試作小説保管庫   作:zelga

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しばらく時が過ぎる→ワームスフィアとかの確認→妖怪と接触、ぶっ殺す→村を発見、しかし容姿のせいで近づけない→再び訓練をすることに




試作その2 第2話

あれから一ヶ月の時が過ぎたが森から出られない件について。

 

 

さすがにずっと歩き続けているわけではないが、日が出ている間は一方向に向かって歩き続けているつもりだ。時々川を見かけることはあったが、町どころか人の気配すりゃありゃしない。それどころか冒頭で言ったとおり、この森から出られる気がしねぇ。

 

だが立ち止まるわけにもいかず、今日も俺はホバー移動をし続ける。だが歩くだけでは暇なので、自分自身や力について確認や実験をしてみた。

その結果は次のような感じだ。

 

①自身の姿はフェストゥムだが、本来の大きさよりずっと小さいし、その大きさにはなれない。

②『同化する程度の能力』で同化した奴の特性を使えるようになる。

③自分自身と同化することはできない。

④フェストゥム自身の力も使用可能。

 

 

・・・いや、俺がいうのもあれだが、なんだこれ。

 

③はわかる。これはアニメでそういう描写がなかったからだし、自分自身と一体になるなんて矛盾しているからだ。①は意外だったが、大して気にはしない。ちなみに俺の見た目であるスフィンクスA型種の本来の大きさは大体35メートルだが今の大きさは2メートル前後だ。

 

問題は②と④。②はありえそうではあったが、実際に体験してみるとすさまじく便利だ。

例えば、俺が初めてこの世界に来た日に枝葉と同化したんだが、その結果俺は『光合成』を行えるようになり、食事が不要となった。

もう俺の身体フェストゥムじゃなくてアラ○ミなんじゃないかな。

 

そんで④。これはつまりフェストゥムがアニメの中で使っていた力も普通に使えるということだ。今のところ確認できているのが『ワームスフィアー現象』と『読心能力』の2つ。

『ワームスフィアー現象』は、黒い球体を望む場所に生み出すことができ、そしてそれに触れたものはゼロ次元に向かって捩じ切られる。という何とも恐ろしい力だ。さらにこいつの射程は俺の視界内らしく、試しに大空に向かってやってみたところ、自身の大きさほどのワームスフィアーが点に見えるほど遠くまで出すことができた。

 

そして、『読心能力』。これは文字通り、相手の心を読むことができる。だがどこぞの地霊殿の主と同じような能力に思えるが少し違っていて、完全に相手の考えていることはわからないらしい。試しに道中出会った生き物や木などの心を読もうとしたが、わかるのは喜びや悲しみなどの感情だけだった。これはただ単にあいつらの知能が低いからかもしれんがな。ちなみにこれはオンオフの切り替えは可能らしく、意識しない限り心を読むことはない。

 

 

・・・もう一度言おう、なんだこれ。

 

フェストゥムの力は本当にチートじみてる。ファフナーの世界では対策できていても人類は絶滅されかけたのだ。それが対策なんぞないこの世界ではどうなるか、考えるまでもない。

わかりやすく言うと、俺TUEEEE状態だ。

 

どうすっかねぇ・・・。そんなことを考えながら移動していた俺は、とあるものを見つけた。

 

 

それは、人間だった。動物の皮で作った服のようなものを着ている、人間だったモノがあった。

 

・・・そう、だったモノ(・・・・・)だ。この名も知らない人間は、死んでいた。腹に風穴があき、そこから臓物を引きずり出されて、死んでいた。その表情からは、恐怖と絶望が浮かんでいる。

 

「ん~?、だれだてめぇは?」

 

その人間の惨状に驚いていると、俺の前方から化け物が出てきた。そいつは巨大なクモだった。だが足はまるで爪のように鋭く、前足の爪からは血が滴っていた。

 

「・・・こいつは、お前が殺したのか?」

 

気が付くと、俺はこんなことを口にしていた。この状況から見てそうとしか思えなかったが、それを確認するかのように聞いていた。

 

「ハ、その通りよ。腹が減っていたらこの人間がノコノコ一人で歩いていたからよ、食おうとしたんだ。だが、手加減を間違えちまったみたいだな」

 

もうちょっと生かしておくつもりだったのによ。と、化け物はゲラゲラ笑いながら言った。

 

「生かす必要があるのか?」

「おうともよ。人間っつうのは、死ぬ時の感情によって味が変わるんだ。恐怖の時の味はなんつうか、こう・・・ドロドロでよぉ、もう最高なんだ。だから、一瞬では殺さず、じわじわといたぶっていくんだよ」

 

こんな風にな。そう化けものは言いながらこの人間を殺した時の様子を表現している。だが、そんなことは俺にはどうでもいい。

 

ーーーこいつ、殺す。

 

「・・・なぁ」

「でさぁ、そこをこう・・・ん、なんだ?」

 

俺は顔を化け物に向け、自分の感情のままこの言葉を言い放った。

 

「あなたは、そこにいますか?」

 

 

 

 

 

「あ、何言ってんだお前?・・・グギッ!?」

 

化け物がそう返事をした瞬間、俺は奴の脚のうち一本を包むようにワームスフィアーを展開した。黒い球体が消えると、そこにあった足はなくなっていて、傷口から血がふき出す。

 

「俺の足がァァァァ・・・てめぇ!」

 

そう言いながら奴は爪を振りかぶって、俺に攻撃する。俺は、そこから一歩も動かず奴の腕の進路上にワームスフィアーを展開する。生み出された球体に腕が入った瞬間、奴は絶叫して体勢を崩した。

 

俺は、そのスキを逃さず奴に素早く近づいていき、その体に触れた。

 

「?、なにを・・・っ!!??」

 

俺が触れたところから、翡翠色の結晶が生える。それは徐々に奴の体を覆っていく。

 

「イタイイタイイタイイタイィ!。いやだ、死にたくない、助けてくれぇ!!」

 

奴から激しい感情が読み取れる。先ほどまでは怒りのみだったが、今は死への恐怖のみのようだった。

そうだ。おまえはそうやって恐怖に包まれたまま、死ねばいい。

 

やがて、結晶は奴の体のすべてを覆い尽くしーーー

 

 

 

 

 

「いやだね。ここから、いなくなれ」

 

砕け散った。

 

 

 

 

 

・・・こんなことしても、無意味なんだけどな。

 

そう思いながら俺は、目の前の墓標を見る。それは、先ほどの人間のものだ。と言っても、近くにあった石を数個積んだだけの簡素なものだが。

 

さっきは衝動で同化(殺)してしまった化け物だが、やつにとっては、人間なんぞただの食料なのだ。それを最もおいしい方法で調理しようとしただけなのだろう。あれはただ単に人間だったころの俺が許せないことであり、偽善による行動だ。人外になってしまった俺が本来気にすることではない。実際、死体を見ても吐き気とかは襲ってこなかったし。口ないけどね。

 

さて、だいぶ落ち着いてきたところで俺は気づいた。そういえば人間がいたのだ、しかも服を着た人間が。

これはとてもうれしい。生きた人間じゃなかったのは残念だが、もしかしたら近くに村的なのがあるかもしれない。

 

そう思った俺は、少し高いところまで浮き上がり、自身の読心能力の範囲を最大限まで伸ばす。

 

 

 

ーーーいた。動物や木々とは明らかに感情の複雑さが違う。しかも複数いる。

 

そのまま俺は、急いで心を感じ取った方向まで移動した。

 

 

 

 

 

~移動中~

 

 

 

 

 

「やっぱり、あった」

 

思わず俺はつぶやいた。あったのだ。俺の視界の先には、村があった。文化レベルは低いが、そこには人が集団で生活していたのだ。先ほどの場所からそう遠くはないため、あの人間もここ出身なのだろう。

 

ようやく人間に会えたぞ。そう俺は、茂みの中でつぶやいた。

 

 

 

そう、茂みの中で、だ。

移動の途中で思い出したんだけど、今の俺の見た目、人間じゃないんだよね。どっちかっていうと、あの化け物側だよね。しかもそんなのが空中から現れたら、速攻で敵対するよな。うん、俺が村人ならそうする。

 

そんなわけで、途中で地面に降り立ち、村を見ることができる茂みの中にいるのだ。

俺としては、是非とも交流したい。というか、村で生活したい。いやー、1ヶ月とはいえ人と一切会わなかっただけでこんなにも恋しくなるとは思わなかった。

 

だが、この姿のまま入るのは不可能だろう。そこで俺が考えたのは、容姿を人型にできないだろうか、ということだ。

 

アニメで人型のフェストゥムは存在する。それはスレイブ型と呼ばれていたが、そいつらは総じて人の見た目なのだ。

つまり、人型になるのは不可能ではない。

 

よし、人型になってから村に近づこう。

そう思った俺は、引き返して再び森の中に入っていった。必ず人型になることを習得して、ここに戻ってくることを強く願いつつ。

 

 

 

 

 




次回は、

村に驚く→どうにか入れないかとうろつく→見かけた人間を助ける→永琳に射られる→ドナドナ

こんな感じで。

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