Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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最近、休日が削られてしまうことが多すぎる…だからと言って平日が…

と、これ以上は愚痴ではなく13話を載せたいと思います!



第13話

餌食となるはずの獲物によって『自分達』が逆に切り刻まれた事実よりも、男は自分の前で正体を現した者への興味が勝っていたのかもしれない。

 

 

人としての肉体を捨て、その身に数百を超えるモノを宿す男はただ、自分はどうなってしまうか、その先にあるものは何なのかを探求し続けていた。だが、そう考えていられるのも時間の問題。

 

 

いずれは知性が欠落したモノへと成り下がってしまうと分かり切っていた男はせめて自分が自分でいられるうちにその答えを求め続ける中で、1つの可能性を見つけてしまった。

 

 

人という器へ収まるにはあまりにも強大であり、許されず、認められない凄まじき力を内包した存在を…

 

 

吸血鬼…しいては地球上の生命体全ての理解を超えた神秘中の神秘『キングストーン』

 

自分とは宿すモノは違えど、扱えば自分自身へ滅びを齎す程の世界(ちから)を持った存在がこうして対峙している。

 

 

男…ネロ・カオスは目の前にいる世紀王へはどう足掻いても敵わないという死徒としての本能よりも、自分の求めた可能性の一つを垣間見る好機という結果を追い求める理性が勝ってしまった。

 

 

ゆえに引かない。

 

 

自分達を100消費したとしても、この男が持つ力を確かめてみせる。そして知ってみせる。

 

 

自身を飲み込む力を持った者とは、なんであるのか。

 

 

 

ネロ・カオスはその身に宿る野獣をさらに分裂、顕現させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(カッコつけて啖呵切ったいいけどよ…分かってんだろ?)

「言われるまでもない」

(そうですかい。なら、3分以内にお願いしますわ)

「……………………」

 

アンリマユへ何の言葉も返さず、シャドームーンとなった信彦は無言で掌に力を込め、緑色の光を帯電させる。

 

 

3分間。

 

 

それが信彦がシャドームーンとして戦える限界を示す時間だ。

 

先の戦いでゴルゴムの首領、創世王との戦いでキングストーンの力を制御するベルトを損傷し、その上で力を限界以上に引き出した状態で仮面ライダーBLACK…間桐光太郎と最後の決戦の中で完全に破壊してしまう。

 

そのまま命を失われると思われたが、大聖杯の消滅時に放たれた魔力と光太郎の願いによりサーヴァントが新たな命を得たと同様にシャドームーンは命を取り留め、魂だけの存在であったアンリマユを身体に宿し現在のような状態となってしまっていた。

 

勝利を喜ぶ光太郎達へ悟られぬように去ったシャドームーンは残されたゴルゴムの秘密基地の一つで損傷したベルトを修理することに成功するが、それ以来シャドームーンの姿となるとキングストーンから溢れる力によって全身に激しい痛みが走り、関節の節々から緑色のエネルギーが漏れ出す状態に陥ってしまった。

 

一つの身体に二つの魂が宿った為か、それともキングストーンが拒絶反応を起こしているのか。

 

原因は未だに不明であり、分かっていることはシャドームーンでの戦闘は3分間。キングストーンの力を全開に引き出しての戦闘は1分…いや、10秒も持たないだろう。

 

それ以上の戦闘を行った場合、シャドームーンは力を振るうどころか自身の力によってダメージを受けてしまい、信彦の姿へ戻ったとしても暫くは身体をまともに動かすこともままならない。

 

その為、今までは姿を変えず聖堂教会や魔術協会の追手が現れた時も時も信彦の姿のままであしらっていた。

 

だが目の前の存在はそうは行かない。先程の様子では人の姿ままだど吸血どころか、身体そのものを捕食されかねない。何匹の使い魔を使役しているのかは分からないが、一瞬で決着をつける。

 

信彦の方針は正しかった。しかし、シャドームーンでいられる時間が限定されているという焦りが結果として彼の洞察力を曇らせてしまうと後に気付かされることとなった。

 

 

 

 

 

 

信彦を囲う獣の群れはネロの号令など待たず咆哮を上げ飛び掛かる。

 

対して信彦は腕に帯電させた力を路面に向けて解き放つ。

 

アスファルトへバチバチと音を立てて浸透したシャドービームは信彦の周囲へと広がり、一斉に上に向けて放電。飛び掛かった獣達の肉を焦がし、血を沸騰させ、動かない肉の塊となりバタバタと倒れていく。

 

 

続けて現れた全長10メートルを超えるワニは信彦を丸のみにしようと巨大な顎を上下に解放。目標を捉えて勢いよく口を閉じようとするがワニの上顎を指先で、下顎をつま先で止められてしまう。懸命に顎を閉じようと力を込めるが微動だに動かすことが出来ない。信彦は下あごを止めている足に体重をかけて地面にワニの下顎ごと踏みつけ、上顎を止めていた指を一度離しワニの鼻先へ五指が喰い込むまで強く握ると腕を振り上げる。ワニはブチブチと顎から上下に千切れていき、2つへと裂かれてしまった。

 

掴んでいたワニだったモノを放り投げ、ネロに向かい跳躍する信彦の眼前に今度はカラスを始めとした鳥類の群れが迫っていた。

 

 

群れの中には現代の地球では既に生息していない体長を持つ巨体を持つ肉食類も紛れているが、所詮は烏合の衆。

 

緑色の光を肘の黒い刺に宿し、すれ違いざまに切り裂かれ、翼が散らしていくカラスや鷲、同胞の最期など見向きもせず、鋭い爪を前方へと伸ばす巨鳥の足は信彦の身体へと突き刺さった。

 

だが、突き刺さった直後に信彦の姿はノイズが走ったように乱れると姿を消失させる。

 

混乱する巨鳥は周囲を見渡すが、標的である信彦は巨鳥のさらに上へと飛び上がっていた。冷たく輝く月を背後にして両腕のエレボートリガーを緑色に輝かせると眼下である巨鳥へ急落下。

 

信彦が地上へと着地していた時には、巨大な鳥は4つの塊へと変わり果てていた。

 

 

 

再びネロへと疾走する信彦の前に続いて立ちふさがったのはムカデ。

 

ただしその大きさは優に50メートルを超えており、ガシャガシャと軋ませる咢で信彦を正面から迫るが、信彦はその巨体を前にしても走る勢いを殺さずに強く握った拳をムカデの額へと叩き込む。

 

ムカデを粉々に砕くには、それだけで十分だった。

 

 

 

 

「…っ!?」

 

あと数歩でネロへ攻撃をしかけられる間合いへとなった信彦の前に出現したのは、獣ではなく彼自身とは因縁がありすぎる生物だった。

 

ゴルゴムの怪人。

 

恐らくはあの男に取り込まれた結果、使い魔と使役されているのだろう。意外な相手に一瞬驚いた信彦だったが、それはあくまで予想外の存在が現れた事に対してだけ。

 

目の前に立つのは自分の障害以外の何者でもないと判断した信彦は怪人を一撃で仕留め、目の前にしても表情を変える様子のないネロ・カオスに向けて手刀を真横へと振るった。

 

 

 

血が足元へ並々と流れる中、信彦の前に立っているのはネロ・カオスの下半身のみ。彼の背後にあるのは、原型をとどめていない生物達から漏れた血の海であった。

 

 

 

 

「…時間は?」

(50秒ってとこか?意外に苦戦したじゃんか)

「……そうか」

 

自分でも意外に時間が経過していたと考えた信彦は振り返り、亡骸に向かい手を向ける。目撃者がいては面倒な事になると判断し、全てを蒸発させようとシャドービームを放とうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すさまじき力だ。それも力の一端に過ぎないのならば、我らに伝わる伝承以上の存在であろう」

 

 

 

 

 

 

 

急ぎ振り返った信彦の視界に映るのは変わらずに立ち続けているネロ・カオスの下半身だったが、泥人形のように形を崩し、血の池へと溶け込んでしまう。

 

否、もとより血の海などこの場に存在していなかったのかもしれない。

 

赤いと錯覚していたその液体はどこまでも黒く、底がまるで見えない沼と気が付いた時には、信彦はその沼に足元から飲み込まれていた。

 

 

(ちょッ!?なんだよこれ気持ち悪ッ!!しかもこの泥の中、他にもうじゃうじゃといるじゃねぇかッ!!)

「そうか…奴は、そういう存在なのか」

 

泥は信彦の足元だけでなく、周囲全てを覆っている。アンリマユの言葉を聞き、それが何であるか理解した後であればどこから湧いてきたなどもう疑問すら浮かばない。この泥…泥となったモノは信彦自身が広めたものなのだから。

 

「あの生物達は…貴様の使い魔などではなく、『貴様自身』ということか」

 

「然り。もし最初の時点で見抜いていれば当に私は討たれていたかもしれん。だが、もう遅い」

 

泥から姿を現したネロ・カオスは信彦の攻撃を受ける前と変わらないコートを纏い、何の感情も思わせない表情でそう告げた。

 

 

信彦は誤解していた。

 

この死徒、ネロ・カオスは無数の生物を自分の使い魔として使役し、敵を追い詰めて配下を増やしていく吸血鬼の定説を行く者だと。

 

だが違った。ネロ・カオスに使い魔など存在しない。もし使い魔を総べるしか能のない死徒ならば信彦が倒した時点で焦るか逃亡を企てるはずだがネロ・カオスは次々と死んでいく生物を目にしても表情は何も変わらない。

 

当然だろう。生物達は信彦の攻撃を受けて身体を裂かれ、塵となったとしても死んでは無い。亡骸は泥へと還り、こうして信彦を飲み込もうと泥の中で胎動を続けているのだ。

 

それには一つ一つ、統一された『意思』も感じられた。

 

 

 

「全てが一つ。一にして全。それが私という吸血鬼だ」

 

 

ネロ・カオス

 

 

その名の通り身体に混沌を宿す吸血鬼

 

 

 

両手へと力を込めるが泥から飛び出した蛇が信彦の全身に絡まり、両手首が泥へと引きずりこまれてしまう。

 

 

「くッ!?」

(オイオイまずいぜ。あと1分ねぇぞッ!!)

「ならば…ッ!」

 

急かされた信彦は塞がれた両手に力をこめられない代わりに、腹部のベルトへと力を集中させる。

 

「むぅッ」

 

放たれた緑色の光を受け、泥は信彦をとっさに解放。腕からシャドービームを発射すると街灯へと縛り付け、ロープのように活用して泥からの脱出に成功した。

 

 

 

シャドーフラッシュを受け、その動きを抑制されたことに驚きつつも関心を隠せないネロ・カオスは距離を取った信彦へと目を向ける。

 

「…あの光。『私達』を怯ませるだけではなく、触れた者全てを取り込む『創生の土』の効果を一時的に言えど打ち消すとは…あわよくば貴様を飲み込もうとしたことは愚策だったか」

 

しかし、と言葉を続けるネロ・カオスの前で信彦は膝を付き、身体の節々から緑色のエネルギーが漏れ始めている。

 

信彦が姿を変えてから、3分以上が経過してしまっていた。

 

(あっちゃー、どうする?白旗上げる?)

「…通用する相手ならばな」

(うん、ありゃ通じないわな)

 

何時になく諦めだけは早いアンリマユはいつものようにそっけない答えを出す信彦が自分の軽口に乗ってくる様子から確信する。どうやら打つ手はないようだ、と。

 

相手を見ただけで能力、心理まで見抜いた上で戦略を練る信彦に取って、時間制限が付くのはデメリットの方が遥かに大きい。今回の場合は最初にシャドームーンの姿へと変わらなければ生物達に全身を食い尽くされる結果となっていただろうし、本体である死徒の特性も分析する時間もなかった。

そして時間を気にせず冷静でいられたのなら、最後に脱出する際に使用したシャドーフラッシュも、逃れるためだけでなく泥の底にいる生物達を暴走させ、自滅させるなどの策を講じることが出来たはずだった。

 

 

本当に、間が悪かったのだろうと溜息をつくアンリマユの視界には、テレビか図鑑でしか見た事がない恐竜の頭部を肩から生やすネロ・カオスが迫りつつあった。

 

表情は先ほどから変わらないはずだが、何故か落胆していると一目で分かってしまう。

 

 

「…内側に宿る力が神秘に足るものでも、制御する器は所詮人間であったか」

「………………………」

 

どうやら何かを自分達に見出していた様子だったようだが、正直知ったことではないというのが信彦とアンリマユの言い分だ。ネロ・カオスが自分…『自分達』のようにその身には大きすぎる力を持った者がどのような存在となったか見極め、求めた回答へとたどり着く礎となると期待していたとは思いもしないだろう。

その思惑が悪い方へと傾いた際の失望からくる怒りが、今にも自分達の『死』という形で晴らそうとすることだけは、はっきりと分かる。

 

 

 

「消えよ。その身に扱い切れぬ奇跡(ちから)を宿したことを恥と知れ―――」

 

 

随分好き勝手なことを…恐竜がこちらへと牙を向けたと同時に信彦は最後の抵抗として右手にありったけの力を込めた拳を叩き込もうと敵の接近を待つ。

 

 

こんな時、『奴』ならば例えキングストーンの力を失っていたとしても立ち上がっていただろうと拳を握った途端だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

信彦の眼前に幾本もの刀剣が舞いおり、信彦とネロ・カオスを隔てる柵の如く路面へ突き刺さっていく。

 

剣の雨はそれだけでは留まらず、信彦を噛み砕こうとした恐竜の目・鼻・耳という急所へ正確に射抜き、咆哮を上げながらネロ・カオスの体内へと還っていく。

 

突如として攻撃をしかけた相手が立つ電柱を見上げるネロ・カオスは、またも貴様かと言いたげに深く息を吐くと踵を返し、人間の姿へと戻ってしまった信彦から離れていく。

 

 

「…興が削がれた。二度と私の前へと現れんことだな」

 

 

闇へと消えた吸血鬼の去った後を息を荒げて睨む信彦の前に、結果的には自分達を救った者が着地する。

 

 

信彦は息を乱しつつも、自分の前で突き刺さった刀剣の形を見た瞬間、放った者が誰であるかよりも先にどの組織に属する者であるのか把握していた。

 

魔力で生成した黒鍵と呼ばれる剣を投擲に使用し、自分達を含む人間にとっては異端である存在を極端に嫌う者達。

 

 

聖堂教会の異端狩り…埋葬機関の手の者がこんなにも早く、しかもよりにもよってこのタイミングで自分の前に現れてしまうとはと信彦は続く不運を呪う中、相手はそんな心中などお構いなしに信彦の喉へ黒鍵の切っ先を突き付けた。

 

ウィンプルで覆う

 

「……………………」

 

(…なんつーか、最近の修道女ってのはここまでアグレッシブでバイオレンスなもんなのかい?)

 

アンリマユは街灯の光でようやく全貌が明らかになった相手の第一印象を口にする。

 

頭を覆うウィンプルと修道服という外見以外、教会で祈りを捧げる姿など想像すらつかない程に冷たい瞳でこちらを伺う女性が信彦を睨むこと数十秒。互いに言葉を交わさない状態が続く中、女性は信彦へと問いかけた。

 

「…質問をします。なぜ、貴方はネロ・カオスと戦っていたのですか?」

「…移動中一方的に襲ってきたので反撃しただけだ」

 

嘘はついていない。目的はあって歩き回ってきた所を突然食されそうになるなど、通り魔より質が悪すぎる。女性はやはり表情を変えずに次の質問をぶつける。

 

「彼方がこの街に滞在する理由は?」

「貴様には関係ない」

「……………………」

 

信彦の悪態にアンリマユは相手を刺激すんじゃねぇよ馬鹿野郎と絶叫しているが放っておく。特に相手も気にする様子もなく、ただ真っ直ぐこちらの目を見つめ続けている。その行為が何であるかを信彦が指摘した途端、初めて反応を示した。

 

「言っておくが、俺には暗示は通用せん。それに、嘘を言うつもりもない」

「っ………」

 

目を細めた女性は続いて信彦に問いかけた。その内容を耳にした時、これまですらすらと答えた信彦が初めて言葉を詰まらせてしまった。いや、答えられないというよりも、回答に困ったと言った方が正しい内容だった故に。

 

 

 

 

 

 

「彼方は遠野志貴と、どのような関係なのですか?」

「………………………」

 

 

 

 

なぜここであの眼鏡をかけた少年の名前が出てくるのかと悩む信彦を見て何か後ろめたいことがあると考えたのか、女性は黒鍵を握る手に力を込めている。

逆にこの女が志貴を知っている事を聞き返したい所であるが今は分が悪い。正直に答える事しか、今の信彦には出来なかった。

 

「…ただの顔見知りだ。この街についてからのな」

「では、狙いがあって彼に近付いた訳ではないと?」

「当然だ。むしろアイツからこちらに近付いてくる」

「そうなんですよねぇ。遠野くんって子犬っぽいところがありますし――――」

 

突然雰囲気の変わった女性は困ったものですと言わんばかりに額を押さえてため息を着いている。表情が急に変わった様子を見てやや目を点にする信彦の視線に気が付いた女性はハッとしてワザとらしくコホンと咳をすると黒鍵を収め、その場で跳躍。

電柱の上でスカートをはためかせながら、見上げる信彦へと告げた。

 

「…今回彼方は完全に被害者ですからね。教会からは全力で討ち取れなんて言われてますけど私には実害ありませんし、目的は別にありますのでここで失礼しますね」

 

最初にこちらへ剣を向けた人物とは別人のように笑顔を向ける女性はヒラヒラと手を振ってくる。

 

「それに、後輩の恩人に手を上げるなんてことはできませんから」

 

 

 

 

信彦がようやく歩けるようになったのは、彼女が去ってから1時間も経過した後だった。先に姿を消した吸血鬼の言葉が耳に残り、その手は血が滲むほど強く握りしめて…

 

 

 

 

その後、自分を追い詰めた吸血鬼が都内のホテルへ訪れた人間を犠牲にし、1人の少年によって討たれたと信彦が知ったのは数日後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あん時は、まぁドンマイ?)

「……………………」

 

未だ営業の再開の目途が絶たないホテルの全貌を眺めながら、信彦は飲み干したペットボトルをゴミ箱へと放り投げる。

 

あの時に受けた屈辱は今でも忘れない。だが、それを晴らすべき吸血鬼はもうこの世界から消滅している。

 

 

遠野志貴の手によって。

 

 

(今だったら間違いなく瞬殺できるのにね~あん時にボコボコにされた借りが返せなくていやぁ残念残念)

「………………」

(あの、どこで入手したのでしょうかその獅子唐―――)

 

自らの味覚を犠牲にしてアンリマユを黙らせた信彦は自分の手を見つめ、やがて力を込めて握りしめる。

 

 

 

「…俺が恨んでいるとすれば、あの吸血鬼でなく己の限界を恐れていた惰弱な俺自身だ」

 

 

限られた時間しか戦えないという焦りが、あの時の敗北を招いた。だが、そんな弱い自分は、もういない。新たな決意と力を得た今の自分ならば…と考えた時ズボンのポケットからベルの音が響く。

 

 

(…なに、メールか)

「…あのシスターからだ」

 

紆余曲折の末、何故か連絡先を交換したあの時自分達を救った修道女から度々メールが届くような関係となっていた。ただし、その内容は一方的なものばかりである。

 

 

(…はぁん?あのカレー女、まだ眼鏡のこと諦めてねぇの?いい加減観念しろっての)

「どうやら2人で出歩いている姿を見たようだ。なら、あと2時間は続くな」

 

信彦の言った通り、新着メールが届く音声が次々と鳴り響いている。こういった場合は本人の気が済むまで文章を打たせ、最後に一言添えるのが一番手っ取り早いと判断した信彦は携帯電話をベットの上に放り投げる。

 

 

(にしても…あんた、随分知り合い増えたわな)

「…知るか」

 

 

着信音が鳴り響く中、信彦のどこか照れ隠しを思わせる言葉にアンリマユは笑いを噛み殺すのであった。

 

 

 




ただで甦らせるなんてそんな甘えはお父さん許しません!

などとアホなことを言ってますが、凄まじい力を振るうにはそれなりの理由ときっかけが必要という自分のヒーロー論がある為にまだまだ力を抑えていきます。

どうやって力を取り戻すかは今後にご期待を…


さて、皆さんお待ちかね!ついに次回はあのスーパーマシンが…


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