さい!!」

「う…」

「光太郎ッ!?目が…覚めたのですね」

 

自分の名を呼ぶ声に応じ目を開けて映ったのは、涙目のメデューサであった。また泣かせてしまったと罪悪感に囚われる光太郎は身を起こそうとするが、全身に痛みが走って動かせない。

 

「あれ、メデューサ…俺…」

「今は喋んな!身体に障る…」

「慎二…くん?」

「悪いけど、桜をこっちに連れてきてくれ、可能ならキャスターも」

「わかりました!」

 

指示に従って移動するメデューサを見送った後、慎二は一体何が起きたのか説明を受けたいほどであった。

 

 

 

 

何故、義兄が半径数十メートルにも及ぶクレーターの中心で全身黒焦げの重体で倒れていたのかを。

 

 

 




『あの姿』にはまださせません。じらしますぜぇ…

そして自分の思いで補正によりひいき目になってる方もいますのでご容赦を…
最後にちょこっと出てきたあの『2人』は別方面で活躍させる予定であります。


お気軽に感想など書いていただければ、テンションが上がってきます!

それでは次回!

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