今回にて解禁となりますゆえ、もう好き放題書いても大丈夫であります!
では、17話です!
完成したライドロンに命を宿す方法を模索するが一向に考えが浮かばない間桐光太郎であったが、親友である紫苑良子との会話の中である可能性を思いつく。
その為にある場所へと向かうことをメデューサに伝えたと同時に町の方で謎の爆発事故が発生する。嫌な予感を抱いた光太郎はメデューサにある場所へ向かうことを任せ、急ぎ爆発の起きた場所へと急行する。
光太郎から聞いた場所へ向かう為、既に自らエンジンを灯し何時でも発進できる準備をしていたアクロバッターと共にメデューサは託された役目を果たす為に移動を開始した。
一方、爆発の起きた工場地帯へと到着した光太郎は敵の不意打を浴びてしまうが咄嗟に仮面ライダーBLACKへと変身しこれを回避。
姿を現した敵…怪魔ロボット ガンガディンが自分をおびき寄せる為に爆発を起こした事を知り、怒りを向ける光太郎は拳を固く握りしめると敵の攻撃を浴びながら攻撃を繰り出すのであった。
「トァッ!!」
「っ…!」
敵の砲撃を避けることなく飛び込んでいく光太郎の拳はガンガティンの胸部へと衝突。鈍い音が響くがガンガディンの胴体は傷一つ負わないものの、衝撃までは殺しきれずに数歩後退してしまう。
そしてその隙を光太郎は逃さずに次々と攻撃を繰り出していく。回し蹴りを打ち出して発生した回転をそのまま生かして肘打ち、さらに後へと下がったところへ掌底を放つがその手は空を切る。
「ムッ!?」
再び連射される砲撃を前方に転がりながら逃れた光太郎は体勢を整えて空を見上げる。背中のバーニアから火を噴かせて浮遊するガンガディンは一定の距離を保ったまま両手・両肩に備えた武器を再び光太郎へ狙いを定めると無数のエネルギー弾を発射。
路面を蜂の巣へと変えながら迫る攻撃を光太郎はなんとか逃れながらも距離を取り、空を見上げた。
「よし、今なら…トァッ!!」
意を決して強く路面を蹴り、屋上へと着地したと同時に輝く太陽を掴むように天へ右手を翳し、左手をベルトの前へと移動する。
「太陽よ…俺に力をッ!!」
右手首の角度を変え、ゆっくりと右腕を下ろすと素早く左肩の位置まで手首を動かし、空を切るような動作で右側へと払うと握り拳を作り脇に当てる。
その動作と同時に左手を右から大きく振るって左肩から左肘を水平にし、左拳を上へ向けた構えを取ると、それがスイッチとなり光太郎に更なる変化が始まった。
光太郎の赤い複眼の奥で光が爆発する。
体内に宿ったキングストーンの力と光太郎へと降り注ぐ太陽の力が融合した『ハイブリットエネルギー』により光太郎のベルトは2つの力を秘めた『サンライザー』へと変化。
サンライザーから放たれる2つの異なる輝きが光太郎の全身を包み、彼を『光の戦士』へと進化させる。
黒いボディの一部が深い緑色へと変わり、胸部には太陽の力をエネルギーへと変換する『サンバスク』が出現。よりバッタへとイメージが近づいた仮面、より強く光る真っ赤な目を思わせる複眼と一対のアンテナ。
再び右手を天に翳した光太郎は敵に向かい、名を轟かせた。
「俺は太陽の子――ッ!!」
「仮面ライダーBLACK!!RX!!!」
「ようやくお出ましか」
クライス要塞の一室で光太郎とガンガティンとの戦いを傍観するガテゾーンはモニターでRXとなった光太郎が浮遊するガンガティンへと向かい跳躍する姿を見て思わず声を漏らした。
今日こそは、自分の造り上げた怪魔ロボットがクライシスの宿敵である仮面ライダーを葬りさる日となる。その為に敢えて他の隊長の立てた作戦に与することなくRXの戦闘データの収集に徹し、怪魔ロボット最強のガンガディンを完成させ、今日という日を迎えたのだ。
勝利するための条件は全て揃っている。後は結果を待つだけなのだが…
ガテゾーンはどこかで、自分の懐く別の結果となるのではないかという考えを過らせてしまった。
今までの戦いで起きたように自分の想定を上回る力を、初めてRXとなる前に自分の質問に答えたように、理解が及ばない結果を見せてくれるのではないかと。
(何を馬鹿な…)
その考えを直ぐに否定する。なぜ自分の造った怪魔ロボットが敗北する未来など考えるのか。RXの始末が終わった後に自身のAIにバグが発生していないかを検査しなければならないと再びモニターへ目を向けるガテゾーンに別の情報がリークされた。
「なんだと…?」
ガテゾーンが手にするパッドを操作し、光太郎達の戦いを中継されているものとは別の映像が画面の隅で再生される。
それは高速道路で他の車両を次々と追い抜いていく青いバイク…アクロバッターと操縦するメデューサの姿だった。
「あれはRXのサーヴァント…主が戦っているにも関わらず別行動、か」
クライシス帝国の標的はあくまでRXだ。取り巻きの人間や、その力をほぼ失っている英霊がどんな行動を起こそうなど眼中にない。捨ておけばいい。
…というのがボスガンやゲドリアンの考えであろうが、ガテゾーンはこれまでの戦い…さらに遡ればゴルゴムとの戦いでも間桐光太郎の傍には常に彼らがいることを認識し始めていた。
生を受けたライダーのサーヴァントであった女を除き、血縁関係の無い弟と妹は魔術に関わっているようだが所詮は人間。だが、彼等が光太郎を勝利に導いたことは少なくない。
もし、別行動中のサーヴァントによって何かを齎すとしたのならば―――
「…テストも兼ねるとするか」
ガテゾーンは地球前線基地へと無線を繋ぎ、生産ラインに入った試作機を起動するように現地のチャップ達へと指示を飛ばす。
勝利を確実にするために。
「これで、三度目となりますね」
光太郎がまだ秋月の姓を名乗っていた頃。その場所には親友である信彦とその妹である杏子、両親と共に訪れていた峠へと辿りついたメデューサは花が添えられている石の山の前で一礼し、頭を上げると石にぶれた文字で『父さん』と刻まれた文字が目に入った。
ここは、かつてゴルゴムのオニグモ怪人によって惨殺された光太郎の養父、秋月総一郎が埋葬されており、その左右には娘と妻の墓石も作られていた。
しかし、後にその2人が生存していることが明らかになった為、この地で眠っているのは総一郎だけとなる。
「…今回はこのような形でお邪魔して大変申し訳ありません。しかし一刻を争うため、この場を荒らす無礼をお許しください…」
そして一歩下がったメデューサは辺りを比べ一度掘り返された地面の上に立ち、手にした鉄杭を振りかぶり先端を足元へと突き立てた。
鉄杭の先端が触れた直後、紫色の魔法陣が現れて押し付けられる鉄杭と拮抗するがメデューサがさらに力を込めると敢え無く砕け散り、破裂音が木霊すると共に土煙が舞い上がった。煙が晴れると直径50センチ程の窪みが発生。その中央には土に埋まっていたのであろう金属製の小さな箱が顔を見せていた。
箱を手に取り、土を丁寧に払い蓋を開けるメデューサは、以前と変わりなく澄んだ輝きを放つそれを手に取る。
ゴルゴムとの最終決戦時。
仲間達の助力を得てゴルゴムの支配者である創世王を倒すことに成功し、続いて立ちふさがったシャドームーンと最後の戦いを迎えようとした光太郎へギルガメッシュは宝庫からある物を取り出し、投げ渡した。
それは持つ者に加護を与えると伝えられているクジラ怪人の一族の秘宝。小石程の大きさではあるが紐でくくられた命のエキスの結晶体であった。
身に着けた光太郎は激闘の末にシャドームーンに勝利し、仮面ライダーの姿を保てなく程まで消耗した身体に鞭打ってひきずりながらもついに大聖杯へとたどり着く。
そして最後の手段…僅かに残ったキングストーンの力を火種にして大聖杯に溜まった魔力を爆発させて大聖杯を消滅させる方法を選択した光太郎は魔力の泉へとその身を投げ出した。
浄化され、無色透明の魔力に落下する寸前、これで全てが終わると考えた光太郎の中で自分に『我が儘になれ』と言って消滅したサーヴァントの言葉が甦る。思うぐらいなら、許されるだろうと光太郎の脳裏に浮かんだのは、過去に自分へ願いを託して滅した祖父と同じ願い。
『みんなと、もっと生きていきたい』
その小さい願いが、奇跡を起こした。
大聖杯に溜まった無尽蔵の魔力
神秘の塊であるキングストーン
命のエキスの力が凝縮された結晶体
3つの力が重なり、大聖杯の消滅と共にその座へと還るはずのサーヴァント達に新たな命を与え、冬木の地へ留まらせるという誰もが驚愕するしかない結果を生み出した。
戦いが終わりしばらくして、結晶を返却しようと間桐家に乗り込んできたギルガメッシュに差し出した光太郎であったが当の本人は受け取らずに持ち込んだゲーム機をリビングに設置されているテレビへの接続作業に勤しみながら語るのであった。
『我の手で真価を発揮せぬものなど宝物庫に入れる価値はない。精々有効に使うのだな』
…などと遠回しに譲るというギルガメッシュがこちらに顔を決して向けようとしない姿に頬を緩ませてしまう光太郎達。だが、結晶は光太郎を甦らせただけでなく、以前の数倍の力を与えた命のエキスと同等の力を宿しているとすれば、その力を狙う輩が現れる可能性がある。
話合った結果、どこか人の寄り付かない場所へ隠すということになり、秋月家の思い出の地が選ばれたのであった。
それとは別に、もう一つの理由が光太郎から述べられている。
『俺に生きるという意味を最初に教えてくれたのは、父さんだから…預かってもらいたいんだ』
誰も異論を上げることなく決行となり、光太郎とメデューサはゴルゴムとの因縁に終止符を打ったという報告と共に、父の墓前に結晶を入れたケースを埋めた後にメデューサの手で簡易的ではあるが土地のマナを利用した結界を張ることでこれまで隠し続けていたのである。
(…結界の術式は私とメディアによって組まれたもの。解除できるのも私達だけということを見越して光太郎は私に任せてくれた。ライドロンに命を灯す、唯一の希望を)
手に取った結晶を握り、再度総一郎の墓へと頭を下げたメデューサは踵を返し、急ぎアクロバッターが待っている参道へと向かい駆け下りていく。今回はどのような敵が現れたのか定かではないが、もしライドロンの力が必要な敵であるのならば急ぎ戻らなければならない。
焦るメデューサが茂みを抜けて山道へ出た直後、彼女へ無数の弾丸が迫っていた。
轟音と共に彼女が寸前まで立っていた背後の樹木に幾つもの穴が作られ、煙が上がる光景を見てゾッとしたメデューサは戦闘装束へと変わり、自分に向けて不意打ちをしかけた不逞の輩を睨む。
「彼方達は…」
メデューサに向けて銃撃を放ったのは、クライシス帝国の雑兵チャップ達だ。しかもそれだけはなく洗脳されたゴルゴムの怪人素体の群れ。その奥には鎖で全身を拘束され、もがき抗っているアクロバッターの姿があった。
「アクロバッターッ!?」
「キヲ…ツケロ。コイツラダケジャナイ」
音声と共に頭部を左右へと振るうアクロバッターの言葉通り、大地を震わせるような足音を響かせてソイツ等は現れた。
「なっ…」
メデューサが驚くのも無理はない。
その身体は機械…サイボーグであることを除きかつて光太郎を苦しめたサイ怪人・タカ怪人と類似した姿であり、生気をまるで感じさせないその雰囲気は生体の部分など一切なく、完全な機械であることが伺える。
「ターゲット…サーヴァントヲ確認」
「コレヨリ殲滅行動二移行スル」
モーターによる駆動音を響かせてサイ怪人型は両手に備えたマシンガンを前方へ向けながら前進し、タカ怪人型は背中の翼を展開。彼女の知るタカ怪人を遥かに上回る速度で上昇、急行下しながら腕より鋭い刃を出現させ、メデューサへと狙いを定めた。
「く、思ったよりも早い…!」
光太郎は自身の攻撃を次々と回避するガンガディンのスピードに翻弄されながらエネルギー弾を手刀で弾いていく。
厄介なのは敵の背中に装着されているブースター…360度に展開し、物理法則を無視しているような起動で高速移動する為に光太郎は触れる事すら許されない状況にある。
(なら、一か八かだッ!)
光太郎は立ち止まり、腕を交差したまま敵の攻撃を浴び続ける。正面、左右、背後。様々な方角から射撃を受けていくが大きなダメージを負う程ではない。勝機が来るその時まで、光太郎は守りに徹すると決めた。
「…………………………」
動かない標的を警戒しつつも攻撃を緩めないガンガディンは両腕による攻撃を意地しつつ、両肩のキャノン砲へエネルギーチャージを始める。先程まで両手の武器と同様に連射での攻撃も可能であるが、エネルギーを溜める事によって単発ではあるが威力は連射時と比べ数十倍にも膨れ上がる。
その一撃を加えれば敵も一たまりもないだろう。倒すことは出来なくとも、大ダメージを与えることが期待される特大のエネルギー弾を両肩から発射し、その弾道は間違いなく敵へと到達した。
「ガァッ!?」
エネルギーの塊は光太郎の腹部へとめり込み、重い悲鳴を上げた同時に大爆発を起こす。
煙の中へと消えた標的が健在であるか熱センサーを起動させるガンガディンだが、それには何の反応も示さない。あの攻撃で四散したのであれば御の字ではあるが、『破片』の一つでも確認しなければ勝利したと言えないと創造主であるガテゾーンにプログラムされている。
ようやく煙が晴れたその場所は捲れたアスファルトの残骸と、叩き割られたマンホールの蓋が散らばっていた。光太郎は攻撃を受けた直後、爆発に紛れてこの地下へと潜ったのだ。
「…奴め、地下から」
「その通りだよ」
音もなく敵の背後まで接近した光太郎は振り返るよりも早く、手刀を敵のアキレス腱であるバーニア部へと一閃。
風を切る音と共にバーニア部へ大きな亀裂が走り、火花を吹かせている。これで先ほどまでの移動はできまいと光太郎は拳を引き、ガンガディンの胸板へストレートパンチをお見舞いした。
「トァッ!」
掛け声と同時に命中した光太郎の拳によって吹き飛んだガンガティンは二転、三転と地面を転がり、手にした銃器を杖替わりに立ち上がろうとするが、スピードを生み出す為に軽量化したことが仇となったのだろう。カモシカのような細い脚で重武装した上半身を起こすことが出来ないでいた。
「貰ったッ!!」
防御に徹したため、RXでいられる時間は残り少ない。
一気に勝負を決める為に光太郎は膝を着き、広げた右腕をアスファルトへと打ち付ける。
地を強く蹴って跳躍し、身体を後転しつつも前方へと落下するという離れ業を見せながら両足にエネルギーを集中。未だ起き上がれないガンガディンに向けて身体を捻りながら合わせた両足を突き出した。
「RXッ!キィックッ!!」
光太郎のドロップキックがガンガディンを捉え、命中すると確信した光太郎。その判断は間違っていない。だが、それは光太郎の求める結果とは異なるものであった。
「なっ!?」
光太郎のキックが命中する寸前。
ガンガディンは両手の銃口を路面へと押し付け、そこからエネルギーを放射することで破壊された推進部変わりにして離脱したのだ。
しかも腰から上部分のみが飛び上がり、切り離された下半身は光太郎のキックを受けて粉々に砕け散ってしまう。
(なんだ…脆すぎる?)
何度も自分の拳を叩き込んだ上半身と違い、なぜここまで下半身の強度は弱いのか。疑問を抱きながらも両手からの噴射で浮いているガンガディンを睨んだ。
いや、悩む時間も惜しい。敵は半壊状態にある。あとはどうにかしてもう一度キックを叩き込めば勝てると構える光太郎は少しずつ、自分の立つ一帯が小さな振動が起きていることに気付く。
「これは…地鳴り?いや…」
違う。大きな何かが地響きを立ててこちらに接近しているのだ。小さな揺れは大きな振動となり、その正体は光太郎の背後にあった工場の壁を突き破り、現れたのであった。
「グ…ガアァァァァァァッ!?」
光太郎を跳ね飛ばし、キャタピラを回転させて進むそれはガンガディンの真下へと到達すると反転させて急停止。うつ伏せに倒れた光太郎は痛みの走る腕で何とか上体だけを起こして自分を吹き飛ばした相手を見て思わずその名を擦れた声で呼んでしまう。
「戦車…なのか?」
光太郎の知る陸上戦車と比べて遥かに小型ではあるが、その重厚な姿と二門の砲身が備えている姿から嫌でもその名を連想してしまう。さらに、この場で光太郎へ攻撃し、ガンガディンの下へ停止していることから、完全に敵であることを証明している。
「どうやらエネルギーのチャージは完全に終わったようだ。これまで貴様に対し小手先の攻撃しかかけられなかったのがようやく報われる」
「何ッ…?」
ふら付きながらも立ち上がった光太郎の身体は陽の光を浴びたことでダメージは回復されたが、敵の言葉に
「つまりだ。今から俺本来の戦いが出来るということだ。完全な姿でな」
ガンガディンの放った言葉に応えるように小型戦車に変化が生じる。
一対の砲身が左右にスライドし、中央から接続部が出現。ガンガティンは手の武器からの噴射を弱めながら降下し、切り離した腰部から腰戦車と同形の接続部を出現させ、結合。
エネルギーが全身に行きわたり、モノアイが強く発光したガンガディンは真の姿を現した。
「さぁ、覚悟しろ!仮面ライダーッ!!」
再び始まったエネルギーの弾幕に光太郎は防御の体勢を取る光太郎だったが、先のように攻撃を弾こうと手を振るうが―――
「なっ…!?」
逆にエネルギー弾の威力によって腕が振りほどかれ、光太郎の全身に次々とエネルギーの塊が叩き込まれていく。
(これは…さっきまでと威力もスピードも段違いだッ!!)
次々と打ち込まれる攻撃に段々と後退していく光太郎は交差した腕の隙間からガンガティンが元より戦車へ常備され、今では両脇に装備された砲身を真上へと向きを変えて何発もの砲弾を打ち上げていることに気付き、それを追って視線を空へと向けた。
「何を…」
「貴様を倒す仕上げだ」
攻撃を続けるガンガディンの言う理由を光太郎は絶句して知る事となった。
上昇を続ける砲弾は数百メートルの上空で次々と爆発し、それを引き金に雲が空を覆い始める。先程まで澄み渡る青空は灰色となり、燦々と輝いていた太陽の輝きを閉ざしてしまった。
「あれは唯の雲ではないぞ。太陽の光を完全に遮断するナノサイズの反射板を含めた一級品だ。これで、貴様は太陽の光を浴びて再生をすることはできん」
「…っ!」
敵はそうまでして今回は仕掛けてきたのかと光太郎の焦燥感が高まっていく。
自分をおびき寄せた時点で、全ては計画通りだったのかもしれない。敢えて威力を調節した武器で戦いながらRXでいる時間を引き伸ばし、姿を保てる時間が迫ったところで自分の得意とする接近戦を許さない距離を置いての攻撃。
そして太陽の光を遮ることで戦いのダメージを再生させる事も許さない状況へと追い込んでいく。
光太郎は、敵の策に完全に嵌められた。
「さぁ、くたばるがいいッ!!」
全ての砲身、銃口を前方へと展開したガンガディンの砲撃が光太郎へと迫る。光太郎はなす術なく、全ての攻撃をその身に受けるしかできなかった。
「グアァァァァァァァァァァァァァッ!!」
爆炎にその身を焦がされる光太郎の叫びが、一帯に響いていた。
「これまでの戦いをただ見ていただけじゃねぇ。全てはこの時のためよ…」
モニターで追い詰められる光太郎に聞こえるはずもない声をガテゾーンは漏らしていた。これまでの戦いのデータから得た敵の欠点を付いた完全な作戦。
RXでいられる時間や太陽から受ける恩恵。その全てを断ち切られた光太郎には勝てる手段はもうない。
「これで逆転できるってんなら、見せて見ろ…」
「あぐっ!?」
木の幹へと身体を叩き付けられ、ズルズルと落下するメデューサはボロボロとなりながらも戦意を失わぬ目で前方の敵を睨む。
「殲滅ヲ続行。殲滅ヲ続行」
「芸がありませんね…それしか話せないのですか?」
何度か攻撃を当てることができても表面に傷を負わせることしかできず、ダメージを与えてすらいない。それに加え、チャップ達の援護射撃で回避に走ってしまい攻撃にまるで集中できない。だが彼女の意識を乱しているのはそれだけではなかった。
(光太郎…!)
今も尚、彼との繋がりが生きているメデューサには光太郎が危機を迎えていることが分かっていた。故にこの場を離脱しなければならないが、敵は見逃してくれないだろう。
こうなればとメデューサは眼帯を外し石化の魔眼とは別に光太郎と共にいた事で得た力を解放しようとするが―――
「その力を使うのはかまわんが、この後の事に支障が出るのだろう?」
そんな聞き覚えのある声が耳に響いたと同時に黒と白の短剣が次々と機械の怪人へと叩き込まれ、メデューサの前に着地した男は赤い外套をはためかせ、新たに出現させた夫婦剣を構える。
「アーチャー…なぜここに?」
「それに答えたいのは山々だが、君にはすべきことがあるのだろう?」
自分のマスターと同様に答えをはぐらかす褐色の男は視線を鎖で拘束されていたアクロバッターへと向けると、そちらにも現れた人物に今度はアクロバッターが声を上げて驚く番だった。
「タケル…?ナゼココニ?」
「遅くなってしまったな。こいつ等は我々に任せるがいい」
額を黒い帯で縛り、黒で統一された忍者のような装束を纏った赤上 武は両手に持った刀でアクロバッターを束縛していた鎖を切断し、その切っ先を警戒するチャップや素体達へと向けた。
「タケル…貴方まで」
「事情はそこの男から聞いている。光太郎殿を助けにいくのだろう?」
「ならば早くいけ。この場は押さえておいてやる」
「…感謝します」
短く言葉を切ったメデューサは助っ人2人に警戒する敵を掻い潜り、並走するアクロバッターへ飛び乗ってその場を離脱する。後を任せた2人の方へ振り返ることをせず。
メデューサ達の姿が見えなくなったことを確認し、改めて武と並び立つアーチャー武器を握り直すと不敵な笑みを浮かべた。
「…本来なら関わる事ではないのだが私が手伝った手前、あの車にはしっかりと動いてもらわないと困るのでな。すまんが、貴様達の邪魔立てさせて貰おう」
「素直に助けるとは言わんのだな。だが、意見だけなら一致している」
アーチャーの言い分に苦笑しながらも武は賛同し、未だこちらに仕掛けてこない敵を睨む。
二刀使い同士の共闘が、ここで始まろうとしていた。
ガンガディンは合体ロボットなのでした!…いや、本当はそうなんだろうという幻想を今日まで押し付けた結果、この小説ではそういった仕様となっただけなのですがね。
色々と追い詰められた光太郎は逆転なるのか。その勝利の鍵は、メデューサが握っております…
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