Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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今回、真の主役は『彼』だったのかもしれない…

では18話となります!


第18話

RXへと変身を遂げた間桐光太郎がクライシス帝国の刺客 怪魔ロボットガンガディンとの戦いを始めた頃、メデューサは光太郎の養父、秋月総一郎が埋葬された丘へと向かい、隠された命のエキスの結晶体を回収した。

 

ライドロンへ命を与えられる唯一の手段を手にし、急ぎ戻ろうとしたメデューサだったが、彼女の動向を掴んだガテゾーンによって差し向けられたクライシスの新勢力、サイボーグ怪人達が立ちふさがる。

 

光太郎は急ぎ決着を付けようと奮闘するが、突如現れた小型の戦車と合体し真の姿を露わにしたガンガディンの猛攻によって逆に追い詰められてしまう。近接戦闘を封じられ、さらには光太郎の再生能力を封じる為に、ガンガディンが打ち上げた特殊な煙幕により周囲一帯の太陽の光が遮断されてしまった。

 

敵の術中に嵌ってしまった光太郎へ敵ガンガディンの砲撃が容赦なく降り注いでいく。

 

一方、光太郎の危機を感じ取り、その場を急ぎ離れようと苦戦するメデューサに助っ人が現れる。

 

アーチャーと赤上 武の2人はメデューサとアクロバッターを逃がし、改めて敵と対峙するのであった。

 

 

 

 

 

 

「奴らは…」

 

 

モニターで様子を伺っていたガテゾーンは乱入者の情報をデーターベースから引出し、即座に照会させる。

 

かつての聖杯戦争でアーチャーのサーヴァントとして召喚された英霊と、クライシス帝国…否、歴代の『組織』ですら把握していない『仮面ライダー』へと変身する人物。

 

特に後者の出現には作戦指揮を取っていたゲドリアンが相当な痛手を負い、以降この星で確認される赤い果実を見るたびに嫌悪感を醸し出すほどであった。

 

曲がりなりにもクライシス四隊長の一角であるゲドリアンをそこまで参らせた人間。どうやら変身する様子はないようだが、それでも相手に取って不足はない。

 

 

「性能テストには持って来いの相手って訳だ」

 

ガテゾーンは手にしていた端末を操作し、敵2人と対峙するサイボーグ怪人のデータを更新。相手の得意とする戦法に合わせ、効率的な行動をせよ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「データ更新…完了」

「ターゲットヲ殲滅スル」

 

共通して装備されたゴーグル部分を怪しく光らせたサイボーグ怪人達はそれぞれの武器を構える。その動きを見計らったように、チャップ達雑兵も一斉に動きだし、アーチャー達を囲うような陣形へと移った。

 

「なるほど。あのトカゲ共のように本能で襲い掛かるというわけではないらしいな」

「…赤上 武。雑魚共は貴様が片付けろ」

 

前回戦った相手との違いに警戒して手にした刀を構え直す武を静し、前に一歩に出たアーチャーへ棍棒を掲げてチャップ達が襲い掛かる。

 

「待てっ!相手の力は未知数だ。今のお前では―――」

 

 

間桐家で過ごす中で、それは自然と耳に入る話であった。

 

 

聖杯戦争。

 

 

その為に召喚された英霊達は此度の戦いの果てに新たな生命を手に入れた代償として、かつての力は半分以上が失われている。以前であれば怪人を一射で葬る攻撃を放つことが可能であったが、今のアーチャーが生み出せるのは手にした黒と白の短刀とクラスの名に相応しい弓矢のみ。

 

宝具である固有結界どころか、あの英雄のように多数の刀剣を射出する攻撃も不可能だ。

 

 

そのような状態でアーチャーは単身で怪人達に挑もうとしている。メディアに無理強いし、転送魔術でここまで赴いたのは一刻もメデューサをライドロンの元へ向かわせ、苦戦している光太郎を助けるため。1人で無謀を犯すためではない。

 

アーチャーを止めようと武は声を荒げてしまうが、彼の忠告は切り伏せられたチャップ達の崩れる音でかき消されてしまう。

 

 

「先に言っておく。確かにお前の思う通りに私の魔力、投影魔術は以前のそれより下回っている。明らかな弱体化だ。だがな―――」

 

 

 

チャップ達が沈んだと同時にサイ怪人は大きく口を解放し、装填されていた小型ミサイル2基を同時に発射。ミサイルは狂うことなく標的であるアーチャーへと向かっていくが、アーチャーはその場から微動だにせず両手に持った夫婦剣の先端を前に向ける。

 

何のつもりかわからないが、あのままでは確実にミサイルが直撃すると駆け出した武の予想は全く違う結果として現れる。

 

ミサイルは標的であるアーチャーを素通りし、後方にいた武さえ無視して後方に屯していた怪人素体達の足元で落下。10を超えていた素体達は爆発に飲み込まれてしまうのであった。

 

 

 

(まさか、剣の側面で弾頭を撫でるように触れたことで軌道を変えてしまうとは…)

 

 

刃を下ろすアーチャーの背中を見た武は、下手をすれば触れた途端に爆発する可能性もあった彼の度胸と剣技へと感服する中、先ほど聞けなかった言葉を走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

「私がこんな奴らに負ける理由になると思うか?」

 

 

 

 

 

 

 

そう告げるアーチャーの口元は不敵に笑っている。後ろに立つ武にはそうしか思えなかった。

 

 

 

「…承知した。では、こいつらを片付けながら拝ませてもらうとしよう。かつての英霊ではない。今の貴君の力を」

「最初からそのつもりだ。何故かは分からんが、お前にそう言われると応じなければならん気持ちが強くなる」

「…?」

「気にするな」

 

 

自分でも理解が出来ない口上を上げたアーチャーはチャップ達の間を抜け、サイボーグ怪人へと接近する最中、怪人達へと挑むもう一つの理由を胸中で述べていた。

 

 

(この先の戦い。あのような連中を1人で倒せないようでは守るものも守れん。俺は…勝たなければいけない)

 

 

そう思い知らされたのはクライシス帝国が間桐光太郎抹殺の為、邪魔になるであろう魔術師を狙って刺客を放った時だ。

 

マスターである遠坂凛と共に戦闘を開始したアーチャーが待っていたのは、かつて一刀に伏した雑兵とも言える洗脳されたゴルゴム怪人達に苦戦するという苦い結果だった。

 

その前日に衛宮士郎や間桐光太郎に弛んでいるなど高説を垂れていた自身がこの様では立つ瀬がない。これから次々と現れるであろうクライシス帝国の勢力から、かけがえのない少女を守ることができない。

 

だからこそ、アーチャーは勝たなければならない。

 

勝気で、誰よりも優しい少女を守り抜くためにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、待ち構えていたとは…」

 

 

高速道路を疾走するメデューサとアクロバッターを待ち受けていたのは、バイクやジープで後方、前方から追走するチャップの群れであった。

 

どの乗り物もクライシス帝国の持ち物ではなく、全てが地球産…恐らく強奪したものなのだろう。そんな規格ではアクロバッターに追いつくことすら出来ないはずなのだが、敵もただ馬鹿正直に追いかけるだけに留まらない。

 

バイクのリアシート、ジープの助手席から身を乗り出し重火器を構えたチャップが遠慮なしに撃ち続け、爆発を避けながら左右に機体を流し、路面を滑らずに走り続けることが精一杯であった。

 

 

「このままでは…」

「メデューサ…ワタシニホウグヲツカエ」

「な、何を言っているのです!?」

 

 

聖杯戦争時、メデューサはキャスター…メディアと敵対し、互いの全力をぶつけ合った際にロードセクターへ自身の宝具を使用することで勝利を収めた。

 

だが、その代償としてロードセクターは大破こそは免れ、通常の移動は出来るものの、最終決戦まで戦闘不能の状態となってしまう。メデューサが召喚する天馬のような幻想種ではなく機械であるロードセクターへの負荷は大きく、たった数秒でボディーが傷だらけになるに至っていた。

 

いくら再生能力を持つアクロバッターでも、能力を向上させ限界以上のスピードで駆けた後のダメージは確実にある。

 

さらに言えば敵がまだこれから先、どの位置に潜んでいるか不明確のまま宝具を長い時間使ってしまったら…

 

 

「ツカウノハイッシュンダケデイイ。アーチャーノイッタトオリ、キミノチカラヲココデショウヒスルベキデハナイ」

「しかし…くッ!?」

 

赤い目を点滅させるアクロバッターの言葉に逡巡するメデューサの真横で起きた爆発で身体を大きく揺らしてしまう。アクロバッターが自身で立ちなおしたことで横転することはなかったが、敵の追撃はさらに勢いを増していくばかり。

 

いずれは攻撃を避けきれず最悪の事態を迎えてしまう前に、アクロバッターはメデューサへの説得を続けた。

 

「…キミノホウグハ、イゼンヨリチカラハヨワクナッテイルノダロウ。ナラバ、ワタシヘノフタンモチイサクナッテイルハズダ」

「アクロバッター…」

「キミニヤクワリガアルヨウニ、ワタシモヤクワリヲマットウスル。コウタロウト、アタラシイナカマノタメニ」

「………………」

 

敵の爆撃音しか聞こえない中、グリップを強く握るメデューサはやがて無言で小さく頷く。メデューサの手の中へ光と共に顕現したのは、本来は神獣を御し、本来以上の力を発揮させる手綱。

 

手綱を呼び出すだけでメデューサが持つ魔力の3割が失われ、小さな虚脱感が伸し掛かる。光太郎から魔力が供給されていた時とは違い、今では彼女自身が持つ魔力を消費して宝具を使用している。魔力と共に気力まで削がれた今のコンディションでのアクロバッターの操縦は少しのミスも許されない。

 

しかし、そんな事を気に留める余裕など彼女達にはない。

 

覚悟を決めたメデューサは手綱をグリップへと巻き付け、宝具の名を轟かせる。

 

 

 

 

 

騎英の手綱(ベルレフォーン)!!」

 

 

 

 

瞬間、アクロバッターの計器は完全に振り切り、エンジンを始めたとしたパーツに本来であれば許されない程の負荷がかかる。だが、それがなんだと言うのだ。自分の役割を果たす為、この程度の『痛み』など、今戦っている光太郎に比べれば…

 

アクロバッターは赤い目をより強く発光させ、今は自分の操縦者であるメデューサを乗せ、臨界を突破する。

 

 

「…イクゾ!!」

 

「はいッ!」

 

 

返事と共にスロットルグリップを何度も回し、それに応えるにエンジンが凄まじきパワーをギア・チェーンを介してタイヤへと伝導する。さらに魔力の余剰効果でアクロバッターは全身をアメジストのような鮮やかな輝きを放った直後。

 

 

もうその場にはメデューサとアクロバッターの姿はなく、アスファルトに擦りつけられた黒い跡がどこまでも続いているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンガディンの圧倒的な火力に押されいる間桐光太郎は攻撃を受けながらも何とか距離を離すことに成功し、少しでも体力の回復を図るために身を潜めていた。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ…ここまでの力があるなんて…」

 

瓦礫を背にし、ガンガディンの攻撃を防いではいるが、あの攻撃にどれほど耐久できるのか…光太郎は逆転するための一手を模索するが、敵はそれを待ってはくれない。やがて隠れ蓑としていた瓦礫は爆散し、光太郎も吹き飛ばされ路面へと叩き付けれてしまう。

 

 

「がぁ…!」

 

倒れる光太郎の耳にアスファルトの上を走るキャタピラの重音が響く。顔を上げて見れば、まだ数十メートル近く距離を離しているが、ガンガディンに取っては無意味なのだろう。このままでは的になるだけだと光太郎はよろけながらも立ち上がる。

 

 

(だが…なんなんだ?)

 

太陽を遮られ、再生能力を発揮できない光太郎は焦りよりも、自身に起きている違和感が勝っていた。

 

違和感…というよりも頭に浮かぶイメージという方が強いかも知れない。ガンガディンの無制限とも言える射撃を身に受ける最中、光太郎は炎に包まれる何者かの影がイメージされていた。

 

それが誰であるのか、検討もつかない。だが、他人であるとも思えない…

 

だが、光太郎には確かめる術はない。今確実に止めをさせる距離まで迫るガンガディンは再度光太郎へと狙いを定めた、その時だった。

 

 

「こ、この音は…?」

 

光太郎の背後から段々と大きくなる地鳴り。それはガンガディンの重圧あるキャタピラとは違う。聞き覚えのある、あのエンジン音は…

 

 

自分の横を抜け、ガンガディンへと突っ込んでいく白い影。アクロバッターと並び、ゴルゴムとの戦いで多くの危機を乗り越えた友の名を光太郎は焦りと共に叫んだ。

 

 

 

「ロードセクターッ!!止めるんだッ!!」

 

 

イオンシールドも展開しないまま、白と赤のオンロードマシン ロードセクターはガンガディンの砲撃を機体の所々に受けて傷付きながらも突進をやめず、ついにはガンガディンを正面衝突。押し合う形となった。

 

押し合う力は拮抗し、ロードセクターのタイヤとガンガディンのキャタピラは互いにアスファルトを擦りながら一進一退を保っていたが、ガンガディンは突如現れたロードセクターに怒りを向け、砲門全てを眼下の乱入者へと向ける。

 

 

「…小賢しい」

 

「やめろ…やめてくれッ!!」

 

 

駆け寄ろうにも蓄積したダメージで膝を着いてしまった光太郎はもはや手を伸ばすしか出来ない。指の隙間で現在も光太郎に迫るガンガディンを全力で押し返そうとするロードセクターへ、無情にも敵の攻撃が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

爆発により起きた強い閃光に一度目を背けた光太郎がその先では…ボディから火と煙を上げ、ゆっくりと地面へと沈むロードセクターの姿だった。

 

 

 

「ウワアアァァァァァァァァァッ!!」

 

 

身体に走る痛みなど顧みず、光太郎はアスファルトが砕け散る程に右手を叩き付け、跳躍。

 

ガンガディンにRXキックを仕掛けるが逆方向にキャタピラのベルトを回転させ急後退。光太郎の攻撃は地面を押しつぶすだけに留まってしまった。

 

 

 

「ふん。今度こそ止めだ…」

 

 

再度距離を取ったガンガディンの攻撃が光太郎へと迫る。しかし、光太郎は先ほどのように防御の体勢を取らず、倒れたロードセクターを守るように背を向け、覆いかぶさっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく、止まったか…」

 

額から血を流し、大木に背を預けるアーチャーは自分の首をへし折ろうと手を伸ばしたまま機能を停止したサイボーグサイ怪人を見る。

 

全身の関節という関節に白と黒の短刀を突き刺し、オイルが滴り落ちる姿はたとえ機械仕掛けの身体とはいえ見るのも痛ましい。雑兵を片付けながら戦いの様子を伺っていた武はアーチャーによる怒涛の剣撃が今も目に焼き付いていた。

 

 

敵の攻撃を避けながら近接戦闘を仕掛けたアーチャーは敵の反撃に顧みず装甲に覆われたサイ怪人の関節部を狙い、斬撃を続けていた。しかし関節部すらも地球上では存在しない金属で精製されており、アーチャーの攻撃が届くまでに幾本もの夫婦剣が砕け散っていった。

 

 

 

敵の目から光が消えるまでの間にどれ程の剣が砕け、魔力を消費したかなど、もう考えるだけで嫌になるほどなのだろう。

 

それに、戦いはこれで終わりでない。

 

 

「…チィッ!」

 

強引に身体を転がして回避したアーチャーが背にしていた大樹が真っ二つとなり、ミシミシと音を立てて沈んでいく。腕に装着した刃を地面へと突き立てているサイボーグタカ怪人は再び大空へと飛翔。上空から急落下し、アーチャーを引き裂こうと狙いを定めていた。

 

 

「…残りの魔力も少ないな。それにあの木偶の坊と同じように剣を当てさせてくれる相手でもない、か」

 

パワータイプのサイ怪人と違い、タカ怪人はゴルゴムにいた時から一撃必殺のヒット&アウェイを繰り返していたと以前光太郎から聞かされていた。

 

ならば、こちらへと攻撃が届く前に撃ち落とす。

 

アーチャーが手にした破損した夫婦剣を消し、代わりに黒い弓を投影。矢を上空へと番え、自身に迫る怪人を撃ち落とす為に矢羽を持つ手をより強く引くが…

 

 

「なっ…!?」

 

視界に捉えたはずの敵が突如として姿を消した事への驚きと、背後に走った痛みを感じたのは同時だった。

 

タカ怪人は翼からエネルギーを噴射させることでさらに速さを向上させ、ついにはアーチャーの目ですら捉える事の出来ない攻撃を放ったのだ。

 

 

「貴様ぁッ!!」

 

全てのチャップと怪人素体を切り伏せた武は背中から血を流すアーチャーへ刃を振り上げたタカ怪人へと駆けるが刀を下ろす寸前に再度飛翔してしまう。もはや武の目ではどこにいるかも把握できない高さまで上昇していた。

 

「奴め…一体どこへ」

「何をしている…赤上武」

 

空を見上げて敵がどこから攻撃を仕掛けてくるか警戒する武に、弓を杖代わりに立ち上がるアーチャーは低い声で武へ問いかけた。汗を流し、血を流し続けようが彼の目からは戦意が失われていない。ならば、自分の出番はまだなのだろう。

 

 

 

「…貴様自身が言ったはずだ。私の力を、見るとな」

「………………………」

 

武は無言でアーチャーから距離を取る。彼の口にせず、自分の戦いを最後まで見守る姿勢に感謝しながらアーチャーは上空を見る。敵は急降下しながらもその落下速度を保ったまま方向を変え、こちらの死角を狙ってくる。こちらが正確に敵の位置を掴んで射ったとしても回避されてしまうだろう。

 

(状況は最悪、だな)

 

 

太陽の眩しさに目が眩む。血を流し続けていることもあるが、本来であれば倒れても可笑しくはない程の状態であるアーチャーであったが…

 

 

「こんな情けない姿、見せるわけにはいかんな」

 

 

さらには敗北したなど、この後に言えるはずがない。彼女はただ心配するだろうが、そんな顔など見たくはない。大切な存在にそのような表情にさせてしまう自分の非力さへの怒りが込み上げるアーチャーは強く拳を握りしめた。

 

 

 

「許せんな…自分がここまで力ないとは…っ!?」」

 

 

 

そう口走った直後、アーチャーの身体に異変が起きる。

 

 

視認出来るほどの赤いオーラがアーチャーの全身に走り、聖杯戦争時と同じ…否、それ以上の魔力が溢れていた。

 

 

 

「…理由はわからんが、今ならば」

 

 

 

自分に何が起きているかを確かめるよりも早く、アーチャーは手に魔力を送ると今の状況に最適な投影を開始した。敵がこちらの攻撃を察知されてしまうのならば、察知されても追跡すればいいだけのこと。

 

敵がこちらの異常に気が付き、落下を始めたようだがもう遅い。この投影を終わった時点で、相手の最後だ。

 

 

アーチャーが手にしたのは、全身が黒く、機能するのかも怪しい程に刺が目立つ矢。赤い弓兵は天へと番え、雲の遥か上から迫りくる敵を狙い矢を射った。

 

 

風を切り、空へと矢が消えていた数秒後。アーチャーが弓を下ろした直後に空の彼方で爆発する音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

アーチャーが投影した宝具は赤原猟犬(フルンディング)と呼ばれる剣を矢へと変貌させたものだった。射手が健在の限り、標的を狙い続ける赤い光となった矢は上空で一度は回避したタカ怪人を追い続け、ついには倒すことに成功する。

 

 

 

 

弓が消失したと同時に仰向けに倒れたアーチャーは手を軽く握って見せた。先ほどまで自身の中で溢れていた魔力は既になく、もはや空同然だ。暫くは一歩もあるけそうにないと自己分析しているところへ、戦いを最後まで見届けいた武が手を差し伸べる。

 

影が武の顔を射し、どのような表情を浮かべているかは分からない。だが、無視するわけにもいかずアーチャーは普段の何倍も重く感じる腕をなんとか動かし、武の手を掴むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…見えたッ!」

 

なんとか敵を振り切り、冬木へと到達したメデューサとアクロバッターは間桐家の門を潜るがブレーキが上手く作動せずに横転してしまう。ガリガリと芝生を削ってようやく動きを止めたアクロバッターのエンジンは限界を迎えた熱量によって煙を上げている。

 

「アクロ…バッター…無事、ですか…?」

 

アクロバッターが横転したと同時に地面へと放り出されたメデューサだったが咄嗟に受け身をとったことで打ち身程度ですんでいる。だが、この家に到達しただけでは終わりではない。

 

「姉さんッ!大丈夫ですかッ!?」

「ったくアクロバディックな帰り方だなおいっ!」

「サクラ…シンジ…」

 

 

自分達に続いて門を潜ってきた桜と慎二はそれぞれメデューサに肩を貸し、倒れたままのアクロバッターを起こすと急ぎ倉庫へと向かい始めた。しかしメデューサは解せない。何故帰ったばかりの2人が現在の状況を把握しているのか。

 

 

「…メールが届いたんだよ。ロードセクターからな」

「メデューサ姉さん達が光太郎兄さんの思い出の場所に向かっている事。そして…自分が、時間を稼ぐってことを」

「時間を…稼ぐ…?」

「マサカ…?」

 

アクロバッターはメデューサと共に家を出る直前にロードセクターが倉庫にある端末と自身のコンピューターと接続していたことを思い出す。不思議には思っていたが、今は優先するべきことがありその場を後にしていた。

 

もしあれが光太郎の様子を知る為のものであり、そして慎二と桜に状況を伝えたのだとしたら。

 

 

「…猶更、急がなければなりません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

倉庫内の照明を点灯し、奥には数日前に完成したばかりの赤い車、ライドロンが鎮座している。

 

 

身体をよろめかせながらライドロンの前へと移動したメデューサはここまで幾人もの協力を得て持ち帰った水晶…命のエキスの結晶体をフロント部分へゆっくりと置いた。

 

無論、それだけでは終わらない。

 

メデューサは眼鏡を外し、一度目を閉じると両手をライドロンへ設置した結晶体へと重ねる。そしてメデューサの身体から紫色の魔力が昇り、全てが結晶体へと注がれていく。

 

 

(私に残された力であの時と同じ状況を作ることは不可能かも知れない。しかし、光太郎ならば決して諦めない。だから私は…アクロバッターが、ロードセクターが役目を果たしてくれたように…)

 

 

ゆっくりと開かれるメデューサの瞳は―――

 

 

 

「私も、その役目を果たして見せるッ!!」

 

 

 

光太郎が宿すキングストーンのように、赤い輝きを宿していた。

 

 

 

 

光太郎が大聖杯の破壊すると同時に起きたサーヴァント達が命を得るという奇跡。メデューサはその時と全く同じ状況を生み出そうとしていた。命のエキスの結晶体に自分が宿る魔力ともう一つ。

 

光太郎が世紀王として真の力を解放しメデューサ自身が消滅しかねない程の魔力を身に宿した結果、メデューサも僅かながらキングストーンの力を扱えるようになるというイレギュラーが発生。この場に光太郎抜きに奇しくもサーヴァント達が命を持つ要因が全て揃っていた。

 

だが。

 

 

 

 

「くっ…」

「姉さんっ!」

 

魔力とキングストーンの光を放ち続けるメデューサは間桐家に到着する前に宝具を使用していた為、ここにきて魔力が尽きかけてしまっていた。倒れそうになるが桜に支えられたメデューサは自分の不調であるにも関わらず、力を注ぎ続けている。このままでは魔力どころか、命すらも危ない。

 

 

「メデューサ、お前…」

「いいのですシンジ。これで光太郎が助けられるのなら、私は…」

 

光太郎と同じように、無理を隠して笑顔を向けるメデューサに変なところだけ真似やがってと口にしたくなる慎二だったが、あえてその言葉を飲み込み、自己修復を続けるアクロバッターへと駆け寄った。

 

 

「おい、あとどのくらい掛かるんだよ?あのままじゃメデューサは…」

「…ワカラナイ。スベテハ、カノジョシダイダ」

「くっそ、曖昧なこと言いやがって」

 

苛立ちを隠せず付近のテーブルを叩く慎二が顔を向ける先では、未だメデューサが震える身体に構わず力を行使している。サーヴァントのように力を使い果たして消滅することはないが、あのまま力を使い続ければ命は危うい。もう、自分に出来るのは祈る事しかないのかと歯がゆく思う慎二は、やはり見守ることしかできなかった。

 

 

(お願い…します。どうか…)

 

 

祈りと共に力を送るメデューサを支え続ける桜に嫌な予感と共に決して聞こえたくない音が届いてしまう。少しずつ、少しずつ命の結晶体に亀裂が走り始めてしまった。

 

 

 

 

「そんな…お願いです!もう少しだけ…!」

 

 

 

 

桜は懇願するように唱え続けるが、結晶体は応えることなく一度強い光を放った直後に音を立てて砕け散ってしまった。

 

 

 

「うそ…だろ」

 

 

 

 

その場にいる全員の気持ちを代弁した慎二は、粉雪のように散っていく命の結晶を浴びて、未だ沈黙を続けているライドロンの姿を見る。

 

あれだけの事をしても、動いてくれなかった。メデューサは立ったまま顔を上げる様子もない。桜もどうして…と掌に乗った塵芥となった結晶を見て涙ぐんでしまう。

 

 

 

もしかしたら、あの結晶の効力は自分達サーヴァント達へ命を与えた事によって無くなっていたのかもしれない。

 

 

今更そんな可能性があってもおかしくないと思いついてしまうなんて…と自分を愚かさに思うメデューサの目から、一粒の涙がフロント部へ零れ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドルンッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?」

 

 

その音に全員が思わずアクロバッターへと目を向けるが、当の本人は赤い目を点滅させながら頭部を左右に動かしている。

 

 

「ワタシデハナイ…」

 

 

「じゃぁ…ならッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…消し飛んだか…むッ!?」

 

 

一斉砲撃により爆炎の中で消えたはずの光太郎の亡骸を確認しようとセンサーを起動させたガンガディンは煙の中で立ち続ける人影を発見する。だが、それはデータにあるRXとは異なるものだった。

 

「…何者だ」

 

正体を確かめる為にセンサーの感度を上げようとした途端に煙が晴れ、人影が姿を現すがそれは間違いなくRXだ。

 

では、先ほどの陰は一体…カメラに収めた影とRXを改めて検証すると細部は異なるが体格は酷似しているという結論に至ったガンガディンはそのデータをクライス要塞で待機しているガテゾーンへと転送。

 

 

そして身体から煙を上げ、膝を着きながら煤だらけとなったロードセクターに触れるRXへとカメラを向ける。どうやら、あのバイクへと話しかけている様子だ。

 

 

 

 

「ロードセクター…どうして…」

 

声を震わせ、答えないと分かっていながらも光太郎は倒れた友へと尋ねる。すると、計器の上に設置されていたディスプレイが起動し、マイクから音声が流れ始めた。

 

「ま…スター…貴方ガ悲シムコト…ハ…アリマセ…ン」

 

ノイズ混じりに流れる合成音声。何時の間にそんな物をダウンロードしたんだと驚きながら光太郎はロードセクターの声を聞き逃さないように耳を傾ける。

 

 

「コレハ…貴方ヲ助ケル為ニ最モ適切ナ手段デアルト判断シ、実行ニ移シタノデス。ダカラ」

 

「何を…何を言っているんだ!その為にお前が死んでしまったら…何の意味もないじゃないかッ!!」

 

「…ソレハ的確ナ表現デハアリマセン。私ハ機械。機能停止トナルダケデ…」

 

「同じ…同じなんだよ」

 

「意味ガ…解リ…マセン…」

 

「教える…教えてやるッ!これから先、アクロバッターと、ライドロンと…お前の、仲間達と一緒に…」

 

「ナ…カマ…………………」

 

モニターはブツリと消え、ノイズの音が途絶えることなく流れ続けた。

 

 

 

無言で立ち上がった光太郎は、データの転送を終えたガンガディンを睨む。光太郎に再び砲門を向けながら、彼の足元にいるロードセクターが完全に停止している様子を確認する。

 

 

「ふん…ようやく『壊れた』か。手間を掛けてくれたな…」

「なんだと…」

 

 

敵の心無き言葉に怒りを向ける光太郎は力強くガンガディンを指差した。

 

 

「怪魔ロボットガンガディンッ!!これ以上俺の仲間を侮辱することは断じて許さんッ!!

 

「ほざけッ!立てるようになったのは驚きだが、結局はこの攻撃から貴様は逃れることは出来んのだッ!!」

 

 

敵の咆哮と共に放たれた一斉射撃。確かに今の光太郎には防ぐ手段はない。だが、これ以上ロードセクターに被害を負わせない為には、やはり自身が盾となるしかないと両腕を交差して足を踏ん張る。ガンガディンの放ったエネルギーの群れが自身へと迫る気配を感じる中、光太郎は別方向から攻撃とは別の何かが接近していると気付く。

 

 

 

 

それは、光太郎の知るものとは別のエンジン音。

 

 

 

 

光太郎が聞こえた方へと顔を向けるより早く、それは光太郎の正面で停止しガンガディンの放った攻撃全てを浴びてしまう。

 

 

 

 

「今度はなんだ…」

 

またも自分の妨害する者が現れたことに苛立ちを隠さなくなったガンガディンの怒りから驚きへと変わる。殲滅すべき敵の前に現れたそれは、自分の攻撃を全て受けながらも傷一つ負うことなくアイドリングを続けていたのだから

 

 

 

 

まるで昆虫の頭部を思わせるようなフロントガラスに、光太郎と同じく長い一対のアンテナ。中央には鋭利な刃『パイルエッジ』を備えた赤い重装騎マシン。

 

 

ライドロンが、光太郎の前に現れたのだ。

 

 

 

「ライドロン…なのか?」

 

 

「ソウ、キミノナカマダ」

 

「…っ!?」

 

 

光太郎は夢を見ているような気持ちだった。ライドロンが動いただけでなく、アクロバッターと同じように声を出して自分の質問に答えてくれている。

 

こうして自分の前に姿を現したのも、組み立てに力を貸してくれた仲間達。命の結晶を回収してくれたメデューサとアクロバッター。

 

そして、今この時まで自分の身体を張り、命を守ってくれたロードセクターがいてくれたからだ。

 

 

 

 

「…ライドロン。この場から敵を引き離したい。できるか?」

「ムロンダ。ワタシモハヤク、『キョウダイ』ヲタスケタイ」

「…ああッ!」

 

 

展開したライドロンのコクピットに飛び乗り、光太郎はハンドルを握ると正面に捉えたガンガディンに向けてライドロンを急発進。アクセルペダルを前回まで踏みつける。

 

 

「行くぞぉッ!!」

 

 

 

 

「小癪なぁッ!!」

 

どんなマシンに乗ろうが自分の火力には敵わない。砲撃を続けるガンガディンの自信は脆くも崩れ去ろうとしていた。

 

 

「ば、バカな…」

 

 

ライドロンの装甲は、ガンガディンのエネルギー弾を浴びようが傷一つ負わずそのスピードも弱まることはない。それどころかさらに速度を上げて突進していく。ならばと光太郎を一度吹き飛ばした両肩のチャージ弾を発射するガンガディンだったが、それすらも着弾して爆発するだけに過ぎなかった。

 

「馬鹿な…!」

「行っけええぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

遂にはライドロンのフロントがガンガディンのタンク部分へと衝突。そのまま抵抗を許さぬまま押し切っていく。既にキャタピラを全力で前進させていたガンガディンだが、完全に力押しされてしまっている。ならばロードセクターと同じ末路を迎えさせようとゼロ距離で砲撃を繰り返すが、既に悪あがきに過ぎなかった。

 

 

「こ、こうなったら脱出を…なっ!?」

 

再び下半身を切り離そうとしたガンガディンは脱出を試みても全く腰が離れない事に焦る。見れば、腰とタンク部分の接続部分が溶接されたように溶け合い切り離すことが出来ない。

 

 

「な、何故だ…ま、まさかッ!?」

 

心当たりなど一つしかない。

 

 

ガンガディンはロードセクターが自分の砲撃を密着状態で受ける寸前に前部と後部にシールドらしきものを展開していた。だが、無駄なこと攻撃を続けた結果、数度だけシールドに反射した攻撃が在らぬ方向へと飛んでいたが、そのうち一発だけが自分の身体へと跳ね返り、ガンガディンのボディを溶かしていたのだ。

 

 

距離を置いていた光太郎と、攻撃をしかけたガンガディンすら気付かなかったロードセクターによる反撃。

 

 

「おのれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいッ!!」

 

 

自分の攻撃によって鉄くずとなったモノから受けた仕打ちに声を荒げるガンガディンはライドロンに完全に押し負け、堤防へと叩き付けられてしまう。

 

 

それだけでは終わらない。

 

 

ライドロンの操縦席から飛び上がった光太郎は左手をベルト サンライザーへと翳し、銀色の柄を生み出すと一気に引き抜き、必殺のリボルケインを顕現させる。

 

 

「トアァッ!!」

 

 

そしてライドロンのフロント部へ着地すると同時にガンガディンの首元へリボルケインを深々と突き刺した。

 

 

 

「ぬ、グオオォォォッォォォォォォォッ!?」

 

 

 

悲鳴を上げるガンガディンへリボルケインの柄尻を押し、さらに奥へと押し込んで光のエネルギーを流し込んでいく。ガンガディンの全身から流れていった余剰のエネルギーが火花となって全身から吹き出した直後、リボルケインを引き抜くと同時にライドロンは急後退する。

 

 

 

 

ライドロンから飛び降りた光太郎は断末魔の声を上げるガンガディンを背にし、リボルケインを持った右腕旋回し、両手首を頭上で交差。左手をサンライザーへと翳しつつ、右手に持つリボルケインを真横へと振り抜いた。

 

残心の構えを決める光太郎の背後で、ガンガディンは大爆発の中に消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンガディンの敗北が明らかになったと同時にモニターの画面を消したガテゾーンは踵を返し、その部屋を後にしていく。

 

自ら作成したガンガディンが敗北したことには何も思うところはない。敵がそれ以上の力を持ってこちらを上回った。それだけの話だ。

 

だから、ガテゾーンへ苛立ちを覚えさせたのは全く別の理由だった。

 

 

 

 

 

「仲間…だと?」

 

 

 

光太郎とメデューサは、乗り物に過ぎないアクロバッターやライドロンを仲間と断言した。さらにはロードセクターが中破した際など、仮面で見えなかっただろうが涙すら浮かべていた。

 

 

本当に理解できない。自分も含め、機械やロボットなど役目を果たす為に生まれ、そしていずれは壊れる運命にある。あのような馴れ合いなど、何の意味がある?

 

 

「くだらねぇ…」

 

 

そして、このような事に怒りをむき出しにする自身にも呆れながら、ガテゾーンは通路を歩み始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、大門先生…お父さんの遺したロードセクターをこんな目に合わせてしまって」

 

 

数日後、光太郎はロードセクターの開発者である大門洋一の息子であり、光太郎のバイクのコーチである大門明の元へと訪れ、頭を下げ続けていた。その背後では事態を見守っているメデューサや慎二、桜が不安な表情を浮かべていた。

 

 

明は光太郎達に背を向け、傷だらけとなったロードセクターに端末を繋げてデータを確認作業を行っている。一通り作業が終わり、一度大きく息を吐くと振り返ると強面の顔からは考えられ位ほどの穏やかな表情を浮かべた。

 

「光太郎君。顔を上げるんだ」

「先生…」

「ロードセクターは自分の判断で君を庇ったのだろう?ならば、同じことをしないように教え込むがいい」

「え…?」

 

言葉の意味が理解できない光太郎へ、明は先ほどまで操作していた端末の画面を差し出した。そこには、部分的には破損しているものの、ロードセクターは修理可能ということが示されている。

 

 

「幸いなことにエンジンやシステム。それに機能は止まっているがAIも問題はない。ロードセクターは、甦るよ」

 

「本当、ですか…」

 

 

涙を浮かべる光太郎の横から桜が自分自身も涙目になっていながらもハンカチで義兄の目元を吹いてくれている。慎二もメデューサも、涙こそ流してはいないが胸を撫で下ろしていた。

 

 

「そして修理するだけでなく、大幅な改良を加えようと思う。これからの戦いにはロードセクターの力も必要だろう?」

「え?」

 

明の意外な提案に、光太郎は先ほどとは別の画面に切り替わった端末を見る。そこにはロードセクターの面影を残しつつも全体が強化される設計図とプランが表示されていた。

 

 

「これは、一体だれが…」

 

「信じられないだろうが、ロードセクター自身だよ」

 

全員が明の言葉を受け取るのにしばしの時間が必要だった。

 

どうやらロードセクターはクライシス帝国が出現し、光太郎がRXとパワーアップを遂げた時点から自分自身の強化プランを組み立てていたらしい。

 

これはアクロバッターにすら明かしていなかったことらしく、後ほど話してみると隠し事したことにかなりの不満を漏らすのだった。

 

 

 

「…わかりました。手伝いが必要な時は、いつでも呼んで下さい。それに、無償で手伝ってくれる知り合いがたくさんいますからね」

「ほう、そいつはありがたいな」

 

互いに笑顔で握手を交わした後、光太郎は先ほどとは違い、笑顔でロードセクターへと目を向ける。その主人の笑顔を窓の外から伺っていたアクロバッターとライドロンは戦線を離脱する友へと言葉を送っていた。

 

 

 

(アリガトウ。ソシテマッテイルゾ、ロードセクター)

 

(ソレマデノアイダ、ワタシタチガコウタロウトトモニタタカイヌイテミセル)

 

 

 

 

命を持つ2台のマシンは、その身を張って光太郎を守った仲間へ敬意を表し、決意を新たにするのであった。

 

 

 

 




ということでライドロン登場、セクやん一時戦線離脱でございます。

ですが、皆様の応援次第では早く登場するかも…しれません。

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