試作小説保管庫   作:zelga

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その後どうなったか→新たな発見(?)&自身の立ち位置(?)→都市でのお仕事


試作その2 第5話

俺にだって訳が分からない件について。

 

 

 

あれから数年の月日が流れた。その間色々なことが起きたので、その中でも大きなことを順を追って説明していこう。

 

永琳の家に居候することになった俺は、日々永琳の実験台にされては悶絶時々気絶を繰り返す毎日を過ごした。と言っても最初の頃こそ毎日のようにやっていたが、半年を過ぎたあたりから研究方法を変えたので、あまり精神にダメージを負うようなものじゃなくなったのだ。

しかも実験は夕方から行うので、それまでは自由行動ができる。

 

だが最初の頃の俺は今まで都市とはかけ離れた森の中での生活に慣れてしまっていたので、いくら自由に動けると言っても何をしようか迷った。

 

そうしたらなんと1週間がたってしまった。それを見かねてか、若菜ちゃんが都市の案内をすると言って、俺を永琳の研究室から引きずり出した。その細い腕のどこにこんな力があるのだろうか、手を引かれながら俺はそんなことを考えていた。

 

うーん、こうしてみると近代都市っていうより未来都市って感じだな。明らかに俺がいた時代よりも技術が進んでいる。

 

「どうですか?」

「すごいな。見ているものすべてが新鮮だよ」

「私はここで生まれ育ったので見慣れていますが、やっぱり外から来た方にとっては新鮮なんですね~」

「まぁね。俺が生まれてから見てきた景色にこんなに文明が発達しているものはなかったから、本当に驚いているよ」

 

こんな感じで会話をしながら都市の中を歩き回った俺たちだが、終始周囲から視線を感じていた。最初の頃は若菜が注目されているのかと思ったが、周りの人たちから俺に対して疑念の感情を読み取れたので、そういうわけではないらしい。

 

 

 

じゃあ、一体何なんだ?。そこまで考えて、俺はようやく気付いた。

 

状況を確認するために言うが、若菜ちゃんの身長は大きい方ではない。同年代の中でも小さい方で、多分ギリギリ150に届いていないといった所だろう。そんで俺は相変わらず2メートル。

 

ここまでいったらもうわかるよな?

 

そもそも2メートルクラスの高身長の奴は少ない、ていうか日本人では前世含めて見たことがない。さらに若菜ちゃんの身長の低さも相まって、俺は余計にでっかく見えるのだ。

 

まぁ目立つ目立つ。道行く人は俺を見て驚愕の表情を浮かべて立ち止まる。チラ見だけでスルーしてくれるかと思った人は途中で急に首を振り返って二度見してくる。子供の中には泣き出す子まで出る始末だ。俺の顔ってそんなに強面だったかねぇ?

 

そんな俺の心を察してくれたのか若菜ちゃんが、怖くないですよ、ただでっかくて威圧感があるだけです!!。と励ましてくれた。若菜ちゃん、それ励ましじゃなくて追い討ちっていうんやで。

 

そんなわけで注目を集めてしまったわけだが、そこにトドメとなったのが、俺の住処が永琳の研究室というのがバレてしまっていることだ。まぁこれに関しては毎日のようにそこから出入りしているのだからばれるのは時間の問題だっただろう。

 

それよりもヤバかったのが、都市の一部の男性からの嫉妬だった。なんだあれ、どこぞの橋姫レベルの嫉妬を俺に向けて発しているぞ。

 

まぁ、これも理由は簡単。十中八九永琳だろう。

 

言うまでもないが、永琳は美人だ。それもかなり上位の部類に入るくらいの。さらに言えば、この都市を発展させた張本人である。容姿端麗、頭脳明晰。完璧超人なんて言葉は永琳にぴったりだろう。未知の事象を発見したら実験せずにはいられないという科学者らしい性質もあるが、そんなこと都市の連中は知らないだろうしな。

 

だがばれたのが思ったよりも早かった。その原因はどうやら俺が外に出るようになってしばらくたった頃に、若菜ちゃんが都市の人々に俺についてはなしたらしい。

 

その時彼女が一人で買出しに出ていて、俺がいなかったのをいいことに、質問攻めにあったそうな。

 

永琳から一部口止めされていた彼女は答えられる範囲で答えた。

 

Q.彼は何者?

A.外から来た方です。妖怪に襲われた私を助けてくれたのがきっかけで、今は永琳様の実験に協力しています。

Q.ていうか、あれって人間なの?

A.ノーコメントです。

 

Q.彼はどこから通っているの?

A.永琳様の研究室に居候しています。

 

 

 

ここで一つ補足しておこう。永琳の研究室は彼女の自宅の一階部分を改装してできたものなのだ。そしてそのことを大体の人は知っている。

 

 

 

・・・もう、わかるよな? この瞬間、研究室にいた俺は今まで感じたことないほどドス黒い感情を感じとった。当時若菜ちゃんがいた場所からかなり離れていたのに、だ。

 

いやぁ、嫉妬の感情ってすごくドロドロしているんだな。イメージは泥水というよりヘドロである。

 

そんなわけで一時大騒ぎとなってしまったのだ。おかげさまで、俺は外に出るたびに男共の嫉妬メンチを食らっている。まぁ、どれも一睨みすれば散り散りになっていくんだけどな。こればっかりはほとぼりがさめるのを待つしかないわ。と永琳は言っていた。いや、おまえが原因の一端なんだけどね?

 

 

 

とまぁ、こんなこともあり外に出づらくなった俺は、能力の練習をすることにした。と言っても同化やワームスフィアーはそうホイホイと使えるものではないので、人に変身する練習だ。

 

今でも人にはなれているが、人の見た目をした膜を表面に張っているだけなので表情が変わらないという欠点があるのだ。それに、食事ができない。

 

そう、食事ができないんだ。

今まで光合成してきたため食事について考えてきたことがなかったが、いざ前世で食べてきたような食事を目にすると食べたくなってきたのだ。だが、今の形態のままでは食事なんて無理なわけで。

 

そんなわけでいろいろ試行錯誤したのだが、ある程度うまくはいった。

今までより多少の表情の変化ができるようになったり(と言っても微笑とかその程度だが)、食べ物を租借できるよう歯や舌を作り出すことができるようになったりした。

 

 

 

だがここで問題発生。食べれるようにはなったのだが、まるで味がわからん。

この状態になれるようになってから早速若菜ちゃんが勧めていたお菓子を買って食べてみたのだが、食感しかわからず、全く味がしなかった。まるで段ボールを食べている気分だったよ。

 

よくよく考えてみれば、体がケイ素のみで構成されている俺に味覚なんてものはないと思うのが普通だろう。原作でもそうだが、そもそも食事は不要な種族なのだ。作中で食事の描写なんてなかったし。

 

 

 

 

 

それでも食事を諦めきれなかった俺が次にとった行動は、永琳に相談することだった。

 

が、ここでも問題発生。永琳に相談を持ち掛け、彼女からの質問に答えていくうちに口を滑らせてしまい、今の状態が本来の姿ではないことがばれてしまったのだ。

 

その時の会話を一部抜粋すると、

 

「・・・ということで、味覚がどのようにできているか知りたいのだが」

「別にいいけど・・・食事ができるのなら、大なり小なり味覚はあるのだと思うのだけれど?」

「と言われてもな・・・もともと口なんてなかったし。・・・あ」

「へぇ、その話もうちょっと詳しく聞かせてくれるかしら?」

 

 

というわけである。・・・うん、俺のせいだね。うっかりしゃべってしまったよ。

 

最初はごまかそうとしたが、永琳を相手にしてその行動は無意味だった。速攻でウソがばれてしまい、カマをかけられてはひっかかるといった具合に、結果的にいうとほぼすべてしゃべってしまったのだ。まぁ、さすがに前世の記憶があるなんてことはばれなかったけどね。こればっかりは誰であろうと言えん。

 

そんなわけで、本当の姿を見せてほしいと永琳に脅s・・・頼まれたので、俺は久々にフェストゥム形態になった。

 

 

 

「・・・・え?」

 

 

まぁ普通はそんな反応するよな。

 

俺のこの姿を見た時の永琳の顔はまさに ( ゚Д゚)ポカーン ←こんな感じだった。いや、さすがにここまでアホ面さらしたわけじゃないが。

 

「で、感想は?」

「え?あ、そうね・・・」

「・・・」

 

 

 

「すごく、綺麗だわ」

「・・・おぅ。そうか」

 

まあ確かにフェストゥムにはどこか神秘的な美しさがあるからな。

だけど、明らかに生物とは言い難い見た目だ。正直この姿を見せる時には拒絶も覚悟してたぞ。

 

 

「なぁ、もう戻っていいか?」

「・・・・・・」

「永琳?」

「え?・・・えぇ、もう大丈夫よ」

「ん、そっか」

 

俺は再び人間の姿に戻る。いやー、なんだかんだで人に見られるのは初めてだったからね。かなり緊張しちゃったよ。

 

 

「・・・・・・」

「なぁ、永琳。本当に大丈夫k・・・!?」

 

ガシィ!!とでも擬音がつくんじゃないかというくらいの速度で両手をつかまれる。永琳は少しうつむいていて、その表情は見えない。つまり、なんか怖い。

 

「あ、あの?永琳さん?」

「最っ高よ、あなた!!」

「!?」

 

そう言いながら顔を上げた永琳は無邪気な笑顔だった。すっごく目がキラキラしていて、興奮からか頬は赤く染まっている。まるでまだ年端もいかない少女のようだ。こんな笑顔を向けられたら、たいていの男は見惚れてしまうだろうよ。

 

 

 

 

 

・・・だが、その笑顔を見た俺は冷や汗が止まらなかった。

なぜかって?俺はね、この笑顔を何度か見たことあるからさ。

 

 

 

主に実験場で彼女が未知の事象に相対しているときになぁ!!

 

 

 

「なんで今まで隠していたのよ!?全く、そんな姿があるなら早く教えなさいよね!」

「いや、これにはちょいと事情があって・・・」

「言い訳無用!!それよりも、実験しましょ?あなたについてもっともっと知りたいの!」

「おいちょっと待て。今日の分の実験は終わったはずだぞ!?」

「そんなの知らないわよ。こんなの目の前にして、明日まで待つことなんてできないわ!!」

「若菜ちゃん助けてぇぇぇぇ!!」

 

 

 

あの時は心の声が飛び出てしまった。あの後、うまい具合に買い出しを終えて帰ってきた若菜ちゃんが永琳を落ち着かせて何とかなった。

 

いやー、あのままだったらあのマッドサイエンティストに体を原子レベルで分解されていた気がする。いや、ほぼ確信に近いと言ってもいいだろうね。

 

ま、何にせよ若菜ちゃんのおかげで助かった。今度新作のお菓子でも買ってきてあげよう。

 

 

 

「で、なんで永琳様はあそこまで取り乱していたのですか?」

「ごめんなさい。あのときは彼の本当の姿を見てしまって、つい研究者としての血が・・・」

「え、あの姿が本当の姿じゃないんですか!?」

「えぇ。彼の本当の姿はとてもきれいなのよ」

 

おいコラ永琳お前なに口走ってくれてるんだよ。

 

はい。その後、若菜ちゃんにも見せる羽目になりました。

すっごいキャーキャー言ってたよ。永琳とはまた別の意味で無邪気な反応だった。あんな見た目をしている俺に対しても変わらずあの反応。天使か何かかな?

 

 

 

 

 

 

と、まぁそんなことがあったわけだ。それがこの数年間あったことの中での大きなことだな。

 

んで、次に小さなことというか、そこまで大した事でもないのだが。本当の姿を見せたあの日から、俺は少しずつ彼女らへの態度や口調が砕けていった。

 

今まであのような口調だったのは多分、俺が心のどこかで彼女たちに対して遠慮があったからだろう。

それがあの事件(?)のおかげで、遠慮なく彼女たちを話せるようになった。本当、俺のこの姿を受け入れてくれた二人には感謝してもしきれない。

 

 

 

そんで、次にだが・・・「隊長!」・・・ん?

 

「どうかしたのか?」

「いや、もう教導の時間が来てますよ。なにやってんすか?」

「え?・・・あぁ、すまん。少し考え事をしていたんだ」

「隊長は最近よくボーッとしていますね。賢者様と何かあったんで?」

「別に永琳とは何もないさ。さ、さっさと行くぞ」

「ちょ、待ってくださいよ!」

 

 

 

俺、就職しました。現在、都市防衛隊第3部隊隊長やってます。

 

 

 

・・・なんでこうなったし。

 

 

 




書け―きーれなーい♪

話はここで区切る。続きは次回。


次回

簡単な説明→敵との邂逅→初めてのガチ戦闘

こんな感じで。

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