Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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連休ってなんだっけ…?という過ごし方をした為に投稿が本日となってしまいました…

では、19話となります


第19話

仲間達の協力を得て命のエキスの結晶体を持ち帰ったメデューサはライドロンへ自分の魔力、キングストーンの輝きを合わせて捧げていくが、その最中に結晶体が砕け散ってしまう。

 

 

しかし目的を果たせずメデューサが流す一筋の涙がライドロンへと触れた時、奇跡は起こった。

 

 

一方、ダメージを受け続け、立ち上がる力さえも失われつつあった光太郎を助ける為にロードセクターはその身を顧みず怪魔ロボットガンガディンへと挑むが返り討ちとなってしまった。

 

 

沈んでいくロードセクターを見て再度立ち上がった光太郎の元へ命を宿したライドロンが登場。ロードセクターの無念を晴らすためライドロンに搭乗した光太郎はその圧倒的な力でガンガディンを追い詰め、止めのリボルクラッシュで強敵を打倒す。

 

 

戦いが終わり、ロードセクターの開発者の息子である大門明からロードセクターは自ら設計した強化プランにより生まれ変わると聞いた光太郎達の喜ぶ顔を見て、アクロバッターとライドロンはロードセクターが戻るまで彼等と共に戦い続けると誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロードセクターを大門明へと託したその日の夜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間桐家の地下空間…通称『倉庫』では赤い車両の前で、同じく赤い服を纏った少女が立ち尽くしていた。

 

 

…赤い少女 遠坂凛を離れた場所から見守る一同には、彼女が何を思いライドロンの前へと立ったのかは分からない。桜と士郎は息を飲み、頼むから『命を持つ車なんて魔法の域すら超えてる存在を認められないッ!!』と叫んで宝石魔術を行使することだけは避けて欲しいと望む傍ら、包帯だらけのアーチャーは主の姿を黙って見つめている。

 

額から流れる汗を拭い、ゆっくりと深呼吸した直後に拳を握りしめた直後に凛の口が開いた。そして皆が注目する発言は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴィ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Wie geht es dir…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故かドイツ語での挨拶を口走った。

 

 

 

 

 

「ニホンゴデダイジョウブダ」

 

 

フロント部のライトを点滅させるライドロンの言葉にビクリと身体を震わせ、両サイドで縛った髪の毛まで跳ね上がる程に驚愕した凛は急ぎ振り返ると強化の魔術で脚力を底上げした上で桜達の元へ全力で駆けていく。

 

そしてアーチャーの背後へ回った凛は彼の体躯を隠れ蓑とし、警戒しながらライドロンの様子を伺う主の姿を見たアーチャーは頭を抱える。この頭痛は怪我による影響だと思いたいと。

 

 

 

 

「…掃除機の吸引音に怯える猫か君は」

 

 

 

 

的確過ぎるアーチャーの例えに笑いを堪える慎二をジロリと睨むが今の姿では威厳の欠片もない冬木の管理人へ実妹の桜は慌ててフォローへ回る。そこには、新しい仲間であり家族であるライドロンに誤解を抱いてほしくないという思いもあった。

 

 

「あの、遠坂先輩。ライ君もアッちゃんと同じように私や兄さん達のお友達なんです。ですから、怖がらないで同じように仲よくしてくれたら、嬉しいんです」

「こ、怖がってなんかいないわよ!ただ、びっくりしただけで…」

 

目を潤ませて懇願する桜につい声を荒げてしまう凛は視線をライドロンへと向ける。生粋の魔術師である凛だが別にそこまで機械や乗り物に拒否反応を示しているというわけではない。経緯はともあれ、無の状態から創られた乗り物が、命を得た存在となるなど凛が生きた中で見た事など皆無だ。

 

桜の言動から、会話が可能となったアクロバッター同様に身内同然に扱われているのは確かだろう。ならば恐れる事など何もないはずなのだがその一歩が踏み出せないマスターへアーチャーは荒療治を開始する。

 

 

「認めたまえ凛。目の前にそういった存在がいるのだ。頑なに現実を否定するのは、相手を認めないことと同義だぞ?」

「ちょ、ちょっとアーチャーッ!?」

 

自分の背後に隠れる少女の手を引いて、弓兵は強引にライドロンへと移動させる。

 

「安心しろ。今に成り果てた私も受け入れられた君なら、できるはずだ」

「………………」

 

アーチャーに軽く背中を押され、前へと一歩進んだ凛。ぎこちない形でライドロンとの会話が始まった様子を見て安心した桜はほんの少しだけ耳が赤く染まっている姉の姿に思わず首をかしげている隣で、慎二は何故アーチャーが治癒魔術を受けずにいるのかを訪ねていた。

 

「遠坂が治癒魔術せずに通常の治療の上に包帯だけ、か…なんでそんな回復を先延ばしにするようなことしてんだよ」

「あー…聞いた話だと自分に話さず勝手に戦った罰…みたいなもんらしい」

 

 

 

苦笑して答える士郎の回答に呆れたと言わんばかりに目を細め、後頭部をガリガリと掻く慎二は居候の赤上武と共にタクシーで帰還した血だらけのアーチャーを思い出していた。

 

背中に追った大きな傷は武により応急処置で止血はしていたがそれ以外の火傷や弾痕など、どこの戦場に飛び込んできたのであろうかという姿に動揺した間桐家の面々はタイミング悪く家へ来訪した凛を意識を失っているアーチャーと対面させてしまう。

 

自分の知らない所で重症を負ったアーチャーを目の前にした凛が慌てふためく姿は記憶に新しいが、どうやらあの様子だと落ち着い後にながーいお話をしたようであり、今後は自分の断りなしに行動しないと固く誓いを交わしたようだ。

 

「そしてあと3日は治療魔術をせずに薬局で売ってるガーゼや薬で間を持たせるんだってさ」

「期間が定められている当たりが愛を感じるねぇ」

 

 

 

本人が聞けば無言で蹴りを繰り出すような言葉を放つ慎二に今度は士郎が訪ねる番であった。こういった場に必ず立ち合うはずの人物が見当たらないのだ。

 

 

 

 

 

「慎二、光太郎さんは?」

「ああ、ちょいと考え事があるんだと」

 

 

 

 

 

 

間桐邸のテラス

 

 

間桐光太郎は手すりに背を預け、星が爛々と輝く空を見上げながら戦いの最中、脳裏に走ったイメージを浮かべる。

 

 

 

 

燃え盛る炎の中で立っていた影。

 

 

その形はBLACKでも、ましてやRXでもなかった。

 

 

しかし、全くの別人とも言い切れない。

 

 

正体は一体何なのだろうか…?

 

 

探ろうにも戦いが終わって以来あのイメージは全く浮かぶことがなく、手がかりが丸でない状況だ。ふぅ…と息を吐きながら顔をおろす光太郎の視界へ突如自分用の湯呑が現れる。湯気を上げながら鼻腔へ運ぶ日本茶特有の香りは心を落ち着かせくてれる。

 

 

 

「どうした?珍しく黄昏ているようだが」

「武君…」

 

 

微笑みながら差し出された、最近青年の特技となりつつあるお茶を受け取った光太郎の隣へと移動し、お茶を一口含んだ武は前振りもなしに訪ねてきた。

 

 

「で、何を悩んでいるのだ?」

「…………………」

「光太郎殿はこちらが悩む間もなく、この家に住まうよう話を進めていたんだ。こちらが無遠慮に訪ねても、悪くはあるまい?」

 

唖然とする光太郎だったが武が迷いなく相手の内面に踏み込んでくる勢いは、まるで自分を見ているようなと不覚にも笑ってしまった。こうして悩むだけでも周りを心配させてしまうのならば、いっそ打ち明けてしまおう。無論、この場にいる『2人』にだ。

 

光太郎は淹れ立ての熱いお茶を一気に飲み干すとテラスの入口付近に向けて声を上げた。

 

 

「そこにいないで、こちらにおいでよ!それとせっかく入れてくれたコーヒーも飲みたいしね!」

 

 

声を発した方へと視線を向けると、テラスの入口から魔法瓶を手にしたメデューサが気まずそうに視線を逸らしたまま姿を現す。

 

どうやらコーヒーを作り、武と同じように悩む光太郎と飲みながら話そうとしたところを武へ先を越されてしまったらしい。だが出直そうとも光太郎の悩みが気になりその場で控えていたのだが、当の光太郎に気配を絶って隠れていることも看破されていたようだ。

 

武はメデューサが光太郎の隣に移動しながら自分に向けるやや鋭さを持った目に気づいていながらも敢えて見なかったことにしてほくそ笑んでいる。

 

 

(焼きもちとは、見た目の麗しさとは別の可愛らしさがあるものだ)

 

 

本人には決して聞かせられない心中を隠しながら光太郎が試行錯誤で作られたメデューサのコーヒーを受けとるまで、しばし見守るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分の中に、別の存在が…?」

 

「…と、言ってもあくまでそうじゃないかなって思えるだけなんだけどね」

 

 

 

話を終え、武の疑問に応じた光太郎は湯呑を手で軽く振り、密かに揺れる半分ほどになったコーヒーの波を見つめる。ガンガディンの猛攻に耐え続けた際にその痛みよりもその存在感に心奪われたように、戦いに対する集中力を失ってしまったほどだ。

 

「光太郎。その時、自分でも制御出来ない衝動にが起こる兆しなどありましたか?」

「え?いや、特に起きなかったな」

「では、何者かが囁くような声はどうだ?例えば、目の前の存在を滅せよというような…」

「そんな物騒なことは…」

 

メデューサと武はなぜ急にそのような事を…と言いかけた光太郎だったが、相談に乗ってくれた2人は過去に自分では抑えられない反転によって苦しんだ過去を持つことを今更ながら思い出してしまった。

 

2人に嫌なことを思い出させてしまったのではないかと不安になる光太郎だったが、自身の答えた事に安心したように2人は微笑んでいる。

 

 

「それならば、まだ大丈夫であろう。もし、そのような声が聞こえ続け、自分を抑えられなくたったのなら何時でも言って欲しい。切って捨ててでも止めてやろう」

「いや、それは笑顔で言うところでは決してないと思うよ?」

 

武の物騒な発言に冷や汗を流す光太郎を見て、メデューサは彼が困った様子を見せる姿が可笑しいのかクスクスと口元を押さえて笑いながら補足する。

 

「タケルが言いたいのは、貴方に何が起ころうと絶対に止めて見せるということでしょう。彼方がどれ程の力を持ってそれに飲まれようが私達は決して臆することなく止めて見せます。無論私達だけでなく、シンジとサクラも同意見でしょう?」

 

確かに、あの2人なら果敢に挑んできそうだ、と納得してしまう光太郎の肩に手を置いた武は正面から真っ直ぐ見つめてくる。

 

「そういう訳だ。光太郎殿は何も心配することはない。思う存分、自分の成すべきことを遂げることだ」

 

そう言って踵を返し、武は片手を上げてテラスから離れていく。テラスは光太郎とメデューサだけとなり、視線を合わせると思わず2人して笑い出してしまった。

 

 

「武君って、あそこまで面倒見があったんだね」

「フフッ…兄弟が多いと言っていたのも頷けます。あれが本来の彼なのでしょうね」

 

ストレートに言葉でぶつけてくる分、慎二とはまた違った頼もしさを感じさせる武に感謝する光太郎へ、メデューサは魔法瓶をそっと向けてくる。どうやら冷めてしまったコーヒーを足してくれるらしい。

 

「ありがとう。本当に、美味しくなったね。最初は豆を挽くのが十分じゃなかった時は…」

「そ、その話はもうなしですっ!光太郎だって以前に砂糖と塩を間違えて…」

 

など、取り留めのない会話で一喜一憂するメデューサと過ごす時間は、光太郎に取って掛け替えのないものだ。無論、彼女だけでない。義兄妹や仲間達と送る日々は、それだけで光太郎に力をくれている。そんな守ると決めた人々から、自分自身を守ると公言してくれるのならば、恐れることは無い。

 

武の言う通りに、存分に自分の使命を担って見せる。

 

 

 

だが、光太郎は自分に何が起ころうが仲間達が止めてくれるという言葉に安堵しながらも、やはりあの姿に対しての不安だけは削がれなかった。

 

 

一体、自分に何が起ころうとしているのか…

 

 

 

 

 

 

 

(信彦…お前だったら、どうする?)

 

 

答えなど帰ってくるはずがないと分かっていながらも、光太郎はそう心中で呟きながら、影に隠れる月を見上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が知る訳ないだろう」

 

 

 

 

そう冷たく言い放った月影信彦の言葉に金髪の女性は頬を膨らませて憤慨するのであった。

 

 

「何よッ!これくらいの質問に答えてくれたっていいじゃないッ!!」

 

 

女性の怒声に周囲は注目してしまう。それはそうだろう。黒いコートを纏い、どこかミステリアスな雰囲気を醸し出す長身の男性と外国人モデルと言われても過言ではない女性が言い争っているのだ。どのような修羅場が…と周囲が奇異の眼差しを向けるその内容は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風邪には桃缶が良いって本当がどうか、そんなことも言えないのッ!?」

 

「だからそんなことは知らん」

 

 

スーパーの一角で、そんな会話が繰り広げられていた。

 

 

この真祖はどこでそんな知識を知りえたのか…と疑問に思う信彦の中で同居人であるアンリマユが腹を抱えて笑っている。

 

 

(ヒャハハハハハハハハッ!!て、天下の世紀王様がスーパーでお姫様と缶詰で喧嘩っ…く、下らなねぇ…!!)

「…………………………」

 

確か通過したコーナーに四川の中華セールというものがあったなと思い返す信彦はメーカーの別の桃缶を両手に取り、説明書きを睨むように読み上げている。どうやらもう自分に頼らず自力でその真実を確かめるつもりらしい。

 

 

軽くため息を付いた信彦はこのような状況へとなった原因…遠野志貫が体調を崩して寝込んでしまった事から始まった。

 

その連絡を遠野家の使用人から電話で連絡を受けた信彦は本日は集まることは無いだろうと終日を本に費やそうと拠点であるホテルを出た所へこの女性が登場…もとい着地してきたのだ。周囲の人々が気付かなかったのは幸いだったが奇行を流石に見過ごす訳には行くまいと口を開きかけた信彦より早く、女性はムスッとした顔で『ちょっと付き合って!』と半ば強制的に信彦を連れて移動を開始。

 

どうやら信彦と同じく志貴が風邪と知った女性は『日中は玄関から!』という約束を守り正面の門から遠野の屋敷へと踏み込もうとしたら門前払いを受けてしまう。

 

家の使用人はどうやら当主である志貴の妹、秋葉から決して家には入れないようにと申し付かっていたらしい。オマケに残された唯一の出入口である志貴の部屋の窓には『協力者』によって吸血鬼が苦手としているニンニクが吊るされており、侵入は困難を極めてしまった。

 

うーっと恨めしげに部屋を外から見つめる女性の横をその協力者が眼鏡を光らせて通過していく。

 

せめてお見舞いの品でも持ち合わせる事ですね…

 

と勝ち誇った顔で何か特有の香りを放つ包みを持って遠野家の門を潜ったらしい。

 

 

信彦は自分の良く知る代行者とよく似通っているその人物がいくらなんでも病人にあんな重い食物を持っていくはずがない…と、無駄な期待を描くのであった。

 

 

そして対抗心に燃える女性は志貴に見舞いの品を見繕う為に普段はそっけない態度を向けている信彦へ協力を申し出たという流れらしい。

 

 

 

はぁ…と深くため息を着く信彦は女性…アルクェイド・ブリュンスタッドと初めて顔を合わせた日を思い出す。

 

 

 

あの冷たい月下で殺し合おうとした日を。

 

 

 




と、次回は信彦さんとアルクの初対面のお話となります。

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