Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

100 / 112
劇場版Fate もう最高としか言いようがありませんでしたねぇ。公開当日に拝見しましたが、もう一回!と思いきやこの天気…来週晴れていたら確実に行きたいですねぇ。

では、99話です!


第99話

間桐慎二が別世界で甦った怪魔妖族ズノー陣を討ち取ったと同時刻。

 

 

「…………」

 

 

慎二の体内で魂を別世界へ跳ばし続ける怪魔ロボットの攻撃を受け続けいたバイオライダー…間桐光太郎は全身から煙を吹かせ、微動だにせず立ち尽くしていた。

 

両腕をダラリと下げ、沈黙する光太郎にロボットは銃口を向けたまま魔法陣を展開し続けている。

 

 

(思った…とおりだ)

 

 

赤い複眼で怪魔ロボットへ悟られぬ程度に睨む光太郎は攻撃を受けつつも敵の分析を続けており、先に発見した一度砲撃を放った直後に僅かなタイムラグが起きるという以外に突き入る隙を捉えていた。

 

 

(あのロボットが攻撃を放つ条件。それは、俺が僅かでも奴に接近しようとした場合)

 

 

光太郎が慎二の魂を引き剥がす術式を止めようと接近した途端に、光太郎とはまるで位置が異なる箇所に狙いを定め、砲撃していた。これは攻撃を回避すれば慎二が命を落とす事と光太郎に悟らせ、敢えて攻撃を受けさせるという算段まで立てられていたのだろう。

結果、敵の計算通りに慎二の肉体を守る為に光太郎は攻撃を受け続ける結果となってしまった。

 

そして、もう一つ。

 

 

(攻撃を放ったと同時に、魔法陣が一瞬揺らいだ)

 

 

攻撃を防御する光太郎の目に映った、慎二の魂を別世界へと送り続ける魔法陣。ほんの僅かではあるが魔法陣を構成する陣が攻撃を放った直後…正確には攻撃魔術を放つ魔法陣が銃口に現れた時に、巨大な魔法陣にノイズのようなものが走っていた。

 

 

(あれは、魔力不足によって術式が維持できなくなった際に現れるものだって、以前慎二くんが教えてくれたな…)

 

 

魔術に関しては未だ不明点が多い光太郎へ、溜息交じりに解説された事があった。その中で、特に罠として仕掛けられた魔法陣には気を付けろと聖杯戦争時には注意されたものだ。

 

 

まとめると、怪魔ロボットには慎二の魂を肉体から離す術式、接近すれば慎二の肉体へ攻撃魔術・バイオブレードを貫通させない程の防御壁が備わっている。そして、常に展開している魔法陣と同時に別の魔術を行使した場合、魔法陣へと送る魔力が削がれてしまう。

 

 

どういった経緯でクライシス帝国が魔術を搭載した怪魔ロボットを開発したかは定かではないが、余程の隠し玉がない限り、魔術以外の機能は搭載されてない。

 

 

ならば、対応策はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ちょっと、正気なの?」

 

 

ロストドライバーのマニュアルを確認中であったメディアは突如、そんな言葉を呟いた。

 

 

目を開かない慎二を見守っていた一同の視線が困惑するメディアへと集まるが、メディアは気にする素振りもなく手を額にあて、虚空に向かい言葉をぶつけている。

 

メディアの様子からして、ここにはいない誰かと念話によって言葉を交わしていると考えた遠坂凛は、その念話相手が誰であるのかと顎に手を当てて予想する。見る限り、念話はメディアからではなく、相手から送られているようであり、この緊急時にメディア相手に念話を送る存在など、ただ1人しかいない。

 

 

「光太郎さん、ね」

 

「え…?けど、光太郎さんは魔術が使えないはずじゃ」

 

「忘れたの衛宮君?光太郎さんは大聖杯に触れた…以来人間になったサーヴァント達と深層意識のさらにしたで繋がっている」

 

「あっ…」

 

凛の予測に首を傾げた衛宮士郎だったが、彼女の説明で思い出す。

 

大聖杯を破壊したと同時に願いを叶えた光太郎は、契約していたメドゥーサだけでなく、元々大聖杯によって形作られていた他のサーヴァント達ともレイラインが微かに結ばれた状況となった。

 

そしてサーヴァント達は光太郎と意思を一つとした時、聖杯戦争時以上の力を発揮する事が可能となっていた。

 

 

「けど、それにはメドゥーサやランサーみたいに心を合わせる必要が…」

 

「そうね、私も聞いた話でしか聞いてないけど…」

 

 

 

「あの2人、最初に怪魔界へ飛ばされた時にもうその片鱗を見せていたようよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ…だから、先にしかけてくれ」

 

(全く…そんな状態でアレで仕掛けようだなんて、正気を疑うわ)

 

「はは…それは後で慎二くんと一緒に怒られるとするよ」

 

(フン…やるからには、結果を確実に出す事ね)

 

「…ああ!」

 

 

 

メディアの念話に力強く頷いた光太郎は、唱える。

 

 

同調開始|(トレース・オン)!!」

 

 

光太郎の赤い複眼とベルトの中央にある赤い結晶が紫へと染め上る。身体からは同様に紫色のオーラを放ち、怪魔ロボットへ向け、走り出した。

 

 

「ターゲット接近…」

 

 

機会音声を放つと共に、再度銃口を光太郎とは別の方向へと向け、魔法陣を展開しようとしたその時。攻撃も優先度の高いプログラムが実行され、攻撃用の魔法陣を展開できなくなってしっまう。

 

 

「ターゲット接近――攻撃用ブログラム実行…不可、術式再構築を最優先――――」

 

 

AIは、魔法陣の維持…否、魔法陣を再び張りなおさなければならなかった。

 

 

何故ならば、慎二の魂を剥がす魔法陣がかき消されてしまったからだ。

 

 

 

光太郎と力を共有し、本来の力を発揮した宝具…破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)によって。

 

 

 

光太郎が慎二の体内に侵入する際に数度、破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)によって魔法陣の初期化を試みたが、直ぐに魔法陣が再構築され、慎二の魂を剥がし続けた。これは陣そのものを消しても発生させる原因である怪魔ロボットが健在であるがゆえなのだろう。

 

そして光太郎の性格を分析し、慎二の体内を狙うという攻撃もプログラムされていたが、魔法陣を維持する事が第一目的であるが為に連射ができず、魔法陣が安定した時にしか次の攻撃が繰り出せない。

 

ならば、魔法陣からどうにかしてしまえばいい。

 

魔法陣を一度消してしまえば、怪魔ロボットは攻撃よりも防御よりも先に慎二の魂を剥がす事を優先させる。魔法陣の生成に魔力全てを集中させるため、攻撃魔術も防御魔術も使用できない。

 

メディアの破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)によって魔法陣が消された、今がその時だった。

 

 

 

「ウオオォォォォッ!!」

 

 

一気に距離を詰める光太郎に怪魔ロボットは銃口を向けるが、あくまで向けるだけ。魔法陣を生成している間は攻撃にまで魔力は回せない。

 

 

あと一歩。

 

一歩踏み込めば光太郎の握った武器の間合いとなるがその刹那、怪魔ロボットは自信の前に魔力による防御壁を展開した。

 

 

どうやら光太郎が接近すり間に術式を生成し、防御へと魔力を回せる余裕ができたようだ。

 

このまま光太郎の攻撃を防ぎ、先ほどと同じゼロ距離による攻撃を当てれば再び怪魔ロボットが有利となる展開となっていただろう。

 

 

光太郎の握る武器が、同じバイオブレードであった場合なら。

 

 

「くらえっ――」

 

 

 

それはメディアと力を共有させた事により、バイオブレードを変化させた短剣。

 

雷を現すかのように歪であり、虹色でありながら毒々しい印象を持たせる刀身を持つ短剣。

 

キャスターのサーヴァントであったメディアを裏切りの魔女と言わしめた象徴として現れ、いかなる魔術も初期化させる宝具。

 

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

 

 

逆手に持った短剣で光太郎は防御壁を貫き、ロボットの胸へと突き立てた。

 

 

 

 

「エラー発生、術式プログラム消失、攻撃魔術…エラー、防御魔術…エラー、エラー、エラー、error、えrror、Error――――」

 

 

刀身を引き抜いたと同時に次々と発生する機械音。ロボットの背後に展開された魔法陣は完全に消失し、モノアイは激しく点滅。どうやら怪魔ロボットに搭載された様々な魔術のプログラムごと破壊した事に成功したようだが、それだけでは終わらなかった。

 

 

 

「ガ…ガガガ…縮小回路…破損…ミクロサイズ維持…エラー…」

 

 

敵の身体が見る見るうちに膨らんでいく。いや、音声を聞く限り、元の大きさに戻ろうとしてるのだろう。このまま放っておけば、慎二の身体を突き破ってしまう。

 

 

「そうはさせるかッ!」

 

力の同調を解除し、複眼とベルトが再び赤くなった光太郎は怪魔ロボットの背後へと移動し、羽交い絞めにすると身体を液化。怪魔ロボットを包み込み、元来た道へと連れ出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来たわ。急いで準備を」

 

「はい!」

 

「そらよ」

 

 

 

光太郎と力を同調させ、普段着からローブを纏った姿となったメディアは破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を慎二の胸へ一度突き立てた後に水晶球へ光太郎の行動を映し出していた。自身の宝具を他の誰かが使うという複雑が気分となるが、そんな事は一時的な事。今分かっているのは光太郎が敵の魔術を完全に破壊した事。そして、敵が本来の大きさに戻ろうとし、光太郎がその前に慎二の身体から引きずり出そうという事だ。

 

 

メディアの言葉に従った桜は慎二の口を開き窓へと顔を向け、同時にクーフーリンが窓を全開にした。

 

直後に慎二の口からビー玉程の大きさである何かが飛び出した。

 

 

みるみるうちに巨大化していくそれはゲル状となったバイオライダーと怪魔ロボットであり、診療所の裏手である空き地へと落下した。

 

 

自力で立ち上がるロボットは慎二の体内にいた時と同様に、ひたすら機械音を鳴らし続けている。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 

同様に空き地へと着地した光太郎の姿も攻撃によって全身に焼け焦げた痕が目立ち、息を荒げている。だが、陽の光が差す屋外であれば話は別だ。

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

気合一閃と共に立ち上がり、左手をベルトに添え、太陽をその手に掴むように右手を天へと翳す。

 

光に包まれた光太郎の身体は瞬時にバイオライダーからRXへと変わり、腹部のサンバスクへ太陽のエネルギーが急速にチャージされ、慎二の体内で付け続けていた攻撃のダメージは見る影もなくなり、回復した光太郎は敵へと目を向けた。

 

 

「リボルケインッ!!!」

 

 

左腕を大きく回しながら広げた手を腹部のサンライザーへと翳す。

 

 

サンライザーの左側の結晶から幾層もの光の線が重なり、洗練された円形の柄が現れた。

 

 

柄を光太郎が掴むと同時にダイナモの中央が光を迸りながら高速で回り出し、サンライザーから柄を引き抜くと光のエネルギーが凝縮されたリボルケインが姿を現す。

 

 

「トアっ!!」

 

 

リボルケインを左手から右手に持ち替え、水平に構えた光太郎はその場から跳躍し、怪魔ロボットへリボルケインを突き立てるように落下。

 

 

 

「ギ…ガガガガガガガ…!」

 

 

光太郎は着地と同時に怪魔ロボットの腹部へリボルケインを深々と突き刺す。そして担い手である光太郎のエネルギーがリボルケインを伝い、怪魔ロボットへと流れ込んでいく。

 

 

「ムゥンッ!」

 

 

柄を握る力を強める光太郎はリボルケインをさらに怪魔ロボットへと押し込んでいく。敵が光のエネルギーを内包しきれず、背中から突き抜けたリボルケインの先端や身体の節々からエネルギーが火花となって漏れ出し始めていた。

 

 

 

「エラー…Error…エラー…」

 

もうその単語以外に言葉を発せなくなってしまった怪魔ロボットからリボルケインを引き抜き、光太郎は敵に背を向け円を描くような動きでリボルケインを振り回し両手首を頭上で交差。

 

そしてリボルケインを真横へと振るったと同時に、地へ沈んだ怪魔ロボットは爆発の中で消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、あれがRXの実力という訳か」

 

 

 

クライス要塞の指令室で一部始終の映像を眺めていたクライシス皇帝直属の査察官ダスマダーは特に驚く様子もなく、そのように述べた。

 

自ら立てた作戦がこうして失敗した事すら予測の範囲内であると言わんばかりである態度を見て、どこか腑に落ちないという表情をする四隊長へと顔を向ける。

 

 

「今回はRXの実力を見るためであったが、存外たいした事ないではないか。あの程度の相手に苦戦を強いられていたとはなぁ…」

 

「テメェ…俺の怪魔ロボット クワトロスを強引に奪っておいて随分な言い方じゃねぇか…」

 

「が、ガテゾーン落ち着けって…」

 

 

ワザとらしく両手を上げて自分達を見下す発言をされた上に、自身が開発中であった怪魔ロボットを利用された事に怒りを抑えられないガテゾーンをどうにか抑えようとするゲドリアンと同じく、ガテゾーンの肩に手を置いたマリバロンは疑問をぶつける。

 

 

「…魔術によってRXを追い詰めるという手段は感服に値します。しかし、なぜ地球人の魔術など利用したのですか?」

 

「その通り。地球人如きが開発した魔術など使わなくとも…」

 

 

妖術を誇るマリバロンから見れば、当然の疑問であったのだろう。自分達の力を侮辱しているとも取れたボスガンも反論しようとするが、それすらもダスマダーは一笑に付すとさも当然とでも言うように語り始めた。

 

 

「そんな事か。ならば答えは簡単だ。地球人が自分達で培い、発展させた技術で身を亡ぼす…当然の帰結とは思えないか?」

 

 

僅かに口元を釣り上げるダスマダーの言葉に戦慄を覚える隊長たちであったが、今まで口を噤んでいたジャーク将軍がガテゾーン達を庇うように割って入る。

 

 

「つまりは、今回RXの家族に仕出かした方法を今後も使うという事か?」

 

「その通りだ。今回はまだ実験段階に過ぎず、魂を完全に肉体から離す事は出来なかったが…その改良もじきに終わるであろう。今頃別の場所で解析が急ピッチで進められているのでな」

 

「それが終われば…対象は全ての地球人に向けるという事か」

 

「フッ…よく分かっているではないか」

 

 

流石はジャーク将軍と満足気に頷くダスマダーであったが、マリバロンは正気とは思えなかった。地球をクライシス帝国の支配下に置く為に邪魔者の抹殺は必要だ。しかし、だからと言って地球人全てを対象にするなどやり過ぎなのではと考えた時点で、マリバロンは頭を横に振った。

 

よりによって、最初に顔を浮かんでしまうのかあの少女であるなんて…

 

マリバロンの額に手を当てる姿を見たガテゾーンはどう声をかけていいかと迷う中、ダスマダーの声はある報告によって中断される。

 

 

 

「見ているがいいジャーク将軍。貴様ではなし得なかった地球人の抹殺など、私がすぐに―――」

 

「エマージエンシー!エマージェンシー!」

 

「…なんなのだいきなり!」

 

 

突如として小型ロボット チャックラムが指令室に現れ、同じ言葉を繰り返し始める。苛立ちを覚えたダスマダーは要件を言えと怒鳴ると、チャックラムは応じて報告を始める。

 

 

 

「秘密基地№99が何者かに襲われ壊滅状態!壊滅状態!」

 

「№99…私が魔術解析の為に人員を割いた場所ではないか!」

 

 

届いた情報に初めて嘲笑以外の表情を見せたダスマダーは指令室の映像を急ぎ切り替えるが、ノイズ混じりで映像は安定しない。

 

その代わりに、何かの破壊音。秘密基地で魔術を解析しているはずの私兵たちであろう阿鼻叫喚がスピーカーから響く。一体、モニターの向こうで何が起きているのか。

 

 

「…こっちに操作を渡せ。映像を安定させる」

 

「急げ!」

 

「へいへい…」

 

 

手を上げて申し出たガテゾーンなどに目を向けずモニターを睨むダスマダーの怒鳴り声に深く息をつきながらも、ガテゾーンは端末を操作。その直後に映し出された映像は、まさに地獄であった。

 

 

 

 

「こ、こいつは…」

 

「誰だ…誰なのだあの者は!?」

 

 

ゲドリアンとガテゾーンが指摘したのは、炎に包まれた基地内でも、見るも無残な姿となって床に散らばった護衛であったサイボーグ怪人の残骸でもない。

 

 

その中央に佇む、こちらに背中を向ける銀色の存在だ。

 

両手に真っ赤な刀身の剣を持つその者は、ゆっくりと振り返る。

 

 

「RX…いや、違う!」

 

「あの者は…もしや!?」

 

 

ガテゾーンはその者の巨大な複眼とアンテナを見て、大敵であるBLACKを連想したが、見れば複眼の色が異なる。BLACKの複眼が赤色に対し、映像に映し出されている者の複眼は緑色だ。

基地を襲撃した者の正体を悟ったマリバロンの反応しかたのように、その者は剣を振り下ろした。

 

恐らく、映像を映るカメラを完全に破壊したのであろう。

 

 

指令室内に、再びノイズだけの音声が鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 




最後に出た方は、とあるカレー好きさんに連れられて後始末をしていく過程で辿り着いたのです。そう、あのピアニストの…

お気軽に感想等頂ければ幸いです。

次回で100話かぁ…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。