Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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朝からジライヤにビビった本日。同じ製作会社系列での共演がOKのご時世なら光の巨人と電光超人の共演をお願いします○谷さん!!

話がすごくずれましたが今回からは彼にスポットが当たるお話でございます


第23話

「トァッ!!」

 

「グっ…オォォォォォォォッ!?」

 

 

間桐光太郎…仮面ライダーBLACK RXが握るリボルケインが怪魔獣人ガイナガモスの腹部へと深々と突き刺さる。

 

 

「ムゥンッ!!」

 

 

光太郎はリボルケインを握る手へさらに力を加え、ガイナガモスの全身に光のエネルギーを注ぎ込んでいく。ガイナガモスの体内で飽和状態となったエネルギーが火花となって貫かれた背中と関節部から漏れ始めた。

 

「ば、バカな…この俺がアァァァァァァッ!?」

 

ガイナガモスからリボルケインを一気に引き抜き、断末魔の声を背にして光太郎は大きく光の杖を頭上で旋回。

 

 

両手首を頭上で交差し、左手をベルト サンライザーへ添え、リボルケインを握る右腕を振り払う。

 

 

残心の構えを取ったと同時に地へ沈んだガイナガモスは大爆発の仲へ消えるのであった。

 

 

 

 

 

「光太郎!」

 

RXからBLACKへ。そして人間の姿へと戻った光太郎は自分の名を呼び、アクロバッターを駆って接近するメデューサへと目を向ける。戦闘装束である彼女に怪我一つない事に安心しながら光太郎は笑顔で手を振って見せる。

 

「俺は平気だよ。それより、衛宮くんたちは?」

「はい、メディアが用意してくれた血清のおかげで無事のようです」

「サクラノ暗示デシロウ以外ノ者達ハ一連ノ記憶ハ忘レルダロウ」

 

アクロバッターから飛び降り、自分の隣へと着地したメデューサの報告に胸を撫で下ろす光太郎にアクロバッターは赤い目を点滅させて補足する。今回事件に巻き込まれてしまった義弟である間桐慎二の同級生達…衛宮士郎と光太郎に取っては初対面である3人の少女達はガイナガモスが養殖していた毒蛾ガイナンの放った毒に犯されいた。

 

現代では絶滅してしまった毒蛾を甦えらせたクライシス帝国はその毒は人の細胞を書き換えて怪人へと変えてしまう恐ろしい効果に目をつけ全人類を怪人化を目論んでいた。しかし駆けつけた慎二と桜、武の機転でガイナンは全て全滅。そして一匹だけ捕獲したガイナンを基にしてメディアが解毒剤を即座に作り上げることで毒を受けた士郎達は事なきを得たのだった。

 

 

「しかしすごいな…捕まえたガイナンからすぐ解毒剤を作り出すなんて。クライシスが養殖するまで地球上にはいなかったんだろ?」

「昔取った杵柄…らしいのですが」

 

どうやらメディアが神話の時代…英霊となる以前に毒を研究していた際にガイナンについて目にしていた、ということらしい。本人は若気の至りということでそれ以上口にすることはなかった。

 

「でも、みんな無事でよかった」

「光太郎…?」

 

士郎達の生存に安心する光太郎の表情は優れない。今回の戦いにおいても、光太郎はその最中に幾度が敵の攻撃を受けると一瞬だが意識を別に向けていたのではないかと考えたメデューサは、考えられる予感を光太郎本人へと尋ねた。

 

 

「光太郎…また、見えたのですか」

「…ああ」

 

 

前回のガンガディンとの戦いで光太郎の頭に浮かぶ謎のイメージ。

 

その時は揺らめく炎の中にいる見知らぬ戦士だったが、今回はまた別の戦士だった。

 

 

荒れ狂う豪雨の中で静かに立つ赤い目を持つ戦士。自らに降り注ぐ雨などものともしない身を裂く程の激情に駆られていると光太郎には伝わってきた。

 

 

 

 

 

「…これが、一体何を暗示しているのかは分からない。でも、俺は向き合うつもりだよ。それがなんであろうと」

「それでこそ、光太郎ですね」

 

 

静かに微笑むメデューサは、相も変わらず前向きな光太郎へ頷くと、自走するライドロンから降りて、こちらへと駆け寄って来る慎二達へと目を向けるのであった。

 

 

 

 

 

クライス要塞

 

 

 

 

「ば、バカな…最強の怪魔獣人ガイナガモスが…」

 

クライシス帝国4隊長の1人、ボスガンは自身が率いる怪魔獣人が敗れ去る光景にそんな言葉が自然と小さな口から漏れてしまう。。

 

そして浮かんでくるのは幾つもの疑問。クライシスの宿敵であるRXがなぜ秘密裏に進めていたガイナンの生息する地へとやってこれたのか。なぜ、クライシスでも1週間という時間をかけてようやく精製できた解毒剤をああも簡単に手にすることが出来たのか。

 

だがボスガンは悩む時間などなく、司令官であるジャーク将軍から懲罰を言い渡されてしまうのであった。

 

 

「ボスガンよ…そちが自身で言った通り、作戦に失敗した暁には…」

「承知、しております…」

 

作戦が失敗した場合には立案者が自ら罰を受ける。ジャーク将軍の言葉を最後まで待たず、ボスガンは自ら懲罰室へと足を運んでいく。

 

 

指令室を抜け、懲罰室までの通路を歩いていくボスガンとは逆の通路で様子を伺っているゲドリアンは悟られぬ程度に同じ隊長であるボスガンを高い声で嘲笑するが、隣で壁に背を預け愛銃の調子を確かめるガテゾーンは小柄の同僚に対してその悪癖に警告する。

 

 

「お前さんだって人の事を笑えんぜ。明日は我が身って奴だ」

「お、俺の場合はあの訳の分からねぇ仮面ライダーが乱入してこなきゃ絶対にRXの野郎を倒せていたはずなんだッ!それもジャーク将軍は汲んで頂いたからこそ俺は罰を受けてねぇんだ!!」

 

本当なら罰を受けていたのだろうが、その作戦時にゲドリアンは勝手に持ち出したガテゾーンの私物である高性能中継カメラを破壊してしまい、怒りに駆られたガテゾーンがゲドリアンを三日三晩追いかけ回すという珍事が発生し、ジャーク将軍が仲裁に入った為にあやふやになったのが事実である。

 

もし次にゲドリアンが失敗したのなら…と、この先にありもしない罰などガテゾーンは考える必要ないだろうと思考を中断する。

 

RXは自分の造り上げる最強の怪魔ロボットに今度こそ命を絶たれるのだから。

 

 

 

「大見得を切った割には、大した結果は残せなかったようねボスガンは」

「マリバロン。設計は終わったのか?」

「ええ。彼方が提供してくれたデータのおかげでね…」

 

 

コツコツと靴音を通路に響かせ、ガテゾーンの前で立ち止まった諜報参謀マリバロンはガテゾーンの頭部を指先で怪しくもゆっくりと撫でながらガテゾーンの質問へと答えた。

 

 

「それに、ボスガンはガイナンの毒をしっかりと保管してくれていたようだし…使わない手はないわ」

「おーおー、恐ろしい女だねお前さんは…」

「見ていなさい。私の完璧な作戦を」

 

「……………………………………」

 

2人だけの空気となり、完全に蚊帳の外となったゲドリアンは足音を立てずにその場を去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂群学園

 

 

 

(俺は、何をしていたんだ…)

 

弓道部の射場から十数メートル先にある的を睨んだまま、衛宮士郎は数日前に起こしてしまった自らの失態を心中で嘆いていた。

 

 

始まりは好奇心に駆られた自称冬木の黒豹…もとい、同級生で陸上部所属である蒔村楓が妙な格好をした連中が付近の洞窟に出入りしているという噂を聞きつけ、そこに向かうと宣言したことがきっかけだ。

 

楓を止めようとも無駄と悟った氷室鐘と三枝由紀香が仕方なく同行していたところを発見。女子だけでは危険だと付いて行った矢先に怪人と遭遇してしまう。

 

怯える楓達――鐘はいつも通りだったようだが――を助けるために躊躇なく投影魔術で武器を幻想させた士郎は夫婦剣を手にしガイナガモスへと立ち向かったが敢え無く敗北。

 

さらには洞窟内で無数のガイナンの毒に犯され、危うく怪人となるところであった。

 

3人の知人が苦しみ、人外へと堕ちていく姿を見て絶望する士郎。全ての人を助けられる正義の味方となる夢と共にここで朽ちるのかと諦めかけた時、その絶望を洞窟の壁と共に打ち砕いた者達が助けに駆けつける。

 

壁を突き破り現れたライドロンの運転席から防護マスクを着用して自分達に駆け寄ってくる慎二と桜…そしてライドロンを追って光太郎が普段使用しているバイクに搭乗した武によって保護された士郎達は洞窟から脱出。解毒剤を受けて九死に一生を得たのだった。

 

 

 

(慎二達が気が付いてくれなかったら、今頃俺は――)

 

 

 

危機感が、まるで足りていなかった。

 

 

新たな敵であるクライシスがいつ、どのような作戦で攻めてきてもおかしくはないと、慎二から聞いたばかりだと言うのに、この体たらく。

 

 

1人では怪人に立ち向かっても決して敵わないと分かっていながらも自分が行った行動は、無謀としか言いようがなかった。

 

いや、倒せると過信していたのかも知れない。かつてゴルゴムの再生怪人達と渡り合った自分なら、どうにかできるのだと。

 

 

その無謀と過信が、自分だけでなく3人を殺すところだったのだ。

 

 

不幸中の幸いか、治療が間に合った3人は慎二作成の魔眼眼鏡を着用した桜によって洞窟に入る前の記憶を書き換えられている。ガイナガモスの姿も、自分が怪物になろうとする恐怖も今は忘れて部活に没頭している頃だろう。

 

 

そしてはっきりと覚えているのは士郎1人のみ。

 

もしも慎二が以前から噂を警戒して洞窟の正確な場所を押さえていなかったら。もしメディアがガイナンへの対処法を知っていなかったら。もし桜に、あの洞窟へ向かうと言っていなかったら…

 

 

 

 

今回の戦いで完全な足手まといとなった士郎は拳を強く握り、あの場では自分は何をするべきだったのかと思い返す中、後頭部へと衝撃が走る。

 

 

「ッダ!?」

 

「何黄昏てんだよ。邪魔だよ邪魔」

 

痛みが走る部分を押さえて振り返ると、自分用の弓を肩に担いで呆れ顔で眺めている慎二の姿があった。恰好は士郎と同じく制服で、道着には着替えていない。

 

「慎二…今日は練習休みなんじゃ」

「そんなことどうでもいいだろ?それよりもどいてくれないか」

「いや場所は他にも」

「僕はどうもそこでしか集中できなくてね」

「そ、そうか…」

 

慎二は相も変わらずこちらの屁理屈を信じて素直に従う友人が今まで立っていた場所を譲ろうと移動するとため息交じりに横目で見る。だがすぐに目を逸らすと定位置へと立ち、矢を番えないまま弓の弦をゆっくりと引いていく。

 

どうやら弓張りの調子を確かめる為に弓道場へ来た所、開いていたことを良いことに立っていた自分を発見したのかと推測する士郎は、慎二の姿にどこか違和感を感じた。

 

「慎二…お前」

「なに?」

「なんか…以前より姿勢が良くなってないか?」

「あ―…」

 

それに肩幅も広くなった印象を受ける。今思い返してみれば、教室での授業中や帰宅する後姿を見てもまるで背筋に針金を通したように、整った体勢となっているのだ。

 

慎二にも心当たりがあるようで、弦をゆっくりと戻すとさも迷惑であると言いたげにその理由を説明した。

 

「お節介な居候がいてね…何かと言われているんだよ」

「……そう、か」

 

 

恐らく最近間桐の家に住まうようになった異世界人の赤上武のことだろう。初対面の時は自分の良く知る人物と似た声に驚かされたが、彼の佇まいを見て何かの武道に精通している人なのか、というのが最初の印象だった。

 

その彼が異世界の生まれであり、今ではその力を失っているが仮面ライダーへ変身していたと聞いた時は自分以上に同行していた街の管理人が驚き…というよりも受け入れようとしなかったが。

 

 

もし慎二が武に手ほどきを受けているならば慎二が以前と違っていることも頷ける。それに気分屋の慎二がその事を愚痴る様子もない事から決して嫌がっていることはないらしい。

 

 

つまりは、慎二は更に強くなっているということだろう。もしかしたら、桜も。

 

 

新たな戦いを迎えて、ゴルゴムよりもさらに強大な敵と渡り合える為に。

 

 

ならば自分はと、俯いて考える士郎の考えを察したのか、慎二は目を向けないまま改めて弓を構えた。

 

「言っとくけど、僕がしごかれてるのと前の事件をどうにかできたのは無関係だからな」

「え…?」

「あんな事、ただ組手の練習だけでどうにかできるような問題じゃないだろ?全ては偶然なんだよ。あの洞窟の噂を僕が知ったのも、お前が知らずに踏み込んだのも」

「…………」

「だから衛宮が気に留める必要なんてない。そもそも、元凶が全部を忘れて能天気にしてるんだから問題ないだろ」

 

引いた弦が離され、風を切る音だけがその場に響いた。

 

慎二なりに士郎への配慮のつもりだったのだろうが、そんなことで持ち直すような性格ではないことは慎二も分かっている。だから、次にくるであろう質問も。

 

 

 

「なぁ慎二。俺も、武さんに鍛えて貰うことって出来るか?」

「………………………」

 

 

慎二は振り返らない。振り返らないまま、質問を質問で返すのであった。

 

 

「それって、何の為だよ?」

「何の為って…」

「お前の悩みって、身体鍛えれば何とかなるもんなの?」

 

胸を抉られるような言葉だった。

 

無論、武の指導を受ければ士郎は今よりも強くなるだろう。士郎の目指す正義の味方にも、少しは近づくのかもしれない。

 

だが、今士郎が望んでいる鍛錬は、慎二が指摘したようにその場しのぎの、悩みを解消するためのものだった。

 

 

どうやら予想通りの考えだったらしく、士郎は何の返答も出すことは出来なかった。そんな士郎の横を抜け、慎二は何も言わずにその場を後にする。

 

 

 

「お前には、お前に合ったやり方があるだろ…」

 

相手には決して聞こえないような、そんな声を漏らして弓道場を抜けていく慎二。

 

もちろん、その言葉は士郎に届くことはなかった。

 




と、いうわけで出落ちのガイナガモスに合掌。

桜が私用した魔眼メガネは前作の番外編にて使用しております。


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