自然あふれる森の中で意識を失ったら人工感あふれる病室(?)で目覚めた件について。
と言っても、なんでこうなったかのかはなんとなくわかる。あの少女(わかなだったっけ?)が永琳に説明してくれたのだろう。もしそうでないのなら、実験体ににされる可能性がある。が、それはないと思う。
「あら、起きたのね」
「・・・」
「別にそんなに警戒しなくてもいいわよ?」
「・・・いきなり攻撃した相手を目の前にして、警戒しない方がおかしいと思うのは俺だけか?」
「・・・やっぱり人並みの知能はあるみたいね。益々興味がわいてきたわ」
「おい聞けよ」
とまぁこんな感じで、目の前の椅子に腰かけている永琳からは警戒心をあまり感じ取らないからだ。それよりも好奇心のほうがはるかに強く感じる。
「冗談よ。それよりも、気分はどう?何か違和感などを感じないかしら?」
「・・・特に問題はないな」
むしろ気絶する前より好調なんですが。体中の痺れも完全に取り除かれてるし。
「そう、それはよかった。それで聞きたいのだけど、あなたh「あ、目が覚めたんですね!!」・・・若菜、あまり大声出さないの」
「あ~、君はあの時の女の子で合ってる?」
「はい、若菜です。ここの研究室で××様の弟子をやらせていただいています!」
え、なんて?。多分今永琳の名前を読んだのだろうが、全く聞き取れなかった。イントネーションとか、そういう次元の問題じゃねえ。
「お、おぅ。そうか・・・ケガはもう大丈夫なのか?」
「はい、××様に治療していただきましたから。それよりも、あの時は助けていただいてありがとうございました!」
「どういたしまして。・・・そっか、その分だと俺はだいぶ長く寝ていたのか?」
「いいえ。まだあれから3時間くらいしかたっていないわよ?」
「・・・えーと、人間の治癒力ってこんな高かったっけ?」
「私を誰だと思っているの?」
「いや知らねえし初対面だろーが」
あぁ、これだ、これを俺はしたかった。俺は今、彼女たちと会話しているんだ。人だったころは当たり前のようにしていた会話だが、それを久々にしただけでこんなにも嬉しくなるとは思わなんだ。
「そうだ、若菜。ちょっとこのメモに書いてある材料を買ってきてもらえる?」
「はい、わかりました。・・・うへぇ、けっこうありますね」
「愚痴を言わないの。そうね、余ったお金でお菓子を買ってきてもいいわよ?」
「わかりました今すぐ行ってきまーす!!」
そのまま若菜ちゃんは風のように研究室を出ていった。・・・なんだあれ。俺の目でもとらえきれんかったぞ。
「なんというか・・・元気がいいな」
「えぇ。ありすぎてたまに困るくらいよ」
さて、と。そう言いながら咳払いをして、彼女は再び先ほど言いかけた疑問を俺に投げかけた。
「さっきは聞き損ねたけど、もう一回聞くわね。あなたは、何者なのかしら?」
・・・さて、これにはどう答えたものかな?
「どうもこうも、君ならわかっているんじゃないのか?」
「そうね、少なくとも人ではないことはわかるわ。だけど、あなたは妖怪でもない。もっと気になるのが、ここよ」
そう言いながら永琳は頭に指をさした。意味が分からず、俺はただ彼女が指差した部分を見ている。
「言っておくけど、私の頭じゃないわよ。あなたのよ。そこから見える黄金色の物体について、説明してくれるかしら?」
あぁ、なるほど。どうやらあの時の攻撃で一部分とはいえ膜がはがれてしまっていたのか。確かにこれは奇妙だもんな、気になってもしょうがないか。
さすがにフェストゥムについて言うわけにもいかないので、俺は少し真実をぼかして言うことにした。
「んー、そう言われたってな・・・ぶっちゃけ、俺にもよくわからないんだ」
「あら、それはどうして?」
「実を言うと俺はまだ若輩者でね。生まれてからあまり時間がたっていないんだ。そんで、生まれたときには周りに誰もいなくて俺一人。仲間を探そうとうろついてみたが、俺のような存在はいなかった」
「ふーん・・・」
おっと、これについては半信半疑といったところか。まぁ、まだ出会ったばかりだからな、そう簡単にうまくはいかないか。
「まぁそんなわけで、俺の正体については俺は知らん。むしろ、俺の方が知りたいくらいだ」
「!・・・なるほど、あなたは自分の正体に興味があるのね?」
「まぁ、そうだけど・・・」
何やら永琳が何かひらめいたようで、俺に向かって問いを再び投げかける。
「ねえ、あなたは今どこかに住処はあるの?」
「ん、いや。ないけど・・・」
「そう、なら私から一つ提案があるんだけどーーー」
「ここに居候してみない?」
「・・・自分が言ってる意味わかってるのか?」
「えぇ、もちろん」
「俺がここに居候だって?」
「その通りよ。悪い条件ではないと思うけど?」
「いや、そういうことじゃなくてだな・・・いいのか?こんなわけのわからない俺をここにおいて。おまえらを襲うかもしれないぞ?」
「大丈夫よ、私なら充分あなたを抑えれるし。若菜だって、基本的に私と一緒に行動するから」
「はぁ・・・」
正直、混乱してる。じぶんでいうのもあれだが、俺は怪しい。人でも妖怪でもない、珍妙な存在だ。だが、ここにいれば俺の能力についてもっと詳しくわかるかもしれない。
・・・よし、決めた。
「・・・本当に、いいんだな?」
「いいってさっきから言ってるでしょう?」
「そうだな。わかった、当分ここに世話になるよ」
「それは良かった。じゃあそういうことで、八意××よ。よろしくね」
そう言いながら彼女は手を差し出す。それに俺は返事をしながら握手を交わした。
「俺に名乗れる名前はない・・・まぁ、よろしくな。八意」
「あら、これから何度も会うわけだし名前で呼んでもいいのよ?」
「えっと、実は名前のところだけうまく聞き取れなかったんだ」
「なるほどね。じゃあ私のことは永琳と呼んで頂戴」
「わかった。んじゃ改めて、これからよろしくな、永琳」
「えぇ、よろしく」
そんなわけで、俺はここに居候することにした。まぁ、なんだかんだで原作キャラと交流できるわけだし、住む場所もできた。結果オーライとでもいうのかね、こういうの。
「さぁ、さっそくあなたのことを調べようかしら。とりあえずそこのベッドに横になってちょうだい。え、あの機械は何かって?ただあなたの体を全身細かく細胞レベルに至るまで調べつくすだけよ。大丈夫大丈夫、痛いのはほんの一瞬だから。あなただって自分のことが知りたいのでしょ?なら善は急げ、よ。逃げようものならあの時射った矢をもう一回撃つからね、抵抗しないことを進めるわ」
前言撤回。今すぐ森に帰りたくなってきた。なんだよこれ結果オーライのはずが結果が全速力でどこかに飛び去って言った感じだぞオイ。
え?ちょっと待ってくれまだ心の準備がーーー
「・・・死ぬかと思ったぞ」
「死んだら調べた意味がないじゃない。それに対象は生きていたほうがいいデータが取れるのよ」
「違う、そうじゃない」
すさまじくキツかった。どのくらいキツかったのかというと、正直思い出したくないので割愛する。そのくせ疲労は一切感じないのだから余計にたちが悪い。
「で、どうだ?なにかわかったか?」
「そうね・・・疑問が解けるどころか一つ増えたわ」
「へ?」
「あなたは人間、もしくは妖怪の体がどうやってできているか知ってる?」
生まれて2ヶ月くらいって言ったよね、俺。知ってるとでも思っているの?
「いや、知らん。けれど妖怪だって血が出るし肉もあるから人と大して変わらないんじゃないか?」
「まぁ、根本的なスペックが違うのだけれどね。大雑把にいえばその考えでいいと思うわ。で、これを見て頂戴」
そう言って永琳は俺にも見える位置にあるモニターを付けた。そこには先ほどの実験で撮ったのであろうデータが移される。俺の全身(人間形態)と共に所々追加で何かが書かれている。だが日本語ではなく、英語というわけでもないので、俺にはさっぱり読めなかった。なんだよこれ、象形文字かなんかか?
それで?と視線で疑問を投げる俺に対して、永琳はとある一点をさす。そこにはただ二文字だけの単語、そして『100』が書かれていた。
「ここは何を表しているんだ?」
「対象者の体の構成物質ね。今回は最も細かい設定でしているから、元素レベルまで表示されているわ」
・・・あー、なるほど。こんなところまで本家設定なのね。
「文字が読めねぇ・・・。けど、俺には少ししかないように見えるな」
「少しどころか一種類だけよ。あなたの体を構成しているのは『ケイ素』だけ」
「へぇ、それは珍しいのか?」
「ケイ素自体は珍しくもなんともないわ。驚きなのは、それのみで体を構成できているということ。ただの物質ならあり得るのだけれど、あなたのように人並みの知能を持つ生命体でそれはほぼありえないのよ」
これは公式のフェストゥムの設定で実際にあることだ。理由はわかっていないが、フェストゥムは種類に関係なくそのすべてがケイ素だけで構成されている。永琳に言われるまですっかり忘れてたよ。
「まぁ、とりあえずそのことが分かっただけでもいいじゃんか。何もわからないよりかはましでしょ」
「それもそうね、このことについてはこれから解明していけばいいんだし。」
「・・・もしかして、またあれをを使うのか?」
「もちろんよ。むしろ、今よりももっと細かく解明できるように改良しなきゃ」
「今日のところは勘弁してくれ、さすがに疲れた」
ぶっちゃけ嘘です。フェストゥムには疲労という概念がないらしく、どれだけ動いても息一つ乱さない。まぁ、呼吸しないし当たり前か。だが、身体的疲労はなくとも精神的疲労はあるのだ。
今日の俺は都市一周から妖怪との戦闘、永琳からの攻撃(矢&実験)という、なんとも濃い内容によりオデノカラダハボドボドダァ状態になっている。睡眠は必要ないが今すぐ寝たい気分だ。
「それは残念。・・・それに、もうそろそろ若菜が帰ってくると思うし今日はこの辺にしておきましょうか」
「わかるのか?」
「何となく、だけれどね」
その直後、研究室の入り口あたりからドタドタした足音と共に、ただいま帰りましたー!。と若菜が入ってくる。あまりにもちょうどいいタイミングだったので俺は思わず永琳を見る。永琳はこちらを見て微笑を浮かべていた。
「なんでわかった?とでも聞きたそうな顔ね。まぁ、あの子とはそこそこ長い付き合いだしなんとなくわかるのよ」
そういうものなのか。と俺が聞くと、そういうものなのよ。と永琳が返す。
「どうしたんですか二人とも?あ、そうだ。いつものお店で新作のお菓子が出ていたんですよ。お二人の分も買ってきました!」
「あら、それは楽しみね」
「お菓子、か」
「お菓子は甘いものよ。今紅茶を淹れてくるから、みんなで食べましょうか」
「やった!××様の淹れる紅茶は本当に美味しいんですよ!」
「へぇ、そうなのか」
それは楽しみだ。ここ最近はまともな食事をしていなかったからなー。
・・・・・・あ。
「あら、これ美味しいわね」
「です!」
「・・・・・・(ズーン)」
数分後、そこにはお菓子を美味しそうに食べる女性二人と無表情ながらも悲しみがあふれている男性が一人おったそうな。
そうだね。今の俺の形態はあくまでフェストゥムの外面に人間の膜を張っただけだもんね、口が本当にできているわけじゃないもんね。
ちくせう。
次回は、
その後どうなったか→新たな発見→加勢→初めてのガチ戦闘
こんな感じで。