あれからまた一ヶ月の時が過ぎたと思ったら村が都市になっていた件について。
あ、ありのまま今起こったことを(ry
まぁ、とりあえずこの一ヶ月の成果から話していこうと思う。
まず人型になれたかどうかについてだが、結論から言うとなれた。
今現在の俺の見た目は赤茶色の髪をした青年といった感じだ。もっと細かく説明しろって?俺に語彙力がないんだから説明してもわかんないと思うよ。
だが、完璧に人なったわけではない。身体の大きさは変えられなかったので、俺の身長はフェストゥム形態のころと変わらず2メートル前後だ。ぶっちゃけでけぇ。
もうひとつ、中身はフェストゥムのままだということ。どういうことかというと、今の状態は中身まで人間になったわけじゃなくて、フェストゥム形態の表面に人間に擬態した膜を張っているような感じなのだ。なので、攻撃や衝撃を受けて膜が破れたら、そこからはフェストゥムの黄金色の表面が見えてしまう。
あ、それ以外の装飾っぽい部分はどうしたかって?。気合で何とかしたんだよ、後は察してくれ。
まぁそんなわけで、表情を変えられないなどの問題は残っているがそれは些細なことだ。
これで、これでようやく人と交流ができる!!
そして意気揚々と一ヶ月前に見つけた村があるところに移動した俺が見たものはーーー
ーーー規模が大きくなっていて、城壁が築かれていてる大都市だった。
もう、ね。わけわかんないよ。
おかしい、一ヶ月前の文化レベルを弥生時代だとしたら、今のはどう見ても平成、下手したらそれ以上だ。それほどの発展をわずか一ヶ月でするなんてありえないだろ。
・・・いや、そういえばいる。この状況を作り出せる存在が一人だけ。それを確かめるためにも、どうにかしてこの都市の中に入らなきゃな。
と、言ったものの。これはどうしたものか。この状態では入れると思ったのは、入る対象が村だったからだ。これほどの大都市ともなれば、正面切ってはいるのはなかなかにめんどくさそうだな。城門らしきところには武装した警備員みたいなのいるし。
ーーーよし、警備が薄そうなところ探して、そこから潜入しよう。
そう決めた俺は、城壁に沿ってぐるっと一周してみることにした。
~移動中~
結論から言おう、無理だこれ。
なんなんだよ。薄いところはおろか、警備員がいない場所がないじゃねえか。巡回しているのかと思ったが、当てが外れてしまった。
言っておくが、もちろん警備員どもには見つからないように行動してたぞ。城壁がギリギリ見える場所を通って行ったんだから余計に疲れた。
さて、どうしたものか。そう思っていた俺の頭に感情が流れ込んできた。
それは、恐怖と歓喜だ。
・・・あぁ、この感覚。またどこかで妖怪が人間を襲ってやがるな。
人間形態への修行中にも何度かこの感覚を味わったことがある。だが、俺はスルーすることに決めていた。生憎と俺はヒーローなんて大層なものじゃないし、人間にフェストゥム形態時の俺の顔を覚えられるのはちょいと厄介だったからだ。人と交流したいと言っていたが、それはそれ。
だが、今は事情が違う。
「ちょうどいい。妖怪には試作台になってもらって、人間からは情報をいただくとしようかね」
そう決めた俺は、感情が発せられている方向へ最大限の速度で走り出した。人の見た目とはいっても中身は人外(フェストゥム)なので、その速度はかなり早い。
そして一分もたたないうちに俺の視界に写ったのは、腰を抜かしたのか動かない少女と今まさにその人間を食らおうとしている妖怪だった。
「いただきまぁぁぁす!」
「・・・ごめんなさい。××様」
まずい!。そう思った俺はすばやく二人の間にはいり、妖怪の牙を両手で一本ずつ受け止めた。
・・・本当にギリギリだった、あとちょっとでこの子は食われていたな。
「なんだぁてめぇは!?」
「知るかよ、そんなの俺の方が知りたいわ」
「そうかい、ならてめえも死ねぇえええ!!」
目の前の妖怪の両腕から攻撃が繰り出される。俺はそれをーーー
「ピギャアアァァァァァ!?」
ーーー両肩から突き出た二本の巨大な爪で切り裂いた。
こいつは一ヶ月前に同化したあの蜘蛛の妖怪のものだ。最初は両腕を変形させていたんだが、もっとうまく使えないものかと考えているうちにこの方法にたどり着いた。おかげさまで、攻撃と防御を同時にすることが可能となった。
「お前はいらないよ。だから、さようなら」
そして俺は奴の体を串刺しにして真っ二つに引裂いた。今回は同化はしない、特に得られるものもなさそうだし。
「さて、と。ケガはないか、お嬢ちゃん?」
「え?あ、はい・・・大丈夫です」
ふむ、感じ取れるのは困惑と緊張か。まだうまく状況を整理できていないようだな。あぁ、表情が変えられたら笑顔で話しかけられるのに。
「駄目じゃないか、こんなところに一人で来ちゃ。妖怪が出ることくらいは知っていたのだろう?」
「はい・・・。でも、どうしても外に出てみたくて・・・」
「それでもだ。今度からはせめて護衛を連れてくるか自衛の手段を持つかしておきなさい。君が死ぬと悲しむ人がいるんじゃないのか?」
「!?・・・はい、その通りです。すいませんでした」
「よし。さ、立てるか?ここは危ないし、早く帰った方がいい」
「はい・・・っ!」
立ち上がろうとした少女の顔がゆがむ。どうやら逃げる時に足をひねったようで、足首が赤く腫れている。これはちゃんと治療した方がよさそうだな。
「痛いのか?」
「え?いや、大丈夫ですよ。このくらい・・・」
「無理はするな。俺が君を抱えて都市まで送ろう。その方が早いし、安全だ」
「・・・いいんですか?、そこまでしてもらって」
「気にするな。乗り掛かった舟というやつだ」
「わかりました。じゃあ、よろしくお願いします」
どうやら一定の信頼は得られたようだな。彼女から緊張か少しずつ薄れて代わりに安心感が表に出ている。
よし、計画通り。これで俺は警備員に怪しまれることなく、大義名分を持って都市に入れる。この子を利用している形になっているので、少々罪悪感があるけどね。
「それじゃ、いくぞ」
そう言って俺は彼女を抱えるために手を差し伸べた。少女はその手をつかもうと手を伸ばしてーーー
「今すぐそこから逃げなさい、若菜!!」
俺は、一本の矢に頭を貫かれた。避ける間もなく、一瞬だった。
本来俺は頭を射られたくらいでは死にはしないのだが、どうやらこの矢には何かが込められているようで全身から力が抜ける。そのまま倒れた俺は、少しずつ薄れていく意識の中、自分を攻撃した奴を見た。
その女性は、赤と青という何とも珍妙なコントラストの服を着ており、その手には弓と矢が握られていた。おそらくあれで俺を攻撃したのだろう。
女性の名は、八意永琳。都市大発展の原因であると俺が推測を立てていた人だ。
いやいや、ちょっと待て。なぜ俺が攻撃されている?確かにちと巨体だが、その見た目は間違いなく人間のはず・・・
そこまで考えて、俺はようやく気付いた。爪をしまうのを忘れていたことに。
つまり彼女が見た光景は、倒れて動けない少女に手を近づけている両肩から巨大な爪を露出している男(体長2メートル)ということになる。
あ、これは俺が悪い。どう考えても人型の妖怪が少女を襲っている図だわ。
その結論に至ったところで俺は意識を失った。
<永琳side>
・・・あぶなかったわね。
そう思いながら私は、倒れている妖怪から警戒を解かず若菜に近づく。
「大丈夫だった?けがはない?」
「・・・え?あ、はい」
「そう・・・よかった」
最初若菜が一人で街の外に出たと聞いたときは本当に驚いた。前々から外に対して強い興味を持っている子だったのはわかっていたが、まさか勝手に出ていくとは思わなかったのだ。
「ダメでしょ、一人で外に出ちゃ。外には妖怪がいるんだから。私が間に合わなかったら、あなたは・・・」
そう言いながら私は先ほど倒した妖怪を見る。見た目は人間だが、こいつからは気配を感じない。確実に人ではない存在だ。
「あの・・・××様」
「なに?」
「そこの方は、私を助けてくれたんです・・・」
・・・え?
「えっと、どういうこと?」
「実は、先ほどまで別の妖怪に襲われていて、もう少しで食べられそうになったところを彼が助けてくれたんです。それで、今度は動けない私を都市まで送ってくれると・・・」
・・・やってしまった。あの光景を見て、私も焦っていたらしい。
頭を冷静にさせて、再び彼の様子を観察する。確かに彼は気配を感じさせないが、少なくとも妖怪ではないのだろう。妖怪ならば、先ほどの一撃で死んでいるはずだ。だが彼は、時々身体をピクピクと震わせている。
・・・少し、興味が出てきた。
「そうね。お詫びもかねて、一度私の研究室に連れていくわ」
「あ、なら私が治療したいです。恩もありますから!」
「ならお願いしようかしら。・・・けれど、その前にお説教よ?」
「ウエェ、やっぱりか・・・」
その後私は若菜の足の治療をして、歩けるようになるまで回復したところで、彼を抱えて都市に帰って行った。
・・・あら、でかい図体のわりに結構軽いのね。益々興味がわいてきたわ。
次回は、
話し合い→今後の身の振り→都市の案内→自身の体の解明→実☆験
こんな感じで。継ぎ足したり変更するのもあり